花丸「心中」
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花丸「ねえ、ルビィちゃん」
ルビィ「どうしたの、マルちゃん」
花丸「最も強い愛の証明方法って、なんだと思う」
ルビィ「証明方法?」
花丸「わかりやすくいえば、愛の示し方」
ルビィ「うーん、こういうのとか」
チュッ
花丸「ううん、違うよ」 ルビィ「えー、ほっぺただったから?」
花丸「口の方が嬉しいけど、それは関係ないかな」
ルビィ「じゃあこれ?」
ギュッ
ルビィ「えへへ、マルちゃん温かいよ」
花丸「ルビィちゃんもね〜」
ルビィ「じゃあこれが正解?」
花丸「ううん、残念だけど不正解」 ルビィ「えー、これも違うの?」
花丸「もちろん、ルビィちゃんの愛は伝わったけどね」
ルビィ「むぅ、分かんないよぉ」
花丸「ふふっ、それじゃあ教えてあげる」
花丸「一番強い愛の証明は、死だよ」
ルビィ「死? 生と死の?」
花丸「うん、それだよ」
ルビィ「うゅ、何か怖いよぉ」 花丸「そうだね、確かに怖い」
花丸「でもね、だからこそ強い愛を示すことができるんだよ」
ルビィ「それは、遺書で愛の言葉を残すとか」
花丸「まあ、それもありだね」
花丸「あとは相手をあやめて、強力な愛を伝える方法もある」
ルビィ「そ、それはちょっと嫌かも」
花丸「でもね、それらよりも素敵な愛があるんだ」
ルビィ「素敵な愛?」 花丸「それはね、心中だよ」
ルビィ「心中?」
花丸「自分たちの手で、一緒揃ってに死を迎えること」
ルビィ「それは何が違うの」
花丸「簡単に言えば、合意の上であるということかな」
花丸「無理心中って言葉もあるけど、それじゃ駄目」
花丸「お互いの意志で、共に最期を目指す」
花丸「世界に向かって主張するんだよ、私たちは愛し合っていると」 ルビィ「……うゅ」
花丸「ルビィちゃん?」
ルビィ「……マルちゃんは、ルビィにそういうことがしたいの?」
花丸「ううん、そんなことはないよ」
ルビィ「本当に?」
花丸「これはあくまでも強い愛の示し方の話をしただけだからね」
ルビィ「はぁ、良かったぁ」
花丸「怖がらせちゃったかな」
ルビィ「うん、怖かった」 花丸「ごめんね、お詫びに――ハグしよっ」
ギュー
ルビィ「く、苦しいよ」
花丸「変な話をしたから、少し怖くなったずら」
ルビィ「もう、言いだしたのはマルちゃんなのに」
花丸「ルビィちゃんなら、こんなマルでも受け入れてくれるよね」
ルビィ「もちろんだよ」
ルビィ「マルちゃんの事なら、どんなことでも受け入れるもん」
花丸「えへへ、ありがとう」 ――黒澤家――
ルビィ(でも本当に、話をしたかっただけなのかな)
ルビィ(マルちゃん、言ってたよね)
ルビィ(心中を、『素敵な愛』だって)
ルビィ(あれは、ルビィにそれを求めての行動?)
ルビィ(それは考え過ぎなのかな……)
ダイヤ「ルビィ」
ルビィ「うゅ?」
ダイヤ「もう遅い時間ですよ、早く休みなさい」
ルビィ「はぁい」 ルビィ(お姉ちゃん、この話を聞いたらどう思うかな)
ルビィ(頭の悪いルビィと違って、何か答えを出してくれるかも)
ルビィ(遠まわしに、質問してみようかな)
ルビィ「ねえ、お姉ちゃん」
ダイヤ「何ですか」
ルビィ「心中って、どう思う?」
ダイヤ「はい?」
ルビィ「だから、心中」 ダイヤ「……ルビィ、誰か悪い男でもできたのですか」
ルビィ「男?」
ダイヤ「最近流行りの情けない草食系男子にひっかかかり、そのような事を!?」
ルビィ「ピギッ」
ダイヤ「いけません! この辺りは太宰と縁のある地なので、それに惹かれてきた男ですか!?」
ルビィ「い、いや、そういうわけじゃ……」
ダイヤ「多少容姿が良くても中身はクズなのです!」
ダイヤ「心中などを持ちかけてくる時点で、どうしようもないクズなのです!」
ルビィ「お、落ち着いてよぉ」 ダイヤ「ルビィ、その男のところへ案内しなさい!」
ダイヤ「私がコンクリート詰めにして海の底へ沈めてやります!」
ルビィ「だ、だから、話を聞いてぇ――」
―――
――
―
ダイヤ「花丸さんが?」
ルビィ「うん、心中について話してたから」
ダイヤ「なるほど、確かに彼女が好みそうな話題ではありますね」 ルビィ「それで、お姉ちゃんは心中ってどう思う?」
ダイヤ「抽象的な質問で答えにくいですが……」
ダイヤ「確かに花丸さんの言うとおり、強い愛の形であることは確かでしょう」
ダイヤ「ただ私としては、先ほども言いましたが死への誘いという時点で、間違っても肯定はできませんね」
ルビィ「そっか……」
ダイヤ「一応確認ですが、本当に花丸さんにそれを持ちかけられたわけではないのですね」
ルビィ「それは、本当だよ」
ダイヤ「……分かりました、貴女は賢い子です、信じましょう」
ルビィ「ありがとう、お姉ちゃん」 ダイヤ「ただ、しばらくは花丸さんの様子にお互いに注意しましょう」
ダイヤ「そのような事を言い出す心理状態、少し心配です」
ルビィ「うん」
ダイヤ「しかし、『友人』であるルビィにそのような話をするとは」
ルビィ「変かな」
ダイヤ「ええ、心中は基本的に家族や恋人とする行為」
ダイヤ「それ以外の親しい間柄でおこないケースもありますが、稀ですから」
ルビィ「そうなんだ……」
ダイヤ「本当に仲良い『友達』なのですね、あなた達は」
ルビィ「そうだね」
ルビィ「仲の良い、『友達』」 ―部室―
善子「ずら丸、何か思いついた?」
花丸「う、ううん、ちょっと待って」
善子「ヤバいわよ、AqoursのSNS用の写真、まだ用意できてないは私たちだけよ」
花丸「……だからもっと早く準備しようって言ったのに」
善子「し、仕方ないでしょ、リトルデーモン達の相手をするのに忙しかったんだから」
花丸(『スクールアイドルはまず存在を知ってもらうところからですわ!』というダイヤさんの一言で少し前から始めたAqoursのSNS)
花丸(持ち回りで写真を撮り、投稿しているのだけど、今回はちょうどマルと善子ちゃんの番) 善子「ああもう、やっぱり大量に物を食べているあんたの写真じゃ駄目かしら」
花丸「それだとマルが馬鹿みたいだよ」
善子「いいじゃない、少し笑いを提供する感じで」
花丸「それだったら善子ちゃんの写真の方が良いよ」
花丸「普通にしていても痛々しくて、見た人から引き攣った笑いがこぼれるから」
善子「なんでそうなるのよ! 一部の人には需要があるんだから!」
花丸「痛々しいのは否定しないんだね……」
善子「まだまだヨハネの魅力を理解できない人間が多いのは事実だから、仕方ないわ」
花丸「まあねぇ」
花丸(個人的には嫌いじゃないけど) 善子「あー、こうなったら百合営業でもする?」
花丸「百合営業?」
善子「ほら、恋人みたいに演じた写真を撮ってアップするのよ」
花丸「……それは、嫌かな」
善子「まあ、そうよね」
花丸「それに善子ちゃんがやるなら、相手は梨子ちゃんでしょ」
善子「な、なんでリリーが出てくるのよ!?」
花丸「わかりやすいなぁ、その反応」
善子「……うっさい」 花丸「本当に仲良しだよね、梨子ちゃんと」
善子「そうかしら?」
花丸「この前もノリノリでそれっぽい写真アップしてたずら」
善子「あれはリリーがやりたがったから、仕方なく……」
花丸「いっそさ、本当に付き合っちゃえばいいのに」
善子「いやいや、流石に女同士でそれはないわよ」
花丸「……分かってるよ、冗談ずら」
善子「あら、アンタも冗談を言うようになったのね」 花丸「物心ついてからは今年一年だけとはいえ、善子ちゃんとの関係も長いしね」
善子「言われてみると、確かにね」
善子「そうだ、小さい頃の写真を探してきてアップするのはどう?」
花丸「あ、それ名案ずら」
善子「そ、そうかしら」
花丸「昔の写真、きっとファンの人も喜ぶよ。流石善子ちゃん」
善子「くっくっく、堕天使にかかればこの程度簡単なものよ」
花丸「はいはい、そうずらね〜」
善子「ちょ、何でそこで冷たくなるのよ!」 花丸(女の子同士が付き合うなんて冗談、か)
花丸(この前、家族で何気なくテレビを見ている時に映った、LGBTの特集)
花丸(そこで婆ちゃんが漏らした、何気ない『気持ち悪い』の一言)
花丸(厳格な家で過ごした老人の価値観で考えれば、仕方のない言葉)
花丸(それに同意する他のお父さんたちも、悪意なんてない)
花丸(年長者に話を合わせただけ、公的な場で話せば多少問題になるかもしれないけど、ここは身内だけの場)
花丸(誰かを傷つけることも、不快にさせることもないはずの場所)
花丸(あくまでも自分たちには関係ない世界の出来事)
花丸(誰も考えなかった、異端児が紛れているなんて) 花丸(ルビィちゃん、マルの恋人)
花丸(出会ってすぐに惹かれあった、まさに運命的な邂逅)
花丸(すぐに出来上がった、二人だけの秘密の関係)
花丸(でもその関係は、脆く、危ういもの)
花丸(誰にも話すことのできない、外に知られたら全てが終わってしまう)
花丸(ルビィちゃんの家も、マルの家も、絶対にそれを許してくれない)
花丸(どれだけ愛し合い、惹かれあっても、露見した時点で引き裂かれる、友達ですら居られなくなる)
花丸(そんなことになったら、耐えられる自信がない)
花丸(だからもし、そんな事が起こった時は―――― ひとまずここまで
続きはもう少し書き溜めてから投稿します こういう雰囲気も良いね
真綿で締める感じにじわじわ漂う不穏さ好き ――沼津・喫茶店――
花丸「うーん、雨止まないねぇ」
ルビィ「うゅ」
花丸「せっかくのデートなのに、何か残念だね」
ルビィ「そうかな? マルちゃんとこうしてゆっくりお話できるのも楽しいよ」
花丸「ルビィちゃん……」
ルビィ「それにここのケーキは凄く美味しいから、入れてちょうどよかったかもだし」
花丸「あはは、ルビィちゃんらしい可愛いずら」
ルビィ「もう一個食べちゃおうかなぁ――マルちゃんも食べる?」
花丸「ふふっ、そうだね―― ??「あ、あの」
花丸「ふぇ」
ルビィ「ピギッ」
ファン1「もしかして、Aqoursのルビィちゃんと花丸ちゃんですか」
花丸「はあ、そうですけど」
ファン2「私たちお二人のファンなんですけど、サインとかもらえますか!」
花丸「サイン?」
ルビィ「ルビィたちの?」
ファン1「はい!」 ―――
――
―
花丸「えっと、これでいいですか?」
ファン1「わー、ありがとうございます!」
花丸「でも、マルたちで良かったんですか。もっと他の人とか」
ファン1「いえ、私はずっと花丸ちゃんのファンなんですよ!」
花丸「マルの、ファン」
ファン1「で、相方はルビィちゃんのファンで――」 ファン2「うーん、本物のルビィちゃんはやっぱり可愛いなぁ」
ルビィ「そ、そんな……」
花丸「なるほど、それであんな感じに」
ファン1「あはは、すみません」
ファン2「うーん、こんな可愛い子を恋人にしたいなぁ」
花丸「!」
ルビィ「え、えっと、マルちゃんがいるから、それは」
花丸「そうですよ、ルビィちゃんはマルの物ずら」 ファン2「おぉ、大胆な言葉」
ファン1「お二人は本当に仲良しなんですね」
花丸「ルビィちゃんは大切な人ですから」
ルビィ「え、えへへ」
ファン1「でも少し安心しました」
花丸「安心?」
ファン1「ルビィちゃんと花丸ちゃん、凄く仲良しだなぁって」
ファン2「SNSの写真とか見てると感じるんですよね」
ファン1「プロフィールの記述とかに比べてそこまで距離が近くない感じがしたので」 花丸「あれは、何か恥ずかしくて」
ファン1「うんうん、それがルビィちゃんと花丸ちゃんらしさなんですよね」
ファン2「流石お互いが認める仲良しコンビですね」
花丸「仲良しコンビ……」
ファン1「あっ、では私たちはこれで、わざわざありがとうございました!」
花丸「い、いえ、これからも応援よろしくお願いします」
花丸「ビックリしたね」
ルビィ「ファンの人、ルビィ達にもいたんだね」
花丸「ルビィちゃんは嬉しかった?」
ルビィ「緊張したけど、少しは」
花丸「それなら良かったよ」 ルビィ「でも、マルちゃんと二人で過ごせる時間が少し減っちゃったのは残念かも」
花丸「あはは、それはアイドルが口に出しちゃ駄目だよ」
ルビィ「分かってるけどぉ」
ルビィ「でも違和感あったかな、写真」
花丸「どうなんだろう」
ルビィ「意識し過ぎて、一緒にいる写真アップしてなかったもんね」
花丸「変に思われてないといいけど」
ルビィ「じゃあ、今度は程よく仲良しの写真も使う?」
花丸「そうだね、程々にやろう――怪しまれないように注意しながら」
ルビィ「うん」 ―渡辺家―
曜「ふぅ、大体できたかな」
ルビィ「そうだね、あとは細かい部分をチェックすれば、完成」
曜「いやー、今回も結構重労働だったね」
ルビィ「お疲れ様、流石曜ちゃん」
曜「いやいや、ルビィちゃんと二人で作った衣装じゃん」
ルビィ「ううん、ルビィは曜ちゃんに比べれば仕事量が少ないから」 曜「そんなことないよ、私は体力が必要な部分を頑張っただけ」
曜「ルビィちゃんは私には無いアイディアをたくさん出してくれるし、細かい部分の作業はほぼ任せてたもの」
ルビィ「それは、ルビィがそれしかできないから――」
曜「もぅ、謙遜し過ぎだよ」
曜「実際、一人で作っていた時よりも評判いいんだよ」
ルビィ「そ、そうなの」
曜「うんうん、だから謙虚なのもいいけどもっと自信持っていいんだよ」
ルビィ「えへへ、ありがとう」 曜「やー、でもこうやって9人分の衣装が並ぶと壮観だね〜」
ルビィ「そうだね――ん?」
曜「どうしたの」
ルビィ「今回も曜ちゃんと千歌ちゃんだけ同じ服の色なんだね」
曜「あっ、ばれた?」
ルビィ(二人の衣装だけは、曜ちゃんが全部作業をしてたから気づかなかった)
ルビィ「結構あるよね、このパターン」
曜「あはは、そこは衣装係の役得かな」
ルビィ「本当に好きなんだよね、千歌ちゃんの事」
曜「そうだね、大切な幼馴染だもん」 曜「そういうルビィちゃんも、小物とか花丸ちゃんとお揃いにしてるでしょ」
ルビィ「ピッ」
曜「おっ、図星かな」
ルビィ「な、なんで気づいたの」
曜「これでも洞察力には自信があるし、一緒に衣装を作ってきた仲だもん」
ルビィ「普通気づかないよ、曜ちゃん」
曜「あはは、それじゃあ私は特別かな」
ルビィ(曜ちゃんは凄いなぁ、自分に自信を持ってる)
ルビィ(実際に能力もあって、格好いい)
ルビィ(この人なら、どんな偏見があっても、もしかしたら) ルビィ「ねえ、曜ちゃん」
曜「ん、どうしたの?」
ルビィ「曜ちゃんは、千歌ちゃんと恋人になりたいとか考えたことある?」
曜「千歌ちゃんと?」
ルビィ「うん」
曜「いやいや、流石にないかなぁ」
ルビィ「そう……」
曜「なんでそんな質問を?」
ルビィ「えっと、それぐらいの愛を感じたから、とか」
曜「あはは、時々疑われるぐらい好きではあることは否定しないけどね」 ルビィ「じゃあ、もし千歌ちゃんから告白されたらどうする?」
曜「千歌ちゃんから?」
ルビィ「好きだって、幼馴染の関係が崩れることを覚悟で告白されたら、どうする?」
曜「うーん、それは難しいね」
ルビィ「付き合う、のかな」
曜「どうだろう、その時になってみないと分からないや」
ルビィ「……何か煮え切らないね」
曜「難しい問題だしね、簡単には答えられないよ」
ルビィ「真面目だね、曜ちゃんは」
曜「そうかな、不器用なだけだよ」 曜「でもどうして、急にそんなことを?」
ルビィ「えっと、最近百合営業が流行ってるから、本気でそういう気持ちになる子もいるのかなって」
曜「あー、アイドルのやつとかだっけ」
ルビィ「詳しくないの?」
ルビィ「曜ちゃんたち、時々そんな感じの写真アップしてるよね」
曜「そうかな?」
ルビィ「うん、結構一部では話題になってるよ」
曜「ふーん、二人で撮る時の構図を決めてるのは千歌ちゃんだから、意識してなかったかも」
ルビィ「千歌ちゃん、アイドルに詳しいもんね」 曜「でもさ、ルビィちゃんはあんまりしないよね、百合営業」
ルビィ「言われてみると、そうかも」
曜「なんで?」
ルビィ「うーんとね、誤解されると色々と面倒な家だから」
曜「あー、黒澤家は確かに大変そう」
ルビィ「お姉ちゃんにも時々釘を刺されたりするんだ」
曜「そういえば、ダイヤさんもやらないもんね」
ルビィ「果南ちゃんや鞠莉ちゃんも仲良しなのに、勿体ない気もするよ」 曜「はぁ、苦労してるんだねぇ」
ルビィ「苦労って程じゃないよ」
曜「名家の生まれって事で、ちょっと羨ましく感じることあったけど、そういう話を聞くと普通の家に生まれてよかったって思うよ」
ルビィ「曜ちゃんのお父さんやお母さん、やさしそうだもんね」
曜「うん、お父さんたちには感謝してるよ」
ルビィ「もし千歌ちゃんと付き合っても、笑ってお祝いしてくれそうだよね」
曜「確かに、私が本当に女の子と付き合うことになっても、強くは反対されないと思う」
ルビィ「……羨ましいなぁ」
曜「……大変だろうけど私は応援してるよ、二人の仲」
ルビィ「!」
曜「これでも結構鋭いからね、大丈夫、もちろん誰にも言わないから」
ルビィ「……ありがとう、曜ちゃん」 一応出せる分投稿したので寝ます
続きは夜か明日にでも ―屋上―
果南「ほら、あと少しだよ」
花丸「……ちょっと……休ませて」
果南「駄目だよ、トレーニングは限界までやるからこそ意味があるんだから」
花丸「ずらぁ……」
果南「ほら、もうワンセット!」
花丸「あぁ――もうやけずら!」
果南「おっ、いい感じだね―――― ―――
――
―
果南「はい飲み物」
花丸「あ、ありがとう」
果南「お疲れ様、よく頑張ったね」
花丸「……毎回、果南ちゃんのトレーニングは厳しすぎるよ」
果南「いやー、でもマルとダイヤは非力すぎるからさぁ」
花丸「ユニット練の時だけハードにしないでほしいずら……」
果南「はいはい、考慮するよ」
花丸(絶対しなさそう……) 花丸「でもダイヤさん、戻ってこないね」
果南「生徒会の方も何かと忙しいみたいだからね」
花丸「……練習がきついから逃げたんじゃ」
果南「あはは、あり得る」
花丸「ダイヤさん、体力無いもんね」
果南「うーん、そうかな」
花丸「マルが知る限り、練習でもすぐにバテたりするもん」
果南「そこはさ、ダイヤも色々大変だから」
花丸「色々?」 果南「学校では生徒会長としての仕事、優等生でいるための勉強」
果南「それに加えて、習い事とか、家の事とか休む暇もなくこなしているでしょ」
花丸「あっ、そっか」
果南「体力を回復する暇もないから、疲れやすいのも仕方ないんじゃないかなって、私は思う」
花丸「その割に、ハードな練習メニューを課すんだね」
果南「ダイヤの希望もあるしさ」
果南「さっきは笑ったけど、例え参加できなくても、その後自主的に練習をするぐらいの事はするよ、あの子は」
花丸「……凄いね、ダイヤさん」
果南「まあ、あれは特殊だから。マルも一年生なのにちゃんと練習についてきて、頑張ってるね」 花丸「そうかな」
果南「うん、それは私が保証する」
花丸「ありがとう――」
ブブッ
果南「あ、鞠莉からメールだ」
花丸「鞠莉ちゃんから?」
果南「しょっちゅう連絡してくるんだよね、何かあると」
花丸「なになに、ラブコール?」
果南「いやいや、そんなんじゃないよ」 花丸「えー、でも二人は怪しいよ」
果南「そうかなぁ」
花丸「だっていつもハグとか、過剰にスキンシップしてるでしょ」
果南「言われてみると、まあね」
花丸「鞠莉ちゃん、どう見ても果南ちゃんにメロメロだもん」
果南「メロメロ、ねぇ」
花丸「傍から見ていると、恋する乙女みたいだよ」
果南「……やっぱり、そうなのかな」
花丸「気づいてなかったの?」 果南「そんなことはないけどさ、自分だといまいち確信が持てないんだよね」
花丸「あんな露骨に愛されているのに?」
果南「それでも、自意識過剰なんじゃないかとか考えたりね」
花丸「あぁ」
果南「よほど自信がない限り、思えないよ。自分が人から愛されているなんて」
花丸「うん、分かるよ」
花丸(マルだって不安になる事はある。大切な人からの愛について)
果南「それと、鞠莉の気持ちが私の応えられないものであることが怖くて」
花丸「なるほど、ね」 果南「実際、どうなんだろう」
花丸「………鞠莉ちゃん、果南ちゃんの事が恋愛的な意味で好きなのかな」
果南「難しいよね、本人に聞くわけにもいかないから」
花丸「果南ちゃんは、どんな風に考えてるの」
果南「可能性は、結構あるかもとは思ってる」
果南「ストーカー宣言されたり、スキンシップを過剰に要求してきたり、思い当たる節はいくらでもあるから」
花丸「そっか……」
果南「でも鞠莉は何を考えているのかよく分からないところがあるからね」
果南「はっきりと断言するのは難しいよ」 花丸「鞠莉ちゃん、変わってるもんね」
果南「ははっ、そこが鞠莉の魅力だけどね」
花丸「果南ちゃん、鞠莉ちゃんが好きなんだね」
果南「うん、友達としては本当に大切に想ってる」
花丸「ダイヤさんより?」
果南「比較できないよ、その二人は」
花丸「やさしいね、果南ちゃんは」
果南「マルだってきっとそうだよ」
花丸「マルも?」 果南「ルビィと善子、どっちも同じぐらい大切でしょ」
花丸「……そうだね」
果南「あれ、その反応だと違った?」
花丸「……わかる?」
果南「まあね、表情に出てるし」
花丸「果南ちゃん、なかなか鋭いね」
果南「これでも上級生だからね、人生経験の差だよ」
花丸「ふふっ、そっか」 果南「でも差があるとしたら、やっぱりルビィの方が好きなの?」
花丸「うん」
花丸「善子ちゃんも本当に大切な友達」
花丸「でもやっぱり、ルビィちゃんは『特別』だから」
果南「……そっか」
花丸「酷い人間かな、マルは」
果南「そんなことはないよ」
果南「それだけ、ルビィを大切に想っているんだよね」
花丸「うん、そうだね」 ダイヤ「やれやれ、何の話をしていますの」
花丸「あっ、ダイヤさん」
果南「聞いてたの、今の話」
ダイヤ「ええ、途中からですが、実にくだらない話です」
果南「くだらないって、それならダイヤはそういう事で悩んだりしないの?」
ダイヤ「無論ですわ」
果南「なんで?」
ダイヤ「決まっているでしょう」
ダイヤ「私には誰よりも大切な妹、ルビィがいるからです」
ダイヤ「どれだけ大切な友人や仲間がいても、あの子に勝てる者は存在しません」 果南「……ああ、安定の姉馬鹿ね」
花丸「……流石はダイヤさんずら」
ダイヤ「何ですか、その反応は」
果南「それよりも、来たからには練習しようか」
ダイヤ「もちろん、そのつもりですわ」
果南「これ、練習メニューね」
ダイヤ「どれどれ――って何ですかこれは!?」
果南「これを3セットね」
花丸「あれ、マルは1セットだけだったような」
果南「そこはほら、学年×1セットだからさ」 ダイヤ「馬鹿ですか貴女は。こんな量を普通の人間がこなせるわけがないでしょう」
果南「私はやったよ」
ダイヤ「自分を基準に考えないでください」
果南「えー、普通じゃん」
ダイヤ「……まあ、分かりました、おそらく話し合いは無駄でしょう」
果南「おっ、流石ダイヤ」
ダイヤ「しかし花丸さん、貴女は付き合いなさい」
花丸「えっ、でもマルはもう――」
ダイヤ「体力のない貴女には、もう1セットぐらいがちょうどいいでしょう」 花丸「いやいや、そんな馬鹿な――」
果南「確かに、ダイヤの言うとおりかも」
花丸「果南ちゃん!?」
果南「さっきから話していても余裕があるもんね」
果南「あと1セットぐらいなら、オーバーワークにならないだろうし」
ダイヤ「なるほど、では決まりですわね」
花丸「いや、ちょっと話を」
果南「ゆっくりでいいからね、とにかく頑張ってみよう」
ダイヤ「花丸さん、始めますわよ」
花丸「り、理不尽ずら〜〜〜〜〜〜」 とりあえずここまで
続きは夜に投稿できればと思っています ――遊園地――
ルビィ「晴れたねぇ」
花丸「うん、絶好のお出かけ日和」
ルビィ「大事な日にお天気がいいのは、マルちゃんが普段からいい子なおかげかな」
花丸「それならルビィちゃんのおかげだよ、きっと」
ルビィ「お姉ちゃんの目を欺いてマルちゃんと付き合ってるのに?」
花丸「それぐらい、ちょっとした愛嬌だよ」
ルビィ「あと、善子ちゃんに隠して、二人だけで遊びに来ちゃったよ」
花丸「神様も人間だから、ルビィちゃんみたいな可愛い子には贔屓したくなっちゃうのかも」 ルビィ「そっかぁ、じゃあマルちゃんも神様に愛されてるんだね」
花丸「マル、可愛いかな?」
ルビィ「凄く可愛いよ。ルビィの贔屓目かもだけど」
花丸「あはは、ルビィちゃんに可愛いって言ってもらうのが一番ずら」
ルビィ「でも今日は特に可愛いかも。普段より服もお洒落だし、お化粧もしっかりしてるもん」
花丸「大好きな人とのデートだもん、これぐらいはね」
ルビィ「うーん、ルビィももう少しちゃんとしてくればよかったかな」
花丸「ルビィちゃんは素で誰よりも可愛いんだから、いつもどおりでいいんだよ」
ルビィ「そう?」 花丸「それに今日のルビィちゃん、髪留めにリボンが付いていて素敵だよ」
ルビィ「あっ、気づいてくれたんだ!」
花丸「ルビィちゃんの事なら当然だよ」
ルビィ「凄いよぉ、お姉ちゃんは気づかなかったのに」
花丸「ふむ、マルはルビィちゃん力でダイヤさんを超えちゃったかな」
ルビィ「ルビィちゃん力?」
花丸「ルビィちゃんへの愛や理解度を数値化したものだよ」
ルビィ「うん、それならマルちゃんの勝ちかな」
花丸「ずいぶんとはっきり言うんだね」 ルビィ「だってお姉ちゃん、ルビィの一番大切な気持ち、理解してくれようとしないから」
花丸「それは……」
ルビィ「分かってるよ、仕方のないことだって」
ルビィ「だけど味方になって欲しいんだもん。大好きな人だからこそ」
花丸「……駄目だよ、ダイヤさんにマルたちの関係について話しちゃ」
ルビィ「分かってる、分かっているけど……」
花丸「ルビィちゃん……」
ルビィ「あっ、ごめんね、変な空気にしちゃって」
花丸「ううん、気にしないで」 花丸「今日は変なこと考えずに楽しもう。せっかく皆に内緒で、沼津から離れた遊園地に来たんだから」
ルビィ「そうだね――でも善子ちゃん、後で怒っちゃうかな」
花丸「確かに一人で置いて行かれたと思ってるかも」
ルビィ「でも今日はデートだから、仕方ないよね」
花丸「いくら善子ちゃんでも、マルたちの関係については話せないもん」
ルビィ「今度は三人一緒に来ようか」
花丸「そうだね、仲良し三人組として、一緒に」
ルビィ「ふふっ、楽しみだね、三人で来るのも」 花丸「ねえ、ルビィちゃん」
スッ
ルビィ「マルちゃん?」
花丸「手、繋がない」
ルビィ「……いいのかな」
花丸「大丈夫だよ、手を繋ぐぐらいなら」
花丸「ここには知り合いはいないはずだから」 ルビィ「そっかぁ、じゃあ――」
ギュッ
ルビィ「あれ?」
花丸「どうしたの」
ルビィ「マルちゃんの手、少ししっとりしてるね」
花丸「あっ、ごめん」
ルビィ「もしかして、緊張してる?」
花丸「うん、少し」
ルビィ「人目があるところで繋ぐの、滅多にないもんね」 花丸「ごめんね、嫌だったら離してもいいよ」
ルビィ「嫌じゃないよ、マルちゃんなら」
ルビィ「ずっと憧れていたから、こんな風に恋人みたいにデートするの」
花丸「…………」
ルビィ「それにきっとルビィも手汗かいちゃってるから」
花丸「マルもルビィちゃんのなら平気――というかむしろ嬉しいぐらい」
ルビィ「それじゃあ変態さんみたいだよ」
花丸「ルビィちゃんを前にすると理性を失っちゃうから、仕方ないね」
ルビィ「あはは、変なのぉ」 花丸「ルビィちゃん」
ルビィ「うゅ?」
花丸「今日は目一杯、楽しもうね」
ルビィ「うん!」
花丸「じゃあ早速、有名なジェットコースターに辺りに乗る?」
ルビィ「ルビィ、ちょっと怖いかも……」
花丸「でも楽しそうだよ、遊園地の定番だし」
ルビィ「そ、そうだよね、せっかくだし乗ってみないと」
花丸「よーし、ちょうど人も少なそうだし、行ってみよう!」 ―コースター―
ルビィ「ま、マルちゃん、手を離さないでね」
花丸「分かってるよ〜」
ルビィ「絶対、絶対だよっ」
花丸「大丈夫だって」
『それでは発車しまーす』
ルビィ「ピギィ!」
花丸「お、落ち着いて」
ルビィ「で、でもぉ」
花丸「ほら、意外と普通に走ってるだけだよ」
ルビィ「言われてみると、そうかも」 花丸「初めて乗ったけど、ジェットコースターって案外普通に楽しめるのかな」
ルビィ「そうだねぇ、叫んでる人は大袈裟なだけなのかも――」
ガタン
ルビィ「あれ」
花丸「止まったね」
ルビィ「どうしたんだろう」
花丸「うーん、トラブルじゃないよね」
ルビィ「そういう仕組みなのかなぁ」
花丸「そうだね――ずらっ!?」
ルビィ「ど、どうしたの、マルちゃん」 花丸「いや、前」
ルビィ「前?」
花丸「凄く急な坂になってる」
ルビィ「へっ」
花丸「これ、マルの予想が正しければ――――」
ギギッ
ルビィ「も、もしかして」
花丸「……手、離しちゃ駄目だよ」 花丸「これはたぶん、猛スピードで落下――」
ゴ―――――――
花丸「するずら―――――――――――――!」
ルビィ「ピギィ――――――――――――――!」
花丸「ずら――――――――――――」
ルビィ「ピィ――――――――――――」
花丸「み、未来ずら――――――――」
ルビィ「ま、マルちゃん―――――――」
花丸「これは未来ずら―――――――」
ルビィ「だ、誰か助けてぇ―――――――――― ――
―
『お疲れ様でした、お出口は右手になります』
花丸「ひ、酷い目にあったずら……」
ルビィ「うぅ」
花丸「ルビィちゃん、立てる?」
ルビィ「ピィ……、無理……」
花丸「ほら、手を貸してあげるから」
ヒシッ
花丸「る、ルビィちゃん!?」
ルビィ「……怖かったよぉ」 花丸「人が見てるから、一旦離して――」
ルビィ「嫌だ」
花丸「動けない?」
ルビィ「うん」
花丸(どうしよう、注目されてるし、このままだよくないよね)
花丸「ねえ、こっち向いて」
ルビィ「うゅ?」
チュッ
ルビィ「ま、マルちゃん!?」 花丸「ほ、ほっぺただけど、これで元気出して」
ルビィ「う、うん」
ザワザワ
花丸(しまったぁ、さらに注目されてる気が)
花丸(焦って変な選択しちゃったかも……)
ルビィ「ま、マルちゃん、恥ずかしいから行こっ」
花丸「う、うん」
花丸(でも動けたから、結果オーライかな) 花丸「とりあえず一回休む?」
ルビィ「時間も勿体ないし、次の乗ろうよ」
花丸「でも、大丈夫?」
ルビィ「うん、マルちゃんのお陰で元気出たもん!」
花丸「よかった、じゃあまたジェットコースターに――」
ルビィ「それは嫌だぁ」
花丸「ふふっ、冗談だよ」
花丸「今度はメリーゴーランド辺りにでも乗ろうか」
ルビィ「うん、そうしよう!」 半端なところですが、ご飯食べたりしたいんで少し中断します ―――
――
―
花丸「あー、楽しかった」
ルビィ「でも、結構な時間になっちゃったみたい」
花丸「外、真っ暗だもんね」
ルビィ「結局、遅くまで楽しんじゃった」
花丸「ルビィちゃん、結局ジェットコースターに夢中になってたもんね」
ルビィ「えへへ、慣れてくると、何か癖になっちゃって」
花丸「あんなに怖がってたのにねぇ」
ルビィ「だって手を繋ぎながら叫ぶの、楽しいんだもん」
花丸「……マルも楽しかったよ、本当に」 花丸「でもまだ少しだけ、物足りない感じもするね」
ルビィ「最後に何か乗る?」
花丸「ルビィちゃん、何かやりたいことあるかな」
ルビィ「ううん、もう特別には」
花丸「それじゃあ、最後に定番の乗り物に乗っておこうか」
ルビィ「定番?」
花丸「うん、デートの定番――観覧車に」 ―観覧車内―
ルビィ「わぁ、綺麗な夜景だね〜」
花丸「こんなに高い場所から下を見下ろすの初めてずら〜」
ルビィ「マルちゃん見て見て、遊具が全部小さく見えるよ!」
花丸「ホントだねぇ」
ルビィ「車がルビィ達と同じぐらいの大きさ!」
花丸「人は潰せちゃいそうだねぇ」
ルビィ「おぉ、マルちゃん怪獣だ!」
花丸「がおー、食べちゃうずら〜」
ルビィ「マルちゃんは怪獣になっても食いしん坊さんなんだね〜」 花丸「ふふふ、では手始めにルビィちゃんをいただきずら!」
ガシッ
ルビィ「ピギィ〜、捕まっちゃったよぉ」
花丸「うーん、どこからいただこうかなぁ」
ルビィ「ワクワク」
花丸「とりあえず、柔らかそうなほっぺたを――」
ルビィ「またキスするの?」 花丸「あ、そういえばもうしちゃってたね」
ルビィ「今日は大胆だねっ」
花丸「うぅ、思い出すと恥ずかしくなってくるずら」
花丸「あんな大勢の人がいる前で、キスしちゃって」
ルビィ「えへへ、だけど嬉しかったよ」
花丸「でも冷静になると、ちょっと心配だよね」
ルビィ「写真、撮られちゃったりしたかな」
花丸「まあ大丈夫だよ、バレても営業だって誤魔化せば」
ルビィ「うん、そうだよね」 花丸「それにここなら人も見てないし、気にしなくていいかな」
ルビィ「観覧車でキス、恋愛物の定番だもんね!」
花丸「うーん、今度はどこにしようかな」
ルビィ「……ねえ、場所はルビィが決めていい?」
花丸「もちろん」
ルビィ「それなら、口にキスしてよ」
花丸「……いいの?」
ルビィ「いいよ、普段は見つからないように我慢してるもん」
花丸「わかった……」 花丸「ルビィちゃん」
ルビィ「ま、マルちゃん」
花丸「こっち、向いて」
ルビィ「……うん」
花丸「目、瞑って」
ルビィ「うん」
チュッ
. 花丸「……しちゃったね」
ルビィ「ちょっと短め?」
花丸「だって、恥ずかしかったんだもん」
ルビィ「じゃあ今度はルビィから――」
チュッ
花丸「……ルビィちゃんも、短いよ」
ルビィ「ルビィも、恥ずかしかったから」
花丸「お互い様だね」
ルビィ「うん」 花丸「マルたちらしいね、なんか」
ルビィ「まだまだ子どもなのかなぁ」
花丸「経験不足だもんね、三年以上も付き合っているのに」
ルビィ「うゅ……」
花丸「でもゆっくりと、少しずつ積み重ねてしていけばいいよ」
ルビィ「うん」
花丸「それに、短くても嬉しかったよ。ルビィちゃんと触れ合えて」
ルビィ「ルビィもきっと、同じぐらい嬉しかった」
花丸「またしようね、デート」
ルビィ「うん、そうだね」 ルビィ「あっ、でもその前に善子ちゃんと一緒に来なきゃ」
花丸「おっと、忘れるところだったずら」
ルビィ「善子ちゃん、ジェットコースターを怖がりそうだよねぇ」
花丸「あはは、確かに善子ちゃんは可愛い反応をしてくれるよ」
ルビィ「むぅ、浮気は駄目だからね」
花丸「大丈夫、マルはルビィちゃん一筋だから」
ルビィ「ルビィもマルちゃん一筋だから、お揃いだね」
花丸「うん、お揃いずら!」 ルビィ「そろそろ、地上に戻るみたいだね」
花丸「そういえば今の時間、何時ぐらいだっけ」
ルビィ「えっとね――ピギッ!?」
花丸「ど、どうしたの」
ルビィ「い、急がないと電車の時間に間に合わないかも……」
花丸「へっ」
ルビィ「ど、どうしよう、お姉ちゃんに怒られるぅ」
花丸「マルも婆ちゃんに怒られるずら……」
ルビィ「と、とにかく急ごう!」
花丸「ず、ずら!」 ―黒澤家―
ルビィ「ただいま……」
ルビィ(結構遅くなっちゃったし、お姉ちゃんは寝てるよね)
ダイヤ「遅かったですね」
ルビィ「ピギィ!」
ダイヤ「何ですか、その化け物でも現れたかのような反応は」
ルビィ「えっと、寝るのが早いお姉ちゃんが起きてるとは思わなかったから」
ダイヤ「貴女の帰りが遅いから待っていたのですよ」
ダイヤ「こんな時間になるのに、連絡がないので心配していました」 ルビィ「ご、ごめんなさい」
ダイヤ「謝る必要はありませんわ、無事だったなら何よりです」
ルビィ「うゅ……」
ダイヤ「お母様には上手く言っておきましたので、報告の必要はありません」
ルビィ「ありがとう」
ダイヤ「一々、口うるさく感じるかもしれません」
ダイヤ「ただ貴女は普段しっかりとしている子なので、些細な事で心配になるのですよ」
ダイヤ「これからは帰りが遅くなる時、きちんと連絡をするように」
ルビィ「はぁい」 ダイヤ「今日は花丸さんと遊んでいたのですよね」
ルビィ「うん」
ダイヤ「どこへ行っていたのですか」
ルビィ「えっと、ちょっと遠出して」
ダイヤ「言いたくないと」
ルビィ「そういうわけじゃないけど……」
ダイヤ「構いませんよ。無理に言わなくても」
ルビィ「そう?」 ダイヤ「二人だけで遊びに行ったのですか」
ルビィ「そうだよ」
ダイヤ「善子さんは?」
ルビィ「今日は、二人で遊ぶ約束だったから」
ダイヤ「あらあら、ハブかれてしまったのですか」
ルビィ「そ、そんなことないもん!」
ダイヤ「分かっています、冗談ですよ」
ダイヤ「一年生の仲の良さはよく知っていますから」
ルビィ「もう、変な事言わないでよ」
ダイヤ「うふふ、ごめんなさい」 ダイヤ「ところで、ルビィ」
ルビィ「?」
ダイヤ「貴女は花丸さんと善子さん、どちらの方が好きですか」
ルビィ「えー、二人とも大好きだよ」
ダイヤ「どちらか一人を選ぶとすれば?」
ルビィ「それは、マルちゃんかな」
ダイヤ「ずいぶんとあっさり答えますね」
ダイヤ「理由は?」
ルビィ「それは、マルちゃんは中学の時からの仲良しさんだし」
ダイヤ「……なるほど」 ルビィ「もう、さっきから質問ばっかり。今日のお姉ちゃんは意地悪だよ」
ダイヤ「年頃の妹を持つと、姉として色々と気になるのですよ」
ルビィ「そういうものなの?」
ダイヤ「ルビィにも妹ができれば分かりますよ」
ルビィ「今さらできないから分からないよぉ」
ダイヤ「ふふっ、そうですね」
ダイヤ「ただ一つ言えるのは、私にとってルビィはそれだけ大切な存在ということです」
ルビィ「大切なの、ルビィのこと」
ダイヤ「ええ、他のどんな人よりも」 ルビィ「お母さんよりも?」
ダイヤ「ええ」
ルビィ「お姉ちゃん……」
ダイヤ「だから、あまり私に心配をかけないでくださいね」
ルビィ「うん、頑張るよ」
ダイヤ「いい子ですね、ルビィ」
ルビィ「うゅ」 ダイヤ「……ちなみに、私と花丸さんはどちらの方が好きですか?」
ルビィ「マルちゃんかな」
ダイヤ「そ、即答されるとショックなのですが」
ルビィ「ごめんね、でもお姉ちゃんも大好きだよ」
ダイヤ「それなら一応、よしとしましょうか」
ルビィ「じゃあお姉ちゃん、ルビィは部屋に戻るね」
ダイヤ「ええ、明日寝坊しないように、早く休みなさいね」
ルビィ「はーい」 とりあえずここまで
続きは昼か夕方ぐらいに投稿します ―生徒会室―
千歌「失礼しまーす」
ダイヤ「千歌さん、わざわざすみません」
千歌「珍しいですね、生徒会室に呼び出しなんて」
ダイヤ「千歌さんだけに話しておきたいことができたので」
千歌「私だけに?」
ダイヤ「……あまり大勢には話したくない類の事なんですよ」 千歌「えっと、結構真面目な話ですか」
ダイヤ「ええ」
千歌「なぜ私だけに?」
ダイヤ「Aqoursに関わる問題かもしれないので、リーダーには話しておかなくてはと」
千歌「そこまで深刻な問題――いったいどんなことが」
ダイヤ「まあ、これを見てもらえれば分かります」
千歌「これ?」
ダイヤ「実は、この写真なんですが」 千歌「これは――ルビィちゃんと花丸ちゃん?」
ダイヤ「ええ、今SNSに出回っている写真です」
千歌「へー、手を繋いで、相変わらず仲良しですね」
ダイヤ「ええ、これだけなら微笑ましい写真ですね」
千歌「あ、こっちは抱き合う写真」
ダイヤ「それもまだ、いいのですよ」
千歌「それでこっちは――キス!?」
ダイヤ「そのようです」 千歌「合成写真じゃないんですよね」
ダイヤ「紛れもない本物のようです」
ダイヤ「場所は隣県にある遊園地、目撃者もそれなりにいるようで」
ダイヤ「実際、日付やタイミングはルビィと花丸さんが遊びに行っていた日と同じでした」
ダイヤ「発信者も二人のファンのようですし、話の辻褄は合っています」
千歌「じゃあ、この二人はこんな公衆の面前で」
ダイヤ「大胆な行動ですよ、本当に」
ダイヤ「普段の臆病さはどこへいったのやら」 ダイヤ「幸い、まだ広くは知られていません」
ダイヤ「私たちは所詮、静岡のローカルスクールアイドルです」
ダイヤ「サービス精神が過剰なグループではこのぐらいの行為はよくあるので、そこまで広まることもないでしょう」
千歌「そうですよね、そんなに注目している人もいないでしょうし」
ダイヤ「問題は二人の保護者に知られてしまった場合です」
千歌「マズいんですか」
ダイヤ「おそらく、共にスクールアイドルを辞める必要があるでしょう」
千歌「えっ」 ダイヤ「特に、我が家は間違いなく」
千歌「黒澤家、だから」
ダイヤ「ここは狭い田舎です」
ダイヤ「次女とはいえ、娘におかしな噂がたつのを家の者は好まないでしょう」
千歌「同性愛者がいるのは、やっぱり問題になるんでしょか」
ダイヤ「ええ、そうですね」
ダイヤ「私たち若い世代なら抵抗も薄いでしょう」
ダイヤ「しかしここに住んでいる大多数は、同性愛への偏見が強い年代の方ばかり」
ダイヤ「我が家の権力を脅かす、そんな事実になりかねません」 千歌「でも、何とかなるんじゃないですか」
ダイヤ「なぜ、そう思うのですか」
千歌「だって2人とも、本当に付き合ったりしているわけじゃないんですよね」
千歌「だったらちゃんと説明して謝れば、これぐらい――」
ダイヤ「……そのとおりですね、本当に恋人でなければ」
千歌「ま、まさか」
ダイヤ「いえ、私もそうではないと思っています」
ダイヤ「しかし、時々匂わせるのです。そのような最悪のケースを」 ダイヤ「一応、手は打ってあります」
千歌「手、ですか」
ダイヤ「ええ」
ダイヤ「ルビィは純粋な子です」
ダイヤ「人を疑わず、すぐに心を開く」
ダイヤ「とても素敵な事ですが、利用しやすい一面でもあります」
ダイヤ「花丸さんならともかく、あの子なら事実を聞き出すのは難しくない」
千歌「悪役みたいですね、今のダイヤさん」
ダイヤ「権力者の娘の物語における定番の立ち位置ですから」
千歌「あはは、確かに」
ダイヤ「私としては、何事もないことを祈っていますよ」 千歌「……ねえ、ダイヤさん」
ダイヤ「どうしました」
千歌「ダイヤさんは、同性愛についてどう思いますか」
ダイヤ「それは、私の考えを知りたいと」
千歌「はい」
ダイヤ「黒澤家の長女としての意見は、断固反対です」
ダイヤ「立場上、賛成できるわけもありません」
ダイヤ「私自身、特にそのような趣味もありませんから」 千歌「……やっぱり、そうですよね」
千歌「同性愛は、認められないもの」
ダイヤ「そうですね、特にこの閉鎖的な田舎においては」
千歌「……はい」
ダイヤ「なぜ、そのような事を尋ねたのですか?」
千歌「それは……」
ダイヤ「……千歌さん、あまりこのような話をするのはおすすめしません」
ダイヤ「察しのいい相手なら、その言葉の裏が簡単に理解できます」 千歌「あっ」
ダイヤ「大丈夫、野暮な事は言いません」
ダイヤ「黒澤ダイヤという人間の立場では、それに反対はしませんよ」
ダイヤ「周囲の応援が得られるのなら、その道を目指すのも賛成です」
千歌「ダイヤさん……」
ダイヤ「ただし、これは黒澤ダイヤ個人としての意見」
ダイヤ「黒澤家長女としての立場だった場合、変わることは理解しておいてください」
千歌「は、はい」 ダイヤ「さて、それでは練習へ行きましょうか。皆が待っています」
千歌「あ、あの」
ダイヤ「まだ何か?」
千歌「もし、もし二人が本当に付き合っていたら、本当にAqoursを辞めなきゃいけないんですか」
千歌「何とか、九人で続けることはできないんですか」
ダイヤ「……できる限り、善処はします」
ダイヤ「ただ、覚悟はしておいてください」
千歌「……分かりました」 とりあえずここまで
続きは早ければ今日の夜、無理なら明日の夜になると思います 「あしたのパスタはアルデンテ」って映画思い出したずら… ドスケベボディのSSが終わってこっちが今の生きる希望 ――1年生教室――
善子「くっくっくっ、ついにこの日が来たわね」
ルビまる「「この日?」」
善子「リトルデーモン4号、5号と闇の集いを行なう日よ!」
ルビィ「ああ、お泊り会の事だね」
善子「そうとも言うわ」
花丸「むしろそれ以外の表現が出る方がおかしいずら」 ルビィ「よっぽど楽しみだったんだねぇ」
善子「ち、違うわよ」
花丸「善子ちゃん、友達とお泊りとか初めて?」
善子「うっ」
ルビィ「あっ、図星みたいだよ」
花丸「朝からずっとそわそわしてたもんね〜」
善子「う、うるさいわね」
花丸「可愛いよ、ヨハネ様〜」
ルビィ「ヨハネ様〜」
善子「からかわないでよっ!」 ルビィ「ごめんね、可愛いからつい」
花丸「そうそう、一々派手に反応してくれるんだもん、不可抗力だよ」
善子「もうっ、今日は私を崇めてくれる日のはずでしょ」
花丸「分かってるよ〜」
ルビィ「二人でこっそり遊園地へ行った分の埋め合わせだもんね」
善子「本当よ。一人置いて行かれたと知った時は寂しかったんだから」
ルビィ「……何か善子ちゃん、素直だね」
花丸「……どうしたんだろう、珍しい」 善子「ちょっと、なにを話してるの」
ルビィ「う、ううん、何でもないよ」
花丸「えっと、善子ちゃんへのサプライズの確認をね」
善子「サプライズ!――って言ったら意味ないでしょ!?」
ルビィ「あはは、とにかく行こうよ」
花丸「そうそう、時間は限られてるんだよ」
ルビィ「バス停までがんばルビィだよっ」
花丸「早く行くずら〜」
善子「ま、待ちなさいよ〜」 短いですが時間がないのでここまで
たぶん続きは明日の昼過ぎ、もしかしたら深夜〜早朝ぐらいに投稿できるかもです 保守ありがとうございます
投稿遅れていてすみません
ちょっと指の骨を怪我してしまって、書くのに時間がかかっています
ゆっくりと書いてはいるので、もう少ししたら投稿はできる予定です ―国木田家―
花丸「というわけで、マルの家に到着〜」
ルビィ「わ〜」
善子「……なに、この茶番は」
花丸「えーと、サプライズの一環?」
ルビィ「かな?」
善子「もうそれはいいわよ」
花丸「そう?」
善子「ええ、むしろ普通にお泊り会したいぐらいなんだけど」
花丸「そっか、なら早速――あっ、飲み物とかお菓子持ってくるの忘れてたよ」 ルビィ「それならルビィが取ってくるよ」
花丸「ありがとう〜」
花丸「いやぁ、流石はルビィちゃん。気が利くずら」
善子「でも大丈夫なの?」
花丸「なにが?」
善子「ルビィだけだと、色々置いてある場所とか分からないんじゃ」
花丸「平気だよ。ルビィちゃんは家事をしない祖父ちゃんよりこの家について詳しいから」
善子「もしかして、結構日常的に泊まりに来てる?」
花丸「うん」
善子「……本当に仲が良いわね、あんたらは」 花丸「善子ちゃんも普段から来ればいいのに」
善子「誘ってくれたら、邪魔にならない範囲で検討するわ」
花丸「邪魔になんて――
ルビィ「お待たせ〜」
善子「はやっ」
花丸「ルビィちゃん、お疲れ様」
善子「本当に家の事を熟知しているみたいね」
ルビィ「マルちゃんのお祖母ちゃんがいないから、少し苦労しちゃったよ」
花丸「いつもはばあちゃんがいるもんね」
善子「今日みたいに他に誰もいない日は珍しいの?」
花丸「そうだね、大抵は誰かいるかも」 ルビィ「ルビィも家の人がいない中でのお泊りは初めてかなぁ」
善子「……何か悪いわね」
ルビィ「なんで?」
善子「ううん、気にしないで」
ルビィ「?」
善子「それよりも、なにかして遊びましょうよ」
花丸「遊びかぁ、何かあったかなぁ」
善子「ゲームとか持ってないの?」
花丸「無いよ」 ルビィ「そもそも液晶テレビすらないよ、このお家」
善子「へっ」
ルビィ「前に話さなかったっけ。電化製品が全然ないって」
善子「いやいや、でも流石にテレビぐらいはあるでしょ、普通」
花丸「ふふっ、それは善子ちゃんの中の常識だよ」
善子「そんな自慢気に言われても困るんだけど……」
ルビィ「まあまあ、すぐに慣れるよ」
善子「……そうね、郷に入れば郷に従えというもの」
善子「じゃああれかしら、何かアナログのゲーム類とか」 花丸「それも無いよ」
善子「はい?」
ルビィ「マルちゃんが持っている娯楽用品は本と、最近手に入れたスマホだけなんだ」
善子「冗談よね」
花丸「ふふっ、これが冗談じゃないんだよ」
善子「なんでまた自慢げなの……」
ルビィ「最初はルビィもビックリしたよ」
ルビィ「漫画、ネット環境、テレビ、若者向けの雑誌すらないんだもの」
善子「コメントに困るわ、本当に」
ルビィ「でも格好いいよね、特別な感じがして」
善子「それは貴女の目にバイアスがかかってそう見えるだけよ」 善子「というか、二人でお泊りする時は何をしてるのよ」
善子「ルビィもあんまり本は読まないし、することないでしょ」
ルビィ「うーん、言われてみると」
花丸「でもお喋りしているだけで時間が経つから、気にならないかな」
ルビィ「そうだよね、話していると気づけば遅い時間になって怒られちゃうこと多いし」
花丸「そもそもマルはルビィちゃん居られれば無言でも幸せだよ」
ルビィ「えへへ、ルビィもだよ」
善子「ねえ、甘すぎて色々辛いから止めない?」
花丸「甘い? お菓子が?」
善子「……それでいいわよ、もう」 ルビィ「でも困ったね。本当に遊ぶものがないや」
花丸「ずっと三人でお喋りするのも悪くはないけどね」
善子「一応、こんなこともあろうかとトランプを持ってきたわよ」
ルビィ「おぉ、流石は善子ちゃん」
花丸「でも準備が万端過ぎて正直引くレベルずら」
善子「素直に称えなさいよ」
ルビィ「あはは、でも毒舌はマルちゃんなりの善子ちゃんへ対する愛情表現だから」
花丸「ちょ、ちょっと、ルビィちゃん」
善子「あら、そうなの」 ルビィ「うん。善子ちゃんが遠慮なく接することができる特別な存在だからこその言動なんだよ」
善子「ふふっ、そう言われると悪い気はしないわね」
花丸「ち、違うよ。マルのは善子ちゃんが残念すぎるから――」
ルビィ「こうやって素直になれないのも、可愛いよねぇ」
善子「そうね〜」
ルビィ「普段は善子ちゃんを捻くれ者ってからかうのに、本当に素直じゃないのはマルちゃんの方だもん」
善子「くっくっくっ、顔が真っ赤よリトルデーモン五号」
花丸「くぅ、恥ずかしいずら……」 長期間保守ありがとうございます
とりあえず書けたところまで
もう少し進められれば書き溜め分につながるので、どこかで大量に投稿できると思います 度々保守ありがとうございます
とりあえず再開します ルビィ「うーん、恥ずかしがるマルちゃんも可愛いねぇ」
花丸「……あんまりいじめると拗ねるよ」
ルビィ「それは困るよぉ」
花丸「ふーん」
ルビィ「マルちゃん、機嫌直してよぉ」
花丸「……何か誠意を見せてもらわないと、嫌だ」
ルビィ「じゃあお詫びに――ハグッ」
ギュッ
ルビィ「えへへ、これでどうかな」
花丸「うん、許してあげるずらっ」 善子「……あんたら、少しは自重しないと色々と疑われるわよ」
ルビィ「疑われる?」
善子「知らないの? 二人で遊園地へ行ったときの写真、ネットに出回ってるわよ」
花丸「写真?」
善子「手を繋いだり、抱き合ったり、頬にキスをしたり、そんな感じの写真ね」
ルビィ「あっ、ジェットコースターの時の」
花丸「撮られちゃってたんだね……」
善子「わたしが知る限り、スクールアイドルの百合画像としてそれなりに有名になってるわ」
善子「二人は見てくれが良いから、Aqoursを知らない人にも評判になってるみたいで」 ルビィ「あれ、善子ちゃん褒めてくれてる」
花丸「いやぁ、照れるねぇ」
善子「私の意見じゃなくて一般論よ――私だって可愛いとは思っているけど」
花丸「おぉ、今日の善子ちゃんは素直だね」
ルビィ「善子ちゃん、いつにも増して可愛いねぇ」
花丸「マルたち三人、可愛いトリオだね!」
善子「そ、そうね――って呑気なこと言ってるんじゃないわよ」
善子「同性愛なんて噂としては洒落にならない部類よ」
善子「しかも実名で晒されてるし、もっと危機感を持ちなさい」 ルビィ「うゅ……」
花丸「ずら……」
善子「まあ、影響がなければいいのよ」
善子「結果的にAqoursのいい宣伝にはなってるみたいだし」
花丸「そっか、グループ名も一緒に広まるもんね」
善子「さて、真面目な話はこれぐらいにして――そろそろ遊びましょう!」
ルビィ「あっ、うん」
花丸「切り替え早いずら」
善子「くっくっくっ、宴の始まりよ―――― ―――
――
―
善子「……んがぁ」
花丸「善子ちゃん、寝ちゃったね」
ルビィ「かなりはしゃいでいたもんね」
花丸「今日が楽しみで昨日はあんまり眠れなかったのかも」
ルビィ「子どもみたいで可愛いねぇ」
花丸「そうだねぇ」 ルビィ「でも楽しいよね、三人でのお泊り会」
花丸「ルビィちゃんと二人もいいけど、やっぱり善子ちゃんと三人の時間も特別ずら」
ルビィ「仲良し三人組だもんね」
花丸「高校に入る前は、ルビィちゃん以外にこんなに仲良くなる子ができるとは思ってなかったなぁ」
ルビィ「ルビィも、ずっとマルちゃんと二人で居ると思ってたよ」
花丸「もちろん、ルビィちゃんの方が圧倒的に好きだけどね」
ルビィ「マルちゃん、やっぱり素直じゃないね」
花丸「ふふっ、そうかな」 ルビィ「ずっと一緒に居たいね。三人で」
花丸「大丈夫だよ――マルたちの関係さえ隠し通せれば」
ルビィ「隠せるかな、ずっと」
花丸「ルビィちゃん?」
ルビィ「怖いんだ、どんなに注意していても、いつかは知られてしまうことが」
花丸「……きっと何とかなるよ」
花丸「今は大変でも、大人になったらもっと自由になる」
花丸「大学に入って、内浦を離れられれば、少なくとも今よりは楽になれる」
花丸「高校生の間、何とか耐えられれば」
ルビィ「そっかぁ、そうだよね」 ルビィ「だけど大学を卒業したら、ルビィは黒澤家に戻らなきゃいけないかも」
ルビィ「地元か、どこか関係を強化したい有力者の家に嫁ぐ」
ルビィ「それが次女という立場の人間に、求められていることだから」
花丸「そうなったら、マルがルビィちゃんをさらっちゃうよ」
花丸「誰もマルたちに手が出せない場所に連れ出してあげる」
ルビィ「あはは、そんなことができたら嬉しいね」
花丸「むっ、マルは本気なんだけど」
ルビィ「ふふっ、じゃあルビィも逆の立場になったらマルちゃんと同じことをしようかな」
花丸「おぉ、王子様みたいだね」 ルビィ「でもその前の大学生活も楽しみだね」
花丸「やっぱり同じ大学に行くのかな」
ルビィ「そうだね、出来れば善子ちゃんも含めて3人で」
花丸「みんなで同じお家に住むのもいいかも」
ルビィ「いいね、楽しそう!」
花丸「それだとルビィちゃんと思う存分いちゃつけないのが欠点だけどね」
ルビィ「うーん、もし二人で暮らしてもお姉ちゃんが定期的に来そうだから、そこは同じかも」
花丸「あぁ、容易に想像出来るずら」 ルビィ「お姉ちゃん、何であんなに過保護なのかなぁ」
花丸「それだけルビィちゃんが大切なんだよ」
ルビィ「うゅ、それは嬉しいけど……」
花丸「マルだって、ダイヤさんの立場なら同じような感じになるかも」
ルビィ「そうなの?」
花丸「マルもルビィちゃんが大切だから」
花丸「たぶんね、お姉ちゃんってそういうものなんじゃないかな」
ルビィ「そっか……」 花丸「想像すると楽しそうだけどね、ルビィちゃんと姉妹なのも」
ルビィ「うーん、でも姉妹ならマルちゃんが妹かなぁ」
花丸「なんで?」
ルビィ「だってルビィの方が身長大きいもん」
花丸「身長って大事かな」
ルビィ「あと、ルビィもお姉ちゃんになってみたいから」
花丸「うーん、でもルビィちゃんはやっぱり妹向きずら」
ルビィ「むぅ、マルちゃんにそう言われると」
花丸「早速、花丸お姉ちゃんと呼んでもいいよ?」
ルビィ「お姉ちゃんかぁ――本当に姉妹だったら、何も気にせずに一緒に居られたのにね」 花丸「そうだね、でも――
グイッ
花丸「こういうことはできないから、マルは今の関係の方が好きかな」
ルビィ「ま、マルちゃん、どうしたの急に迫って――」
花丸「……近くで観ると、ルビィちゃんは本当に可愛いね」
ルビィ「ピギッ」
花丸「ねえ、久しぶりにしない?」
ルビィ「だ、駄目だよ、善子ちゃんもいるのに」 花丸「大丈夫だよ、ぐっすり寝てるもん」
花丸「他に人もいないし、何の障害もないよ」
ルビィ「だけど、もし見つかったら大変なことに――」
花丸「分かってるよ、それは」
花丸「でも我慢できない。こんな絶好の機会はなかなか無いから」
ルビィ「それは、そうだけど……」
花丸「お願い、ルビィちゃん」
ルビィ「……分かったよ」
花丸「いいの?」
ルビィ「うん、でも少しだけだよ」
花丸「ありがとう、じゃあ早速―――― ―――
――
―
ルビィ「すぅ、すぅ」
花丸「ふふっ」
花丸(可愛い寝顔)
花丸(久しぶりだったから、少し激しくしすぎちゃったかな)
花丸(まるで性を制御できない、思春期の男子みたいで、少し恥ずかしいかも) 花丸(久しぶりだったから、歯止めが効かなかった)
花丸(たぶん、ルビィちゃんとしたのは中学の時以来)
花丸(付き合い始めたころはそれなりの回数をしていた)
花丸(誰もいない図書室で、こっそりと行われた情事)
花丸(こっそりと物陰に隠れて、拙い知識を元に互いを慰め合う)
花丸(いま思うと、なんて危険な行動だったんだろう)
花丸(いくら人がいない場所とはいえ、自由に出入りができ、人に見つかりやすい空間だったのに)
花丸(でも仕方ない)
花丸(あの時は気づいていなかった、自分たちの置かれた立場の異質さを) 花丸(自らの特殊性に気づいたのは、偶然聞こえてきたクラスメイトの会話)
花丸(同性から告白されたという話で盛り上がる彼女たち)
花丸(その中で聴こえる、『気持ち悪い』、『受け入れられない』という言葉)
花丸(皆がそれを否定せず、積極的に肯定する)
花丸(それまで、全くそういう意識がなかったわけではない)
花丸(でもどこかで信じていた、世間の同性愛を受け入れる建前の風潮を)
花丸(しかし知ってしまった、心の中ではほとんどの人が嫌悪感を抱いている現実を)
花丸(自分自身ももちろん、ショックだった)
花丸(でもそれ以上に、一緒に居たルビィちゃんの表情が未だに忘れられない) 花丸(気づいてから、人目を避けるようにほとんどしてこなかった)
花丸(今日みたいに可能な状況でも、自分から避けるようにしてた)
花丸(ルビィちゃんに気を遣う意味も、当然あった)
花丸(幸いそこまで性欲も強くなかったので、特に支障をきたしていなかった)
花丸(互いに、傍にいるだけで幸せだったから)
花丸(それなのに、今日は我慢できなかった)
花丸(これはある種、遊園地での大胆な行動で開き直れた結果の行動が及ぼしたものかもしれない)
花丸(あの時はまだ子どもなんて言ってたのに、ね) 花丸(ずっと、不安だった)
花丸(いつかルビィちゃんと引き離されてしまう日が来ることが)
花丸(さっきは何とかするなんて言ったけど、所詮マルの力は小さい)
花丸(どんなに抗っても、きっとその結末は避けられないかもしれない)
花丸(少しでも一緒に居たくて、だから慎重に隠してきた)
花丸(今日みたいな行動も、本当は避けるべき)
花丸(遊園地もの時もそう)
花丸(軽率な行動をして、写真まで撮られて)
花丸(あれで周囲に疑われてしまったかもしれない) 花丸(でも、まだ誤魔化せる)
花丸(所詮は人の噂、また以前のように我慢すればすぐにみんな忘れてしまう)
花丸(そのまま何事もないように、大学生になって、大人になって)
花丸(家のしがらみから逃れて生きていけるようになれば、きっと堂々と2人で居られるようになるかもしれない)
花丸(恋人として、永遠に)
花丸(絶対に、何とかしてみせる)
花丸「ずっと、一緒に居ようね」
花丸(最後まで、どんな手を使ってでも、一緒に) キリもいいのでいったんここまで
今日中に再開するつもりで考えています 続き来てた!マルちゃんの独白で今すぐにでも不穏な影が現れて来そうな感じが... ――桜内家――
梨子「ルビィちゃん、そっちそろそろ見ないと」
ルビィ「そ、そうですね」
梨子「私の方は――あっ」
ルビィ「ピギッ、何かチョコの焦げた匂いが……」
梨子「ご、ごめんなさい。ちょっと火が強すぎたみたい……」
ルビィ「で、でもクッキーの方は――あれ、甘くない」
梨子「もしかして、調味料の配分間違ったかな」
ルビィ「り、梨子ちゃん、火を消さないと!」
梨子「あ、大変!」 ―――
――
―
ルビィ「な、何とか完成しましたね、お菓子」
梨子「ええ……」
ルビィ「ごめんなさい、だいぶ散らかしちゃって」
梨子「いいのよ、主な原因は私だから……」
ルビィ「げ、元気出してください」
ルビィ「ちゃんと美味しそうに完成したんですから」
梨子「そうね、出来合いものしか作ったことのない私にしては」
ルビィ「へっ」 梨子「実はね、今までお菓子作りなんてほとんどしたことがなかったの」
ルビィ「そうだったんですか」
梨子「ごめんね、言い出せなくて」
ルビィ「いえ、それなのに協力を頼んじゃって、ごめんなさい」
梨子「謝らなくていいのよ、見栄張って引き受けた私なんだから」
梨子「でもルビィちゃん、何で私に協力を頼んだの?」
ルビィ「えっと、やっぱりこういう女の子らしいのは、梨子ちゃんが適任かなぁ〜って」
梨子「……ごめんね、イメージ通りの素敵な先輩じゃなくて」
ルビィ「い、いえ」 ルビィ「よく考えたらピアニストなんですから、料理とかはあまりしないですよね」
梨子「恥ずかしながらね」
梨子「指を傷つける可能性がある包丁とか、使ったことがないのよ」
梨子「それどころか、火もほとんど使ったことがないぐらい」
梨子「あと水で手が荒れたら大変だからって、水仕事もほとんどしてこなかったの」
ルビィ「ふぇ、やっぱりプロを目指すような人だとそこまで徹底するんですね」
梨子「うちの両親が過保護なだけかもしれないけどね」
ルビィ「梨子ちゃん、ピアノが本当に上手ですもんね」
梨子「ふふっ、ありがとう」 ルビィ「もうプロとかは目指さないんですか?」
梨子「あれ、ルビィちゃんは私にAqoursを辞めてほしいの?」
ルビィ「そ、そんなことはないですけど」
梨子「うふふ、冗談だよ」
梨子「もちろん考えてない訳じゃない」
梨子「でもね、今の時間はすごく楽しいの」
梨子「怪我をするかもなんて気にすることもなく練習して、みんなで一つの目標に向かって」
梨子「こんな風に楽しく後輩と料理をするのも、以前なら考えられなかったから」
ルビィ「あはは、盛り上がりましたもんね」 梨子「とりあえず、しばらくは今の状態を続けるつもり」
梨子「少なくとも、Aqoursが続いている間はピアノだけに打ち込むことはないと思う」
ルビィ「……Aqoursが、続いている間」
梨子「もちろん、その後もどうなるかは分からないけどね」
ルビィ「いつか終わっちゃうんですよね、Aqours」
梨子「そうね」
梨子「まばゆく光輝く時間にも、いつか終わりは来る」
梨子「そしてその終わりは、いつ訪れるか分からない」
ルビィ「梨子ちゃん?」
梨子「……気にしないで、ちょっと昔のことを思い出したの」 ルビィ「……梨子ちゃん」
梨子「ごめんなさい、少し暗い雰囲気にしちゃって」
ルビィ「い、いえ」
梨子「ルビィちゃん、そのお菓子は花丸ちゃんにあげるの?」
ルビィ「はい」
梨子「食べるのが好きだもんね、花丸ちゃん」
ルビィ「梨子ちゃんは、善子ちゃんに?」
梨子「よく分かったね」
ルビィ「チョコレートが好きなのは善子ちゃんですし」
梨子「なるほど、分かりやすかったかな」 ルビィ「梨子さんは、善子ちゃんが好きなんですか」
梨子「うん、好きだよ」
ルビィ「どのぐらい好きなんですか?」
梨子「うーん、恋人にしたいぐらいかな」
ルビィ「こ、恋人!?」
梨子「変かな?」
ルビィ「そ、そんなことは」
梨子「ルビィちゃんは考えない?」
梨子「花丸ちゃんと、恋人になりたいとか」
ルビィ「え、えっと、それは」 梨子「うふふ、意地悪な質問だったかな」
ルビィ「う、うゅ……」
梨子「答えられないわよね、複雑な問題だから」
梨子「私もね、なかなか話せないの」
ルビィ「!」
梨子「初めて二人を見ていた時から気づいてたの」
梨子「この子たちは、私と同じ気持ちを抱いていると」
梨子「周囲から隠さなければならない、特別な気持ちを」 ルビィ「なら、恋人になりたいっていうのは本気で」
梨子「うん、そうだね」
梨子「私は善子ちゃんが好き」
梨子「恋人になりたいって、ずっと思っている」
梨子「ずっと一緒に寄り添って生きていきたい」
梨子「手を繋いで、キスをして、エッチなことも色々して」
梨子「ルビィちゃんも思うでしょ、花丸ちゃんと同じようなことをしたいって」
ルビィ「……はい」 梨子「花丸ちゃんとは付き合ってるの」
コクリ
梨子「もしかして中学の時からとか?」
ルビィ「えっと、一応」
梨子「これからもずっと、花丸ちゃんと恋人で居続けるの?」
ルビィ「できる限り、そのつもりです」
梨子「周囲から止められても?」
ルビィ「はい」
ルビィ「だってルビィは花丸ちゃんを愛してるから」 梨子「そっか――――
梨子「ごめんね、ルビィちゃん」
ルビィ「えっ?」 ダイヤ「ルビィ……」
ルビィ「お、お姉ちゃん」
ダイヤ「まさか、本当に花丸さんと」
ルビィ「ち、違うの、今のは、その、冗談で――」
ダイヤ「言い訳は結構です」
ルビィ「い、言い訳じゃなくて、本当に」
梨子「諦めよう、ルビィちゃん」
梨子「もう、誤魔化せないよ」 ルビィ「梨子さん、なんで……」
梨子「ごめんね、ルビィちゃん」
梨子「でもね、もっと人を疑うことを覚えなきゃ駄目だよ」
梨子「まさかこんな簡単に、私がついた嘘に引っかかるなんて思わなかった」
ルビィ「嘘ってことは……」
梨子「うん、私が同性愛者のわけないよ」
梨子「あんな、気持ち悪くて周囲から蔑まれる存在なわけ」
梨子「私はあくまで、ルビィちゃんから本当のことを引き出すように頼まれただけなの」
ルビィ「そんな……」 ダイヤ「それぐらいでいいでしょう」
ルビィ「お姉ちゃん……」
ダイヤ「梨子さんを恨まない事です」
ダイヤ「貴女の為に、わざわざ汚れ役を買って出てくださったのですから」
ルビィ「で、でも」
ダイヤ「ありがとうございます、梨子さん」
梨子「……いえ」
ダイヤ「お礼には改めて伺いますので」 ダイヤ「さてルビィ、帰りますよ」
ルビィ「ま、待って、説明を――」
ダイヤ「不要です」
ダイヤ「それは十分、貴女の口から聴きましたから」
ルビィ「…………それは」
ダイヤ「安心しなさい、お母様たちにはこの事は話さないでおきます」
ダイヤ「貴女の大切なAqoursの活動も、可能な限り同様に続けられるはずです」
ダイヤ「ただし、一つだけ」
ダイヤ「今後、花丸さんとの接触は禁止します」 保守ありがとうございます、投稿遅れ気味ですみません
遅くとも来週中には完結を目指しています
あと、明日から地域表示が変わるかもですが、恐らく自分なのでよろしくお願いします わ、罠だ!これは罠だ!リコが私を陥れるために仕組んだ罠だ!
音ノ木坂から来たのにレズじゃないのはおかしいじゃないか、それが罠だという証拠! 諦めよう、ルビィちゃん
さっき君は「花丸ちゃんを愛してる」と言った
それは自白しているも同然だ ―津島家―
善子「リリー!」
梨子「いきなり呼び出しておいて、騒々しいわね」
善子「なんなのよ、その態度!」
梨子「ちょっと落ち着いて、善子ちゃん」
善子「なんで、なんであんなことしたのよ!?」
梨子「あんなこと?」
善子「ダイヤから聞いたわよ、ルビィを騙して関係を聞き出したって」
梨子「仕方ないでしょ、頼まれてたんだから」
善子「だからって、そんなだまし討ちみたいな――」 梨子「元はといえば、善子ちゃんの責任でしょ」
梨子「私と同じように探りを入れるよう頼まれたのに、何も聞き出せなかった」
善子「それは、そうかもだけど」
梨子「早めに聞き出していれば、少なくともこんな辛い形にはならなかったのに」
善子「……」
梨子「わかってはいたけどね、友達想いの善子ちゃんにはできないことぐらい」
善子「……当たり前でしょ、大切な二人を引き裂けるわけないじゃない」
梨子「それで適当な報告をしたんでしょ」
梨子「ダイヤさんにはバレバレだったよ」 善子「なんで、リリーは正直に話したの」
梨子「おかしいかな」
善子「おかしいわよ!」
梨子「でも、必要だと思ったからやったのよ」
梨子「私に言わせればおかしいのは善子ちゃんの方だわ」
善子「なんで、そんなこと言うの」
梨子「素直になっていいのよ」
梨子「嫌だったでしょ、近くに二人も同性愛者がいるのは」 善子「違う、そんなことない」
善子「例えどんな人間だとしても、二人と私は大好きな友達よ」
善子「二人を大切に想う気持ちは変わらないわ」
梨子「へぇ、立派ね」
梨子「でもね、私の方がよっぽど二人の事を考えているわ」
善子「……どうしてリリーは分かってくれないの」
善子「そんなに、同性愛者が嫌なの」
善子「いいじゃない、誰にもばれないように二人で付き合っても」 梨子「……ねえ、善子ちゃん」
梨子「私がピアノを弾けなくなった理由、知ってる?」
善子「なによ、いきなり関係のない話を」
善子「同情でも引こうっていうの?」
梨子「ううん、これは関係のある話だよ」
善子「関係のある、話?」
梨子「だってその理由はね、私が恋をしたから」
梨子「二人と同じ、許されない恋を」
梨子「その結果、最愛の人は消え去り、私は消えない傷を負った」 善子「ま、まさか」
梨子「ねえ、善子ちゃん」
善子「な、なによ」
梨子「さっき二人のことを庇ったあなたは、私の恋を受け入れてくれるの?」
善子「そ、それは」
梨子「善子ちゃん――」
善子「こ、こないで!」
ドンッ
. 善子「あっ……」
梨子「……ほらね、現実はこんなもの」
善子「ち、ちがっ、今のは」
梨子「いいよ、無理しなくても」
梨子「結局こうなるの。周囲は受け入れてくれず、愛する人は引き離される運命」
梨子「離れ離れになるなら、早い方が傷は浅い」
梨子「だから私はダイヤさんに協力して、二人を引き離したの」
梨子「取り返しがつかなくなる前に」 梨子「これでも、まだ同じことが言える?」
梨子「二人の仲を引き裂いた私に、文句を言える?」
梨子「言えないよね、善子ちゃんは」
善子「……ええ、そうね」
梨子「じゃあ、話はここまでかな」
善子「…………」
梨子「私は帰るわね」
梨子「今日話した内容は忘れて、明日からまた仲良くしてくれると嬉しいわ」
梨子「難しいかも、しれないけどね」 善子「…………」
善子「私が、間違っていたの?」
『……ほらね、現実はこんなもの』
善子「ごめんね、リリー」
善子「ごめんね、花丸、ルビィ……」 ―図書室―
花丸「誰も、いないな」
花丸(ひとりぼっちの図書室)
花丸(屋上から、Aqoursのみんなが練習している声が聞こえる)
花丸(でも、以前のような活気とは程遠い、どこか空々しい声)
花丸(それだけ自分の存在感があった――わけではないだろう)
花丸(あからさまに元気をなくした同級生、詳しいことを知らないからこそ不信感が拭えないであろう上級生)
花丸(動揺するなという方が無茶だろう) 花丸(ダイヤさんから出された、接触禁止令)
花丸(当然、どちらかがAqoursを辞めなければならなくなった)
花丸(同じ部活に所属している限り、それは不可能だから)
花丸(もちろん、それはマルの役目。彼女にその事を告げられた時、迷わず即答した)
花丸(ルビィちゃんから、一番大切なものを奪うわけにはいかないもの)
花丸(そして戻ってきた、一人きりの本の世界)
花丸(でも中学以前の、ルビィちゃんが居ない頃の世界)
花丸(寂しい、とても) 花丸(どんなことがあっても離れない、そのつもりだった)
花丸(でも、こんなにもあっさり引き離された)
花丸(抵抗する間もなく、気づけばバラバラになっていた)
花丸(所詮無力な自分には、どうしようもなくて)
花丸(詳しい現状さえ知らないんだ)
花丸(ルビィちゃんはもちろん、善子ちゃんともかかわれない)
花丸(黒澤家の人や、息のかかった同級生や教師に阻まれ、会話さえできない)
花丸(ダイヤさん以外のメンバーに話を聞くことぐらいはできるかもしれないけど、きっと意味なんてないだろう)
花丸(分かるのは、ルビィちゃんとの関係が露見して引き離された、ただそれだけ) 花丸「はぁ」
花丸(いつか、こんな日が来ることは分かっていた)
花丸(でもまさか、こんなに早いなんて思いもしなかった)
花丸(耐え難い、最愛の相手に会えない日々、今後の未来)
花丸(灰色の世界、生きることさえ辛い)
花丸(大好きだったはずの本の世界すら、くすんでみえる)
花丸「もう、いっそ――
ガラッ
花丸「!」 鞠莉「ハーイ、花丸」
花丸「鞠莉ちゃん……」
鞠莉「久しぶりね、元気かしら」
花丸「そう、見えるかな」
鞠莉「いえ、全く」
花丸「あはは、だよね」
鞠莉「少し痩せた?」
花丸「そうだね、あんまり食べられていないから」
鞠莉「食べた方がいいわよ、どんなに辛い状態でも」 花丸「いいんだよ、もう何もかもどうでもいいから」
花丸「本当は何も食べずに、餓死したい気分だから」
鞠莉「駄目よ、そんなことを口に出しては」
花丸「……鞠莉ちゃんは、何があったか知ってるの?」
鞠莉「一応、調べられる範囲ではね」
花丸「ならこの気持ち、分かるよね」
花丸「果南ちゃんの事が大好きな鞠莉ちゃんなら」
鞠莉「……そうね」 鞠莉「でも、希望は捨てちゃ駄目よ」
鞠莉「もう二度と、ルビィと一緒に居られないと決まったわけではないもの」
花丸「そんな根拠のない慰め、いらないよ」
鞠莉「根拠ならあるわ」
花丸「えっ」
鞠莉「貴女はまだルビィに会いたい?」
花丸「そりゃ、もちろん」
鞠莉「それなら、私が力になろうか」 とりあえず時間ないのでここまで
投稿遅れてすみません、安いホテル回っていたら予想外にネット環境がない状態が続きました
続きは投稿できれば今日の夕方以降に 理解力ないんだけど梨子ちゃんもレズだけど過去の経験から注意してるってことかな? 過去の経験もそうだし、
今はヨハネの事が好きであると
ずら ――黒澤家――
ルビィ「……ごちそうさま」
ダイヤ「あら、もういいのですか」
ルビィ「うん、食欲がなくて……」
ダイヤ「やはり私の作った料理は口に合わなかったでしょうか」
ルビィ「そんなことない、美味しかったよ」
ルビィ「むしろ、お母さんがいなくて二人で作りべきなのに、任せちゃってごめんね」
ダイヤ「私から言い出したことなので、それは構いませんが……」
ルビィ「…………」 ダイヤ「ルビィ?」
ルビィ「あっ、ごめんね」
ルビィ「ちょっとだけ、考え事」
ダイヤ「まだ忘れられないのですか、花丸さんのことを」
ルビィ「……うん」
ダイヤ「難しい問題、ですね」
ダイヤ「私も愛する人と引き離されたら、堪えるでしょう」
ダイヤ「貴女がそれを引き起こした私とこうして話をしてくれている事すら、驚きです」 ダイヤ「しかしこれはあなたの為なのです」
ダイヤ「申し訳ないと思っています」
ダイヤ「私だって貴女の気持ちを考えれば反対はしたくない」
ダイヤ「だけどこのままでは、あなたの人生に大きく関わります」
ダイヤ「姉として、そのような事態を見過ごすことはできません」
ルビィ「うん、分かってるよ」
ルビィ「お姉ちゃんがルビィのことを考えて行動してくれてる事は」
ルビィ「だから気にしないで、本当に」 ダイヤ「……いいのですよ、私を責めても」
ルビィ「しないよ、そんなこと」
ルビィ「お姉ちゃんは悪くないもん」
ルビィ「馬鹿なルビィが何も考えずに築いた関係の責任を背負ってくれた」
ルビィ「感謝してるよ、ルビィは」
ダイヤ「……ルビィ」
ルビィ「ちょっと作らなきゃいけない衣装があるから、部屋に戻るね」
ダイヤ「大丈夫ですか? 何か私にも――
ルビィ「大丈夫――今日は1人にさせて」
ダイヤ「……分かりました」 ※
ルビィ「…………」
ルビィ(無心で裁縫をしていると、少しだけ落ち着ける)
ルビィ(大好きな事を、大好きなアイドルの為にやる)
ルビィ(ある意味、一番好きなはず時間)
ルビィ(それなのに、楽しくない)
ルビィ(どんな物を作り上げても達成感を感じない、作業自体が億劫にさえ感じる)
ルビィ(その原因は明白で、自分にとって彼女がどれだけ大きな存在だったかを、思い知らされる) ルビィ「マルちゃん……」
ルビィ(いったいどれだけの時間、あの子に会えていないのだろう)
ルビィ(これからの人生、会うこともできずに過ごす時間は、どれほど続くのだろう)
ルビィ(大きくなって、お互いに結婚して、互いの人生を確立して――)
ルビィ(果てしない時間、まるで想像もできないような)
ルビィ(耐えられないよ、そんなの)
ルビィ「会いたい」
ルビィ「会いたいよ、マルちゃんに」
ルビィ「また二人で一緒に―― 花丸「ルビィちゃん」
ルビィ「えっ」
ルビィ(マルちゃんの声?)
花丸「ルビィちゃん」
ルビィ(でも、おかしいよ。こんなところに居るわけない)
ルビィ(もしかして、幻聴かな)
ルビィ(会いたい気持ちが強くなりすぎて、そこまで――
花丸「ルビィちゃん!」 👀
Rock54: Caution(BBR-MD5:1341adc37120578f18dba9451e6c8c3b) ルビィ「マル、ちゃん」
ルビィ(窓の外から、確かに聞こえる声)
ルビィ(幻聴じゃ、ない)
ルビィ(聞き慣れた、大好きな人の声)
ルビィ(想い焦がれていた、本物の)
ルビィ(早く、早く窓を開けて――
ガラッ
ルビィ「マルちゃん!」 花丸「ルビィちゃん!」
ギュッ
花丸「会いたかった、会いたかったよ」
ルビィ「うん、ルビィも」
花丸「少し痩せた?」
ルビィ「マルちゃんと会えなくなってから、食欲がなかったからかな」
花丸「ルビィちゃんは元々痩せてるんだから、心配だよ」
ルビィ「でもマルちゃんも、そうでしょ」
花丸「あはは、マルはちょうどいいダイエットになったから」 ルビィ「どうやって、ここまできたの?」
花丸「鞠莉ちゃんが助けてくれたんだ」
花丸「こっそりここまで送って、監視の目も潜り抜けられるようにしてくれて」
ルビィ「鞠莉ちゃんが……」
花丸「あっ、話してる場合じゃなかった」
ルビィ「ど、どうしたの」
花丸「急いでこっちに来て!」
ルビィ「えっと、どこか行くの?」 花丸「一緒に逃げよう、ルビィちゃん」
ルビィ「へっ」
花丸「駆け落ちしよう、お互いの家族の手が届かないところまで」
ルビィ「駆け落ち? でも、そんな――」
花丸「いいから、マルに付いてきて」
花丸「マルを愛してるなら、お願いだから」
ルビィ「でも、ルビィ達だけじゃ……」
花丸「大丈夫、鞠莉ちゃんが助けてくれるから」 ルビィ「助けてくれる?」
花丸「マルたちの関係に反対する人のいない所へ連れて行ってくれるって」
ルビィ「反対する人に、いない所……」
花丸「ルビィちゃん?」
ルビィ「それは、駄目だよ」
花丸「どうして」
ルビィ「だってお姉ちゃんと離れ離れになっちゃう」
ルビィ「そうなったら、お姉ちゃんは絶対自分を責める。それは――」
花丸「ルビィちゃん!」 ルビィ「ピギッ」
花丸「前に言ったよね、ダイヤさんよりマルが好きだって」
ルビィ「い、言ったね」
花丸「もうどちらかしか選べないの」
花丸「マルか、ダイヤさんか」
花丸「選ばれなかった方とは、会えなくなる」
花丸「選ばれなかったことに深く傷つく」
花丸「でも決めて、ルビィちゃんが望む方を」 ルビィ「…………分かった」
ルビィ「ルビィは、マルちゃんと行くよ」
花丸「ルビィちゃんっ」
ルビィ「でも、少し待って」
花丸「へっ」
ルビィ「この書き置きを――」
『鞠莉ちゃんの家へ遊びに行っています』
ルビィ「こうすれば、しばらく時間を稼げるでしょ」
花丸「おぉ、流石ルビィちゃんずら」 ルビィ「本当は嘘をつきたくないけど、仕方ないよね」
ルビィ「お姉ちゃんもルビィが消えた後、嘘つきの酷い妹だって思っていた方が、傷つかずに済むだろうし」
花丸「……ごめんね、マルの所為で」
ルビィ「気にしないで、決めたのはルビィだから」
ルビィ「早く行こう」
ルビィ「一緒に居るところを見られるわけにはいかないから」
花丸「う、うん!」 いったんここまで
夜と言いながら朝投稿が続いているので、この感じだと次は明日の朝かなと笑 ―沼津駅―
鞠莉「着いたわよ」
花丸「ありがとう、鞠莉ちゃん」
鞠莉「悪いわね、ここまでしか送れなくて」
花丸「気にしないで。本当にありがとう」
鞠莉「じゃあ私は戻るわね。後は計画通りに」
花丸「うん」
鞠莉「困ったことがあったら連絡するのよ」
ブロロッ
. ルビィ「鞠莉ちゃん、車の運転なんてできたんだね」
花丸「こっそり免許を取ってたらしいよ」
ルビィ「凄いねぇ、やっぱり大人だなぁ」
花丸「ルビィちゃんは、運転ができる人が好きなのかな」
ルビィ「どうして?」
花丸「駆け落ちしたら、きっと免許を取れないから、嫌かなって」
ルビィ「あはは、そんなの気にしないよぉ」
ルビィ「ルビィはマルちゃんが居れば、それでいいんだよ」
花丸「……ありがとう」 ルビィ「それで、この後はどうする予定なの?」
花丸「北海道の方に鞠莉ちゃんの家があるらしいから、そこへ行く予定」
ルビィ「北海道かぁ」
花丸「うん、出来るだけ遠くへ逃げた方がいいだろうって」
ルビィ「なら、今からどこへ向かうの」
花丸「とりあえず東京へ行って、そこから飛行機に乗る予定」
ルビィ「へぇ、じゃあ新幹線?」
花丸「うん――あれ」 ルビィ「どうしたの」
花丸「切符、どこにやったかな」
ルビィ「もしかして無くしちゃった?」
花丸「そ、そんなことはないはずなんだけど」
花丸「あれ、あれ、おかしいな」
ルビィ「お、落ち着いて、それならちゃんと探せばあるはずだよ」
花丸「う、うん――あっ、あった」
ルビィ「よかったぁ」 花丸「あ、安心したら腰が……」
ルビィ「大丈夫?」
花丸「ごめんね、段取り悪くて」
花丸「こんな格好悪いところばかりみせて、不安になっちゃうかな」
ルビィ「そんなことないよ」
花丸「でも」
ルビィ「格好いいよ、花丸ちゃん」
ルビィ「一刻も早く、ルビィの元に来てくれようとしてくれたんだよね」
ルビィ「嬉しいよ、本当に」
花丸「ルビィちゃん……」 ルビィ「ルビィね、諦めてた」
ルビィ「もう花丸ちゃんに会えないって、お姉ちゃんの言うことを受け入れようって」
ルビィ「でも、こんな風に来てくれて、連れ出してくれて」
ルビィ「マルちゃんは、最高の恋人だよ」
花丸「ありがとう」
花丸「そう言ってくれて、すごく嬉しい」
花丸「不安だったんだ、拒絶されないか」 花丸「本当に辛かった、会えない日々は」
花丸「だから鞠莉ちゃんが協力を申し出てくれた時、すぐにそれを受け入れた」
花丸「でもね、怖かった」
花丸「ルビィちゃんはもう、マルの事なんてどうでもいいと思っているんじゃないかって」
花丸「何の抵抗もできずに、あっさりと関係を断ち切られてしまったマルを、見損なっているんじゃないかって」
花丸「もう、マルの事を好きじゃなくなったかもしれない、そんな考えが頭をよぎってたの」
花丸「でも、それは杞憂だった」
花丸「ルビィちゃんはマルの事を想っていてくれた、大切なお姉ちゃんよりも」
花丸「それがただ、嬉しい」 ルビィ「酷いなぁ、マルちゃん」
ルビィ「マルちゃんの事を好きじゃなくなるなんて、あるわけないのに」
花丸「えへへ、ごめんね」
ルビィ「いいよ、気持ちは分かるもん」
ルビィ「ルビィだって、全く考えないわけじゃなかった」
ルビィ「バレた原因はルビィだし、マルちゃんが見損なわれてもおかしくない」
ルビィ「でも信じてた」
ルビィ「そうしたらこうやって、迎えに来てくれた」
ルビィ「だからね、どんなことがあってもルビィはマルちゃんを信じるよ」
ルビィ「どんなことがあっても、好きでいるよ」 花丸「ルビィちゃん……ありがとう」
ルビィ「それじゃあ、行こうか」
花丸「うん」
ルビィ「もう、戻ってくることはないのかな」
花丸「そうかもしれない」
ルビィ「マルちゃんは、寂しくない?」
花丸「寂しくないといえば嘘になるよ」
花丸「でもルビィちゃんと一緒に居られない以上に、寂しいことはないから」
ルビィ「そうだね、ルビィも一緒」
花丸「……今度こそ、ずっと一緒に居ようね」
ルビィ「うん」
ルビィ「絶対に、ルビィの元から離れないでね」
花丸「うん、今度は絶対に離れない」
花丸(それに、もし離されそうになったら、その時は――――) ―小原家―
ダイヤ「鞠莉さん!」
鞠莉「あら、どうしたのダイヤ」
鞠莉「せっかくの可愛い顔に皺が寄ってるわよ」
ダイヤ「それどころではありません!」
鞠莉「へぇ、何事かしら」
ダイヤ「とぼけないでください」
ダイヤ「ルビィが家から消えました」
ダイヤ「そして花丸さんも行方不明になったそうです」
ダイヤ「二人を、どこへやったのですか」 鞠莉「何のことか分からないわね」
鞠莉「私がルビィと花丸の事なんて知るがないでしょ」
ダイヤ「ルビィが残した書き置きに、貴女の名前がありました」
ダイヤ「それに二人には監視をつけていたはずです」
ダイヤ「それを破って、どこかへ逃がす」
ダイヤ「こんな大掛かりな事ができるのは貴女しかいません」
鞠莉「あらあら、ずいぶんと高く評価してくれるのね」
ダイヤ「この期に及んで、よくそんなことを……」
鞠莉「きっと二人で上手く逃げただけよ」
鞠莉「どこかの硬度10のお姉さんから逃れるために」 ダイヤ「無事なのですか、あの子たちは」
鞠莉「さあ」
鞠莉「でもきっと、元気だとは思うわ」
ダイヤ「……そうですか」
鞠莉「もし場所が分かったら、どうするつもりなの」
ダイヤ「当然、連れ戻します」
ダイヤ「それが私の、姉として、先輩としての義務ですから」
鞠莉「そう……」
鞠莉「それならきっと、二人の居場所は不明なままね」 ダイヤ「貴女は何もわかっていない、何も考えていない」
ダイヤ「この行為は、自己満足の為でしょう」
ダイヤ「叶わない気持ちを持った自分とあの子たちを重ねて、自らの望みを託しているだけ」
ダイヤ「信じられないほどに、自分勝手な行為です」
鞠莉「……そうね、否定しないわ」
鞠莉「だけどね、少なくともあの子たちは喜んでいる」
鞠莉「貴女ではなく、私を肯定している」
鞠莉「その時点で、間違っているのは貴女の方よ」 ダイヤ「……なるほど、よく分かりました」
ダイヤ「貴女の事は、問題が解決するまで友人とは思いません」
ダイヤ「世界一大切な妹を貶める敵として考えることにします」
ダイヤ「内浦で黒澤家を、私を敵に回す」
ダイヤ「それ相応の報いを受けることを覚悟しておいてください」
鞠莉「……残念ね、それは」
ダイヤ「では、私は失礼します」
ダイヤ「また友人として再会できる日が来ることを、期待していますよ」
鞠莉「そうね」
鞠莉「でもその日は来ない」
鞠莉「来させないわ、絶対に」 とりあえずここまでです
明日の朝に更新がなかったら、続きは明後日以降になると思います んー同性愛が特殊といいながらこのグループはレズの割合が多すぎませんかねぇ…
はやく書くずら!待ってるずら 最初から読み返したらまるちゃんがいきなりクライマックスだった これからの展開を思うとキツいけどこの鞠莉とダイヤのやりとり好きだわ… >>371
そうですね、ご指摘ありがとうございます
では再開します ――函館――
ルビィ「凄いなぁ、海」
ルビィ(北海道へ来て少しの時間が経った)
ルビィ(今のところ、追っては来ていない)
ルビィ(二人で鞠莉ちゃんの知り合いのお世話になりながら、ひっそり暮らす日々)
ルビィ(外出する時も髪型を変えて、目立たないように行動する)
ルビィ(下手な行動を取ることはできない、見つかったら終わり)
ルビィ(でも、幸せな日々) ルビィ(だって横には常にマルちゃんが居るから)
ルビィ(一緒に寄り添って暮らしている)
ルビィ(一度離れ離れになる前よりも、近い距離)
ルビィ(まるで本当に駆け落ちした夫婦みたい)
ルビィ(鞠莉さんの家の人たちは、みんな理解があってやさしい人)
ルビィ(外国の人だからなのかな、それとも立場が作る余裕?)
ルビィ(立場、はあると思う) ルビィ(少なくともお姉ちゃんの立場で、ルビィ達の関係に賛成できない)
ルビィ(例え本心では理解があるとしても)
ルビィ(そこの事に気づいたのは、最近の事で)
ルビィ(もっと早く気付いていれば、何か変わったのかな)
ルビィ(相いれない事は不変だから、変化なんてないかな)
ルビィ(でも結果は変わらなくても、もっとお姉ちゃんにやさしくできたかもしれない)
ルビィ(後悔をしても、もう遅いけどね)
ルビィ(だってもう、会うことはないんだから) ルビィ(……あそこのハンバーガー、マルちゃん好きそうだな)
ルビィ(今度、教えてあげよう)
ルビィ(せっかく駆け落ちしたのに、残念なのは一緒に外出できない事)
ルビィ(二人でいたら目立つから、変装して別々に出かけるだけ)
ルビィ(今日は前から気になっていた赤レンガ倉庫に来てみた)
ルビィ(お洒落で可愛いお店もたくさんあって素敵)
ルビィ(多分、デートにピッタリな場所)
ルビィ(カップルみたいな人、たくさん見かけたもん) ルビィ(どこかで海外に連れていくからその時までの我慢だって、鞠莉ちゃんが電話で言ってた)
ルビィ(もう少し、本当に自由な立場までもう少しだ)
ルビィ(だから今の寂しさぐらい、我慢しないと)
ルビィ(でも、外で一緒に話ができる友達ぐらい欲しいなぁ)
ルビィ(ルビィ達の事を理解して、存在を外部に話したりしない、理想的な友達――)
??(……)
ルビィ(例えばそこに座っているような、同い年ぐらいの子なんて――)
??「ん?」
ルビィ(あれ、こっち観た) ??「……」
ルビィ「ピギッ」
ルビィ(こ、こっちに来る)
??「ねえ、そこのあなた」
ルビィ「な、何ですか」
??「あなた、黒澤ルビィ」
ルビィ「えっと」
ルビィ(もしかして、黒澤家の人?)
ルビィ(ば、ばれたの、どうしよう、逃げなきゃ――) ??「その反応、私のこと覚えてないの?」
ルビィ「えっ?」
理亞「鹿角理亞、Saint Snowの」
ルビィ「あっ……」
理亞「思い出した?」
ルビィ「東京で会った、あのバク宙の」
理亞「……何か微妙な覚えられ方ね」
ルビィ「あ、あはは、インパクト強かったから」 理亞「なにしてるの、こんなところで」
ルビィ「え、えっと」
理亞「観光?」
ルビィ「う、うん」
理亞「でも今は普通に学校のある期間でしょ」
ルビィ「まあ、そうなんだけど……」
理亞「もしかして、訳ありな感じ?」
ルビィ「そ、そうなんだよね」 理亞「まあ、詳しいことは聞かないでおくわ」
ルビィ「ありがとう、理亞――さん?」
理亞「同い年なんだから呼び捨てとかでいいわよ」
ルビィ「そう?」
理亞「そ、そうよ」
ルビィ「じゃあ――理亞ちゃん?」
理亞「『ちゃん』は付いてくるのね……、まあいいけど」 ルビィ「でもよくルビィだって分かったね」
ルビィ「髪型とか、普段と変えてるのに」
理亞「まあ、貴女は特に気になっていたから」
ルビィ「気になってた?」
理亞「少し前にね、あなた達のライブの動画を姉さまにみせられたの」
理亞「凄くいい動きをして、みんなイキイキしてた」
理亞「その中でも特に、貴女は輝いてた」
理亞「本当に楽しそうに歌って、踊って……」
理亞「その時確信したの、この子は私と決勝で戦うライバルになると」 ルビィ「……そうだね」
理亞「なによその反応」
理亞「自信がないの?」
ルビィ「そういうわけじゃないんだけど……」
理亞「じゃあなに? 私たちが予選で負けるとか考えてるの?」
ルビィ「それも、違うんだけど」
理亞「……煮え切らないわね」
ルビィ「ごめんね」
理亞「もう、まさかアイドルを辞めたからとかじゃないでしょ」
ルビィ「…………」 理亞「えっ、本当に?」
コクリ
理亞「本当にアイドル、辞めたの?」
ルビィ「……うん」
理亞「もしかして、私の所為?」
ルビィ「へっ、なんで?」
理亞「だって、初対面で攻撃的な態度を取って、あなた達を否定して――」
ルビィ「ち、違うよ。それ以外の理由」 理亞「グループ内の誰かと喧嘩したとか?」
ルビィ「えっと……」
理亞「定番だけど、方向性の違いみたいな?」
理亞「人間関係が原因で脱退するのはよくあるし」
ルビィ「まあ、それに近いかな」
理亞「……勿体ない」
理亞「せっかく、ライバルになれると思ったのに」
ルビィ「……仕方なかったんだよ」 理亞「理由はなによ」
理亞「恋愛関係のもつれとか?」
ルビィ「っ」
理亞「ほ、本当にそうなの?」
理亞「アイドルに恋愛はタブーでしょ」
ルビィ「す、スクールアイドルはそこまで厳しくないもん」
理亞「でも人間関係の崩壊の原因になるから、普通は避けるじゃない」
ルビィ「そうだけど……」 理亞「相手はアイドルに関係ある人なの?」
ルビィ「まあ……」
理亞「何よそれ、理解した上で付き合ってるなんて、ろくでもない奴ね」
ルビィ「ま、マルちゃんはろくでもない奴なんかじゃないもん!」
理亞「マル、ちゃん?」
ルビィ「あっ……」
理亞「マル『ちゃん』って言ったわよね、今」
ルビィ「ち、違くて――
理亞「確かAqoursに居たわね、貴女と仲良しの、国木田花『丸』って子が」 理亞「もしかして貴女、メンバーと、女と付き合ってるの?」
ルビィ「…………」
理亞「別にいいわよ、話さなくても」
理亞「言いにくいことだろうし」
理亞「でも口に出すことで、少しは楽になれるんじゃない」
理亞「私は誰にも言わないし」
理亞「そもそも友達いないから言う相手もいないし」
ルビィ「理亞ちゃん……」 ルビィ(いいのかな、話しちゃっても)
ルビィ(ほとんど初対面の相手に、こんな大事なことを漏らす)
ルビィ(人に聞いたら、絶対に止められそうな行為)
ルビィ(けどどうしてかな、不思議と大丈夫な気がする)
ルビィ(この子なら大丈夫って安心感がある)
ルビィ(実際、抱え込むのもつらい)
ルビィ(味方が欲しい、自分を肯定してくれる味方が)
ルビィ(もしかしたら、理亞ちゃんはそれになってくれるかもしれない) ルビィ「じゃあ、話すよ」
理亞「う、うん」
ルビィ「最初にね、出会ったときの事から――――
―――
――
―
ルビィ「――とまあ、そんな感じで駆け落ちしてきたの」 理亞「はぁ……」
ルビィ「や、やっぱり変かな」
理亞「そんなことない」
理亞「凄いわ、あなたたち」
ルビィ「気持ち悪いとか思わないの?」
理亞「思わないわよ、そんなこと」
理亞「尊敬するわ、あなたたちの事」 ルビィ「尊敬って、そんな」
理亞「そこまで相手の事を想える、素敵じゃない」
理亞「私は恋をしたことがないけど、憧れるし、格好いい」
ルビィ「そ、そんなに立派なものじゃないよ」
理亞「でも実際、全てを投げ捨ててでも駆け落ちをしてきた」
理亞「大好きだったアイドルさえ捨てて」
ルビィ「よく分かったね、ルビィがアイドル好きだって」
理亞「見てれば分かるわよ、演じている時の雰囲気を」
理亞「それに、私と貴女はどこか似てるもの」 理亞「私ね、本当は凄い人見知りなの」
ルビィ「理亞ちゃんが?」
理亞「ええ」
理亞「東京に居た時にそっけない態度をとったのも、どう話していいのか分からなかったから」
理亞「だから、普段の私なら今日も話しかけられなかったと思う」
理亞「でも今日、貴女に話しかけられたのは、どこか放っておけない雰囲気を感じたから」
ルビィ「そうなんだ……」
理亞「実際話してみても、正直心配よ、貴女の事」
理亞「危うい状態にいるようにしかみえないもの」 ルビィ「……理亞ちゃんは反対なの」
ルビィ「ルビィがマルちゃんと今の状態を続けること」
理亞「ううん、さっきの話を聞いて反対なんてしないわよ」
理亞「助けにはなりたいけどね」
ルビィ「理亞ちゃん……」
理亞「何かできることがあったら言ってね」
理亞「できる限り、協力するから」
ルビィ「うん、ありがとう」 ルビィ「あっ、私そろそろ行かないと」
理亞「時間?」
ルビィ「うん、そろそろ帰らないと心配されちゃう」
理亞「ねえ、しばらくはこっちにいるのよね」
ルビィ「うん」
理亞「じゃあ、明日も会える?」
ルビィ「うーんと、明後日なら」
理亞「じゃあ明後日、またここで待ち合わせしない?」
ルビィ「うん、いいよ」 理亞「今度はもっといろんな話をしましょう」
理亞「好きなアイドルについてとか、国木田花丸の話とか」
ルビィ「そ、それは恥ずかしいかも」
理亞「いいじゃない、一度恋バナとかしてみたかったのよ」
ルビィ「り、理亞ちゃんも話すならいいよ」
理亞「残念、さっきも言ったけど私は恋とかしたことないから」
ルビィ「む、むぅ、ズルいっ」
理亞「あはは、じゃあまたね、ルビィ」
ルビィ「またね、理亞ちゃん」 ※
―小原家関係者宅―
ルビィ「ただいまぁ」
花丸「あっ、おかえり」
ルビィ「あれ、外行きの格好だね」
花丸「ごめんルビィちゃん、すぐに荷造りできるかな」
ルビィ「ふぇ?」
花丸「急いでここを出なくちゃ行けなくなったみたい」
ルビィ「えっ」 花丸「さっきね、鞠莉ちゃんから連絡があったの」
花丸「黒澤家の人に、滞在場所がバレたかもしれないって」
ルビィ「そ、そんな」
花丸「もうマルは準備ができてる」
花丸「後はルビィちゃんが良ければすぐに出発を――」
ルビィ「あ、あのね」
花丸「どうしたの?」
ルビィ「その、こっちで友達ができたの」
ルビィ「それで挨拶をする時間ぐらいは――」 花丸「……ごめんね、早く出ないといけないから」
ルビィ「そ、そっか……」
花丸「でも、どうしても必要なら――」
ルビィ「大丈夫だよ」
ルビィ「そんな事より、逃げなきゃだもんね」
ルビィ「元々、友達を作る事自体がおかしいわけだから」
花丸「ルビィちゃん……」 ルビィ「じゃあ急いで支度するから。物も少ないしすぐに――」
花丸「ごめんね」
ルビィ「マルちゃん?」
花丸「マルはずっと、ルビィちゃんの気持ちを考えられてない」
花丸「駆け落ちをすれば、ダイヤさんだけじゃない」
花丸「善子ちゃんやAqoursのみんな、新しくできた友達」
花丸「そして、大好きなアイドルとしての活動」
花丸「それら全てをルビィちゃんが失う事、ちゃんと理解できていなかったかもしれない ルビィ「いいの」
ルビィ「マルちゃんは、どんなものよりも大切だから」
ルビィ「それにルビィを手に入れる代わりに色々な物を失ったのは、マルちゃんも一緒でしょ?」
花丸「そうかもしれないけど……」
ルビィ「それより急ごう、お話は後でじっくりすればいいよ」
花丸「う、うん」
ルビィ(でも連絡先ぐらい、聞いておけばよかったかな)
ルビィ(ごめんね理亞ちゃん)
ルビィ(いつかお詫びするから)
ルビィ(今はルビィが来ない理由、察してくれると嬉しいな) ―十千万―
曜「あの2人が、駆け落ち?」
千歌「うん」
曜「な、なんで」
千歌「詳しいことは分からないけど、付き合ってたらしいよ」
千歌「ダイヤさんに聞かれたんだ、二人から連絡はないか」
曜「駆け落ち……」 千歌「ビックリしたけど、やっと納得できたよね」
千歌「突然花丸ちゃんがAqoursを辞めた理由」
千歌「二人が付き合っていたからなんだね」
曜「……そうだね」
千歌「曜ちゃんは知ってたの?」
曜「何となくは、ね」
千歌「えー、直接聞いてたとか?」
曜「そういうわけじゃ、ないけど」 千歌「じゃあ、自分で気づいたってこと?」
曜「そうだね」
千歌「へぇ、流石曜ちゃん」
曜「ははっ、まあね」
千歌「二人のこと、心配?」
曜「そりゃね」
曜「駆け落ちなんて、簡単にできることじゃないから」
千歌「そうだよね、あんな可愛い子たち二人だけなんて」
千歌「幼めに見られる私から見ても、子どもみたいだもん」
曜「そう、だよね」 千歌「でも大丈夫、ダイヤさんがすぐに二人を見つけ出すよ」
曜「えっ」
千歌「何かね、だいたいの居場所を見つけたらしいんだ」
千歌「もうすぐ戻ってくるよ、二人とも」
曜「……連れ戻されるの」
千歌「言い方は悪いけどそうなるね」
千歌「でも仕方ないよ、それが普通なんだもん」
千歌「これが普通に男女同士で、年齢も大人だったら応援したんだけどなぁ」 曜「ダイヤさんは、二人の関係に反対なんだよね」
千歌「うん、絶対に認められないって言ってたよ」
千歌「千歌はリーダーだから教えてくれたけど、他の人には知られないようにしているみたいだし」
千歌「本当はこうやって曜ちゃんに話すのもダメなんだよ〜」
千歌「人に漏らしたりしないって、信じてるからいいけどね」
曜「…………」
千歌「どうしたの?」 曜「……私、二人を助けなきゃ」
千歌「曜ちゃん?」
曜「ルビィちゃんと約束したんだ」
曜「二人の事を応援するって」
曜「もし連れ戻されたら、二人はどうなるか」
曜「どうしても、嫌な予感しかしない」
千歌「……それは」 曜「今ならまだ間に合う」
曜「この事を伝えて、パパにも協力してもらえば何か――
千歌「駄目だよ」
曜「千歌ちゃん?」
千歌「そんなことしたら、黒澤家を敵に回したら、ここで生活できなくなる」
曜「……きっとパパもママも分かってくれる」
曜「例えどんな目に遭っても、私は行かないといけない気がする」
千歌「嫌だよ」
千歌「私を、置いて行かないでよ」
曜「でも」 千歌「私ね、二人と同じなの」
曜「同じ?」
千歌「曜ちゃんの事が、好きなの」
曜「っ」
千歌「二人みたいに、女の子が、曜ちゃんが好きなの」
曜「千歌ちゃん……」
千歌「だから離れたくない、一緒に居たい」 千歌「今ね、もし曜ちゃんが動いたら私が疑われる」
千歌「曜ちゃんに情報を漏らした犯人だって」
千歌「そうなったら、どうなるのかな」
千歌「どんな報いを受けさせられるのかな」
千歌「怖いよ、想像しただけで」
曜「や、止めてよ、そんなこと――」
千歌「行かせないよ、絶対に」
千歌「曜ちゃんの居ない世界は嫌なの」
千歌「お願いだから私と一緒にいて」
千歌「千歌を、見捨てないで」 とりあえずここまで
次の更新はやや遅くなるかもです
物語自体は現在8割程度まで来たので、もう少しで完結です
最後までよろしくお願いします おつ、各メンバーもどうなるか気になる・゜・(つД`)・゜・ 乙
続きがかなり気になるけどタイトル的に本当に嫌な予感しかしない… ――某所――
ルビィ「うゅぅ……」
花丸(ルビィちゃん、寝てる)
花丸(柔らかく握られている手にも、全く力が入っていない)
花丸(完全に身を委ねている証拠)
花丸(穏やかな寝顔)
花丸(こんな頼りないマルの横でも、安心してくれているのかな) 花丸(鞠莉ちゃんからの直接の連絡が途絶えて、ずいぶんな時間が経った)
花丸(危機が迫っていることは理解している)
花丸(でもマルの力じゃ、どうしようもない)
花丸(絶望的な状況でも、助けてくれる人を信じるしかない)
花丸(鞠莉ちゃん、大丈夫なのかな)
花丸(小原家の人は心配ないと言っていた)
花丸(でもそれが嘘であることぐらい、マルにも簡単に理解できて) 花丸(今の状況で、理解できない方がおかしい)
花丸(最近場所を変えたばかりなのに、もう移動を伝えられている)
花丸(これはきっと、居場所が露見してきている証拠)
花丸(ダイヤさんはどんな手を使ってでも、マルとルビィちゃんを探し出そうとしている)
花丸(それでも耐え忍んでいれば大丈夫、見つかることはない)
花丸(そんな風に、必死に言い聞かせて)
花丸(震えそうな心を抑え込んで) 花丸(ルビィちゃんは鋭い子だから、何も聞かなくても周囲の不安を感じ取っている)
花丸(特にマルの感情には敏感に気づくはず)
花丸(それでも彼女は何も言わない)
花丸(マルのことを信じてくれている)
花丸(今みたいに、無防備な自分を晒してくれる)
花丸(その信頼に応えないわけにはいかない)
ギュッ
ルビィ「……痛いよ、マルちゃん」 花丸「あっ、ごめんね」
花丸「起こしちゃった?」
ルビィ「ううん、大丈夫だよ」
ルビィ「そろそろ時間?」
花丸「そういうわけじゃないけど、ちょっとね」
花丸「まだ寝てても大丈夫だよ」
ルビィ「そう?」
花丸「うん」 ルビィ「でもせっかくだし、起きてるよ」
ルビィ「寝てたらマルちゃんが一人で寂しくなっちゃうもんね」
花丸「ふふっ、ありがとう」
花丸「ねえ、ルビィちゃん」
ルビィ「なぁに?」
花丸「もしも、もしもの話だけどね」
ルビィ「うん」
花丸「マルが、ルビィちゃんに酷い事をしても、ルビィちゃんはマルの事を好きでいてくれる?」
ルビィ「酷い事、するの?」
花丸「……かも、しれない」 ルビィ「マルちゃんなら、いいよ」
ルビィ「きっとそれが、ルビィの為になるんでしょ」
ルビィ「意味もなく、そんなことはしないって、分かってるから」
花丸「……うん」
花丸(選択するなら、もうあまり時間はない)
花丸(これ以上二人で居ることが叶わない、そんな状況になった時)
花丸(二人で愛の象徴として死を迎える、そのつもりだった)
花丸(ルビィちゃんが否定しない今、それには何の障害もないはず) 花丸(でも言い出せない)
花丸(躊躇してしまう、彼女の命を奪うことを)
花丸(例えそれが最良だと考えていても、どうしても)
ルビィ「マルちゃん?」
ギュッ
ルビィ「どうしたの、大丈夫?」
花丸「うん」
花丸「ただ好きな人を抱きしめて、ぬくもりを感じたかっただけ」
ルビィ「そっか」 花丸(そもそも、まだ考えるのは早いよね)
花丸(だって見つかったわけじゃない)
花丸(それが言い訳じゃなくて、冷静な判断――)
ガタガタッ
花丸「えっ」
ルビィ「な、なにかな」
花丸「きっと、小原家の人だよ」
花丸「時間的に、そろそろ逃げる準備ができたんじゃないかな」
ルビィ「そ、そうだよね」 花丸(まだだよね)
花丸(まだ大丈夫な、はずだよね)
ギィ
花丸「!」
ルビィ「あっ……」
ダイヤ「……やっと見つけましたわ、二人とも」 ルビィ「お、お姉ちゃん」
花丸「ど、どうして」
ダイヤ「どうして?」
ダイヤ「簡単なことです」
ダイヤ「小原家の人間を『説得』して聞き出しました」
花丸「説得……」
ダイヤ「黒澤家を舐めない事です」
ダイヤ「世間的に見れば小原には劣っていても、自分の庭で、内浦で負けるわけがありません」
ダイヤ「私が余計な情さえ捨てれば、簡単なことでした」 花丸「る、ルビィちゃん、逃げよう!」
ルビィ「ピギッ」
花丸「今ならダイヤさんさえ振り切れば――
果南「おっと、そうはさせないよ」
ガシッ
ルビィ「果南ちゃん!?」
花丸「い、いつの間に」 ダイヤ「果南さん、お疲れ様です」
果南「いやー、簡単だったよ」
ダイヤ「貴女にとっては、そうでしょうね」
花丸「な、なんで」
果南「ごめんね」
果南「マルは嫌いじゃなかったけど、私のうち、黒澤家の助けがないと成り立たないんだよね」
果南「それに、大事な幼馴染の頼みは断れないから」
花丸「そ、そんな」 ダイヤ「果南さん、お喋りは結構です」
ダイヤ「早く花丸さんを運び出してください」
果南「はいはい、了解しました」
花丸「は、離してよ!」
果南「ちょっと、暴れても無駄だから抵抗しないでよ」
花丸「離して、離して、お願いだからっ」
果南「それは無理だよ」 ルビィ「マルちゃん!」
ダイヤ「ルビィ、貴女はこっちです」
ルビィ「嫌だっ!」
ダイヤ「ルビィ!」
グッ
ルビィ「お姉ちゃん……」
ダイヤ「何ですか、その反抗的な目は」
パァン
ルビィ「っ」 ダイヤ「甘やかさずに、もっとはっきりと告げるべきでした」
ダイヤ「自分の行為の愚かしさを」
ルビィ「愚かじゃ――」
パァン
ダイヤ「黙りなさい、今の貴女は異常なのです」
ダイヤ「異常な妹の言葉など聞きたくありません」
ダイヤ「話してないで、早く帰りますよ」 花丸「ルビィちゃんに何するの!」
果南「マル」
ルビィ「マルちゃん……」
花丸「嫌だよ、ルビィちゃんとこれでお別れなんて」
花丸「ルビィちゃんのいない世界なんて」
花丸「なんで一緒に居ちゃ駄目なの!」
花丸「世界中の誰よりも、愛しあってるのに!」
花丸「お互いに想いあってるのに!」
花丸「いらないよ!」
花丸「ルビィちゃんと一緒に居られない世界なんて、マルはいらない!」 こうも絶望的だと、ハッピーエンドを望みたいところだが… ―静岡・某病院―
鞠莉「…………」
ガチャ
果南「やあ」
鞠莉「果南……」
果南「元気だった?」
鞠莉「これが、元気に見える?」
果南「まあ、見えないね」 果南「はい、これお土産」
鞠莉「……干物を渡されても、食べられないんだけど」
果南「きっと頼めば焼いてくれるよ、こんな良い病室に泊まってる上客なら」
鞠莉「それは流石に、遠慮しておくわ」
果南「ずいぶんと、偉い目に遭ったね」
鞠莉「……ええ、そうね」
果南「入院かぁ、大変だねぇ」 鞠莉「証拠も出ない、犯人も見つからない」
鞠莉「自作自演を疑われるぐらい、何も出てこない」
鞠莉「怖いわね、田舎の権力者は」
果南「普段は仲良しだから、私や鞠莉は実感することが少ないけどね」
鞠莉「本当にね」
鞠莉「今回は身をもって思い知らされたわ」
果南「内浦だとみんな、黒澤の味方だからね」
果南「黒澤家のおかげで生活できている人が、大半なわけだし」
鞠莉「果南も、ダイヤの家に助けられてるのよね」
果南「うん、そうだね」
果南「うちはあらゆる意味で、黒澤家がいないと成り立たない商売だから」 鞠莉「二人を捕まえるのに、果南も協力したのよね」
果南「うん、そうだね」
鞠莉「今回の事、全部知ってるの?」
果南「まあね」
果南「そうじゃなきゃ私もダイヤに協力しないよ」
鞠莉「信頼されてるのね、ずいぶん」
果南「長い付き合いだからね、私とダイヤも」
鞠莉「妬けちゃうわね」
鞠莉「私には、ずいぶんと情熱的な接し方だったのに」
果南「まあダイヤからすれば、遠慮した方なんじゃないかな」
果南「これでも一応、入院ぐらいで済んでるわけだし」
鞠莉「そうかも、しれないわね」 鞠莉「正直は侮ってた」
鞠莉「口では厳しいことを言いながらも、私の中のダイヤはこんなことをする子には見えなかったから」
鞠莉「ここまで強引な手段を使ってくるなんて、想像もできなくて」
鞠莉「襲われた時のダイヤの顔、思い出すとゾッとするわ」
鞠莉「あんな顔ができたなんて、私は知らなかった」
果南「それだけルビィの事が、周りのみんなの事が大切なんだよ」
果南「一人で必死に考えて、これが最良だと考えたから、ここまでの事をしたんだ」
果南「鞠莉に対しても、障害が残るレベルの怪我を負わせるようなことはしなかったでしょ」
鞠莉「……そうね」 果南「相談ぐらい、してほしかったけどね」
果南「そうすれば、もう少し他の考えも浮かんだかもしれないから」
鞠莉「あの子は信じられないぐらい頑固だから、何を言われても自分で決めたことを曲げたりしないわよ」
果南「ははっ、そうかもね」
鞠莉「本当に、どんなことをしても無駄だったのかもしれないわね」
鞠莉「例え海外へ二人を逃がしても、あの子は追いかけてきた気さえする」
鞠莉「結局、私は場をかき回し、無駄に混乱させて、みんなを傷つけただけなのかもしれない」
果南「……かもね」 果南「ねえ鞠莉」
鞠莉「なにかしら」
果南「ダイヤから聞いたよ」
鞠莉「なにを?」
果南「私のこと、好きなんでしょ」
鞠莉「っ」
鞠莉「……あの石頭、本当に恐ろしいわね」
鞠莉「『相応の報い』は怪我じゃなくて、こっちの方だったのかしら」 果南「その様子だと、間違ってはないみたいだね」
鞠莉「ええ、私は果南が好きよ」
鞠莉「昔からずっと、果南が好きだった」
果南「そっか、ありがとう」
果南「でもごめんね、私は鞠莉の気持ちを受け入れられない」
鞠莉「うん、知ってる」
鞠莉「だから今まで言わなかったんだもの」
鞠莉「みんな薄々感づいてはいたみたいだけどね」 果南「大丈夫、告白されたからって、関係は変わらないよ」
果南「私だって何となく気づいた状態で、一緒にいたわけだし」
鞠莉「それなら、幸いね」
果南「二人とはいつまでも友達でいたい」
果南「私は本気でそう思ってる」
果南「鞠莉はもちろん、ダイヤとも」
果南「三人でずっと、大切な幼馴染として、一緒に」
鞠莉「一緒に、ね……」 ――渡辺家――
曜「退屈、だね」
善子「そうね」
曜「練習、なくなってからどれぐらいの時間が経ったのかな」
善子「もう数えてないわよ、昔のこと過ぎて」
曜「善子ちゃんがうちに来るようになってからも、それぐらいが経つんだね」
善子「ええ」 曜「まだ梨子ちゃんとは仲直りしてないの」
善子「……仕方ないでしょ」
善子「それに、曜さんだって千歌さんからの返事、保留にしたままじゃない」
曜「まあ、そうなんだけどね」
善子「何やってるのかしらね、私たち」
善子「こうして余った者同士集まって、ぼんやりと一緒に過ごして」
善子「何もしない、何もできない、そんな日々を送って」 善子「今日も、ルビィは一言も言葉は発していなかったわ」
善子「基本的にうつむいて、時々何もない宙に視線をさまよわせて」
善子「私が話しかけてもずっと空返事しか言わないの」
善子「無表情で、感情をなくした人形みたいになって」
善子「周囲のみんなにも、腫れ物扱いされて」
善子「私は二人の友達だと思っていた」
善子「ダイヤに何を頼まれても、二人の味方でいた」
善子「いざとなったら、身を投げ出してでも助けるつもりだった」
善子「それなのに、結局何の力にもなれずに……」 曜「あんまり、自分を責めちゃ駄目だよ」
曜「私もね、偉そうに応援するなんて言って、このざま」
曜「千歌ちゃんにすがりつかれたら、何もできなかった」
曜「助けようとしたのは、口だけで」
曜「実際、動いても無駄だったかもとは思うけどね」
曜「あの鞠莉ちゃんですら、あんなことになったんだ」
曜「私なんかじゃ、きっと何もできない……」
善子「曜さん……」 曜「……そういえば鞠莉ちゃん、最近退院したらしいよ」
善子「それは朗報ね」
善子「元気なのかしら」
曜「どうだろう」
曜「鞠莉ちゃん、責任を感じちゃってるだろうし」
善子「そうよね……」
曜「心配だから、後で様子を見に会いに行こうか」
善子「そうね――」 鞠莉「その必要はありませーん」
善子「わっ」
曜「ま、鞠莉ちゃん!?」
鞠莉「ハァイ、久しぶりね」
曜「い、いつの間に」
鞠莉「ちょうど窓が空いてたから、ちょちょいとね」
善子「なによそれ、滅茶苦茶じゃない」
曜「あ、危ないなぁ」 曜「というか、身体の方はいいの?」
鞠莉「おかげさまでね」
鞠莉「こんな派手なことができる程度には回復したわ」
曜「駄目だよ、病み上がりで無理しちゃ」
善子「そうよ、また入院なんてことになりかねないわ」
鞠莉「むぅ、私としては粋なサプライズのつもりだったんだけど」
鞠莉「可愛い後輩たちに言われると、流石に反省しちゃうわね」 曜「でもどうして突然?」
鞠莉「退院したこと、知り合いに直接報告しようと思ってね」
鞠莉「みんなの家を驚かせながら回ろうってわけよ」
曜「な、なるほど」
鞠莉「まあ、回るのはこれからだけどね」
鞠莉「沼津組の曜と善子が順番的に一番よ」
曜「あー、地理的に」
鞠莉「まあそうね」
鞠莉「理由はそれだけじゃないけど」
曜「へっ」 鞠莉「ねえ、二人とも」
曜「鞠莉ちゃん?」
善子「な、なによ、急に真面目な雰囲気になって」
鞠莉「二人は、ルビィと花丸の味方だったのよね」
曜「……それは」
鞠莉「行動できたかどうかは重要じゃないわ」
鞠莉「事情は何となく察しているから」
鞠莉「それよりも助けたいという意志があったか、それが知りたいの」 曜「それは、あったよ」
鞠莉「善子は」
善子「もちろん、私だって」
鞠莉「……そうよね」
鞠莉「二人は人一倍繊細で敏感な、やさしい子」
鞠莉「あの状況で、二人の味方をしないわけがない」
鞠莉「だからこそ、後悔してるのよね」
鞠莉「何もしなかったことを」
鞠莉「何もできなかったことを」 曜「……うん」
善子「……そうね」
鞠莉「だからこそ、私は貴女たち二人に頼みたいことがあるの」
曜「頼みたいこと?」
鞠莉「二人とも、ルビィと花丸を助けたくない?」
「「!」」
鞠莉「もしもその意思があるなら、明日の夜に、私の家へ来て」
鞠莉「そこで詳しく話すわ」 曜「それって、どういう――」
鞠莉「あら、もうこんな時間」
鞠莉「早く行かないと全員の家を回る時間が無くなっちゃうわ」
曜「えっ」
鞠莉「じゃあね二人とも、チャオ〜」
「「…………」」
曜「また、窓から出ていったね」
善子「凄いことするわね、ホント」 曜「どうする、明日の夜」
善子「行くしかないでしょ」
曜「でも、行っていいのかな」
曜「結局私たちは、自分の答えを出せていない」
曜「鞠莉ちゃんが何かを提案してくれても、受け入れられるか――」
善子「いいから行きましょう」
曜「善子ちゃん……」
善子「そうすれば、答えも出るかもしれないわ」 曜「……そうか、そうだね」
曜「考えるのも大事だけど、まずは動いてみないとだもんね」
善子「そうよ」
善子「何も考えずに動く、それでこそ曜さんらしいわ」
善子「流石脳筋ヨ―ソローね」
曜「あっ、言ったなぁ」
曜「善子ちゃんだって脳筋じゃないけど、同じようなもんじゃん」
善子「う、うるさいわね」 今回の更新はここまで
残りは今日を含めて近日中に、あと2〜3回の更新で完結予定です 乙です
地元権力者怖い……
マルちゃんがどうなってるのか…… ――黒澤家――
ダイヤ「ルビィ、朝ですよ」
ルビィ「うん」
ダイヤ「早く起きないと、遅刻しますわよ」
ルビィ「うん」
ダイヤ「やれやれ、布団を取ってしまいますよ」
ルビィ「うん」 ダイヤ「ただでさえ欠席が多いのです。これ以上は遅刻さえ好ましくないのですよ」
ルビィ「うん」
ダイヤ「今日は体育もあるのでしょう。準備はできているのですか」
ルビィ「うん」
ダイヤ「朝食の準備はできています。顔を洗って早く来なさいね」
ルビィ「うん」
ダイヤ「ルビィ」
ルビィ「うん」 ダイヤ「…………」
ダイヤ(強引に花丸さんと引き離し、家へ連れ戻して以来、ルビィはずっと上の空)
ダイヤ(私は、間違っていたのでしょうか)
ダイヤ(もっと上手く事を運べる手段が、あったのではないか)
ダイヤ(そんな事を考えずにはいられない日々)
ダイヤ(でもきっと、時間が解決してくれるはずです)
ダイヤ(いつかルビィも理解してくれるでしょう、私が正しいことを)
ダイヤ(生きるためには、私が与えた道しかないことを) ダイヤ(しかしその時の為にも、現状をどうにかしなければ――)
ピーンポーン
ダイヤ「あら、朝から来客?」
ダイヤ(小原家の……)
ダイヤ(いや、それなら家の者が通すわけがないと考えると、どなたが)
ピーンポーン
ダイヤ(とにかく、出ないことには)
ダイヤ「はい、どちらさま――」 曜「おはヨ―ソロー!」
ダイヤ「曜さん?」
善子「私もいるわよ!」
ダイヤ「善子さんまで」
ダイヤ「いったい、どうしたのですか」
曜「ルビィちゃんを迎えに来ました!」
ダイヤ「ルビィを?」
善子「ええ、そうよ」 ダイヤ「ありがたいですが、なぜ急に」
善子「前からルビィの為に何かできないかって曜さんと話してたのよ」
曜「それで、まずは学校に来られるようにと今日から毎日送り迎えをしようってことになって」
ダイヤ「はぁ……」
ダイヤ(この二人、信用していいのでしょうか)
ダイヤ(性格や人間関係的には、私の行動には反対するタイプのはず)
ダイヤ(特に善子さんは、一度私に反抗している) ダイヤ(しかし、それが以外の状況で特に何もしてこなかった)
ダイヤ(千歌さんと梨子さんに説得されて、考えを改めたという方が妥当か)
ダイヤ(この行動も、常にルビィを気にかけていた二人だからこそ)
ダイヤ(純粋にルビィを心配しての行動と、考えていいのでしょう)
ダイヤ「そうですか、それはありがとうございます」
ダイヤ「しかし、ルビィはまだ寝床を出られていないのですよ」
善子「あら、そうなの」
曜「それなら私たちが起こしに行きますよ」 ダイヤ「いいのですか」
曜「はい、その為に来たようなものですから」
ダイヤ「それなら、ぜひお願いしたいですが」
曜「了解であります!」
善子「じゃあお邪魔するわよ」
善子「ルビィの部屋はこっちよね」
ダイヤ「ええ」 善子「ルビィ、いるかしら」
ルビィ「うん」
善子「最近ちゃんと学校に来ないから、迎えに来たわよ」
ルビィ「うん」
善子「ほら、一緒に学校行きましょう」
ルビィ「うん」
善子「もぅ、聞いてるの?」
ルビィ「うん」 善子「駄目ね……」
ダイヤ「私が話しかけても、ずっとこんな感じなのですよ」
曜「うーん、これは重症みたいだね」
善子「曜さん、何か良い案はあるかしら」
曜「そうねだぇ……」
ダイヤ「無理しなくてもいいのですよ」
ダイヤ「気持ちだけで充分ですから」 曜「いやいや、でも一ついい案が浮かびましたよ」
ダイヤ「案?」
曜「ダイヤさん、ルビィちゃんの制服と鞄はどれですか」
ダイヤ「一応、これですが」
曜「善子ちゃん、悪いけどそれを両方持ってくれる?」
善子「ええ、分かったわ」
ダイヤ「何をするのですか?」
曜「まあ、見ててくださいよ」 曜「ルビィちゃん、おはヨ―ソロー!」
ルビィ「うん」
曜「さあさあ、曜ちゃん先輩と学校へ行こうじゃないか!」
ルビィ「うん」
曜「えっ、嫌なの」
ルビィ「うん」
曜「そっかぁ、それなら――こうだ!」
ひょい
ルビィ「ピギッ!?」 善子「おぉ、流石曜さん」
善子「いくら軽いとはいえ、軽々ルビィをお姫様抱っこするなんて」
曜「じゃあダイヤさん、私たちはこのまま学校へ行きますね!」
ルビィ「なっ」
ダイヤ「はい!?」
曜「さあ行くよ、善子ちゃん!」
善子「ふふっ、了解よ」 曜「全速前進、ヨ―ソロー!」
善子「あはは!」
ルビィ「ぴ、ピギィ――――――――!」
ダイヤ「…………なんだったのでしょうか、あの二人は」
ダイヤ(つい勢いに圧倒されて、何もできませんでした)
ダイヤ(一応、家の者はちゃんと追いかけたようですね)
ダイヤ(やや心配ですが、連れ去られたりする心配ないでしょう) ダイヤ(二人はこれからも、今日のようにルビィを迎えに来ると思うと、やや頭痛の種ですね)
ダイヤ(まあ監視をつけておけば、最悪の事態は避けられるはず)
ダイヤ(今は余計なことを考えるより、ルビィを優先するべき――)
ダイヤ(現に、今日は久しぶりに『うん』以外の言葉を話しました)
ダイヤ(あの泣き声を、言葉と評していいのかやや疑問は残りますが)
ダイヤ(少なくとも、私よりは二人の方がルビィを良い方向へ導いてくれるはずです)
ダイヤ(素直に信頼して、彼女たちに委ねてみましょうか)
(さて、私も急いで準備をして追いかけなければいけませんね)
(自分が遅刻しては示しがつきません)
(今日から復学する鞠莉さんにも何をされるかと思うとやや憂鬱ですが、きちんと謝らなければなりませんもの) >>511
訂正
ダイヤ(二人はこれからも、今日のようにルビィを迎えに来ると思うと、やや頭痛の種ですね)
ダイヤ(まあ監視をつけておけば、最悪の事態は避けられるはず)
ダイヤ(今は余計なことを考えるより、ルビィを優先するべき――)
ダイヤ(現に、今日は久しぶりに『うん』以外の言葉を話しました)
ダイヤ(あの泣き声を、言葉と評していいのかやや疑問は残りますが)
ダイヤ(少なくとも、私よりは二人の方がルビィを良い方向へ導いてくれるはずです)
ダイヤ(素直に信頼して、彼女たちに委ねてみましょうか)
ダイヤ(さて、私も急いで準備をして追いかけなければいけませんね)
ダイヤ(自分が遅刻しては示しがつきません)
ダイヤ(今日から復学する鞠莉さんにも何をされるかと思うとやや憂鬱ですが、きちんと謝らなければなりませんもの) 次回投稿文の調整で少し進めました
あと二回で、明日には完結させるように努めていきます
↓補足
・かなダイ以外レズビアンというコメントがありましたが、ようよしもかなダイ同様に同性愛者ではありません
・同性愛者が多すぎるという点については、あくまでも様々な事情によりそのような人間が集まった部ということです
学校全体に他に同様の性的指向を持った人間はおらず、学校単位で見れば一般的に言われる10~15人に1人ぐらいになるという設定です 乙
なんにせよ完結が楽しみ
花丸はどうなったんだろう… ―― ――
花丸「ルビィ、ちゃん」
花丸「ルビィちゃん、どこにいるの」
ルビィ?【マルちゃーん】
花丸「あはは、そこにいたんだね」
花丸「駄目だよ、一緒にいないと危ないから」
花丸「ほら、手を繋いで」 果南「おーい、マル」
花丸「ルビィちゃん?」
果南「やれやれ、また変なものが見えてる」
果南「ルビィじゃないよ、果南だよ」
花丸「か、なん――」
花丸「うっ、うぇぇ」
ビチャビチャ
果南「うわぁ、汚いなぁ」 果南「そんなに怖がらなくてもいいのに」
果南「確かに私は悪いことをしたとは思うけどさ」
果南「わざわざこうして、内浦から離れた場所まで定期的に面倒を見に来てるんだよ」
果南「なのにそんな反応をされたら、結構ショックなんだけど」
花丸「マルは、来てほしいなんて頼んでない」
花丸「むしろ来ないでほしいと思ってる」
果南「仕方ないじゃん、監視も兼ねてなんだから」
果南「他に人もいるし大丈夫だとは思うけど、念のためのさ」 花丸「……流石に諦めてるよ、もうここから逃げることなんて」
果南「いやいや、そっちじゃなくて」
花丸「じゃなくて?」
果南「確かに、一応逃げないための監視も兼ねてるけどさ」
果南「メインは、マルが馬鹿なことを、自ら死を選ばないようにするための監視だよ」
花丸「っ」
果南「あれ、見透かされていないとでも思ってた?」 果南「この部屋、全く物がないでしょ」
果南「小さな文庫本が数冊あるだけ、その手の行為に利用できる物は一切置いてないの」
花丸「……何で、そんなことを」
花丸「マルがいなくなった方が、都合がいいはずだよね」
果南「さぁ」
果南「指示してるのはダイヤだからね、何を考えているのかまでは」
果南「でもたぶん、ダイヤはマルも助けたいんだよ」
果南「何度も言ってたから、大切な後輩だって」 花丸「……だったら、ルビィちゃんを連れてきてよ」
花丸「それかもう、殺してよ」
花丸「大切だっていうなら、マルの望みを叶えてよ」
果南「無茶言うなぁ」
果南「どっちも無理に決まってるでしょ」
果南「もういい加減、ルビィのことは諦めて切り替えなよ」
果南「内浦に居られなくなった代わりに、手厚く面倒を見てあげてるんだから」
果南「普通に生きれば、標準よりいい暮らしができるんだよ」 花丸「忘れるなんて無理だよっ」
花丸「ルビィちゃんは唯一無二の存在なの」
花丸「なによりも大切で、マルの全てで」
花丸「少し離れ離れになっただけで、寂しくなるぐらい好きで」
花丸「ルビィちゃんも同じぐらいマルの事を愛してくれた」
花丸「だからずっと一緒にいようと誓い合った」
花丸「どんなことがあっても、離れないはずだったのに」 花丸「もう嫌だよ」
花丸「運命の人と出会った後、その人と引き離されて、一生存在を忘れられずに生きていく」
花丸「辛すぎるよ、耐えられないよ」
花丸「せめて声を聞かせてよ」
花丸「写真を見せてよ」
花丸「ルビィちゃんの存在を、マルから排除しようとしないでよ」
花丸「なんで、なんでみんな分かってくれないの」
果南「……はぁ、面倒くさいなぁ」 花丸「面倒くさいって、そんな」
果南「もういいよ、グダグダ言われるのも堪らない」
果南「それなら、私がマルを逃がしてあげるよ」
花丸「えっ」
果南「正直さ、相手をするのも嫌になってきたんだよね」
果南「いつもうじうじと、泣き言ばかり言って」
果南「一緒にいるだけでこっちまで暗い気分になってくる」
果南「やってられないよ、本当に」 花丸「ちょっと待って、今の本当に――」
果南「まあたぶん、マルが知らないような遠い場所にだけど」
果南「ルビィに近い場所だと、ダイヤに怒られそうだから」
果南「黒澤家を怒らせたら、私も色々ヤバそうだしねぇ」
果南「気が向いたときに、どこかに放り出すよ」
果南「それであとは自由にすればいい」
果南「私は関係ない、適当に小原の所為にでもすれば、ダイヤも納得してくれるでしょう」
花丸「果南ちゃん……」
果南「じゃあ私はそろそろ帰るよ」
果南「またね、マル」
花丸「……うん」 ―桜内家―
梨子「そっか、曜ちゃんにはフラれちゃったんだ」
千歌「うん……」
梨子「告白する前は、ひょっとしたらとは思ったんだけどね」
梨子「曜ちゃんは千歌ちゃんが大好きだから」
千歌「あはは、いつも反対してた割にそんなこと考えてたんだね」
梨子「別に、現実的な可能性の話よ」 千歌「でも自分でもね、肯定してくれるかもと思ってた」
千歌「曜ちゃんが返事を悩んでいたのを見て、もしかしたらって」
梨子「悩んでいたのは、断り方でしょ」
梨子「あんな最悪のタイミングで告白して、受け入れてもらえるわけない」
千歌「あはは、そうなんだけどね」
千歌「あそこで止めないと、曜ちゃんまで鞠莉ちゃんみたいな目に遭うかもしれなかった」
千歌「そう考えたら、もう止まらなくなってた」 梨子「本当に変な人ね、千歌ちゃんは」
千歌「そうかな」
梨子「ええ、私には理解できない」
千歌「そっか」
千歌「私自身は、酷い人間だとは思ってたけど、変な人ね」
梨子「実際、意味はなかっただろうから気にすることはないわよ」
梨子「少なくとも、二人に対して千歌ちゃんが責任を感じることはないと思うわ」
千歌「まあ、そうなのかもね」 千歌「でもわからないよ」
千歌「曜ちゃんは何でもできちゃう子だから、ひょっとしたら」
梨子「……その過程は考えない方がいいわよ」
梨子「絶対に無理だった」
梨子「そんな風に考えないと、それは一生消えない傷になるかもしれない」
梨子「千歌ちゃんの考えていることは、恋による盲目的な過程」
梨子「私に言わせれば、そんな感じのものよ」
千歌「うん、ありがとう梨子ちゃん」 千歌「でもね、目を逸らしちゃいけないと思うの」
千歌「私の行為が招いたかもしれないという事実からは」
梨子「……千歌ちゃんは、強いわね」
千歌「そんなこと、ないよ」
梨子「いいえ、強いわよ」
梨子「自分への言い訳を、必死に頭の中で組み立てている私とは大違い」
千歌「それは単純に頭の良さの違いだよ」
千歌「千歌は馬鹿だから、梨子ちゃんみたいな考え方ができないだけ」 千歌「これから二人は、どうなるのかな」
梨子「……さあね」
千歌「私に、気を遣ってる?」
梨子「そんなことは――
千歌「いいよ、正直に言って」
千歌「その答えには、何となく気づいているから」
梨子「……許されない恋をした者が愛を成就させる方法は、一つしかない」
梨子「私が東京で愛した人としたように」
梨子「花丸ちゃんは、早い段階でそれに気づいたみたいだけどね」 千歌「……だからこそ、止めたかったんだよね」
梨子「そうね」
梨子「そもそも、その方法さえも上手くいくとは限らない」
梨子「片方だけが取り残されてしまうこともある、不確実な方法」
梨子「実際、上手くいかなかったから私もここに居るわけだしね」
千歌「……」
梨子「千歌ちゃん?」 千歌「ごめんね、また思い出させちゃって」
梨子「いいのよ、これは自分自身への戒めでもあるから」
千歌「二人は、もうどうしようもないのかな」
梨子「そうね」
梨子「愛を成就される方法すら選べない」
梨子「お互いの事を想いながら、葛藤して、苦しんで、ただの生き地獄を味わい続ける」
梨子「すぐに相手の事を忘れられる薄情さがあれば、別だったかもしれないけどね」
千歌「愛の深さ故に、か」 梨子「だから千歌ちゃんも止めておきなさい」
梨子「深すぎる愛はただでさえ上手くいきにくい」
梨子「それが普通の形でなければなおさらよ」
梨子「ちょうどフラれたタイミングで、諦めた方がいい」
梨子「元々、私と違って女の子が好きというより、曜ちゃんが好きなだけでしょ」
梨子「千歌ちゃんみたいに可愛いし、人当たりもいい子はモテるわよ」
梨子「きっとすぐに素敵な人が見つかるはず」
梨子「だから、ね」 千歌「そうだね」
千歌「確かに私は曜ちゃん以外の女の子を好きにならないかもしれない」
千歌「男の人も同様かもしれないけど、同じ条件なら普通の道を目指すべき」
千歌「それは、分かるよ」
梨子「そうよ」
梨子「そもそも恋が成就しても、まともに生きていけるわけがない」
梨子「私や花丸ちゃんたちみたいにならなくても、苦難の連続が待っているだけ」
梨子「そもそも曜ちゃんは考えを簡単に変えるような子じゃない」
梨子「素直に諦めて、幼馴染の親友として生きて、おばあちゃんになったら告白の話は若気の至りと笑い飛ばして」
梨子「そんな風に生きるのが、一番幸せなのよ」 千歌「うん、ありがとう」
千歌「梨子ちゃんが千歌の為に真剣に言ってくれてるの、よく分かるよ」
梨子「なら――
千歌「でもね、全てがそうなるとは言えないでしょ」
千歌「梨子ちゃんのは、自分の経験に基づいた話」
千歌「確かにそれが一つの事実であることは間違いない」
千歌「だけど、世の中にはもっと違うケースもあるかもしれない」 梨子「千歌ちゃんは、まだ恋を諦めないの」
千歌「うん」
梨子「私がこんなに、現実の話をしてるのに」
梨子「実体験まで語っているのに」
梨子「千歌ちゃん自身だって、それが間違っていると分かっているはずなのに」
千歌「だって、それぐらい曜ちゃんの事が好きだから」
千歌「傍にいれば、いつかこの想いは叶うと信じて」
千歌「幸せな未来があると想い続けて、一緒に居続けるの」 梨子「……変じゃなくて、馬鹿な人の方が正しかったかしら」
千歌「うん、さっき自分でも言ったじゃん」
千歌「千歌は馬鹿だって」
梨子「まあ、そこまで意志が固いなら私は止めないわよ」
梨子「勝手にフラれて絶望するといいわ」
千歌「フラれたら慰めてくれる?」
梨子「親友として、最低限はね」
千歌「ふふっ、ありがとう」 千歌「でもね、私は梨子ちゃんにも諦めないでほしい」
千歌「『私たち』にはまだ、希望がある」
千歌「今は相手にその気がなくても、いつか気が変わるかもしれない」
千歌「別の恋をするならともかく、相手のことを想い続けるなら、諦めちゃ駄目だよ」
千歌「今、手元にある希望を捨てるのは、あの子たちにも失礼だと、私は思う」
梨子「……そうね」
梨子「きっと私の考えは変わらない」
梨子「でも一応、頭の片隅には入れておくわ、その言葉」
千歌「うん」
千歌「今はそれで、十分だよ」 おつ、最後が怖いけど楽しみだわ・゜・(つД`)・゜・ ――黒澤家――
曜「こんにちは〜」
ダイヤ「あら二人とも、いらっしゃい」
善子「ふふっ、ヨハネ降臨!」
ダイヤ「善子さんは今日も元気ですね」
善子「ヨハネよ!」 曜「今日も遊びに来ましたよ」
ダイヤ「すみませんわざわざ、ルビィの為に」
曜「これぐらいしかできることはありませんから」
善子「親友の為なら当然でしょ」
ダイヤ「……本当に感謝してますよ」
ダイヤ「おかげさまでルビィも以前に比べてずいぶんと元気になりました」
曜「いやいや、まだまだですよ」 善子「それにしても今日は人が少ないのね」
ダイヤ「両親は所用で、家の者も色々あって出払っていますの」
ダイヤ「ちょうど良かったかもしれませんがね」
ダイヤ「せっかく友人が遊びに来ているのに、家の者がうろついているのも野暮でしょう」
善子「確かに、それはそうかもしれないわね」
曜「善子ちゃん、警備の人とか怖がってたもんね〜」
善子「う、うっさい」 ダイヤ(楽しそうにじゃれ合う二人)
ダイヤ(彼女たちは、私には無い力を持っている)
ダイヤ(私では絶対に取り戻せなかったルビィの心を徐々に取り戻す力を)
ダイヤ(退院後、鞠莉さんにはどんな事をされても仕方ないと思っていた)
ダイヤ(それなのに平手一回でで手打ちにしてくださって)
ダイヤ(皆がとても、心が広い)
ダイヤ(寛容すぎて、どこか違和感を覚えるぐらい)
ダイヤ(いや、考えすぎかもしれません)
ダイヤ(ここまで尽くしてくれているのです、あまり疑ってかかるのも失礼でしょう) ※
曜「やあやあ、こんにちヨ―ソロー!」
ルビィ「……また来たの、二人とも」
善子「ぐっ」
曜「もぅ、そんな煙たがらないでよ」
曜「流石にお姫様抱っこ登校は悪かったと思うけどさ」 ルビィ「確かにあれは恥ずかしかったですけど」
曜「だよねぇ」
ルビィ「でも、関係ないです」
ルビィ「そもそもルビィは曜ちゃんや善子ちゃんと話したくないんです」
曜「そんなこと言わないでよ、つれないなぁ」
ルビィ「もう放っておいてください」
ルビィ「ルビィは二人に会うことを望んでいません」
曜「うーん、そこまで煙たがれると……」 善子「大丈夫よ曜さん、ルビィは照れてるだけだから」
ルビィ「へっ」
善子「曜さんが来ることを本当は喜んではいるのよ」
善子「その証拠に、こうして普通に話すようになってるわけだし」
ルビィ「ち、違うよ。そうしないと前みたいに無理やり――」
曜「あー、なるほどね、照れ隠しか」
ルビィ「ち、ちがっ」
曜「もー、可愛い後輩ちゃんだなぁ」 ルビィ「ち、違うもん!」
善子「おっと、怒ったわ」
ルビィ「もぅ、曜ちゃんと善子ちゃんなんて知らない」
善子「ありゃ、拗ねちゃった」
曜「ルビィちゃん、機嫌直してよ」
ルビィ「嫌だ、絶対」
曜「困ったなぁ、それなら――
曜「私が、花丸ちゃんのいる場所まで連れて行ってあげるって言ったらどうする」
ルビィ「えっ?」 ルビィ「それって、どういう――
ガラッ
ダイヤ「三人とも、そろそろおやつにでも――
曜「善子ちゃん!」
善子「了解!」
ダイヤ「へっ」
ガシッ
ダイヤ「な、なにをするのですか!?」
善子「なにって、貴女を抑え込んでるのよ」 曜「ルビィちゃん、行くよ!」
ルビィ「ふぇ、またお姫様抱っこで――」
曜「善子ちゃん、後任せた」
善子「ええ!」
ダイヤ「よ、善子さん、離しなさい!」
ダイヤ「こんなことをして、ただでは済みませんよ!」
善子「無理よ、私も曜さんも鞠莉さんに脅されてるの」
善子「家族や大切な人の命がかかってるから、絶対に無理」
ダイヤ「ま、鞠莉さんはまだ――――」 ルビィ「ど、どこに行くの」
曜「だから、花丸ちゃんのところ!」
ルビィ「む、無理だよ、捕まっちゃう」
ルビィ「このまま走ってたら、絶対誰かに――」
曜「大丈夫、ちゃんと考えてあるから」
曜「すぐに内浦から出られる方法を」
ルビィ「で、出られる方法?」
曜「うん――これだよ!」 ルビィ「ば、バイク!?」
曜「早くヘルメット被って!」
ルビィ「免許持ってるんですか!?」
曜「最近取ったの」
曜「本当はまだ2人乗りは駄目なんだけど、今は緊急時だから」
曜「今日は警備が薄いから、これがあれば逃げ切れるはず」
ルビィ「す、凄い」
曜「被れたら後ろ乗って」
ブロロッ
. 曜「色々聞きたいことはあるかもだけど、今は我慢して」
曜「ちょっと飛ばさないといけないかもしれないから」
ルビィ「わ、分かりました」
曜「ちゃんと捕まっててね!」
ルビィ「は、はい!」
曜(よし、ここまでは計画通り)
曜(ちゃんと言われた通りに実行できてる―― ※
―小原家―
鞠莉「よく来てくれたわね、二人とも」
曜「来ないと思ってたの?」
鞠莉「いえ、ほぼ来るという確信はあったわ」
鞠莉「それでも、私に会うということ自体、勇気のある行動だから」
曜「ダイヤさんに、目をつけられるから」
鞠莉「まあ、そうね」 あーおもいだした とりあえずいっとけばけいの だせいだったよな いまもかわんないけど 善子「それで、ルビィたちを助ける方法って」
鞠莉「……その前に、一つ話しておかなきゃいけないことがあるの」
善子「なによ」
鞠莉「実は果南に頼んでね、ルビィに聞いてきたの」
鞠莉「何か、私にしてほしいことはないかって」
鞠莉「そしたらルビィは言ったらしいの、『最後に花丸ちゃんに会いたい』と」
善子「えっ……」
曜「最後って、それじゃあ」 あーおもいだした とりあえずいっとけばけいの だせいだったよな いまもかわんないけど
きゃっきゃっきゃ とくにめすが どっちもしゅうちゃくしんつよいけどねー 鞠莉「でも私は叶えなきゃいけない。それが二人の望みなら」
鞠莉「二人がここまで追い込んでしまったのは私」
鞠莉「自分の感情で、無理やりその恋を成就させようとした私の責任」
鞠莉「だからその分、私が救ってあげなきゃいけない」
鞠莉「例え大切な友人に恨まれることになっても」
曜「鞠莉ちゃん……」
善子「マリー……」 あーおもいだした とりあえずいっとけばけいの だせいだったよな いまもかわんないけど
きゃっきゃっきゃ とくにめすが どっちもしゅうちゃくしんつよいけどねー
なーんか
こっちがそんてか ざんねんなほうこうに ゆういにたとうとしtげたんだろうなつねに いろいろ ひがいしゃづらとかもなー 鞠莉「頼みは簡単」
鞠莉「ダイヤの信頼を得て懐に入り込んで、信頼を得る」
鞠莉「そして油断したところで、ルビィをさらってもらう」
曜「さらう……」
鞠莉「そして、私が指示する花丸との合流地点まで連れて行ってほしいの」
鞠莉「その途中の移動方法も考えてある」
鞠莉「ダイヤはしっかりしているようで甘い子だから、どこかであなた達を信頼して警戒を緩めるはずよ」
鞠莉「そうなれば後は、黒澤家に人が少ないタイミングでルビィをさらえる」
鞠莉「二人いれば、十分に可能なはずだわ」 曜「でも、花丸ちゃんの方はどうするの」
曜「今の居場所さえ分からない状態だよね」
鞠莉「花丸の方は果南が上手くやってくれるらしいから、どうにかなるはずよ」
曜「果南ちゃん、協力してくれるのかな」
曜「ダイヤさんの味方、なんだよね」
鞠莉「少なくとも、ルビィとの仲介役にはなってくれた」
曜「でも、全部ダイヤさんに筒抜けにするための可能性も」
鞠莉「……信じるしかないわ、無理なら他の方法を考える」 鞠莉「果南は私とダイヤを同じぐらい大切だと言っていた」
鞠莉「でも一度、ダイヤの味方をして、私の敵になった」
鞠莉「だから今度は、私の味方になってくれる番――だといいのだけど」
曜「ずいぶんと、薄い根拠だね」
鞠莉「ええ、そうかもね」
鞠莉「でも私にはそれしか方法がないの」
鞠莉「果南を、曜を、善子を信じて助けを借りないと、また失敗してしまうから」
曜「…………」
善子「…………」 鞠莉「曜、善子」
鞠莉「二人は、これを手伝う意志はある?」
鞠莉「責任はすべて私が取る」
鞠莉「例え反対されてもこれは譲らない」
鞠莉「だから、あなたたちと大切な人の立場は守られる」
鞠莉「だけど十字架を背負うことになる」
鞠莉「これに加担することによって、重い、一生に背負わなければならない十字架を」
鞠莉「それでも、協力してくれるかしら」 ※
曜(……これで、よかったんだよね)
曜(少なくとも、直接的に手を下したのは私)
曜(善子ちゃんは私より、罪の意識は薄くなるはず)
曜(ルビィちゃんも、きっと花丸ちゃんもこれを望んでいる)
曜(数だけで見れば、これは正しい決断)
曜(だけど、ダイヤさんは……)
曜(いや、考えるのは止めよう)
曜(私は考えて、決断して、行動に移した)
曜(あとは、果南ちゃん次第……) ―――???―――
花丸(ここ、どこだろう)
花丸(果南ちゃんに突然連れ出された先)
花丸(近くには崖みたいな場所)
花丸(見たこともない景色)
花丸(ここで生を終えろということ?)
花丸(マルの死に場所を、用意してくれたってこと?) 花丸(あれから、どれほどの月日が経ったかな)
花丸(マルはルビィちゃんと引き離された日から)
花丸(最初は数えていたけど、気がつけば分からなくなった)
花丸(数える意味などないと気づいて、止めてしまったから)
花丸(崖下を覗くと、大きな荒れた海が見える)
花丸(なるほど、これは確かに死の舞台にふさわしい)
花丸(果南ちゃん、こんなところで無駄に気を遣ってくれるなんて、馬鹿みたい) 花丸(あぁ、緊張するな)
花丸(飛び降りる前に、何かするべきことは――)
花丸(ルビィちゃんに電話してみる?)
花丸(ちょうどそこに公衆電話がある)
花丸(小銭まで置いてあるから、かけることはできそう)
花丸(でも、きっと番号は変わっているよね)
花丸(ダイヤさんがそんなミスを犯すとは思えない)
花丸(そうだ、遺書を書くべきかもしれない)
花丸(きっと果南ちゃんが回収してくれるだろう)
花丸(紙は、文庫本の空白でいいかな)
花丸(でもペンは――ポケットに入ってる)
花丸(なんて至れり尽くせりな、確かに標準よりいい待遇かも) 花丸(内容は、どうしようかな)
花丸(ルビィちゃんへの愛を語る?)
花丸(でもそれだと、残されたルビィちゃんに悪影響かな)
花丸(そもそも、本人にメッセージを伝えてもらえないかもしれない)
花丸(いっそ、罵詈雑言でも書けばいいかな)
花丸(それでルビィちゃんがマルを嫌いになれば、また新しい人生を歩み直せるかもしれない)
花丸(でも、生半可な言葉だと嘘だってばれるよね) 花丸(悪口……ルビィちゃんの悪口なんて思いつかない)
『ルビィちゃんの馬鹿、あほ、まぬけ』
花丸(なにこれ、小学生みたいな――
ルビィ「あはは、小さい子どもみたいだね」
花丸「えっ」
ルビィ「マルちゃん、ルビィのことをそんな風に思っていたの?」
花丸「……ルビィ、ちゃん?」
ルビィ「うん、そうだよ」
花丸「本物? それともルビィちゃんを想い続けていたマルが生み出した幻覚?」 ルビィ「本物だよぉ、だってほら」
チュッ
ルビィ「この感触、変わらないでしょ」
花丸「……そうだね」
花丸「ルビィちゃんの味、匂い、声」
花丸「これが幻覚だったら、マルは超能力者だよ」
ルビィ「ふふっ、信じてくれた――
ギュッ
ルビィ「わっ、マルちゃん」 花丸「ルビィちゃん、ルビィちゃんだ」
花丸「もう二度と、会えないと思ってた、ルビィちゃん」
花丸「マルの大切な人」
花丸「永遠に寄り添うことを誓った、最愛の人」
花丸「大好きな、大好きなルビィちゃん」
ルビィ「……うん、そうだよ」
ルビィ「マルちゃんが大好きな、ルビィだよ」 花丸「これから、ずっと一緒に居られるの?」
ルビィ「それは、無理かな」
ルビィ「じきにお姉ちゃんがルビィ達を見つけ出す」
ルビィ「今度はマルちゃんだけじゃない」
ルビィ「協力してくれた人とも二度とかかわれない場所に連れ出されるかもね」
ルビィ「海外にでも連れていかれるかな」
ルビィ「二人とも別々の国で、絶対に会えないようにされて」
花丸「そんな……」 花丸「せっかく再会できたのに、結局また」
花丸「そんなの、嫌だよ」
ルビィ「うん、ルビィも嫌だ」
ルビィ「もう二度とマルちゃんと離れたくない」
花丸「ルビィちゃん……」
ルビィ「だからマルちゃん、いいんだよ」
ルビィ「ずっと望んでいた、『酷いこと』をしても」
ルビィ「ルビィ、覚悟はできてるから」 花丸「……無理だよ」
ルビィ「どうして」
花丸「どんなに理想を語っても、マルはルビィちゃんを傷つけられない」
花丸「さっきの遺書にも、まともな悪口一つ書けないぐらい、ルビィちゃんが大切で」
花丸「本当はそれを望んでいるのに、身体がいうことを聞いてくれないの」
ルビィ「……そっか」
ルビィ「それなら――――
花丸(あれ)
花丸(ルビィちゃんの手、何か光って――)
グサッ
花丸「あっ、あぁ」 ルビィ「それなら、ルビィが助けてあげる」
ルビィ「代わりに『酷いこと』、してあげる」
花丸「……ルビィ、ちゃん」
ルビィ「ごめんね、痛いよね」
ルビィ「でもちょっとだけ我慢して」
ルビィ「ルビィも、すぐに一緒にいくから」
ルビィ「ちゃんと一緒に、マルちゃんを1人にしたりしないから」
花丸「……ありが……とう」 ルビィ「ごめんね、ずっと苦しめちゃって」
花丸「マルは……ルビィちゃんと最後に居られて……幸せだよ」
ルビィ「ルビィも、幸せ」
花丸「……最後に……抱きしめて」
ルビィ「うん」
ギュッ
ルビィ「マルちゃん、温かいよ」
花丸「……ルビィちゃんも……ね」 花丸「……生まれ変わっても……ずっと一緒に居よう」
ルビィ「そうだね」
ルビィ「どちらかが男の子になるか、女の子同士でも一緒に居られる、そんな世界で」
花丸「……素敵だね……そん……な……世界」
ルビィ「もう、限界かな」
花丸「……う……ん」
ルビィ「ルビィも、そろそろいくね」
花丸「……………………」
ルビィ「バイバイ、マルちゃん。また来世で」
ルビィ「生まれ変わっても、ずっと一緒だよ」 以上で完結となります
途中長い中断期間がありながら無事完結できたことを嬉しく思います
保守、コメント等、皆さんにはとても助けられました
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました 完走お疲れ様でした
約一ヶ月ハラハラしながら読ませていただきました 一ヶ月もやってたのか結構短く感じた
面白かったありがとう 乙、やっぱり最後は避けれないか…
周りも含めて、幸せな選択だったのか複雑なところだな
花丸ちゃんは元々心中願望があったようにも見えるし… 完結乙
他にも同じような子たちがいたわけだけど、そっちの方はどういう結末を迎えるかとかは考えてたりするの? マルちゃんが無理だよって言った時一瞬油断した
最後までとても良かったわ…… おつ・゜・(つД`)・゜・推しカプ程悲恋物が似合うのはなんでじゃろ…
ルビまるの依存してる危うい感じはやっぱりいいわぁ… あれだ「輪廻」ってホラー映画の主題歌があったけどそれを思い出したわ… これで終わっとくのが一番美しいのかもしれんが、やっぱ構想あるなら後日談見たいなあ タイトル通りのラストだからもう少し補完してほしいね 乙でした
エピローグが見たいような見たくないような 心中を善意で助けたんだから鞠莉にとって好きな人と別れるのは死ぬよりつらいことなのかな
そう考えると果南ちゃんとのシーンがよりきつく思える 水指すみたいになっちゃうけどルビィちゃんが死ねるシーンが描かれてないのが怖い ルビィちゃんが死にかけてたのをダイヤさんが救って死なせずに生涯行かせ続けるってのもなかなかにきつい おつ!
やっぱ最後はそうなるよな…
後日談あれば見たい なかなか辛い結末だったけど、
ほんと読んでて引き込まれたわ
乙 >>200
まるちゃんの家族はLGBTについて何で見たんだ? >>74
こんな風に言い切ってしまうダイヤさんがルビィと花丸が心中してその手伝いをAqoursの仲間がやったと知ったらどうなってしまうのか... 花丸ちゃんに対して自死を警戒するほどだったのに、こうなることは考えなかったんだろうか
ダイヤさんはルビィちゃんを家から追い出すことにはなっても意志を尊重するくらいはできたろうに、考えが甘かったように思う 転生したルビィちゃん達のはなしも気になる(野暮かもだけと) もうまとめでも後日談的コメント多いからやるなら別スレで
ここでやられてもまとめには反映できないアフィ〜 >>624
アフィカスには反映されてないけど続いたSSも結構あるからな ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています