曜「散った桜はまた春に咲き誇る」
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拝啓 曜ちゃん
おかえりなさい
今回の旅はどうだった?
キツかった?楽しかった?大変だった?
どんな事があっても、船の上のあなたはきっと世界で一番生き生きしてたのでしょうね
そんなあなたが世界で一番好き
迎えに行けなくてごめんなさい
あなたが元気でいてくれるなら、私は他に何もいらない
私は――― 花丸「はい、どうぞ」
曜「ありがとう」
花丸「それと、これはサービスずら」
曜「え?」
ルビィ「曜ちゃん」
曜「ルビィちゃん……?」
ルビィ「はい、これ」
曜「……これは……」
ルビィ「ふふっ、着替えてくれる?」 ー
曜「……ど、どうかな……」
鞠莉「Excellent!! 似合ってるわよ〜!」
ルビィ「うん! やっぱり曜ちゃんはこうでなくっちゃ!」
果南「カッコイイよ」
曜「なんで……私の船員制服……」
ルビィ「ちゃんと手入れしてるから、問題なく着れるはずだよ」
曜「ルビィちゃん……」
ダイヤ「この日のためです。言わなくてもわかりますわよね?」
曜「うん……うん!」 鞠莉「曜〜! ちょっとこっち見てくれる?」
曜「ん? ……梨子ちゃんの手紙?」
鞠莉「いくわよ〜ファイア!」ボッ
善子「え」
花丸「うそ」
曜「な、な、な……!」
果南「鞠莉!?」
ダイヤ「ま、鞠莉さん! あなた一体何をしてるのですか!?」
鞠莉「んふふ、よく燃えるわね〜」 曜「鞠莉ちゃん!!」ダッ
鞠莉「ストップ。胸ポケット探ってみて」
曜「!! ……あれ」ゴソゴソ
曜「……手紙だ」
鞠莉「ドッキリで〜した。こっちは偽物」
ダイヤ「……!」ゴチン!
鞠莉「いっったーーー!! な、な、にするの!?」
ダイヤ「やっていいことと悪いことがあります!! 全くあなたは!!」
鞠莉「そ、そんなに強く叩かなくても……だって梨子の手紙を私がずっと持っとくわけにも……それにこっちの方が面白いし」
善子「面白くないわよ! ばっっかじゃないの!?」
鞠莉「ひ〜ん! かな〜ん! ダイヤと善子がいじめる〜!」
果南「いやー今のはどう考えても鞠莉が悪いよ……」
花丸「ルビィちゃん知ってたの?」
ルビィ「あはは、うん、まぁね……」 曜「……」カサカサ
千歌「曜ちゃん、ちょっと待って」
曜「え?」
千歌「明日、梨子ちゃんの家に来てくれる? そこで読んで欲しいな」
曜「どうして?」
千歌「どうしても」
曜「……い、今読みたい」
千歌「お願い」
曜「わ、わかった……」 鞠莉「ふふっ、じゃあ今夜は飲み明かしましょうか!」
ダイヤ「あなたはダメです。バツとして烏龍茶にしなさい」
鞠莉「なーーーーんでよ!」
ダイヤ「当たり前でしょう!! 正座なさい!!」
鞠莉「鉄鉱石アラサー!」
ダイヤ「言ってはいけないことを言いましたわね!!」
果南「鞠莉、それ自分たちにも返ってくるからそれ」
善子「ずら丸ーハイボールー」
花丸「無いからソフトボールでいい?」
善子「いや飲めるか」
ルビィ「持ってくるねー」
千歌「曜ちゃん、はい」
曜「ありがと」
千歌「美味しいねぇ」
曜「うん……」 ーー
ピンポーン
梨子ママ「はい……あら」
曜「こんにちは」
梨子ママ「いらっしゃい。千歌ちゃん来てるわよ」
曜「はい。お邪魔します」 トントン
千歌「はーい」
曜「入るね」
千歌「別にノックしなくてもいいのに。私の部屋じゃないし」
曜「ん、まぁ、何となく」
千歌「ま、座ってよ」
曜「今なんて言ったか覚えてる……?」 千歌「さてさて……」
曜「そう、なんで梨子ちゃんの部屋に?」
千歌「……ん、大事なお願いをされてるから、それを果たしに」
曜「大事なお願い……?」
千歌「うん」
曜「? ……ピアノに座って何するの?」
千歌「決まってるじゃん、そんなの」
曜「え……」 千歌「曜ちゃん、私ね。曜ちゃんと梨子ちゃんのことが大好きなんだよ、知ってた?」
曜「な、なに急に……」
千歌「知らなかったでしょー。残念! 千歌は二人のことが大好きなのです!」
曜「な、ど、へ? 一体どうしたのさ」
千歌「そーーんな二人の距離が段々とおーーくになっちゃって、私はどんな気持ちだったと思う?」
曜「……!」
千歌「辛くて苦しくて悲しくて……ぐちゃぐちゃの気持ちを抑えられなくて、私は曜ちゃんを探しました。苦労したんだよ? まったくもー」
曜「ご、ごめん……」
千歌「許しません!」
曜「えっ」 千歌「……なーんて言いたいけど、曜ちゃん大好き梨子ちゃんに免じて、許してあげます! いやもーこれは梨子ちゃんのおかげだよ? 幼馴染み補正があっても許しきれなかった! 梨子ちゃんに感謝!」
曜(幼馴染み補正……?)
千歌「そしてそして、梨子ちゃんからの大事なお願い! ちゃーーんと心して受け取るんだよ!」スッ
曜「ん……?」
千歌「……ふぅ、ちょっと緊張する」 千歌「……」スッ
ーー♪
曜「……! この曲……」
ーー♪ーー♪
曜「千歌ちゃん……」
『これから、この曲は曜ちゃんと一緒にいる時に弾く』
ー♪ーーー♪ 『そう、曜ちゃんといる時。曜ちゃんの前で曜ちゃんの為だけに弾くね』
ーー♪ーーーー♪
『ただいまー! 梨子ちゃん、あの曲弾いてくれる?』
『帰ってきて早々それ? それより私とまぐわらない?』
『まぐわらない! いいから早く!』
ー♪ーーーーー♪
『曜ちゃん』
『ん?』
『あのね、最近思うんだ』
『何を?』
ーー♪ーーーー♪ 『このひろーーーーーい海からさ、曜ちゃんは私を選んでくれたんでしょ?』
『んー、また突拍子もないことを……』
『でしょ?』
『いや、まぁ、その……うーんと……』
『もう、はっきり言ってよ』
『そ、そうだ……よ……』
ーー♪ーー♪
『そっか、そっかぁ』
『な、なにさ急に……からかわないでよ』
『いや、嬉しいなぁって。これってキセキじゃない?』
『キセキ?』
『うん』
ーーー♪ーー♪
『だってこんなに海って大きいのに、私と曜ちゃんは出会った。そして、こうやって一緒の気持ちで』
『想いが通じあって、一緒にいる。キセキよ』
『うん……そうかも、ね』
『キセキ……キセキ……』
『……そうだ』
ーー♪ーーーー♪ 『どうしたの?』
『この曲のタイトル決まったよ』
『ホント?』
『うん。この曲は』
ーー♪ーーーー♪
千歌「"キセキヒカル"」
ーーー♪ …… 千歌「……ふぅ……」
千歌「!」クルッ
曜「……うっ……ひぐっ……」
千歌「……曜ちゃん……」
曜「ありがとう……千歌ちゃん……」
千歌「……ううん…………」ポロッ
曜「わたし……わたし、もう一度、海に……」
千歌「……うん……!」 ーーーー
果南「……綺麗な朝焼け」
果南「うん、今日もいい天気だ。最高の出港日和だよ」
曜「うん」
果南「乗船期間は?」
曜「三ヶ月。前と一緒」
果南「良かったね、すんなり決まって」
曜「鞠莉ちゃんが前の会社に頼み込んでくれたんだ。感謝してもしきれない」
果南「この前まで務めてた会社のことも聞いた?」
曜「鞠莉ちゃんの取引先だったんでしょ? 私がすんなり辞めれるように社長に言っててくれたみたい」
果南「いやー鞠莉は相変わらずそういうのが似合うねぇ。金の力ってやつか」
曜「ひどい言い草だなぁ……」 果南「……ん、やっぱ制服姿が似合うよ。カッコイイ」
曜「果南ちゃんに言われると……ちょっと変な気分」
果南「むっ、どういう意味さ」
曜「褒めなれてないだけだよ、果南ちゃんに」
果南「私だって褒めることくらいするよ」
曜「本当に? あんまり見た事ないけど」
果南「人間には言わないかな。魚によく言う」
曜「なんて?」
果南「その鱗イカしてんね! とか」
曜「それ楽しいの?」 果南「ほっといてよ。それより、行かなくちゃでしょ」
曜「あ、そろそろか……ちょっと行ってくる」
果南「ほいほい。んじゃ、よろしく言っといてよ」
曜「果南ちゃんは行かないの?」
果南「私が一緒だと雰囲気台無しでしょ。ほら、早く行った」
曜「……空気読めるんだ……」
果南「ぶつよ」 ーー
ダイヤ「今年の桜は遅咲きだそうですね」
花丸「そうみたいだね。タイミングぴったりで良かった」
ルビィ「うん」モグモグ
善子「あ! それ私の団子!」
ダイヤ「花吹雪をわざわざ用意しなくてすみました」
善子「いや花吹雪って……後で拾うの大変じゃない」 花丸「冷めてるなぁ。堕天使の頃の方が思いやりの心があったんじゃない?」
善子「社会の荒波には流石の堕天使も参るのよ……そりゃ心も荒むわ」
ルビィ「もっと明るい話しようよ二人とも……こんな日に……」
ダイヤ「そうですわよ、無粋ですね」
花丸「春は曙。早起きして見る桜も、趣があるずら」
善子「夜桜ならぬ朝桜……ん、たしかにいいものね」
ルビィ「なんか輝いて見えるかも」 ダイヤ「気のせい……ではないでしょう。きっと、世界で一番今日の桜は輝いている」
花丸「だねぇ……」
善子「……」
ルビィ「ふふっ……」
ダイヤ「……お気をつけて」 鞠莉「……」カチッ シュボッ
鞠莉「……ふぅー……」
千歌「ねー、鞠莉ちゃん」
鞠莉「んー?」
千歌「その胸についてるお花はなぁに?」
鞠莉「これ? 彼岸花よ」
千歌「ヒガンバナ……」
鞠莉「綺麗でしょ? 私この花好きなの」
千歌「へぇ……」 鞠莉「『悲しい思い出』『再会』……この花の言葉」
千歌「……なんだか曜ちゃんと梨子ちゃんみたい」
鞠莉「やっぱりそう思う?」
千歌「うん、鞠莉ちゃんも?」
鞠莉「ええ。あとね、もうひとつあるの」
千歌「なに?」
鞠莉「『思うはあなたひとり』」
千歌「おおー……ますますぴったりだ」
鞠莉「でしょー?」
千歌「うん!」 ーーー
『桜内家之墓』
曜「ごめんね、ずっと会いに来なくて」
曜「……ごめんね、梨子ちゃんの想いから逃げて」
曜「もう、大丈夫だから」
曜「……でも、梨子ちゃんもだからね?」
曜「大事なこと隠しちゃって……私本当に辛かったんだから」
曜「……ふふっ、おあいこだよ」
曜「……行ってきます」 梨子ママ「曜ちゃん」
曜「……はい」
梨子ママ「ありがとう」
曜「いえ、こちらこそ。本当に、ありがとうございました」
梨子ママ「気をつけてね。目一杯楽しんで」
曜「はい」
梨子ママ「――いってらっしゃい」
曜「――いってきます!」 曜「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」タッタッタッ
拝啓 曜ちゃん
曜「はぁ、はぁ……!」タッタッタッ
おかえりなさい
曜「はぁっ……!」 今回の旅はどうだった?
キツかった?楽しかった?大変だった?
どんな事があっても、船の上のあなたはきっと世界で一番生き生きしてたのでしょうね
曜「……!」タッタッタッ
そんなあなたが世界で一番好き 迎えに行けなくてごめんなさい
あなたが元気でいてくれるなら、私は他に何もいらない
私は
曜「……!」
今これを、曜ちゃんの下着を被って書いてます
ズデン!
曜「いたぁ!」
いやこれもうやばい脳がとろけちゃう文字が歪んできちゃった
曜「……! いてて……」
なんて言うのはどうでも良くて。 ちゃんと次の航海まで休んでね?
曜「ふぅ……」パンパン
行ってらっしゃいって、直接言えないのは残念だけど
曜「……」ダッ
あなたが海のように蒼いその瞳を輝かせて、いってきますって言い続けてくれるなら
曜「はぁっ、はぁっ、はぁっ……」タッタッタッ
私はいつでもいってらっしゃいって言いに行くわ。
曜「はぁ……!」
大きな声でお願いね。
曜「いってきます!!」タッタッタッ
そして、全速前進
曜「ヨーソロー!」 終わり
見てくれた人、レスしてくれた人ありがとう
途中のミス申し訳ねぇ
ではでは >>332
ここまで読み終えたけど泣いてる
おれはあの頃のままだ… めざしは新垣結衣に似てるってレスを見たことある
俺は現物を見たことないから真偽は不明 悲しい話かと思いきやそれに負けない梨子ちゃんの存在感
おつ 梨子ちゃんがメノノリ寄りなところが趣深い
面白かった 気分最悪だヨーソローの人か?
とってもいい話だった!書いてくれてありがとう!ようりこの名作また生まれてしまった ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています