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【SS】人生リセットスイッチ
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0001名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/05/17(火) 22:03:42.51ID:VpZ0h6Rf
私には今の現実が受け止められなかった。
今の私は何もかも失ってしまった。スクールアイドルも。虹ヶ咲も。そして、歩夢も。
私はこれからどうやって生きていったらいいんだろうか。本当に、誰かに教えてもらいたい。そうでないと、生きる意味を見出せないから。
これが1周目の高咲侑だったら、人生こんなもんだと割り切れたかもしれない。
でも、私は2週目の高咲侑だ。おまけに1周目の記憶も残っている。
12人のスクールアイドルのマネージャーとして同好会をサポートし、イベントを企画し、
音楽科に転科して、自分の大好きを見つけて……
そしてなにより、自分の夢を見つけた。
そんな可能性、いや、現実があったという記憶。
1周目の自分が今の自分を苦しめる。
私は……私はもっとより良い人生にしたいと思っただけなのに。
皮肉にも現実はその真逆となってしまった。
0393名無しで叶える物語(光)
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2022/06/17(金) 12:34:56.99ID:pIgtmIgT
1周目と比べて、侑ちゃんの作曲やピアノの能力は高くなっているし、それに一般教科の成績も良いだろうから人生の選択肢は増えただろうね。
だけど1番やりたかった『虹ヶ咲学園のスクールアイドルのマネージャー』が出来ないのが皮肉だね…。
それに侑ちゃんが入学しないなら同好会もどうなるのか…。
0394名無しで叶える物語(たまごやき)
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2022/06/17(金) 13:45:11.66ID:ReoIcgvD
人を自分も含めて低く評価してるのかな、だからか他人の気持ちを分かってない。歩夢がいれば頑張れるって逆もまたしかりでしょ。いじめられない日常と侑と恋人の日常なら、前者を選ぶんだ。って歩夢の愛情を疑っているのか?色々なことが自分勝手すぎる
でも作者さん分かって書いてそう
0396名無しで叶える物語(SB-iPhone)
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2022/06/17(金) 14:26:24.17ID:2n9O/zbH
更新きてた
ここまでが共通って罰だったとしてもあまりにもつらすぎるにゃ…
あと精神やられると外から見てなんでそんなことも気づかんの?ってレベルで視野が無くなるらしい
0397名無しで叶える物語(茸)
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2022/06/17(金) 15:11:32.71ID:wO6+umWD
ハッピー好きだけどバッドあるなら見たい派だがここまで酷いのが共通ルートならもうハッピー直行してほしい
0398名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/17(金) 15:18:58.07ID:q/lEv8fV
というかもはやバッドエンドだよねこれ
ここからハッピーもいいけど、もう少しなんとかならなかったのか…
いや、作品としては文句はないんだけどね
0399名無しで叶える物語(光)
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2022/06/17(金) 15:45:00.54ID:IhZkH8ZI
侑ちゃんもしかして離人症になりかけてない?
離人症は、この作中の侑ちゃんも言っていたけど世の中が色褪せて灰色に見える事がある。だけど外からは変化がわからないから他人には理解されにくい。
でも自分の心を守るための症状でもある。
0400名無しで叶える物語(光)
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2022/06/18(土) 06:01:53.68ID:9jiglFpk
0402名無しで叶える物語(光)
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2022/06/18(土) 23:46:42.07ID:7+uayfEM
0404名無しで叶える物語(光)
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2022/06/19(日) 12:22:20.26ID:5Ig+h09v
0405名無しで叶える物語(光)
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2022/06/19(日) 21:26:32.41ID:1A1qVBIZ
0407名無しで叶える物語(光)
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2022/06/20(月) 22:07:23.94ID:A2wSuDhI
期待
0409名無しで叶える物語(光)
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2022/06/21(火) 06:12:07.10ID:mhtdjNKv
楽しみです。
0412名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:00:38.10ID:lay9L1DA
今日は新しい高校の制服採寸の日だった。

学校はボロボロで、雰囲気もあまりよくない。

周りの新入生も、私とは合わないタイプの子ばかり。

全てがくだらなく思えてくる。

制服も地味でダサくて、まるで中学の延長線のような制服。

全然おしゃれじゃないし、可愛くもない。

まぁ、私なんかがそんないい制服を着たところで何にもならないけれど。

それでも、虹ヶ咲の制服に袖を通したかったな。



やっぱり虹ヶ咲への未練は消えることはなかった。

歩夢はどこを受験したのだろうか。

私という足枷がなくなったのだから、虹ヶ咲よりもっと難しい学校を受験したのかな。

彼氏と一緒の高校を受験したのかな。

ひとりで歩いていると、どうしても色々と余計なことを考えてしまう。

気を紛らわせよう。私はいつものようにポケットの中からイヤホンと携帯を探した。

ガサガサ

ゴソゴソ

「あれ?」

イヤホンをどこかに落としてしまったみたい。

「はぁ……」

「くそっ!」

安物のイヤホンだったけれど、いつも私を外の世界から守ってくれた大切なものだった。

「本当についてないな」

本当についていない。

イヤホンのことも、それ以外のすべてのことも。

まだ寒さが残る3月の風が私の体を通り抜ける。

「うぅっ……」

私は歩くスピードをあげた。
0413名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:04:02.97ID:lay9L1DA
「1、2、3、4!」

「1、2、3、4!」

川辺から声が聞こえてくる。

何か部活動の練習かな。

部活動。その言葉を聞くと地獄の学校生活を思い出して嫌な気分になる。

やっぱり外の世界は怖い。イヤホンをなくした日に限ってこんな場所に出くわすなんて。本当についていない。

私は目をそらしながらさらに足のスピードを速めようとしたその瞬間

「あっ!」ドスン

「大丈夫!?」

その集団の一人が大きな声を出しながら転んだ。

私は思わずその子達の方を見てしまった。

まさにそれは神様のイタズラだったのかもしれない。

「いたたたた……。でも大丈夫!」

「本当に?痛くない?」

「痛い!だけどお尻打っただけだから!」

「少し休んだ方がいいんじゃない?」

「大丈夫だよ!それにラブライブ予選までもう時間ないし、少しでも練習しないと!」

「ほんと、そういう所頑張り屋さんだよね!」

「じゃあアタマからもう一回通すよ!」

――ラブライブ……?

ということはあの子たちはスクール……アイドル……?

学校名はおろかグループ名も分からなかった。でも、彼女たちの練習姿は確かにスクールアイドルだった。

スクールアイドルに触れると虹ヶ咲を思い出して辛くなってしまう。

そんな理由からずっとスクールアイドルに関する情報を自分から遠ざけていた。

でも、やっぱりスクールアイドルはときめいちゃう。それは私の隠しきれない、本心だった。

気づけば私は土手の上から彼女たちの練習を食い入るように見ていた。



「1、2、3、4!」

「1、2、3、4!」

「1、2……あれ?」
0414名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:07:09.51ID:lay9L1DA
リーダーらしき子と目が合った。

まずい……ずっと見ていたのバレちゃったかな……

私は気が付かれていないことを願いながら後ずさるが、

「お~い!そこの君!良かったらもっと近くで見ていってよ!」

全てお見通しだったみたい。

「すみません……勝手にジロジロ見ちゃって……」

「むしろ見てくれて嬉しいよ!あなたが観客第1号だね!」

「第1号……?」

「実は私たち、グループを始めたばっかりなんだ!だからまだイベントとか舞台に立ったことが無くて……」

「だから、あんな真剣に私たちの事を見てくれて、とっても嬉しかった!」ニコッ

「始めたばっかりなんですか!?」

「うん……いまはラブライブ予選に向けて練習しているんだけどね……、なかなかうまくいかなくて」

「そうだったんですか……」

「あなたは何年生?」

「今は中3で、次の春から高校生です」

「えっ?大人びて見えるから高校生かと思ったよ!」

「そうですか?私身長小さいし……」

「いや、雰囲気とか?なんか大人っぽい!」

「そうですかね……」アセアセ

「お姉さんたちは?」

「私たちはすぐそこの××高校の生徒だよ!」

「そうなんですね……でも、結成したてとは思えないくらい上手でした!!」

「君中学生なのにお世辞も言えるなんてすごいね~!」

「お世辞じゃないですよ!さっきのこの部分とか、ここの振り付けとか!あとこの部分の動きが全員でぴったり合ってるのがすごく見てて気持ちよかったです!!!」

「……」ジワッ

「あっ……私また暴走して変なこと言っちゃいました……?ごめんなさい!!」

「いや、違うよ……」

「友たち以外にはじめて感想を言ってもらえて……すごく嬉しくて……」

「伝わってほしいところがちゃんと観客に伝わるって……こんなに嬉しいものなんだね……」ポロポロ

「ちょっとリーダー泣くの早いって!!」
0415名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:10:19.30ID:lay9L1DA
「ごめんね~?リーダー涙もろくて」ホロリ

「逆に、何か気になったところとかある?」

「気になったところですか……」

日が暮れるまで振付について、表情について、曲についてたくさんのアドバイスをした。

1周目のマネージャーとしての知識、そして2周目で身に着けた音楽の知識、それらを総動員した。

指摘した瞬間に良くなるところもあれば、なかなかすぐには活かせないアドバイスもある。

でも、私のアドバイスによって彼女たちのパフォーマンスはみちがえるほど良くなった。

「ほんっっっとうにありがとう!!」

何度も何度もお礼をされた。こっちが申し訳なく感じるくらいに。

でも、お礼をしたいのはむしろ私の方だった。

私はスクールアイドルが好きだ。

でもそれと同じくらい、スクールアイドルを支える私自身も好きだったんだと気が付いた。

私は直接ファンのみんなに何かを表現することはできない。

でも、スクールアイドルのみんなを通して、スクールアイドルのみんなと共に自分を表現することができる。

それは企画だったり、曲だったり、詩かもしれない。

演者の悩みに一緒に寄り添うことかもしれない。

いっしょに放課後寄り道することだって、その要素になりうるかもしれない。

そうやってみんなと一緒にステージを作り上げること、みんな、そして何より自分が大好きだったんだなってやっと気が付くことができた。

虹ヶ咲に入れなかったからってなんだ!

私の高校にスクールアイドルがいないからってなんだ!

そんなの堕落の理由付けにすらならない!

どんな環境だって、どんな所属だってスクールアイドルに関わることはいくらだってできる!

私はやっと、すこしだけ前を向くことができた。
0416名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:13:21.81ID:lay9L1DA
――――――――――――

あの日以降、私は自分の人生に対して前向きに考えられるようになった。

調べたところ、高校生になると東京都高等学校ラブライブ連盟という団体に入って大会運営のボランティアができるらしい。

まずはその活動を通していろんなスクールアイドルと関係を作って、後々は直接スクールアイドルに協力出来たらな良いなって考えてる。

まだ上手くいくかは分からないけどね。

それに歩夢に関してはまだ心の整理がついていない。

もう少し心が回復したら、ちゃんと話さないとなって思ってる。

「さてと!作曲の続きでもしようかな~」ノビー

ピアノに向かおうと勉強机と立った瞬間、辺り一帯が光に包まれた。

「えっ……?」

そう、それはまさに、ちょうど3年前のあの日のように……

そして意識が徐々に遠くなり、

バタリと床に倒れこんだ。
0417名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:16:31.51ID:lay9L1DA
――――――――――――

どこか懐かしい匂い。

この匂いは……機械油とはんだの匂いだ……

「……さん?」

この匂い好きだったけど……前に嗅いだのはいつだったっけな?

「……うさん!」

あれ?誰かが呼んでる?

「ゆうさん!」

「侑さん!!」

「えっ?」バサッ

「侑さん、やっと起きた」

「えっ?璃奈ちゃん!?なんで!!!」

「なんでって……侑さんがちゃんと説明をする前にボタン押しちゃうから……」

「璃奈ちゃんボード[やれやれ]」

「え……だって私虹ヶ咲には……」

「だから、これはあくまでシミュレーター。過去に戻って別の選択をしていたらどうなっていたんだろうって確かめる装置」

「えっ……?じゃあこの世界はどこ……?」

「ここは侑先輩がボタンを押した3時間後の世界。過去に戻った世界とは別」

「じゃあ、あの世界はなくなったの?」

「なくなったというより、あれは幻想」

「本当じゃなかったんだ……」ポロポロ

「侑さん……泣くほど向こうの世界が良かったの?」シュン

「うんん……逆だよ……」ポロポロ

「あれが嘘で……本当に良かった……」ポロポロ

「よくわからないけど、悲しい思いをさせてごめんなさい。また私の発明で侑さんを悲しませちゃった」

「璃奈ちゃんは悪くないよ……悪いのは私だから……」

「あっ!歩夢は!!??」

「歩夢さんなら……そこでゲームを「歩夢!!」

「え?あ、侑ちゃんやっと起きた「歩夢!!!!!!!!!!!」

ソファーに座ってゲームをしている歩夢に私はとびかかるように抱き着いた。
0418名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:20:16.11ID:lay9L1DA
「ゆ、侑ちゃん急にどうしたの?」

「あゆむ~~~!!!」ポロポロ

「あゆむ!!!!」ポロポロ

「歩夢がいてくれてよかった!!!」ポロポロ

「さっきまで寝てると思ったら急にベタベタして……怖い夢でも見たの?」

「うん……だからしばらくこのままでいさせて?」

「璃奈ちゃんに見られてるよ?」

「わかってる」

「侑ちゃんは甘えん坊さんだなぁ」

歩夢は私の頭を優しくなでてくれた。

「人生リセットスイッチ、だっけ?侑ちゃんが推したボタン」

「うん。中学生に戻ってた」

「そこで悲しいことがあったの?」

「……うん」

「私と喧嘩しちゃった?」

「だいたい、そんな感じ」

本当のことなんて言えるわけがなかった。

「私と仲直り出来なかったの?」

「うん……だから私にとって歩夢と話すのは1年ぶりくらい」

「えっ……。私だったらそんなの耐えられないよ……」

「だから、しばらくこのままで、良い?」

「侑ちゃんの気が済むまで、このままでいいよ」

「あゆむ……」ポロポロ

「今日はいっぱい泣いていいよ」

「ありがとう」ポロポロ

「怖かったんだね」

「うん」ポロポロ

「寂しかったんだね」

「うん」ポロポロ
0419名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:23:21.70ID:lay9L1DA
「歩夢……」

「なに?侑ちゃん?」

「どこにも、行かない?」

「どこにも行かないよ」

「本当に?」

「本当に」

「どんなことがあっても?」

「もちろん。もし侑ちゃんと一緒にいることで世界を敵に回すことになったとしても……」

「それでも私は侑ちゃんの隣からいなくなることはないよ」

「なんでそこまで言えるの?」

「それは、侑ちゃんがとっても大切だからだよ」

「だから、そんな大好きな侑ちゃんに『離れて』って言われたら、たぶん私はたくさん悩んで、たくさん泣いて、それでも侑ちゃんの気持ちを大切にして離れると思う」

「私が侑ちゃんから離れるのは、きっとその時だけ」

その瞬間、いかに自分が愚かであったかを理解した。

「ぁ……ぇ……」ポロポロ

それまで以上に歩夢を強く、強く抱きしめた。もう絶対に離さない。

一度止まった涙が堰を切ったように流れだす。

再会を喜ぶ涙でも、渇望した1周目に戻った嬉し涙でもない。

歩夢の対する贖罪、そして自分への失望の涙だ。

「えっ……ちょっと侑ちゃん本当に大丈夫!?」

「歩夢……ごめんなさい!本当にごめんなさい!」ポロポロ

「私は取り返しのつかないことを……」ポロポロ

その後も泣き止まない私を、歩夢はそっと抱きしめてくれた。



璃奈ちゃんも歩夢もそれ以降私に何も聞かなかった。

きっと察するところがあったのだろう。

歩夢が私のそばにいてくれる。虹ヶ咲の生徒として同好会のマネージャーでいられる。

こんな当たり前がどれだけの奇跡の上で成り立っているのだろうか。

もう一度あのボタンを押したとしても、次も全く別の未来へ行ってしまうかもしれない。
0420名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:26:28.36ID:lay9L1DA
でも、やっぱり歩夢がいない人生なんて私には考えられない。

やっぱり、私は歩夢がいるから頑張れる。



2周目の猛勉強の貯金のお陰か、その後のテストでも私は好成績を取ることができた。

歩夢は目を丸くして驚いていた。それでも歩夢の成績には遠く及ばなかったけどね。

今となってはあの経験も少しは良かったのかなと思えるようになってきた。

別にテストの点が上がったからじゃないよ?それくらいのメリットじゃ死にたくなるほど辛いあの経験が良かったなんて思うことはできない。

後から璃奈ちゃんに聞いた話だけど、向こうの世界で私が死んだらずっと戻ってこれなかったみたい。

受験から卒業までの期間は精神がボロボロだったから本当に危なかったかも。

私は2周目の中学校生活で勉強なんかよりもずっとずっと大切なものを学んだ。

努力の方法。人間関係の大切さと難しさ。

そして何よりも、大切な歩夢の事を全然見えていなかった。

いつも一緒にいたのに、肝心なところは何一つ分かってあげられていなかった。

歩夢はどんなことがあっても私の事を一番に考えてくれる。

でも私はどうだろう。いざとなったら自分を守ることを優先してしまう人間だ。

私は歩夢と肩を並べる資格が無いのかもしれない。罪悪感がどうしてもついて回る。

でも、それを理由に逃げたりなんかしない。

そんなの歩夢に対する最大の冒涜だ。

私は歩夢の隣で、歩夢に似合うだけの人間になれるように頑張ることにするよ。



中学生に戻った時、私は2周目のアドバンテージを活かせる部分はほとんど無いって思っていた。

でも、それは違ったんだ。

ボタンを押す前の私は本当に人間として薄い、何も持っていない人間だった。

だから2周目に持ち込めるものも、ほとんど何もなかったんだ。
0421名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:29:48.23ID:lay9L1DA
でも、その代わり私はあの世界でたくさん成長することができた。

今はその経験をこの世界で活かすことしか考えられない。それほど私の2周目は価値のある時間だったんだと思う。

もちろん辛いことはたくさんあったけれど、最初からシミュレーションってわかってたらあそこまで本気になれなかったと思う。

だから、経験も結果的には良かったのかなって、今では思える。

2周目で経験した出来事は結局璃奈ちゃんにも歩夢にも話していない。

話したところで、みんなを不幸にするだけだ。

もしかしたら将来歩夢に話をする時が来るかもしれないけれど、それはきっと今じゃない。

それまでは心の中にしまっておくことにするよ。

気が付けば朝陽が部屋の中に差し込んできた。

すっかり一人で起きられる身体になっちゃった。



私はスマホを手に取り、電話をかける。

「もしもし歩夢?朝だよ、起きて!」



――――― √あゆむのもとへ 完 ―――――
0422名無しで叶える物語(もんじゃ)
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2022/06/21(火) 22:32:59.61ID:lay9L1DA
★以下共通√から

今日は新しい高校の制服採寸の日だった。

学校はボロボロで、雰囲気もあまりよくない。

周りの新入生も、私とは合わないタイプの子ばかり。

全てがくだらなく思えてくる。

制服も地味でダサくて、まるで中学の延長線のような制服。

全然おしゃれじゃないし、可愛くもない。

まぁ、私なんかがそんないい制服を着たところで何にもならないけれど。

それでも、虹ヶ咲の制服に袖を通したかったな。



やっぱり虹ヶ咲への未練は消えることはなかった。

歩夢はどこを受験したのだろうか。

私という足枷がなくなったのだから、虹ヶ咲よりもっと難しい学校を受験したのかな。

彼氏と一緒の高校を受験したのかな。

ひとりで歩いていると、どうしても色々と余計なことを考えてしまう。

気を紛らわせよう。私はいつものようにポケットの中からイヤホンと携帯を探した。

ガサガサ

ゴソゴソ

イヤホンを耳にはめて外の世界を遮断する。



いつからだろう。人が幸せそうにしている姿を見るとイライラするようになった。

そして、そんな心の狭い自分が心底嫌いだ。

外にいてはダメだ。私がダメになってしまう。

歩くスピードを速め、一目散に家へと向かう。

そんな時に限って赤信号で足止めされる。

「……」イライライライラ

まさにその時だった。

向かい側の歩道を歩く歩夢の姿が見えた。

「あっ……」

驚きから出る声を押し殺した。
0423名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2022/06/21(火) 22:36:06.33ID:lay9L1DA
歩夢の隣には、私の知らない女の子がいた。



歩夢だって切り替えてまた頑張っている。それを私が邪魔をする権利なんてない。

歩夢の友好関係は歩夢の自由だ。

でも、歩夢の隣は私だけの場所だった。それなのに……それなのに……

いつかは歩夢とまた親友に戻れるんじゃないかって考えていた。

その時まで、歩夢の隣は空席のまま。

だって私だけの歩夢だから。

そんな希望を勝手に妄想していた。

でも現実はそんなはずもなく、歩夢は歩夢で自分の人生を切り開いている。

そんなことはちょっと考えればわかるはずだったのに……

いや、考えなかったんじゃない。考えられなかったんだ。

歩夢の隣こそが、私に残された最後の居場所だったから。

でも、その幻想は今、目の前で打ち砕かれた。

私の居場所は、もうないんだ。



いつかはこうなるんじゃないかって思っていた。

でも、今日やっと決心することができた。

でも未練がひとつ。

「おじゃましまーす」

この時間は家に誰もいない。昔に貰った合鍵を使って歩夢の家に入る。

歩夢の部屋は前に来た時からほとんど変わっていなかった。

家具も、匂いも、小物も。

でも一つだけ違う所がある。写真立てた。

クリスマスにお揃いで買った写真立てだけが、歩夢の部屋から姿を消していた。

「ははっ……そうだよね……」

心の最後のピースが壊れる音がした。

「さようなら」

そう部屋に言い残し、振り返った私の視界に虹ヶ咲の制服が飛び込んできた。

「そっか……歩夢は虹ヶ咲に……」
0424名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2022/06/21(火) 22:39:16.02ID:lay9L1DA
右目から、左目から、とめどなく涙が流れてきた。

私が人生に失敗しなければ、また歩夢と一緒に虹ヶ咲に通えていたのかな。

同好会で一緒に活動することができたのかな。

大粒の涙がぼたぼたと音を立ててカーペットに大きな染みをつくる。

「あゆむ……」

「あゆむぅ……」

「歩夢と一緒に居たかったよぉ……」

私は膝から崩れ落ちた。

制服を見るだけで、1周目の楽しかった思い出が走馬灯のように流れる。

「あゆむ……」

「あゆむぅ……」

いくら望んでもここに歩夢はいない。

でも……
0425名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2022/06/21(火) 22:42:26.49ID:lay9L1DA
――――――――――――

最後はこの場所って決めていた。

私にとって一番大切な場所だから。

私は歩夢の制服を着ることで歩夢と一緒になることができた。

そのお陰か先生に止められることもなくこの場所まで来ることができた。

虹ヶ咲学園、屋上。

潮の香りを乗せた強い風が懐かしい。

自然と恐怖は全く感じなかった。

一歩一歩、前へ進む。

私は歩夢と一緒。

また一歩。

永遠に、歩夢と一緒だ。

さらに一歩。

次の一歩を踏み出したらもう終わりだ。

でも、歩夢に包まれて死ねるのなら、こんな幸せはない。

歩夢。せっかくの制服を勝手に貰っちゃってごめんなさい。

歩夢。幼馴染としてずっと一緒にいてくれてありがとう。

歩夢。私のせいで不幸な目に遭わせてごめんね。

歩夢。わがままな幼馴染からの最期のお願いだよ。

歩夢。こんな私を許してほしい。

そして願わくば……

歩夢。こんな幼馴染がいたことを悲しまないでほしい。

歩夢。今までありがとう。そして、

さようなら。

――――― √あゆむとともに 完 ―――――


おわり
0427名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2022/06/21(火) 22:45:02.13ID:lay9L1DA
ここまで読んで下さり本当にありがとうございました。
また1か月超にわたって保守協力して下さった方々にも感謝申し上げます。
0428名無しで叶える物語(もなむす)
垢版 |
2022/06/21(火) 22:47:02.96ID:ZmhClDNe
今週最終回だってのにつらすぎる…
0429名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2022/06/21(火) 22:48:37.13ID:73JKyMjs
おつ
今日のところはハッピーエンドだけにして気分的に大丈夫そうな日にバッドの方を読むことにする…
0431名無しで叶える物語(もんじゃ)
垢版 |
2022/06/21(火) 22:59:29.20ID:ARUoFwiE
完結乙
ハッピーエンドで現実に戻れた理由はなんとなくしかわからないけど、バッドの方はキツいな…
ともあれ楽しませていただきました
0432名無しで叶える物語(光)
垢版 |
2022/06/21(火) 23:06:59.09ID:ywTXeZ7+
お疲れ様でした。面白かったです。
ハッピーエンドの方は現実世界に戻れて良かったです。

バッドエンドの方だと、現実世界の侑はどうなってしまうのか…。
最後は歩夢の虹ヶ咲の制服を着て…というのが辛すぎる。
0433名無しで叶える物語(なっとう)
垢版 |
2022/06/21(火) 23:08:08.40ID:u0zhcyXe
大作おつでした
最後があまりにも…あまりにも……。

バッドの方は元の世界の侑ちゃんの意識も戻らないんですね…
0434名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2022/06/21(火) 23:10:07.00ID:D1krM909
感情移入して読んでたから途中のいじめシーンや
バッドエンドは本当にキツかった
ラ板では珍しい雰囲気で良かったよ
0435名無しで叶える(まんまる)(sage)(泡盛)
垢版 |
2022/06/21(火) 23:20:51.18ID:2obKRxMk
長い間書いてくれてありがとうございました
0436名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2022/06/21(火) 23:25:19.78ID:eyHfhLO+
おつ!めちゃくちゃ面白かった
あの途中の展開から綺麗にハッピーエンドまで持っていくのすげえわ……
0440名無しで叶える物語(光)
垢版 |
2022/06/22(水) 08:33:48.29ID:+H49idBm
せめてやり直し装置を使って現実歩夢が侑の救出へ行ければバッドエンド回避になったかも…もう手遅れだけど。
0442名無しで叶える物語(茸)
垢版 |
2022/06/23(木) 01:29:54.83ID:uwM6rTTh
ちょっと脳が回復するss読んでくる
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