海未「ええ、そうですね」
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穂乃果「だって、色も形も大きさもばらばらじゃん」
海未「私が言いたいのは、本質として同じものということです」
穂乃果「どういうこと?」
海未「つまり、人間みんなに『他人と違う』という共通点がある、ということです」
穂乃果「えー?なんだかズルいよー……」
海未「ズルいでしょうか」
穂乃果「それに、共通点があるってことが、一緒ってことにはならないんじゃないの?」
海未「そうですか。じゃあ逆に、穂乃果は『一緒』をどう定義するのですか?」
穂乃果「えっと、それは……」
海未「ほら」 穂乃果「うーん、そうだ!違う部分もあれば、一緒の部分もある!それが人間なんだよ!」
海未「ええ?」
穂乃果「だからこんな議論は無意味だよ!」
海未「穂乃果が言い出したのではありませんか。『人間はみんな違うもん!』と」
穂乃果「海未ちゃん、今のかわいい」
海未「あなたの真似をしただけです!」
穂乃果「照れてるー」
海未「そんなことありません!」
穂乃果「海未ちゃんはねー、もっと素直にならないと」
海未「私は普段から正直に話しているつもりですが……」
穂乃果「いやいや、素直と正直は違うんだよ」
海未「よくわかりません……」 穂乃果「私も言葉の意味の違いはよく知らないよ。でもなんとなく違うんだ。ね、ことりちゃん」
海未「ことりはいません」
穂乃果「だよねー……」
海未「……まったく、この大事な時期に風邪とは……」
穂乃果「『風邪とは……』?」
海未「いえ、別になんでもありません」
穂乃果「海未ちゃん、もし風邪ひいたのが私だったら『たるんでいます』って言うんでしょ」
海未「言いませんよ。流石に理不尽でしょう」
穂乃果「いいや。わかるもん」
海未「言いません」
穂乃果「絶対言う!」
海未「言いません!」 穂乃果「まあいいや」
海未「いいんですか」
穂乃果「大事なのは気持ちだからね!」
海未「それはこのタイミングで使うべき言葉ではないと思います」
穂乃果「そっかあ」
海未「ええ」
穂乃果「でも、こんな時期に風邪ひくものなの?」
海未「季節の変わり目ですから」
穂乃果「春と夏の間だよ?一番ひかなそうじゃない?」
海未「夏風邪のちょっと早めのかもしれません」
穂乃果「へー」
海未「真に受けないでください。私だって風邪に関する知識はあなたと同程度ですから」
穂乃果「そっかあ……」 海未「ええ」
穂乃果「ねえ海未ちゃん、『風邪をひく』の『ひく』ってどう書くの?」
海未「漢字で、ってことですか?」
穂乃果「うん」
海未「わかりません。そもそも漢字なんてあるんでしょうか」
穂乃果「海未ちゃんにもわからないことあるんだね」
海未「もちろん」
穂乃果「じゃあじゃあ、『風邪をうつす』の『うつす』は?」
海未「……わかりません」
穂乃果「うーん、謎の多い病気だね」
海未「確かにそうですね。すごくありふれた病気なのに、変な話です」
穂乃果「世界中の学者さんは風邪の謎から解き明かしていくべきだね」
海未「その通りです。身近なところから積み上げていくのが大切ですよ」 穂乃果「口だけは達者だね」
海未「ええ、あなたが」
穂乃果「そうそう」
海未「ちゃんと主語をつけて話すようにしてください」
穂乃果「いちいちそんな細かいところまで気にしてると、ふけちゃうよ。夜が」
海未「そうかもしれませんが……」
穂乃果「それに、話の流れからなんとなくわかるでしょう?」
海未「わかりにくいから問題にしているのではありませんか」
穂乃果「わからないのは海未ちゃんにコミュニケーション能力が足りないからだよ」
海未「足りないのは主語です」
穂乃果「うまくないよー、海未ちゃん」
海未「そうですか」 穂乃果「はーあ、やっぱり雨が降ってると退屈だね」
海未「すみません」
穂乃果「別に海未ちゃんの冗談がつまらないわけじゃないよ!」
海未「それならいいです」
穂乃果「雨が止んだらひとっ走りしたいね」
海未「凛みたいなことを言いますね」
穂乃果「凛ちゃんは元気いっぱいだよね」
海未「あなたもじゅうぶん元気いっぱいではありませんか」
穂乃果「そうかもしれないけど……私と比べての話はしてないよ」
海未「でも、もし私が誰かに対して『真面目ですね』って言ったら、『いや、海未ちゃんも真面目でしょ』って言うでしょう?」 穂乃果「誰が?」
海未「誰かが」
穂乃果「まあ、そうだね。っていうか、海未ちゃん自分のこと真面目だって思ってたんだ」
海未「ええ、まあ、一応」
穂乃果「まあいいや。何の話してたんだっけ?」
海未「あなたは、走りたいと言っていましたが……」
穂乃果「ああ、そうだね。馬に乗って草原を走り回ったら楽しいだろうなー」
海未「そんな規模の話でしたっけ」
穂乃果「したっけしたっけ走り回りたいよ」
海未「なんですか……?その『したっけ』というのは」
穂乃果「馬が雨上がりの草原を走るときの効果音だよ」 海未「なるほど。的確ですね」
穂乃果「海未ちゃんが私の言うことに賛成するなんて、珍しい!」
海未「まあ、あなたがいつもおかしいというわけではありませんから」
穂乃果「それは当然だよ」
海未「そうですね」
穂乃果「……それにしても、みんな遅いねー。にこちゃんなんか、いつもまっさきに来るのに」
海未「あれ、知らなかったんですか?今日、三年生は来ませんよ」
穂乃果「そうなの?」
海未「ナントカ講演会とやらがあるそうです」
穂乃果「面白い名前の講演会だね」 海未「……ええ。そうですね」
穂乃果「もうー、拾ってよー!」
海未「なんと言えばいいのかわからなかったので……」
穂乃果「もう」
海未「次の機会に頑張ります」
穂乃果「次があるかどうかもわからないよ」
海未「きっとありますよ。可能性は無限大です」
穂乃果「おおっ、ロックっぽい!」
海未「まあ、私たちの寿命には限りがありますから、本当は無限ではないですが」
穂乃果「うわあ、現実っぽい……」 海未「……穂乃果、あなたは本当に表情豊かですね」
穂乃果「海未ちゃんが表情貧乏なだけだよ」
海未「謙遜しているようで私を貶さないでください」
穂乃果「別に表情貧乏は悪いことじゃないよー」
海未「言い方というものがあるでしょう」
穂乃果「例えば?」
海未「表情が……こう……真顔で、あまり……かわ、ら……ない……みたいな」
穂乃果「ダメダメだよ、海未ちゃん」
海未「はあ……」 穂乃果「海未ちゃんって無茶ぶりには弱いよね」
海未「自覚はあります」
穂乃果「まあ、そんなところもかわいいんだけどね!」
海未「えっ……」
穂乃果「あっ、照れてるー?」
海未「別に、照れてなんか……」
穂乃果「んー?」
海未「ないことも、ないですけど……」
穂乃果「うーん。素直になったね、海未ちゃん」
海未「もうこの話はおしまいにしましょう」
穂乃果「この話って、どの話?」
海未「さっきまで何の話をしていたか、もう忘れてしまいました」 穂乃果「じゃあ新しい話をしようよ」
海未「今朝、遊園地でメリーゴーラウンドが壊れる事件があったそうです」
穂乃果「最新のニュースの話じゃなくてもいいよ」
海未「最新のニュースの話でもいいじゃないですか」
穂乃果「私にはその話を膨らませられないよー」
海未「そうですか……」
穂乃果「そうだ!海未ちゃん、腕相撲しよう!」
海未「懐かしいですね」
穂乃果「ほら、いくよ」
海未「はいはい」 穂乃果「よーい、スタート!」
海未「うんっ……!」
穂乃果「えいっ……はにゃっ……ぐううっ……!」
海未「あっ」
穂乃果「やったー、久しぶりに海未ちゃんに勝った!」
海未「まあ、仕方ありません」
穂乃果「それにしても、海未ちゃんの手、大きいね」
海未「そうですか?」
穂乃果「ほらほら、合わせて」
海未「うーん、確かに私の方が少し大きいかもしれません」
穂乃果「手の大きい人って、なんだか安心しない?」 海未「気にしたこともありませんでした」
穂乃果「私、付き合うなら手の大きい人がいいなー」
海未「手の大きさだけで決めるんですか?」
穂乃果「そんなことはないよ。でも、色も形もおんなじだけど、手の大きさだけが違う二人の人がいたら、きっと大きい方を選ぶよ」
海未「それなら、私もそうするかもしれません」
穂乃果「でしょでしょ?」
海未「そういう二択が積み重なって、好きという感情は生まれるのかもしれませんね」
穂乃果「海未ちゃんって、好きな人はいるの?」
海未「ふふっ。どうでしょう」 穂乃果「何それ!いるの?」
海未「自分でもよくわかりません」
穂乃果「いつわかるようなるの?」
海未「わからないままでもいいんです」
穂乃果「私は、海未ちゃんの言うことがよくわからないよ」
海未「わからないことだらけですね」
穂乃果「そのフレーズ、聞いたことある」
海未「デジャヴ、でしょうか」
穂乃果「そうだねー……」
海未「……」
穂乃果「……」 海未「……凛も花陽も真姫も、遅いですね」
穂乃果「何かあったのかな?」
海未「わかりません」
穂乃果「……あー、百万円ほしいー」
海未「唐突ですね」
穂乃果「海未ちゃんは、百万円あったら何に使う?」
海未「百万円があってみないとわかりません」
穂乃果「うーん。あいにく私は持ってないからなー」
海未「さっき欲しがっていたくらいですから、そうなのでしょうね」
穂乃果「海未ちゃんは欲しいと思わないの?」
海未「別段無くても困らないので」 穂乃果「欲しいって気持ちは、困るとか困らないとかそういうのとは違うんじゃない?」
海未「百万円の話においては、ですよ」
穂乃果「ふーん」
海未「穂乃果は、何か欲しいものがあるんですか?」
穂乃果「そうだねー……馬が欲しい!」
海未「馬って百万円もするんでしょうか」
穂乃果「わからないよ。でも、何匹いても困らないから」
海未「そうですか」
穂乃果「馬に囲まれて生活して、馬と一緒にご飯食べて、馬と一緒に結婚して、馬と一緒に亡くなりたいね」
海未「なんだか、馬と結婚する人みたいです」
穂乃果「流れでなんとなくわかるでしょ?」
海未「まあ、わかりますけど……」 穂乃果「……はあー……」
海未「ため息をつくと幸運が逃げてしまいますよ」
穂乃果「じゃあ海未ちゃん吸っといて、私の幸運」
海未「すうー……」
穂乃果「気分はどう?」
海未「うーん、あまり変わった気はしませんね。でも、これでいいことがあるかもしれません」
穂乃果「長生きできるかもね」
海未「穂乃果のいない余生を過ごすのは寂しいです」
穂乃果「そんな先のことは考えなくていいんだよ」
海未「そうですね」
穂乃果「でも、どうなのかな」
海未「何がですか?」 穂乃果「もしかしたら、五十年後とか百年後には、不老不死になれる薬とか発明されるかもしれないよ」
海未「そうかもしれませんね。でも、私は不老不死にならない方がいいと思いますよ」
穂乃果「なんで?」
海未「限りある人生だからこそ、今をよりよくしようと努力するのです。それを怠っては、健全に生きられないでしょう」
穂乃果「そっか……」
海未「不老不死になれる薬を飲むかどうかは穂乃果の自由ですが、くれぐれも気を付けてください」
穂乃果「うん、わかった」
海未「……」
穂乃果「……希ちゃんだったら、不老不死になれる方法くらい知ってるかな?」
海未「知っていても教えてくれないんじゃないでしょうか」
穂乃果「なんで?」 海未「希は意外と寂しがり屋ですから」
穂乃果「……そっか。不老不死になったら、みんなが死んじゃった後も生き続けないといけないもんね」
海未「独りぼっちになったときの気持ちは、希が一番よく分かっていると思います」
穂乃果「……」
海未「……」
穂乃果「……なんだか、暗い話になっちゃったね」
海未「ええ。もっと明るい話題にしましょう」
穂乃果「明るい話……うーん……何か……」
海未「考えてみると、意外と無いものですね」
穂乃果「いや、きっとたくさんあるんだよ」
海未「え?」 穂乃果「たくさんありすぎて、どれを取ればいいのかわからないけど……でも多分、そこら中にあるよ」
海未「……そうですか」
穂乃果「私たちは、一つ一つ確実に、それを見つけていけばいいんだよ」
海未「そうですね」
穂乃果「はあー……」
海未「あっ、また幸運が」
穂乃果「海未ちゃん吸って!」
海未「すうーっ……けほっ、けほっ!」
穂乃果「あっ!大丈夫?」
海未「え、ええ」 穂乃果「風邪ひいてるんだから、無理しないでね」
海未「ええ、気をつけます」
穂乃果「ことりちゃんも、家の用事で帰っちゃうし……今日はもう練習中止かな?」
海未「一年生は来ますよ」
穂乃果「真姫ちゃんと花陽ちゃんだけで、私と凛ちゃんがふざけるのを止められる自信がないよ」
海未「そうかもしれませんね」
穂乃果「ねえ」
海未「なんですか?」
穂乃果「……やっぱり、主語は大事だね」
海未「ええ。そんな気がしますね」 穂乃果「……」
海未「……」
穂乃果「……あっ、見て。晴れたよ」
海未「そうですね」
穂乃果「私、ちょっと走ってくるよ」
海未「ええ。行ってらっしゃい」
穂乃果「うん!」 メリーゴーランド事故の話と馬で走りたいって話が出てたので不穏な空気しか
感じなくてドキドキした
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