真姫「温泉旅行と廃村」希「行きはよいよい帰りは怖い」
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「故障?」
「嘘でしょ?こんなところで...動きなさいよ!」
それはうちと真姫ちゃんが温泉旅行に行った帰り道でのこと
「なによここ....」
「真姫ちゃん、見て!これ」
「これは....」
この話はうちと真姫ちゃんが不思議な体験をした話の記録である 希「ん.....」
真姫「あら、起きた?」
希「うん...おはよー」
真姫「爆睡だったわよ、ちゃんと寝なかったの?」
希「いやー...楽しみでつい....」
真姫「全く、いくつになっても子供みたいなんだから」
希「だってー久々やん、こうやってお出かけするのー」
真姫「....そうね」 希「それにしても真姫ちゃんが車を運転できるようになるなんて...月日が経つのは早いね」
真姫「はいはい...人に運転させておいて寝てる人がよく言うわよ」
希「ぐっ...」
真姫「........」
希「じゃあ!うちが運転変わるよ」
真姫「お断りします」
希「なんで!」
真姫「だって、希の運転って荒いんだもの」
希「えー...そんなことはないと思うけど」
真姫「あるわよ、希が運転してたら希みたいにすやすや落ち着いて寝てなんていられないわよ」 希「むー....ん?」
真姫「なによ、希」
希「真姫ちゃん、運転に自信があるんやね」
真姫「?どういう意味よ」
希「だってうちが運転してたら寝れないんでしょ?」
真姫「それがなんなのよ」
希「うちがすやすや寝ていられるのはうちが真姫ちゃんの運転を信頼してるからだって思ったからでしょ?」
真姫「...なんでそうなるのよ」
希「うちは真姫ちゃんの隣ならいつでも安心していられるよ?」
真姫「はいはい」
希「もー...つれないなぁ」 真姫「ふぅ...やっと着いたわね」
希「おー....立派な旅館やね」
真姫「静かそうなところでいいわね、ゆっくりできそう」
希「大自然の中の温泉...これは楽しみやね!」
真姫「さてと....荷物、荷物」
希「真姫ちゃん早く!早ーく!」
真姫「早っ....もうあんなところに」
希「〜♪」
真姫「もう子供みたいにはしゃいじゃって...今、行くわ!!」 希「広いお部屋!!」
真姫「........」
希「綺麗な景色!」
希「テーブルの上には美味しそうなお茶菓子!」
真姫「テンション高いわね」
希「だって!なんかこう...わくわくするやん?」
真姫「まぁ、希が楽しそうでなによりだけど」
希「...真姫ちゃんは楽しくないの?」
真姫「え?」
希「もしかして楽しくない?」
真姫「楽しいわよ、そうじゃなかったらここまで来ないって」
希「!そうだよね!....よかった.....」 真姫「.......」
希「ねー...なんでそんなにうちから離れるのー」
真姫「べ、別にいいでしょ!!」
希「んー....!もしかして照れてるん?」
真姫「!」
希「.......」チャプチャプ
真姫「ちょっと!なにしてんのよ!」
希「へへへへへ....」
真姫「!!」 希「せっかく露天風呂が貸し切り状態なんやから...ねぇ?」
真姫「だ、だったらなんなのよ!!」
希「えい!」パシャ
真姫「ちょ!希!」
希「.........」ギュッ
真姫「お、お風呂で抱き着かないでよ!!」
希「.........」
真姫「!......希?」
希「お疲れ...真姫ちゃん...」 真姫「な、なによ...どうしたのよ、希」
希「最近、ずっと忙しそうだったから....その、勉強とか大変だったんでしょ?」
真姫「え?まぁ...そこそこはあったけど...」
希「だからうちのパワーで癒してあげる」
真姫「なによそれ」
希「いいから....ね?」
真姫「....わかったわよ」
希「うー....のぼせたぁ...」
真姫「もう...なにしてんのよ」 希「ふぅ.....」
真姫「少しはよくなった?」
希「うん....ごめんね、余計に疲れちゃったよね?」
真姫「.......とう」
希「え?」
真姫「ありがとう....その、嬉しかったわ」
希「真姫ちゃん.....」
真姫「でも...私のことを気にしてくれるのはいいけど、自分のことも気を付けなさいよね」
希「うん....」 真姫「.....仕方ないわね、ほら」スッ
希「え?」
真姫「まだフラフラするんでしょ?」
希「う、うん?」
真姫「.........」
希「?」
真姫「っ....膝枕してあげるって言ってるの!」
希「!」
真姫「ほら!さっさとしなさいよ!!」
希「は、はい!」 希「〜♪」
真姫「随分とご機嫌みたいね」
希「だって、夕食がすごく美味しかったし、真姫ちゃんが膝枕をしてくれたり至れり尽くせりなんだもん」
真姫「...そう、よかったわね」
希「真姫ちゃん!」
真姫「なに?希」
希「温泉に来てよかったね!」ニコニコ
真姫「そうね」
希「えへへ」 間違ってたらごめんだけどのぞまきオカルト書いてた人? 真姫「さてと...そろそろ寝ようかしら」
希「........」ゴソゴソ
真姫「何してるのよ」
希「いやー...ほら絵の裏とかにお札的なモノがないかなーってね」
真姫「ないわよ、っていうかあったら嫌なんだけど」
希「冗談だよ♪」
真姫「全く...そろそろ」
希「えい!」ヒュン!
真姫「ヴェ!」ボフッ
希「隙だらけだよ、真姫ちゃん」
真姫「貴方ねぇ....」
希「夜はまだまだこれからやん!」 真姫「はぁ...はぁ....」
希「真姫ちゃん...はぁ...思ったよりやるやん...」
真姫「いい歳して...枕投げなんて...」
希「そう言ってる割には真剣やったやん」
真姫「やられっぱなしは性には合わないから」
希「ふふ...真姫ちゃんらしいね」
真姫「もう...せっかくお風呂に入ったのに汗かいちゃったじゃない」
希「もう一回入る?二人っきりで♡」
真姫「....タオル、タオル....」スタスタ
希「あ、ちょっと!無視しないでよ!!」 真姫「...........」チラッ
希「zzzzzzzzzzz」
真姫(こうやって二人で長い時間を過ごすのも久しぶりだったかもね)
希「真姫ちゃん....zzz」
真姫(ごめんね...希)
真姫「いい思い出にしましょうね...今日は綺麗な三日月ね」
希「zzzzzzzzz」
真姫「星も綺麗ね...おやすみなさい、希」 ブロロロ...
希「楽しかったね!真姫ちゃん!」
真姫「そうね」
希「また旅行に行けたら行こうね!」
真姫「えぇ」
希「...聞いてる?真姫ちゃん」
真姫「聞いてるわよ」
希「本当に?」
真姫「本当よ、今回は温泉だったから次は...」
希「海!」
真姫「海?」 真姫「なんで海?泳ぎたいの?」
希「高校の時以来行ってないやん?海に」
真姫「...確かに言われてみれば」
希「行こうよ!」
真姫「でも、海にはいい思い出がないような...」
希「だったら今回の温泉だってそうやん」
真姫「温泉でなんかあったっけ?」
希「山でもいろいろあったやん、うちら」
真姫「....そういえばそうだったわね」
希「いろいろあったもんね...うちら」
真姫「そうね」 真姫「........」
希「ねぇ、真姫ちゃん」
真姫「なに?」
希「さっきからずっと走ってるけど全然景色が変わらないような」
真姫「山の中なんだから景色が似ててもおかしくないって言いたいところだけど...そうね、なんか変ね」
希「この道って行きで通った道と同じ道だよね?」
真姫「そのはずよ」
希「うーん....」
ガタンッ!
真姫「!!」
希「うわぁ!!」 希「ちょっと!真姫ちゃんいきなり車を止めたら危ないやん!」
真姫「ごめん!怪我はしてない!?」
希「とりあえずは平気だけど...なんで車を止めたん」
真姫「私は止めてないわよ、車が急に...」
希「え」
真姫「..........」カチャカチャ
キュルル.....
希「もしかして...」
真姫「エンジンがかからないわ」
希「えー!!!」 真姫「おかしいわね...なんで急に」
希「ガス欠とか?」
真姫「ガソリンは半分くらいは残ってるわ」
希「じゃあ、故障?」
真姫「うーん....新車のはずなんだけど」
希「どうするん?真姫ちゃん」
真姫「とりあえず、ロードサービスを呼んだほうがよさそうね」
希「そうやね」
真姫「.....嘘...」
希「どうしたん?真姫ちゃん?」
真姫「圏外だわ...ここ」 >>26
おっしゃ新作やんけやったぜオイえぇコレおい 希「うちも圏外や....」
真姫「...ごめん、希」
希「え?」
真姫「車のメンテナンスをちゃんとしておくべきだったわ、私のせいで...」
希「真姫ちゃんは悪くないよ!」
真姫「でも...」
希「今はこの状況をどうにかしないとね?」
真姫「....ありがとう、希」
希「ふふ♪」 真姫「それにしてもこの状況どうしたら....」
希「うーん....車を置いて電波が届くとこまで歩くとか?」
真姫「そうはしたいけど...この時間で歩き始めても危険じゃないかしら?」
希「4時か...たしかにしばらくしたら日も暮れ始めそうやね...」
真姫「真っ暗の中、山道を歩くのは危険よ...今日は車で車中泊かしら」
希「うーん.....!ねぇ、真姫ちゃんあれ!」
真姫「どうしたの?希?」
希「あれを見て」
真姫「ん?...!あれって看板?」
希「名前は掠れてて読めないけど村まであと4キロって書いてあるよ」
真姫「行ってみる?もしかしたら連絡ができるかもしれないし」
希「そうやね、行こうか真姫ちゃん」 真姫「それにしても見渡す限り自然ね」
希「空気が美味しいね」
真姫「...こんな山の中に本当に村なんてあるのかしら?」
希「万が一無かったら車に戻ればええやん?」
真姫「それはそうだけど....そうだ!私だけ行ってあるか見てくれば」
希「だーめ」
真姫「でも....元はと言えば私が...」
希「こんなところ一人で出歩いたりしたら危ないやん、うち心配しちゃうよ」
真姫「........」
希「真姫ちゃんが悪い訳じゃないんだから、ね?そんな顔しないで」
真姫「...わかった....」
希「わかればよろしい、ほら荷物!持って」
真姫「...........」スッ
希「よし!レッツゴー」 真姫「結構歩いたし...そろそろかしら?」
希「...あ!真姫ちゃん、あれ!」
真姫「あれは建物!助かったわ....」
希「よかった....これで一安心かな?」
真姫「行ってみましょう」
希「道路から結構外れた場所にあるみたいやね」
真姫「そうみたいね、でも建物が見えてるから迷うことはなさそうね」
希「.......!」ザッ
真姫「着いたみたいね...ここは村の入り口ってことろかしら?」
希「小さな村みたいやね」
真姫「電話とかがあるか聞いてみましょう、村の人に」 コン!コン!
真姫「ごめんくださーい!」
希「随分と趣がある家が多いね...まるでタイムスリップしたみたい」
真姫「日本家屋ってやつね...このお家は留守なのかしら?」
希「そうかもしれないね、じゃあ、向こうの家に行ってみよう」
真姫「そうね」
コン!コン!
真姫「すみませーん!!」
希「ここも留守?」
真姫「皆出かけるとか?」
希「でもそろそろ日が沈むし、暗くなるよ」
真姫「まさか...ここって廃村じゃないわよね?」 希「まさか、それはないんじゃないの?」
真姫「なんでそう思うのよ、だって人気が全然ないじゃないこの村」
希「だってほら、あれ見て」スッ
真姫「?」
希「軒先に吊るしてるのって多分、干し柿だよね?」
真姫「あのぶらさがってるやつ?」
希「そうそう、見た感じ結構新しめだし...ってことは誰かが吊るしたってことでしょ?」
真姫「成程....」
希「もしかしたらこの村の人たち、なんかの集まりでどこか違うところに集まってるんじゃないの?」
真姫「そうだといいんだけど...」
希「他の家も回ってみようよ、誰かいるかもしれないし」
真姫「....そうね」 希「うーん....それにしても誰もいないね」
真姫「なんか不気味ね」
希「そうやね....」
真姫「.......!希!」
希「どうしたん?真姫ちゃん?」
真姫「あれって多分、公衆電話よね?」
希「本当だ!電話ボックスやね」
真姫「助かったわ、あれで連絡をしましょう」 希「電話ボックスってなんか久々に見たかも」
真姫「たしかにそうね、公衆電話は駅とかで見たりはするけど...ボックス自体は見ないわね」
希「今は携帯電話あるもんね」
真姫「でも今はあって助かったわ...えっと小銭、小銭...あと電話番号...」
チャリン!ガチャ!
真姫「ロードサービスの電話番号....」カチャカチャ
希「........」
真姫「あれ?話し中?」
希「繋がらないの?」
真姫「えぇ...もう一回かけなおしてみるわ」カチャカチャ 真姫「ん?なんで繋がらないのよ」
希「営業時間外とか?」
真姫「ロードサービスは24時間やってるわ、回線が混んでるのかしら?」
希「繋がらないってことはそうなんやないの?」
真姫「........」
希「だめそう?」
真姫「だめね...なんでなのかしら?」
希「ちょっと時間を空けてみたら?」
真姫「そうね...」ガチャン 真姫「........」
希「ちょっと変やね、30分近くたっても繋がらないなんて」
真姫「このままだと完全に日も沈んじゃうし...まずいわね」
希「ねぇ、警察に電話してみない?」
真姫「警察?」
希「うん、このままだとちょっと危ないし...車も道に置いてきたままだし」
真姫「そうね...ちょっとこんなことで電話するのも気が引けるけど」
希「うちらも緊急事態ってことで、ええんやないの?」
真姫「わかったわ」 真姫「!もしもし?」
希「繋がったみたいやね、よかった」
真姫「はい...山の中で車が故障してしまって」
希「........」
真姫「ロードサービスにも繋がらなくて...はい、場所は国道の...」
希(とりあえず連絡はできたし、車に戻る準備しとこうかな?)
真姫「はい、はい...今は近くの村にある公衆電話から電話を」
希(暗くなってきたなぁ...そうだ、たしかペンライトが鞄に入ってたはず)ゴソゴソ
真姫「わかりました、ありがとうございます」 真姫「ふぅ....」ガチャン
希「終わった?」
真姫「一応ね、最寄りの警察の人が来てくれるって」
希「よかった、これで一安心やね」
真姫「そうね...ごめん、迷惑かけちゃって」
希「もう...気にしなくていいって言ってるやん」
真姫「ありがとう、希」
希「暗くなってきたし...戻ろう?真姫ちゃん」
真姫「そうね」 希「あれ?こっちやったよね、たしか」
真姫「えぇ...たしかそうだったはずだけど」
希「んー?」
真姫「たしか、ここまで来るのにほぼ一本道だったはずよね?」
希「だったと思うけど...」
真姫「どういうことかしら?」
希「うちら迷ったってことかな?」
真姫「かもしれないわね....」
希「ひえー」
真姫「これは困ったわね」 希「ねぇ...真姫ちゃん」
真姫「なに?希?」
希「うちらもしかして...またあっちの世界の領域に足を踏み入れてる?」
真姫「....まさか」
希「真姫ちゃん、なんか嫌な感じとかしない?」
真姫「特にはないけど」
希「本当に?うちが心配しないように黙ってるとかじゃないよね?」
真姫「そんなことしてないわよ」
希「本当に?」
真姫「本当よ」
希「そっか.....残念」
真姫「なんで残念なのよ」 希「ほら、うちら高校の頃に色々あったやん?」
真姫「あったわね、色々と」
希「だからその頃みたいなことが起きてるのかなーって思って」
真姫「いや、そんなことが起きてたら嫌なんだけど」
希「うちは真姫ちゃんと一緒なら平気だよ」
真姫「また呑気なことを....私は勘弁してほしいんだけど」
希「だってあの頃みたいでなんか懐かしいやん?」
真姫「もう私、霊感とかないから」
希「大丈夫!その分うちが頑張るから!」
真姫「え、希...見えるの?」
希「ううん、全然見えない」ドヤッ 真姫「でも...希の言う通りこの村ってやばいところなのかもね」
希「日も沈みかけてるのに...建物の明かりとか人気が全くないもんね」
真姫「........!」ザッ
希「さっきの電話ボックス?」
真姫「いつの間にか一周したってこと?」
希「これは本当に狸とかに化かされてる気分やね」
真姫「狸って」
希「だってなんかそんな感じやん?」
真姫「........!!」
希「!真姫ちゃん?」
ガチャン!!
真姫「これは.......」 希「どうしたん?真姫ちゃん!いきなり電話ボックスに入ってなんかあったん?」
真姫「希...これは中々やばいかも....」
希「え?」
真姫「見て、これ」スッ
希「....!え!!」
真姫「受話器のコードが切れてるわ...そもそもこれじゃあ電話はできないはずよ」
希「もしかしたら、さっきの電話ボックスとは違う電話ボックスなんじゃないの?」
真姫「こんな山奥の村に二つも電話ボックスがあるの?」
希「そっか...ってことは」
真姫「どうやら私達、本当に迷い込んではいけない場所に迷い込んでしまったみたいね」 乙です これはホラーなのかそれともなのか続きが気になる 真姫「........」
希「とりあえずここから離れよっか...なんか危なそうだし」
真姫「そうね」
希「さっき警察の人に繋がったんだよね?」
真姫「えぇ」
希「一体、どこの警察に繋がったんだろう...」
真姫「わからないわ...とにかく、こんな真っ暗じゃ危険だし...どっかに屋内的な場所に避難しましょう」
希「どっかの家に入ってみる?こうなった原因とかがわかるかもよ」
真姫「危険な感じもするけど、大人しくしててもどうなるかわからないし、そうしましょうか」
希「OK、じゃあ行こう!」 真姫「.........」ザッザッ
希「真姫ちゃん」
真姫「どうかした?」
希「えい!」ギュッ
真姫「希?」
希「真姫ちゃんにはうちが!うちには真姫ちゃんが!ついてるから!うちらならきっと大丈夫!」
真姫「希.....」
希「伊達にうちと真姫ちゃんは一緒にピンチを乗り越えてきてないからね!」
真姫「...そうね」 希「うーん、相変わらず人の気配がないね」
真姫「.......」スッ
ガララ....
真姫「!...開いてる...」
希「...入ってみる?」
真姫「ここまで来たら行くしかないんじゃないの?」
希「OK...わかった」
真姫「行くわよ....」
希「おじゃましまーす....」 真姫「なんか独特な匂いがするわね」
希「へっくし!っ...なんか埃っぽいね」
真姫「...暗いわね、あんまり携帯の電池は使いたくないけど...」スッ
希「あ!真姫ちゃん、これ」
真姫「ありがとう、用意がいいわね」
希「まぁねー暗くなると思ったし、ペンライトを二本持ってきておいたんよ」
真姫「ありがとう」カチッ
希「本当に誰もいないみたいやね」
真姫「みたいね」 希「これは囲炉裏かな?随分と古風な家だね」
真姫「.....ん?なにか落ちてるわね」
希「なんかあったん?」
真姫「新聞ね...日付は...昭和?」
希「え」
真姫「何十年前のものよ」
希「かなりレトロやね」
真姫「...かなり劣化してるわね」
希「うちにも見せて」
真姫「はい」スッ
希「本当や...紙がかなり傷んでるね」 真姫「まるでここだけ、なんか時間が止まってるみたいね」
希「まさか...タイムスリップとか?」
真姫「それはないでしょ...でも...」
希「でも?」
真姫「ここがもしかして呪われた廃村とかだったりして?なんてね?」
希「呪われた廃村.....!!!」
真姫「どうかした?希?」
希「真姫ちゃんって都市伝説って結構知ってる?」
真姫「都市伝説?まぁ、貴方の影響で多少は知ってるけど」
希「じゃあ、この話は知ってる?地図から消えた村っていう都市伝説」 真姫「地図から消えた村?」
希「うん...地図にももちろん車のカーナビとかにも載ってない村があるって話なんだけど」
真姫「まさか、それがここだっていうの?」
希「そうかはわからないけど、そんな話を思い出したんよ」
真姫「それってどんな話なの?」
希「うーん...聞いてもあんまりいい気分にはならないと思うけど....」
真姫「仮にここでその話を聞かなくてもなんかもやもやするだろうし、構わないわ」
希「わかった...えっとね...」
真姫「.........」
希「昔の話なんだけど、とある村で事件が起きて....村人全員が....」 希「そしてその村人も最後は自分自身の手で....」
真姫「そして村には誰もいなくなり、犠牲者の怨霊が巣食うようになったと」
希「うん、そういう話らしいんよ、まぁ、色んな諸説があるけどね」
真姫「成程、ようはいわくつきの村の話があって、それが都市伝説になったって話なのね」
希「うん」
真姫「そして入ったら二度と出てこれないって話なのね」
希「そうそう」
真姫「でも、その話が本当ならなんでそんな怖ろしいことが起きたってことが都市伝説として普通に世間で語り継がれてるのよ」
真姫「そもそも出てこれないならこんな話もできないはずよね?」
希「うーん...うちが知ってる限りだとたまたま抜け出せた人がいて、その人が語っていたって話は聞いたことがあるけど、そういうことなんじゃないの?」
真姫「なんか胡散臭いわね」
希「でも現にうちらも村から出れなくなってるやん」
真姫「まぁ、それはそうだけど...」 希「まぁ、出られたって人もいるってことだし、うちらにも希望があるって思っておこうよ」
真姫「ポジティブね」
希「物事はプラスに考えないと、それにうちは一人じゃないし」
真姫「!.....」
希「いざって時はよろしくね?真姫ちゃん」
真姫「希....」
希「今は二人共条件は一緒、うちも真姫ちゃんも同じ目線で行けるから任せて!」
真姫「...私が希と同じ目線になっただけじゃない...」
希「ふふふ...」
真姫「ありがとう、希」 ガサ....
真姫「!」
希「真姫ちゃん?」
真姫「希、静かに...」
希「へ?」
真姫「しー.....」
希「?......」
ガサ...ガサ...
真姫『...なにかが近づいてきてる?』
希『動物かな?』
真姫『ちょっと静かにして様子を見ましょう』 ギッ...
真姫『.........』
希『窓からはなにも見えないね』
真姫『ごめん、ちょっと黙ってて希』
希『!あ...うん....』
真姫『........』
ガサ...ガサガサ....
真姫『........』
『.........』
真姫(!....あれは人影?...なのかしら?)
希『........』
真姫(暗くてよく見えないわね....) 『.........』
真姫(....農家の人かしら?服装からして)
希『.........』
真姫『.......!』ゾクッ
『..........』
真姫(なに、この寒気は....まさか....)
希『真姫ちゃん....』ボソッ
真姫『!...なによ、希』
希『あの人の顔色と表情、なんかおかしくない?』
真姫『!』 『........』
真姫(たしかに顔色が真っ白だし...表情がなんか...)
希『無表情やね....』
真姫『そうね....』
真姫(なんか得体が知れない感じがするわね...この感覚、懐かしく感じるけど....まさか...)
希『幽霊?』
真姫『可能性は高いわね....学生時代を思い出す感覚だわ...』
希『そっか...』
真姫(...中々、やばそうな感じになってきたわね...) 希「さっきの人はどっかに行ったみたいやね」
真姫「ふぅ.....」ガクッ
希「!真姫ちゃん、大丈夫!?」
真姫「平気よ、希は大丈夫?」
希「うちは平気、真姫ちゃんめっちゃ汗かいてるやん...本当に平気なの?」
真姫「えぇ...感覚が久々だったから緊張したってところかしら?」
希「もしかして霊感が戻ったの?」
真姫「どうかしら?希にも見えてたみたいだし...」
希「じゃあ、うちにも霊感が?」
真姫「さぁね?この村の空間がそもそも異質なところだから見えてるって可能性が高いのかもね」 希「..........」キョロキョロ
真姫「周りにはもういないみたいね」
希「これからどうする?真姫ちゃん」
真姫「どうするってここから出るしかないでしょ」
希「どうやって?」
真姫「あくまで仮説だけどここの空間に私達が入れたってことは必ずどこかに外に出られる場所があると思うの」
希「成程」
真姫「もしくはこの村を作っている空間の力の源があるとしたら」
希「その源をどうにかすれば」
真姫「出られる可能性は高いわね」 真姫「それにしても暗いわね、さすが山の中っていったところかしら?」
希「でも、ほら!月があるから、真っ暗じゃないよ!今日は満月みたいだし」
真姫「そうね...ライトを使いたいけどさっきのに見つかったりしたら面倒だし、ライトは控えましょう」
希「そうやね」
真姫「手がかりがあるかはわからないけど...どうする?朝までじっとしてる?それとも」
希「じっとしても状況は変わらないと思うし、この村を調べてみよう」
真姫「そう言うと思ったわ、希なら」
希「それにうちがピンチになっても真姫ちゃんがいるし、真姫ちゃんがピンチになってもうちがいるから大丈夫!」
真姫「なによ、それ」
希「うちらの絆は固いってこと、OK?わかった?」
真姫「はいはい」 希「携帯は相変わらず圏外やね」
真姫「外との連絡も...ネットにも繋がらない以上、ここに関する情報もわからないわね」
希「うちもさっき真姫ちゃんに話したくらいのことしか知らないし」
真姫「呪われた廃村.....か」
希「うちが聞いた話通りなら...さっき見かけた人は」
真姫「この廃村に巣食う悪霊ってことよね」
希「そういうことになるね」
真姫「希、悪霊退治できるものとかなんかないの?」
希「えー...そんな都合よく持ってるかなぁ?」 希「ごめん、お札とかも持ってないや...強いて言えばこのお守りくらいしか」
真姫「まぁ、そうよね....私もこのパワーストーン付きのネックレスくらいかしら?」スッ
希「そうだ、うちのネックレスもそうだった!このネックレスとも付き合いが長いよね」
真姫「なんやかんやで何度もこれには助けれてきたものね」
希「感謝せんとね」
真姫「......」チャラン
希「真姫ちゃんのマカライトとうちのアメジスト...真姫ちゃん、ちゃんと定期的にマカライトは浄化してる?」
真姫「してるわよ、希にしては珍しく口酸っぱく言ってくるから」
希「それだけ大事なことなんよ」
真姫「まぁ、そのおかげで今はこのネックレスが心強いわ」
希「うん、そうやね」 希「..........!」
真姫「どうしたの?希?」
希「真姫ちゃん隠れて!」
真姫「へ?」
希「いいから」グイッ!
真姫「!」
ガサッ
希「..........」
真姫「いきなりどうしたのよ、希」
希「あれを見て、真姫ちゃん」
真姫「?」 真姫「....あれは...光?」
希「あの光、こっちの方に向かってきてない?」
真姫「たしかにそうね...まさか人?」
希「わかんない、あとはもしかしたら人魂だったりして」
真姫「...人魂....」
希「ちょっと隠れて様子を見よう....」
真姫「そうね....」
「..........」
真姫「.......あれは....」
希「お巡りさん?」 希「もしかして...さっき電話をしてた人かな?」
真姫「かもね....」
ザッ...ザッ...
「........」
真姫 希「..........」
....ザッ....ザッ
真姫(....なんて生気のない顔なの)
希(っ...久々に一日に何回もゾクゾクって来る日やね...) 真姫「行ったみたいね」
希「なんかフラフラしてたよね?ライトの照らし方がふらついてたよね?」
真姫「まるでなにかを探している感じだったわね」
希「もしかして...うちらのことを探してたりして?」
真姫「あの感じだと...その可能性は高いわね」
希「うへぇ....」
真姫「ねぇ、希」
希「んー?」
真姫「さっきのやつが来たそうに行ってみない?もしかしたら出入口があるかもしれないわ」
希「おー!そうやね、行ってみよっか?」 真姫「これは....鳥居?」
希「みたいやね...随分と古そうな感じやね...」
真姫「........」
ガンッ!
真姫「ヴェ!!」
希「真姫ちゃん!?」
真姫「??な、なに?何かにぶつかった?」
希「え?何にぶつかったん?なにもないけど」
真姫「??.....」
希「んー?.....!これは....」
真姫「なにかあった?希?」
希「これはまたスピリチュアルやね...」 希「見て、真姫ちゃん」スッ
コンコン
真姫「え?」
希「見えない壁って言えばいいのかな?なんかそんなかんじのがここにあるみたい」
真姫「見えない壁?....」スッ
コンコン
真姫「本当だ...この先には進めないってことね」
希「でも進めないってことは、ここがもしかしたら出入り口なのかもしれない」
真姫「でもこの感じだと簡単には出れそうにないわね」
希「うん...でもここは重要な場所になるかもしれないね」
真姫「そうね」 真姫「随分と古そうな鳥居ね」
希「うちの聞いた話だとこの鳥居がその呪われた廃村の入り口ってされてるんよ」
真姫「でも私達こんな鳥居を通った覚えはないわよ」
希「うーん、通ったけど気づいてなかったとか」
真姫「もしくは気づいてなかったんじゃなくて見えなかったとか?」
希「うーん....ん?なんか倒れてる?看板かな?」
真姫「そうみたいね、なんの看板かしら?」
希「えっと...この先立ち入る者、命の保証はない....」
真姫「とんだ役に立たない警告ね、遅いっての」
希「あははは....」 真姫「とにかくここを抜けることができれば外に脱出ができそうね」
希「あとはどうやってこの壁みたいなのを抜けられるかやね」
真姫「希、なんかないの?」
希「え?なんかってなに?」
真姫「いや呪文的なものとか」
希「ないない、うちにはそんな力はないよ」
真姫「そうよねー....色々やろうにも道具もないし」
希「視界も暗くて動きづらいし」
真姫「...これは、厳しい戦いになりそうね」
希「そうやね、二人で頑張るかしかないね」 真姫「.........」ジッ
希「どうしたの?真姫ちゃん」
真姫「いえ...今日ってそもそも満月だったかしら?」
希「へ?」
真姫「昨日はたしか....三日月だったような」
希「そうだったっけ?」
真姫「えぇ....だって昨日、三日月を見て希のことを....」
希「うちのこと?」
真姫「!な、なんでもないわ」
希「えー気になるやん!」
真姫「な ん で も な い !」 希「ようは真姫ちゃんは月がこの状況に関係があるかもしれないって思うわけ?」
真姫「そこまでの確証はないけど.....三日月の翌日の月が満月ってどう考えてもおかしいでしょ」
希「たしかに....」
真姫「それに月には魔力があるって言われているし...」
希「西洋で言う狼男なんかもその類いやね」
真姫「まぁ、ここは日本だけどね」
希「あれ?なんか似たようなやりとりなんかしたことない?昔にも」
真姫「さぁ?」
希「まぁ、いっか...じゃあ、もしかしたら夜が明ければ戻るかも?」
真姫「その可能性もあるかもね」 希「夜明けまでかぁ...今、携帯では20時だから先は長いなぁ...」
真姫「それが正確はわからないけどね....とにかく今は安全に身を隠せそうな場所を探しましょう」
希「そんな場所があればいいんだけどね...」
真姫「行きましょう、希」
希「はーい」
真姫「とは言ったものの...あの村の建物には入りづらいわね...」
希「うん、中に幽霊とか普通にいそう...真姫ちゃん家の中を透視してよ」
真姫「んなことできないわよ、エスパーかっての!」
希「今の真姫ちゃんなら昔みたいにできそう」
真姫「今はあの時と....って、そもそも昔も透視はできなかったわよ!」 希「お腹がぺこい....」
真姫「今日は野宿かしらね....」
希「キャンプ?」
真姫「ある意味ね、サバイバルキャンプね」
希「寝袋が欲しいなぁ」
真姫「ないわよ」
希「えー...枕投げは」
真姫「そもそも枕がないっての」
希「つまんないなぁ....」
真姫「貴方ねぇ....」
希「冗談だよ、冗談」 真姫「全く、希は....」
希「はい」スッ
真姫「え?」
希「真姫ちゃんにこれあげる」
真姫「これは...チョコレート?」
希「うん、疲れたときは甘いものだよ」
真姫「希...」
希「これからの為にも英気を少しでも養っておかないとね」
真姫「....ありがとう、希」
希「どういたしまして♪」 真姫「........」モグモグ
希「真姫ちゃん、間違ってもこの村とか森にある物を勝手に食べたり飲んだりしないでね!」
真姫「そんな意地汚いことはしないわよ」
希「ここは異世界みたいものだから、その世界の物なんて食べたりでもしたら」
真姫「食べたりでもしたら?」
希「その世界の一部を自分の体の中に取り込む訳だから...この世界の住人になっちゃうかもしれない」
真姫「ふーん」
希「だから、食べたりしちゃだめだからね!絶対だよ、絶対に食べちゃだめだよ!」
真姫「はいはい、しないっての」
希「フリやないからね」
真姫「わかってるっての」 希「ねぇ、真姫ちゃん」
真姫「なに?希?」
希「こんな状況で言うのもあれなんやけど...」
真姫「?」
希「うち今、めっちゃドキドキしてる」
真姫「私もひやひやしてるわよ」
希「それもそうなんだけど...そうじゃなくって...」
真姫「?じゃあ、なんなのよ」
希「二人でこんなことをしてると学生時代を思い出して....なんか怖いけど、わくわくもしちゃうんよ」
真姫「は?」
希「なんかあの頃が戻ってきたみたいで、懐かしいなって」
真姫「.........」
希「不謹慎だよね!ごめん!変なことを言っちゃって....」 真姫「不謹慎ね、本当に」
希「ご、ごめん....真姫ちゃん」
真姫「罰としてここを出たら私の言うことを一つ何でも聞くこと、いいわね?」
希「え?」
真姫「返事は?」
希「あ、うん....」
真姫「なら、いいわ...許すわ」
希「え、えっと....」
真姫「ここを出る意味がもう一つできたわね、楽しみね」
希「へ、変なお願いとかじゃないよね?」
真姫「さぁね?」
希(えー....めっちゃ気になるやん) 真姫「!そういえば...あれがあったわね...」
希(真姫ちゃん、一体どんなことを言ってくるだろう...)
真姫「...........」ゴソゴソ
希「ん?真姫ちゃん、なにしてるん?」
真姫「ちょっとね...いざって時に役に立つかもしれないし、あったわ」スッ
希「カメラ...そういえばこのカメラにも色々とお世話になったよね」
真姫「本来は趣味で持ってたんだけどね...まさか違う形でもこんなに使う場面が増えるなんてね」
希「うちもカメラ買おうかな?バズーカみたいなやつ使ってみたい」
真姫「あれってかなり重いわよ、そもそも何に使うのよ」
希「真姫ちゃんに?」
真姫「は?」
希「うちの真姫ちゃんコレクションを増やしたいんよ」
真姫「せめてアルバムとか少しは濁して言いなさいよ」 真姫「22時....」
希「これからどうする?」
真姫「夜明けまではできる限り隠密しておきたいわね」
ガサッ
真姫 希「!」
「........」
真姫(いつの間に....)
希(背後に....気配が...)
「............」 真姫「希....」
希「うん....」
真姫「全力で行くわよ」
希「わかった」
真姫 希「せーの!」
ダッ!!
「!」
真姫「逃げるわよ!!」
希「振り返ったらあかんよ!真姫ちゃん!」
真姫「わかってるわ!」 真姫「はぁ...はぁ...」
希「はぁ..はぁ...かくれんぼの次は鬼ごっこ....」
真姫「ず、随分と余裕そうね...」
希「う、うちはエンタテイナー....だから....」
真姫「っ...なによ、それ....意味わかんない」
希「あ、足がつりそう....」
真姫「お互いに運動不足みたいね....」
希「うちはどっちかっていうと頭脳派だから....」
真姫「え?」
希「え?」 真姫「.........」キョロキョロ
希「..........」カキカキ
真姫「...うまく撒けたみたいね、希、そっちはどう?」
希「任せておいてーえっと、たしかこんな感じだったかな?」
真姫「これって効果があるのかしら?あればいいんだけど....」
希「まぁまぁ、やらないよりはやったほうがね」
真姫「そうね」
希「よし!完成や」
真姫「えっと...これって見たことがあるけどなんていうやつだっけ?」
希「五芒星やね」
真姫「ようは星のマークね」
希「そうそう、真姫ちゃんが好きなお星様のマークだよー」 希「西洋ではね魔術のシンボルとしてよく使われているんだよー」
真姫「そういえば...。希の好きなタロットカードでも見たことがあるわね」
希「そうそう、守護の力があるってされてるんよね」
真姫「守護の力なら今の状況にはもってこいかもね」
希「あとはあの有名な陰陽師のやつでも有名なんよ」
真姫「へー」
希「この五芒星には色々な意味があって五元素を表しているんよ」
真姫「五元素?」
希「まぁ、簡単に言えばこの五芒星って形は....」カキカキ
真姫「.......」
希「木、火、土、金、水の5元素があって....お互いにこんなかんじに」
真姫「成程ね、この星の形がその五元素がお互いに繋がっているのね」
希「そういうことやね」 真姫「さすが希ね、こういうことは詳しいわね」
希「真姫ちゃんだって昔は結構詳しかったやん」
真姫「今は使うこともないから忘れちゃったわよ」
希「もう....」
真姫「それに私が忘れたって希がいるし、いいじゃない」
希「頼ってくれるのは嬉しいけど...なんかもったいないなぁ」
真姫「じゃあ、今度希が教えてよ、それならいいでしょ?」
希「お、言ったね?言ったからには色々付き合ってもらうよー」
真姫「今までだって充分と付き合ってきたつもりなんだけど」
希「あんなのは全然だよ、覚悟しておいてね?」
真姫「うわぁ...目がすごい輝いてる....変なことを言わなければよかったわ」
希「へへへへ」 希「よし!!完成!」
真姫「じゃあ、いざって時はここに逃げ込みましょう」
希「そうやね」
真姫「ここにじっとしていたいけど...この結界がちゃんと効くのかわからないし、効いたとして長く持つかわからないから一旦移動しましょうか?」
希「脱出の手がかりが見つけられればいいね」
真姫「慎重に行きましょう、もしかしたら朝になったら出られる可能性もあるし」
希「今日は徹夜だね」
真姫「こんな徹夜...今回だけにしたいわね」
希「真姫ちゃん」スッ
真姫「え?」
希「離れ離れにならないように手を繋いでおこう?」
真姫「たしかにこの暗闇ではぐれのは危険ね、わかったわ」スッ
希「♪」 希「思ったより出会わないね....そんなにいないのかな?」
真姫「たしかに対面はしないけど...感じない?希」
希「感じる?」
真姫「...この周りの暗闇から視線というか気配とかを感じない?」
希「........」キョロキョロ
真姫「私の気のせいならいいんだけど...」
希「うーん...嫌な感じはたしかにするかも」
真姫「もしかして囲まれてるとか?」
希「こ、怖いことを言わないでよ!」 真姫「........!」
希「どうしたん?真姫ちゃん?」
真姫「...なんか臭うわね」
希「え?もしかしてう、うち臭う?走ったり色々したから臭うのかな?...」
真姫「そうじゃないわ、この独特の腐ったような臭い....」
希「....あ、本当だ!もしかしてこの臭いって」
真姫「近いみたいね....中々面倒そうなものが」
希「前の方から臭ってくるよ」
真姫「どうする?戻る?」
希「これは素直に戻った方がよさそうやね」 真姫「臭いを避けて移動してたら村の中心部の方まで戻ってきちゃったわね」
希「うちら追い込まれてるとかじゃないよね?」
真姫「たしかに...意図的にここに誘導されたって可能性は否定できないわね」
希「じゃあ、うちらまずいんじゃ....」
真姫「元々ここは連中のホームグラウンド...こっちには圧倒的にアウェイってことよ」
希「..........」
ジリリリリ!!!
真姫 希「!!」
ジリリリリ!!!
希「あの電話ボックスの電話ってコードが切れてたはずだよね?」
真姫「...どうやらお呼びのようね」 ジリリリリ!!!
真姫「........」
希「っ........」
ジリリリリ!!!
希「ま、真姫ちゃん!これは出ない方が....」
真姫「もちろん出ないわよ、こんな見え透いた罠なんかに」
希「そ、そうだよね」
真姫「無視よ、無視」
ガチャン!
希「え」
真姫「は?」 ガン!!
真姫「じゅ、受話器が勝手に落ちた?」
希「.........」
『............』ザー
希「な、なんか聞こえない?わ、うちの気のせいかな?これは」
真姫「ノイズみたいなのが聞こえるわね、希は」
希「うちもそんなかんじ...」
真姫「こっちが出ないから勝手に出たってことかしら?ハイテクね...いや壊れているから廃テク?」
希「真姫ちゃん疲れてる?」
真姫「少しつかれてる」 『...........』ザー
真姫「ねぇ、希」
希「なぁに?真姫ちゃん?」
真姫「体が動かないのは私だけなのかしら?」
希「奇遇やね、実はうちも動けないんよ」
真姫「意地でも私達と話したいってことなのかしら?」
希「うちは話すことはないんだけなー」
真姫「それは奇遇ね、私も話すことなんてないわ」
『.........』ザー 『.....い....な....ま』
真姫「なにか言ってる?」
希「個人的には聞きたくないんやけど!」
『あ....らし....なか...ま』
真姫「仲間?」
『....あ....た...しい...なかま』
希「あんたらの仲間になった覚えはないよ!!」
『......ふ...あは....』
真姫「.........」
『あははは....あはははは....』
希「なに笑ってるんや」 希「なんかもう頭きた!....ふぬぬぬ.....」
真姫「希、あんまり無理は」
希「ふぬぬぬ.....!」
パー!!
真姫「!ペンダントが光った!?」
希「うわっ!」ドサッ
真姫「う、動けるようになった?」
希「もう...なんなん....」
真姫「希、大丈夫?」
希「平気....」 真姫「このペンダントが助けてくれたのかしら?」
希「かもね...でも、助けるならもう少し早くしてほしかったよ」
真姫「........!」
希「真姫ちゃん?」
真姫「しっ...ちょっと静かに」
希「え?」
真姫「いいから.....」
ザワ....ザワ...
真姫「風は吹いてないし...木や草のざわめきとかじゃないわよね」
希「もしかして....うちら」
真姫「これは本当に囲まれてるかもしれないわね」
希「.......」 真姫「希」スッ
希「うん」
真姫「ここからさっきの結界を作った場所まで突っ切るわよ」
希「OK....」ガシッ
ダッ!!
タッタッタッタッ
希「はぁ....はぁ...」
真姫「はぁ....はぁ.....!!」ゾクッ
希「!真姫ちゃん」
真姫「はぁ...はぁ...なによ」
希「なんか背中の方から寒気がしない?」
真姫「今日は本当に気が合うわね、私も感じるわ」
希「ねぇ...ここはあえて振り返ってみない?」
真姫「あえてってなによ」
希「だって気になるやん!」 タッタッタッ
希「真姫ちゃ〜ん」
真姫「っ.......」
希「せーので見ようよ」
真姫「もう!どうなっても知らないわよ」
希「このままじゃ気になって仕方ないやん!」
真姫「わかったわよ」
希「よし、いくよ!」
真姫 希「せーの!!」クルッ 「...........」
真姫「!」
希「うわっ」
真姫「ちょっと!なんかいたわよね?」
希「奥の木の陰になにかいた!」
真姫「人?」
希「わかんない」
真姫「もう一回見る?」
希「そうやね」
真姫 希「せーの!!」クルッ
「...........」
真姫「長い髪が見えたわ」
希「なんか...さっきより近くにいなかった?」 真姫「...たしかにさっきはもっと奥にいたわよね」
希「もしかして距離を詰められてる?」
真姫「こっちは全力疾走してるのよ」
希「向こうも全力疾走してるかもよ」
真姫「いや怖いから、そんなの」
希「どうする?もう一回確認する?」
真姫「....嫌な予感しかしないけどね」
希「いくよ....」
真姫 希「せーの!!」クルッ
「「.........」」
希「なんか増えてる!!!」
真姫「しかも、やっぱり距離が詰められてるわよ!」 希「これはまるでチョコラテイングレスやね」
真姫「...は?チョコ?」
希「真姫ちゃんチョコラテイングレスを知らんの?」
真姫「知らないわよ!なんかの呪文?」
希「真姫ちゃん小さい頃とかやったりしなかったん?」
真姫「そんな言葉初めて聞いたわよ、なによそれ」
希「要はだるまさんが転んだやね」
真姫「っ...普通に言いなさいよ!わかりづらいっての」
希「いやー人間って怖いと現実逃避をしたくなるもんでつい」
真姫「なんなのよ、この緊張感があるのに緊張感がない感じは!」 希「だって....!真姫ちゃんあそこ!」
真姫「さっき作った結界ね!早くあそこまで行きましょう!」
ザッ
希「はぁ...はぁ...到着!!」
真姫「さてと....っ...効果があればいいんだけど...」
希「ふぅ.....」
真姫「........!」ゾクッ
希「これはまた大勢で....」
真姫「囲まれてしまったみたいね...」
「「「........」」」 希「っ....さすがにうちもこれは怖いかも」
真姫「そろそろ時間的に夜明けだけど...この数はその影響ってことなのかしら?」
希「そうかもね...」
「「........」」
真姫「服装が今風の服装じゃないわね...希の話通りの霊達なのかもね」
希「うん....」
真姫「結界の中に入ってこないところを見ると入ってこれないってところかしら?」
希「そうだったらいいんだけど....」
「.........!」ガキン!
真姫「どうやら結界がちゃんと効いてるみたいね」 希「空が明るくなってきたよ...そろそろ夜明けみたい」
真姫「そうね...でも数がどんどん増えてない?見えてるのは私だけ?」
希「うちにも見えてる、まるでゾンビ映画みたいや」
「「「「..........」」」」
ガキン!!ガキン!!ガキン!!
真姫「!」
希「結界を攻撃し始めた!?」
真姫「まさか、結界を数で押し切るつもり!?」
希「これはまずい....」
真姫「っ......」
希「効くかはわからないけど...やるしかないみたいやね」 真姫「希?なにをするつもる?」
希「すぅ...臨!兵!闘!者!皆!陣!」ヒュン!ヒュン!
真姫「それは....九字切り!」
希「烈!在!前!!」ヒュン!ヒュン!
真姫「........」
希「うちは印までは結べないから、早九字の方だけどね」
「っ........」
真姫「全部とは言わないけど...効いてるみたいね」
希「うちだってやる時はやるんだからね」
真姫「さすがね、希」 ガキン!ガキン!!
希「もう、しつこいなぁ!」
真姫「希の九字切りが効いても数が数だからキリがないわね」
希「もうすぐ夜明けなのに」
真姫「...見て!連中の体がどんどん透けていってるわ」
希「本当だ!」
真姫「この感じなら...もう少し耐えれればなんとかなりそうよ」
希「っ...それまで結界が耐えてくれればいいんだけど....」
真姫「........」
希「臨!兵!闘!者!皆!」ヒュン!ヒュン バリン!
真姫「!」
希「結界が!」
「「.........」」
希「あともう少しなのに....」
真姫「希、目をつぶって」
希「え?」
真姫「早く!!」
希「!う、うん?」
真姫「出力最大!!」
カシャ!!
「「!!」」
真姫「よし!走るわよ!!希!」 タッタッタッ
真姫「フラッシュは本当に安定してるわね....カメラの趣味をきっかけを作ってくれたパパには本当に感謝ね」
希「さすが真姫ちゃん!」
真姫「このまま鳥居まで行くわよ!」
希「あそこが出口ならいいんだけど」
真姫「今はその可能性を信じて走るしかないわ!」
希「今日は本当に走ってばっか....今日は夜は廃村で運動会?」
真姫「そんなこと言えるならまだ走れるわね!」
希「あとで本当に筋肉痛になりそう....」
ザッ!
真姫「見えてきたわ!!太陽も登ってきてる!朝日よ!!」
希「このまま無事に出られればいいんやけどね...」 「ぁぁあ!!!!!!!」
真姫「!」ビクッ
希「!うわっ!!」ズルッ
グラッ
真姫「ちょっ!!」
希「うわあああああ!!」
真姫「このままだと見えない壁にぶつかる!!」
パー!!
真姫「なに!?この光は!!」
希「眩しい!!」
真姫「っ.........」 真姫「.....ここは....」
希「....あれ?」
真姫「道路?あそこにあるのは私の車よね?」
希「うちら...さっきまで森の中にいたよね?」
真姫「えぇ...これは一体?」
希「元の世界に戻ってきたってことなんかな?」
真姫「多分...夢とかじゃないわよね?」
希「夢とかじゃないとは思うけど...」
真姫「.........」プニッ
希「はぁに?まひひゃん?」
真姫「夢かどうか確認しようと思って」
希「うひのほっへてやらないへよ!!」
真姫「........」プニップニッ
希「まひひゃん!!!」 希「もう....真姫ちゃん?うちのほっぺはおもちゃじゃないんだよ?」
真姫「靴をよく見たら泥まみれだし...さっきまでのことは現実だったみたいね」
希「うわぁ...服とかも汚れちゃったね」
真姫「どうやら本当に無事に戻ってこれたみたいね、なんか緊張感が解けて...眠い.....」
希「うちも眠いよ、徹夜で村でサバイバルだったし」
真姫「希....おんぶ....」
希「え?」
真姫「おやすみなさい.....」コテッ
希「うわっ!ちょっと!!うちによりかかって寝ないでよ!!」
真姫「真姫ちゃん....眠い....」
希「真姫ちゃん、そんなキャラじゃないでしょ!?起きて!!」 希「車は無事だったみたいやね」
真姫「そうね....」
希「エンジンは動くかな?」
真姫「......」スッ
ブーン!!
希「かかった!!直ったみたいやね!」
真姫「そうね....」
希「えっと....真姫ちゃん?」
真姫「希、私のお願いを一つだけ聞いてくれる約束だったわよね?」
希「え?あー...そうやったね、そういえばそんな約束したね」
真姫「運転よろしく.....」スッ
希「え?」 真姫「このままだと事故を起こしそうだし...かと言ってここで仮眠していくのもなんか嫌だし」
希「それでうちが運転を?」
真姫「ん....」
希「えっと...うちも徹夜明けなんだけど....」
真姫「........」ゴソゴソ
希「真姫ちゃん?何をしてるん?」
真姫「....はい」
希「これは....栄養ドリンク?」
真姫「ファイト...いっぱーつ....」
希「なんか元気が出ない掛け声だなぁ....」 真姫「それじゃあ...よろしく」
希「もー...どっかの大きい駐車場とか休憩所についたら交代だからね」
真姫「んー....」
希「まぁ...真姫ちゃんがうちにお願いしてくれるのも珍しいし...少し頑張ってみようかな」
ブロロロ....
真姫「zzzzzzz」
希「真姫ちゃんぐっすりやね....」
希『じゃあ!うちが運転変わるよ』
真姫『お断りします』
希『なんで!』
真姫『だって、希の運転って荒いんだもの』
希『えー...そんなことはないと思うけ』
真姫『あるわよ、希が運転してたら希みたいにすやすや落ち着いて寝てなんていられないわよ』
希「ふふ♪...あんなこと言ってたけどすやすややん」 チャラン
希「あれ?うちのアメジストの色が少し濁ってる?」
真姫「zzzzzzzzz」
希「........」チラッ
希「真姫ちゃんのマカライトも濁ってる?そっか...また、うちらを助けてくれたんやね...」
真姫「んー.....」
希「真姫ちゃんが起きたらまずは...この石を清めてあげないとね...」
真姫「zzzzzzzz」
希「色々あったけどうちはとっても楽しかったよ、ありがとう真姫ちゃん」
真姫「..........」
希「また、どっかに行こうね?真姫ちゃん」
おしまい これでおしまいです
最後までお付き合いいただきありがとうございました えーめっちゃ面白かったです
安易に真相究明されないのもいいけどちょっと気になってもやもやしますね 乙です、まさかこのシリーズの続きが読めるとは
大人になった2人の絆というか信頼感が好き
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