彼方「あ、また電話――」

果林「ん」

果林ちゃんは私が出るよりもはやく電話を取って、耳に当ててくれる

遥『良かった、出てくれた』

彼方「………」

果林ちゃんが出てくれただけだけど。

それを隠すかどうか迷って

隠さないと決めたからと……ちゃんと話す。

彼方「あ、でも……今のは果林ちゃんが取ってくれただけだよ〜」

彼方「実は、一番手伝ってもらうことになるからちょっとだけ事情話しておこうと思って」

遥『そっか』

遥『……よかったぁ』

すごく、安堵した遥ちゃんの声

それに続いて「東雲の子がどうしてここにいるの?」と、雑音が聞こえた

果林「っ……あ……」

果林ちゃんの口から洩れる呆然とした言葉

車椅子がゆっくり動いて、私には見えなかった景色の中……

見慣れた髪型で、東雲学院の制服を着た女の子が手を振ってるのが見えた

遥『本当のこと言ってくれてよかった』

遥『さっき、電話に出てくれなかったから心配で戻ってきちゃったんだよね……えへへ』

遥『でも次、果林さんにスマホ持たせたら怒るからね』

彼方「ごめん……」

遥『お姉ちゃんは、私だけのお姉ちゃんでいてくれなきゃ……嫌だからね』

彼方「うん、私は遥ちゃんだけのために生きていくよ〜」

遥『絶対だからね』

大丈夫。

だって、そうしなければならないんだから――と、心に言い聞かせた