しずく「あの人がいない」
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>>1 代行ありがとうございます。
それと桜坂しずくさん誕生日おめでとうございます。 4月3日───。
そう、私の誕生日。
今日も同好会の他の子の誕生日の時の例に漏れず、誕生日パーティーが開かれる。
当時の3年生はみんな卒業しちゃったから、今年は7人でのパーティーになるけど。
なんか、少しだけ寂しい。きっと3人が卒業したことに慣れていないからなのかもしれない。 その3人は卒業してから、
果林さんはモデルの仕事を、彼方さんは栄養学を学ぶために大学に進学。エマさんに関しては紆余曲折あったが、日本とスイスを繋ぐことがしたいとのことで日本に残って文化史を学ぶことにしたらしい。 閑話休題。
日が変わったと同時に、同好会のみんなから、演劇部の皆さんから、去年のクラスメイトから、たくさんのメッセージが、
そして、スクールアイドルをするのに作ったTwitterにもたくさんのお祝いのリプライが来ていた。
Twitterの方は数が凄すぎてお返事出来ないため、一言だけお礼のツイート。
メッセージアプリの方は電車の中で全員に返事を送った。
長年友達が少なかった私なのに、今年になってこれほどの数のメッセージをもらうなんて思いもしなかった。
それもきっとスクールアイドルを始めたからなのだろうか?
いや、きっと同好会のみんなのお陰、なんだろうなあ あれ?でも何か足りない。
たくさんの人にメッセージを返したけど、誰かに返事をしていない。
そう思ってメッセージアプリを再確認してみたけど、やっぱり返事をしてない。
そもそもメッセージが来ていなかった。
彼方さんから────。 〜
「お〜いしず子〜?」
「あれっ?ごめんねかすみさん、どうしたの?」
「それはこっちの台詞だよ!」
「今日のしずくちゃん、何かヘン。」
「璃奈さんまで?」 「しずくちゃん、今日はなんだか心ここにあらずって感じだった。あ、私とかすみちゃんは気付いてたけど他の人は気付いてないと思うから心配しないで」
「さては彼方先輩と何かあったでしょ?」
「!?」
「しず子って彼方先輩のことになるとわかりやすいよね……」
「ふたりには敵わないなぁ…せっかくのパーティーだったから隠そうとは思ってたんだけど、聞いてくれる?」
「もちろん」 〜
ふたりに話を聞いてもらえて、少し心が楽になったように思う。
こういう時、親友がいるって良いなぁって心の底から思えた。
でも、もう夜。
未だに彼方さんからのメッセージは来ていない。
私から彼方さんにメッセージを送っても良いのだけれど、そうすると誕生日を忘れられたことを認めてしまうようでどうしても手が動かなかった。 彼方さん、本当に私の誕生日を忘れちゃったのかな…。
以前に彼方さんにも教えたのになあ…。というか果林さん、エマさんからはお祝いのメッセージは来てたから余計に不安になってくる。
それに、今日はそうなる事を見越して、両親には前から彼方さんの家に泊まるって伝えてあるから、これじゃ帰ろうにも帰れない。
かすみさんはこれから侑先輩と、璃奈さんは浅希さんとお泊まりだって言ってたから、かすみさんの家や璃奈さんの家に泊まることもできない…。 この後本当にどうしようかな。
と思ってたら。
目の前に何故か、
彼方さんがいた───。
. 〜
「あれ?しずくちゃんだ〜、お〜い」
こうしてふにゃっとした笑顔で話し掛けてくる。
いつものように
「こんなところで何をしているんですか?」
そんなつもりはなかったけど言い方が少し棘っぽくなってしまった。
誕生日を祝ってもらえなくて拗ねるなんて、子供っぽすぎて私自身が嫌になる。 それに私ってこんなにめんどくさい子だったっけ…。
「今は買い物の帰りだよ。しずくちゃんは何してたの〜?同好会?それとも演劇部?」
「今日は同好会の方ですね、演劇部は明日なので」
嘘は言っていない。
明日は演劇部でパーティーをしてくれる。当時の部長も来てくれるらしい。
当時はとてもお世話になったし、今も尊敬してるから内心とても嬉しい。 のに私の恋人と来たら……。
はぁ……
「掛け持ち本当に大変そうだよね〜」
「いえ、私がしたくてやっているわけですし、大変ですけど楽しいですよ」
「では、私はこれで失礼しますね」
あぁ…言っちゃった。
私今晩どうするんだろう……。諦めて帰るしかないけど、嫌だなあ……。
こういう時、かすみさんにみたいに素直に言い出せたら良いんだけどなぁ。 jΣミイ˶º ᴗº˶リ 恋人ですか。なるほど。素敵です 「待ってしずくちゃん」
「えっ」
彼方さんに呼び止められた。普段出さないような大きな声で。
ほんの少しだけの期待を胸に振り返ると、 「今日ってしずくちゃんのお誕生日だよね?」
「そうですけど……」
「メッセージ送れなくてごめんね?どうしてもしずくちゃんにはおめでとうって直接言いたかったから」
「この後呼び出すつもりだったんだよぉ…きっとこっちにいるって思ってたから」
困った顔をして謝ったり言い訳したりで。
私がもう鎌倉に帰ってしまっていたらどうするつもりだったんだろうこの人はって思うと、怒るのが正直ばかばかしくなってくる。 「だから改めて、お誕生日おめでとう。しずくちゃん」
「…」
「本当にわたしの誕生日を忘れられてしまったと思ってたんですからね」
そして怒りの代わりに出てきたのは、
ほんの少しの涙、だった。 「ありがとうございます、彼方さん」
「あ、それとこれ、プレゼント。」
「開けても良いですか?」
「もちろん」
(シュルシュル
「!」 「桜のネックレスだよ、見た時にこれだ!ってなったんだよね〜」
「この桜、光の加減によってはピンク以外にも白っぽく見えたり、虹色にも見えるんだよ〜」
「ありがとうございます…!嬉しいです」
彼方さんから貰ったプレゼントを抱き寄せると、ある1つの想いが沸いてきた。
それは女性ならきっと多くの人が憧れるシチュエーション、だと思う。 「一つだけわがままを言ってもいいですか…?」
だから、普段の私ならば絶対に言わないけれど、
今日は誕生日だから、その前に彼方さんは私を泣かせたから
今日くらいは、良いよね?
「しずくちゃんのわがままならいくらでも聞いてあげるんだけど…ひとつだけでいいの?」 「その言い方はいじわるです…」
「でも本当にいくらでもわがままを言ってもいいんですか?」
「もちろん、かわいいしずくちゃんのためならなんだって聞くぜ〜……」
「では…」
「そのネックレス、私にかけてくれませんか?」
「いいよ〜」 本当に嬉しくて、緊張して、手汗でプレゼントがベタベタになってなければ良いけど…。
それに手も震えてなかったよね……?
「しずくちゃん、ちょっとジッとしててね〜」
今、彼方さんが、私の手に届くところにいる。
いや、いつも手に届くところにいるんだけれど。そうじゃないっていうか。 でも今日はなんだか彼方さんが、遠い気がした。
きっと、同好会でのパーティーにいなかったせいだ。
きっと、誕生日おめでとうってメッセージをくれなかったせいだ。
きっと、そもそも私が彼方さんと同い年じゃないせいだ。
そうこう考えてる間にネックレスがかけ終わった。
「うん、思った通り、似合ってるね」 そういってくれたあとすぐに、
彼方さんの肩を掴んで、
彼方さんを引き寄せるようにして、
──────キスをした。
「っ!?」 ここは外だったから唇までは入れなかったけど、
いつもよりは少しだけ長いキス。
──いや…いつもくらいかもしれないし、一瞬だけだったかもしれない。
「不意打ちはずるいよしずくちゃん…」
「どうしても欲しくなってしまったものですから」 嘘は言ってない。
でも、それ以上に、今引き寄せないと、なんとなくだけど離れて行ってしまう気がしたから。
というか自分が離してしまいそうだったから。大好きな彼方さんを。
「しずくちゃんが何を思いつめているのかは、彼方ちゃんには知りようもないけど」
「私は、どんなしずくちゃんだって大好きだからね」 私は今まで何を勘違いして、
今まで何を思い悩んでいたんだろう?
彼方さんはこういう時ほど、ストレートに好意を伝えてくれるって分かっていたのに。
急に恥ずかしくなってきて私は、彼方さんの胸に顔を埋めた。
「あれ〜?しずくちゃんの返事を聞いてないぞ〜?」
「もう…わかりませんか?」
「しずくちゃんの声で聞きたいな」
わかりきってるくせに…
彼方さんに聞こえないようにそう呟いてから、彼方さんの方を向き直して。 「私も、彼方さんのことが大好きですから。」
「すぐ膝枕を要求して来るところ、かまって欲しくてすぐにちょっかいを出してくるところ、年上なのに甘えん坊なこと、なんだかんだで私が苦しんでいる時にさり気なく手を差し伸べてくれるところ、全てが」
「そう言われると照れるなぁ〜///」
「言わせたのは彼方さんの方じゃないですか!」
「そうだけどぉ」
「あの……」
「うん?」
「やっぱりもう1つわがままを言ってもいいですか?」 「さっきも言ったけど、しずくちゃんのわがままならいくらでも聞くよ?」
「では……」
「来年こそは、私の誕生日を最初に祝ってくれますか?」
「もちろんだよ〜」
「それにいずれ家族になるんだから当たり前じゃない?」
ホワイトデーで彼方さんが言ってくれたことを、彼方さんが覚えていた事実に胸が高鳴る。
何かお返事したいのに言葉が出てこない。嬉しすぎて、 きっと私の顔も真っ赤になっていることだろう。
そう言われて顔がとても熱い。
そして少しの沈黙のあと
「ねぇしずくちゃん」
「はい」
「この後うちに来ない?」
「いいんですか?」
「今日は彼方さんのお家にお泊まりするって両親にも伝えてありますし、お邪魔しますね?」
「そんな畏まらなくて良いのにな〜」 「いえ、恋人同士でも親しき仲に礼儀ありだと思っているので」
「そういうところ、しずくちゃんの良いところだよね」
「ありがとうございます?」
「そういえばしずくちゃんは夜ご飯食べた?」
「いえ、まだ特には……」
「そっか、今日はもう遅いし何か食べて帰ろっか」 「遥さんは良いんですか?」
「遥ちゃんなら気を遣ってくれてですね……?今日は二人でゆっくりしてきなよって言われたから大丈夫だよ」
「そうでしたか」
「しずくちゃんは何か食べたいものある?」
「う〜ん……」
「そうですね、彼方さんのオムライスが食べたいです」 「そんなのでいいの? 」
「はい、むしろ彼方さんの作ったものを食べたいので」
「どんな料理よりも彼方さんの手作りの料理の方が美味しいですから」
「それってしずくちゃんのご両親にバレたら怒られない?」
「どうでしょう?でも本当に彼方さんの料理は美味しいと思ってますし、両親もそれは知ってますから大丈夫だと思いますよ?」 「そっか」
「ならスーパーに付き合ってくれない?」
「もちろんですよ、私のわがままでオムライスを作ってもらうわけですし」
「あ、ピーマンは入れないでくださいね?」
「誕生日にそんなことはしないから安心してね?それじゃ行こっか」
と直後、彼方さんが私の手を取った。 かつて、絵本のなかの白馬の王子様に憧れた私。
でも実際に私の前に現れたのは絵本に登場するような白馬の王子様ではなくて、羊に乗ったわがままな眠れる森のお姫様という私の理想とは程遠いものだったけれど
でも、今私の手を取った彼方さんは、まさしくかつての私が憧れた白馬に跨がった王子様そのものだった。
だから私は彼方さんに 「あれ?しずくちゃん?」
「少しの間だけこうさせてください」(ギューッ
「今日のしずくちゃんは甘えたがりだね〜」
と言いながらも抱き返してくれる彼方さん。
こういうところが本当に、私は好きで好きで…… 私にとって、彼方さんと出会ってから初めての誕生日はこうして過ぎていく。
今年の誕生日は危うく本当に彼方さんに祝ってもらえないところだったけれど、来年、再来年、そしてもっと先の私の誕生日は絶対に最初に祝うって約束して貰えた。
だから、残り短い今日くらいは彼方さんに全力で甘えようと心に決めて、彼方さんとスーパーに、そして彼方さんのお家に向かった。 以上です。
読んでくださった方ありがとうございました。 乙
しっとりしてていい雰囲気だった
焦らしに焦らす彼方ちゃんは罪な女だぜ…… 捏造カップリングとか書いて楽しいですか〜?wwwwwwww
とっとと失せろゴミアンチ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています