千歌「さよならを言ったその後に」
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没ネタスレより。
※本ss内の「彼女」は、全て she / her です。girl friend ではありません。 「今までありがとう。またねーーさよなら」
遠ざかっていく足音と、消えていく残り香。
覚えず伸ばした右手はなにもない空を掻いて、ただ、ふらりと落ちた。
足跡を重ねたい衝動を固唾に換える。
手の内に刺さる爪と、血が出んばかりの唇と。
吐息は震えて、吐き出すことしかできなくて。
繰り返す波の音は、あなたの心音にも似ていた。
*** ***
カラン、コロン
「あ! こっちだよ!」
ーー早いね。まだ時間前だよ。
「うん…なんだか、家にいられなくって」
ーー…そっか。もう注文済ませた? みたいだね。私はアイスコーヒーにしようかな。
「早く着いちゃったからね。あ、私もおんなじの頼む」
ーーコーヒー飲めるようになったんだ。すみません、アイスコーヒーを二つ、お願いします。
「むー…ばかにして。私だってもう大人なんだから」
ーーそうだね、私が自分を大人になったと思ってるのと同じように、あなただって大人になったんだよね。
「せっかくのお休みだったのに、ごめんね」
ーーいいよ。また一人で無理されるよりね。
「無理…は、今もしてる。一人じゃしきれなくなっただけだよ」
ーーそれでもいいよ。 「意地を張ってたって仕方ないんだってこと、知っちゃったから。思いーー知ったから」
ーー昔から、みんな意地っ張りだったよね。
「あの頃、私が高校生だった頃ね、私たちいつも一緒にいたの。知ってるよね。一緒に練習して、一緒に帰って、休日もどっちかに用事でもない限り一緒に過ごしてた」
ーー私たちの誘いも断ってね。
「違うってば。だから、断ってたのは先に約束してたときだけだもん」
ーーだいたいいつでも先に約束してたじゃん。だから、少し無理してでも予定抑えたりしたね。
「それで喧嘩にもなったんだよね」
ーー可愛かったわよね、あのときの彼女。
「意地悪だなあ…」
ーー…ごめん、話の腰を折ったね。 「ううん。…それでね、もうずっとそんな風にしてたから、なんていうか…当たり前になってて、私。どう思われてるかなんて、考えもしてなかったの」
「忘れないよ。三年生のバレンタインデー」
「二月って自主登校だったでしょ? だから学校で会うことはほとんどなくなってて、でも彼女が帰ってくるのに合わせて家の前で待ったりしてたんだけど」
「あの日だけね、わざわざ呼び出されたの。『屋上に来て』って」
「チョコだろうなって思ってて、チョコ渡すのに雰囲気とか、そういうとこちゃんとしてて見習わなきゃなーって、そんなこと考えてた」
「時間に合わせて屋上に行って、『着いたよ』って連絡しようとしたら、隅っこにもういて。あの、お気に入りでよくいたとこにね。あのときはただ真っ直ぐ立ってて」
「『待った?』って訊いたら、『全然』って。『寒いね』って言ったら、『今は熱い』って。屋上まで走ったんだと思う。汗かいてたから拭いてあげてたの」
「そしたらね、じっと見てるから『どうしたの?』って言ったら、『チョコはあげない。言いたいことがあって、来てもらったの。あなたが好き。卒業してからも、私はあなたの隣にいたい』って」
「緊張してたんだろうなあ…ほっぺたと耳と真っ赤にして、でも一度も目を逸らさないで、最後まで言ってくれたの」
「私すごく鈍感だったけど、そのときは彼女が言いたいことすぐわかったの。なにを言ってくれたのか、どういう気持ちを伝えてくれたのか、わかった。たぶんね、全然関係ない言葉を言われてても、わかったと思う。そういう感じがしたの」
「だから、ものすごく驚いちゃって…照れたし、もちろん嬉しかったんだけど、目を見てられなくって逸らしちゃって、『待って』って言ったの」
「でもね、そしたら手を握ってくれて、『待たない。あなたが同じように想ってくれてるって、私知ってるから。時間なんかあげない。ここで頷いて。今』ってね、言われた」
「頭の中ぐるんぐるんしちゃって、私も自分で耳とほっぺたが赤くなってるのわかるくらいで、手もはじけそうなくらい熱かったんだけど、嫌とか怖いとか全然思わなくって、息の仕方も忘れちゃったくらい苦しくって、でもね」
「頷き方は忘れてなかったんだよ」 「…それがね、私たちの始まりだったの」
ーー知ってる。何回同じ話をされたことか。
「えへへ…だからかな、もう何年も前のことなのに、すっごく鮮明に覚えてるんだ。空気の冷たさまで覚えてる」
ーー私なんか、その場に自分もいたんじゃないかって思い始めてるくらいだよ。
「え〜? ほんとは隠れて見てたとか?」
ーーそんなわけないでしょ。
「あはは…だよね」 「私たちね、実はその日から、丸々一週間会わなかったの。会わなかったっていうより、彼女が会ってくれなくなったの」
「その日は一緒に帰ったけど、次の日『今日は会わない』って連絡が来て、『来週の土曜日、一緒に出掛けよう』って」
「それはもちろんすぐオッケーしたんだけど、その次の日も会ってくれなくて、その週末も土日どっちとも会わなくて」
「連絡はずっと取れてるのに、なんでだろうって不思議だったけど、改めて恋人になったから照れてるのかなーとか思ってた」
「なんの理由もなく土日どっちとも会わなかったのなんて、ほんとに久し振りだったんだよ。一年ぶりくらい。それくらいずっと一緒にいたから、会えなくてもやもやってはしてた」
「でも約束してるから土曜日には会えるしって思ってて、とりあえず旅館の手伝いばっかりしてたの。で。でね?」
「やっと約束の土曜日になって、私も久し振りだなーってうきうきしながら待ち合わせ場所に行ったら、相変わらず先に来てたから声掛けたんだけどね、そしたら、彼女『うそ…』って呟いて、また顔を真っ赤にしちゃったの」
「それで私慌てちゃって、恥ずかしいのかと思ったんだけど、違くて、『どうしたの?』って訊いても『なんでもない』って目を逸らされちゃって」 「でも声の感じが不機嫌そうだったから、『怒ってる?』って訊いたら、ちっちゃな声で『なんでいつもと同じ格好なの』って。そこで私、初めて気付いたの」
「彼女が着てる服ね、私たちが初めて二人きりで出掛けたときの服だったの。そしたら全部わかって、ああ…今日は私たちにとって特別な日だったんだ、って。恋人同士になって初めての『デート』だったんだ、って」
「付き合ってから今日まで頑なに会わなかったのも、今回だけすることとか行くお店とか熱心に決めようとしてたのも、全部全部そうだったんだって」
「あのとき、なんていうか…私はあのときやっと彼女の恋人になったんだと思うの」
「それまではやっぱりどこか冗談みたいで、今までの関係の延長線って感じだったんだけど。あのとき彼女と同じ気持ちでいられなかったことが、すっごくショックだったんだ」
「あ、でもね、大丈夫だよ。私が『ごめんね』って言ったら、なんとか笑ってくれて、『あなたが乙女じゃないことくらいわかってる』って」
「いつでも優しくて、頭が良くて、気を遣ってくれて…ああーー大好きーーって、思って、ついその場で抱き締めちゃったの。それで仲直りして、ちゃんとデートは楽しかったんだよ」
「恥ずかしかったって、後でものすごく怒られたけどね」 「…あ、氷解けちゃってる」
ーー新しく貰う?
「ううん、平気。ちょっと冷たいくらいでちょうどいいや」
ーーなにも入れないの?
「ブラックの気分だから」
ーー私も。
「いつもブラックコーヒー飲んでそうだなあ」
ーーそんなことないよ。甘いの飲みたくなって、砂糖三本入れることもあるよ。
「うえ〜っ…三本は私でも入れないよ。意外と子どもみたいな味覚してるんだね」
ーー脳を使うと糖分が欲しくなるんだよ。あなたこそ、脳を使ってない証拠だよ。
「私は頭より身体を動かすほうだから」
ーーものは言いようだね。
「………ねえ、ああいう話って、嫌じゃない?」
ーー別に平気だよ。私だってもう大人なんだから。
「少しだけ、話させて」 「彼女がね、うちに泊まりにきたの。私が一年の年の夏」
「来たことあるでしょ、大学の前の道ずっと真っ直ぐ行ったとこ。あそこに住んでたとき。夏休みだったから、私の誕生日に合わせて来てくれたの」
「一週間前くらいに『誕生日なにか欲しいものある?』って訊かれたときに、ふざけてあなたが欲しいって返したんだけど、そしたら誕生日の前の日になっていきなり『着いたよ』って」
「えっとか思って、家にいたからすぐバスに乗って駅前に行ったらほんとにいて、『来ちゃった』とか、来ちゃったじゃないよみたいな。私が旅行とか行ってたらどうするつもりだったんだろう」
「それでせっかく来てくれたからどこか行きたいかなーと思ったんだけど、『また電車に乗るのは面倒くさい』って。彼女らしいけどさ」
「この辺なにもないよって言ったんだけどね、別にいいって言うから、DVD借りて、お菓子とか買って帰ったの」
「カーテン閉めて真っ暗にして、めちゃくちゃな温度でエアコンつけて、一緒に布団被ってDVD観てたの。映画も面白かったんだけど、隣に善子ちゃんがいるのが嬉しくて、ちょっかい出したりしてあんまり観てなかった」
「晩ごはん食べてからまたDVD観てたんだけど、途中で誕生日プレゼントくれてね。『美渡さんから預かってきた』って焼きみかんと、夏っぽい薄手のカーディガン。どっちも嬉しくってすぐ着てみせたら、『パジャマに合わせるとださいね』って、自分がくれたのに」
「それでね、…またDVD観てたらね……彼女がね、『プレゼントまだあるんだけど』って」
「『あなたが欲しいって言ったからわざわざ持ってきたんだよ』って」
「それでね、『まだ、いらないの?』って」
「なんかその回りくどい言い方がものすごく可愛くて、普段は名前で呼んでくれるのに、緊張したときは『あなた』になるところとか、もう、なんかだめで、…だめだった」 ーーだめだったんだね。
「だめだった……」
ーー私がいるのに思い出し始めるのやめてくれる?
「話していいって言ったじゃん!」
ーー始めていいとは言ってないよ。
「は、始めてないよ!!」//
ーーあなたもすっかりオンナになっちゃったんだね。
「その言い方やめてよ! オトナになったの!」
ーーああ暑い暑い。アイスコーヒーもう一杯頼もうかな〜。
「チーカーもーー!」
ーー本当に頼むんだ。いいけど。すみません、アイスコーヒーもう二つ。 「長く一緒にいると、色んなことがあるんだね。嫌なとこだっていっぱい知って、泣いたり怒ったりしたけど、でもね…やっぱり、笑ったこととか楽しく過ごしたことばっかり思い出すの」
「一年記念日はね、あっちで過ごしたんだ。単位も心配なさそうだったから帰省して、彼女の家で」
「あ、私は別にサプライズで行ったわけじゃないよ。ちゃんと帰るって伝えて帰った」
「恋人だってことは言ってなかったけど、彼女のとこよく行ってたし、お母さんもいらっしゃいって迎えてくれて」
「三人で晩ごはん作って食べたの。あのときはグラタンとコーンスープとトマトのサラダ。彼女のお母さんのコーンスープ、すっごく美味しいんだよ」
「大学はどう、東京はどう、なんて、ほんとのお母さんみたいに心配してくださって。大変だけど楽しくやってますって、彼女が傍にいないから淋しいですっては言わなかったけどね」
「それでお皿洗いして、彼女のとこに泊まるときはいつも私がしてたんだけど、二人で部屋に引っ込んだの」
「でもお喋りでもしよっかなーって思ってたら、彼女すぐお風呂に入っちゃって。別に悪いことしたり約束破ったりしてるわけじゃないんだけど、なんかぽかーんとしちゃって、ちょっと拗ねたの。せっかくの記念日なのに、いつも通りだなって。デートのときと逆みたいにね」
「彼女がお風呂から上がって、交代で私も入ったんだけど、交代するとき素っ気なくしちゃって、お風呂ですっごく反省した。嫌な態度取っちゃったなって。上がったら一番に謝ろうって決めて、部屋に戻ったの」 「そしたらね、部屋じゅうにキャンドルが焚いてあって、色んな色の。またぽかーんとしちゃったとこで、プレゼントくれたの」
「『あなたと出会えて、隣にいられる関係になれた運命を、ずっと大切にしていきたいから』って。『ありがとうノート』っていう、ちっちゃなノートをくれたの」
「『こんな私を受け入れてくれてありがとう』」
「『いつも私を見ていてくれてありがとう』」
「『手を繋いでくれてありがとう』」
「『頭を撫でてくれてありがとう』」
「『隣にいさせてくれてありがとう』」
「『出会ってくれてありがとう』」 「日常の些細なことから、お互いの付き合い方に関することまで、たくさんたくさんの色んな『ありがとう』をね、一冊のノートにまとめて贈ってくれたの」
「あんな素敵なプレゼント、他にない。こんなに幸せになれること、他にないって思ったよ」
「私またさ、一年記念日で特別なプレゼントを贈るなんてアタマなくって、ばか正直にチョコしか用意してなかったから。テンパっちゃって、対抗するみたいにいっぱい『ありがとう』って言い返したら、大笑いされちゃった」
「『お返しなんかいらないよ。日頃あなたから貰ってるものを少しでも返したくて、私はそれを贈ったんだから。ここでお返しをされると、意味がなくなっちゃうから』って」
「そんなことないのにね。彼女が私からなにか貰ってるんだとしたら、おんなじだけ私も彼女から貰ってるはずなのに。そんなことを、当たり前みたいに思っちゃえるコだったんだよね」 「…なんか、貰った話ばっかりだね。私からだって誕生日とかクリスマスとか、プレゼントあげたんだからね?」
ーー知ってるよ。相談されたことあるし。
「結局手伝ってくれなかったでしょー」
ーー当然だよ。あなたが彼女に贈るものは、あなた自身にしか決められないよ。
「手厳しいんだから。…でも、今になってみてやっと言ってることわかったよ。私たちの関係は、他の誰でもない、私たち二人だけのものなんだもんね」
ーーそういうこと。やっぱり、少し大人になったね。
「おかげさまでね」 「彼女がこっちに来てからはね、二人で色んなところに行ったんだよ」
「最初のゴールデンウィークは、京都に行ったの」
「初めての二人旅行だったからテンション上がっちゃって、値段とか見ずに旅館取ったら、なんかものすごく高級なところでね。お風呂に柚子とか浮かんでて、晩ごはんも一品ずつ持ってきて『これはどこどこで獲れたナントカを使用して…』みたいな説明が付くの」
「だから晩ごはん二時間も掛かったんだよ。すごいでしょ」
「でもごはん美味しかったなー。近くの神社で縁日やっててね、覗きにいったんだけど。『タケノコ焼き』っていう、タケノコ輪切りにして焼いただけの屋台があって、『こんなの誰か食べるのかな』なんて笑ってたら、晩ごはんの一品目に出てきてびっくりしちゃった。
しかも甘くて美味しくってね。美味しいものってほんとに美味しいんだね」 「秋は箱根に行ったの」
「そのときは『謎解き旅行』っていうコンセプトでね、私たちがちょうどリアル謎解きみたいなのにはまってた時期で、箱根で四つくらい謎解きが開催されてたから、制覇しようって言ってね」
「箱根山ロープウェイの謎解きから始めたんだけど、最初から行く場所間違っちゃって。しかも、麓の駅でいいのに山頂まで行っちゃってさ」
「そのくせ途中で見付けたお団子屋さんで私がのんびりしてるから、彼女先に行っちゃったりして」
「でもね、たまたまそのお団子屋さんに謎解きのヒントが置いてあって、連絡したら『たまたま見付けたヒントなんか聞きたくない』って。ムキになってて可愛かったなあ…」 「後はね、日光にも行ったし、広島にも行った。奈良も」
「日光では東照宮の散策と、初めてイチゴ狩りしたんだよ。やったことある? 楽しいね、あれ。でも何千円分もその場で食べきれないよね。イチゴってほとんど水だし。でも美味しかったし楽しかったな」
「私がバスの時間勘違いしてて逃しちゃって、二時間くらい歩いたんだけど、嫌なカオ一つしないで付き合ってくれたんだよ」
「広島はね、どこだったかな…竹原? ってところのお祭りに行ったんだ。竹を割って、中にロウソク入れて照らすんだけど、それが町じゅうにいっぱい飾ってあって、すごく幻想的なの」
「ロウソクに火を点けるのやらせてもらったし、お汁粉とかおでんとか美味しいものもいっぱいあって、私は広島旅行が一番想い出に残ってるかなあ」
「奈良もね、お祭り。こっちも灯籠飾りのお祭りで、そう、年齢が上がるにつれて、少しずつそういう景色が綺麗なのとかを楽しめるようになっていったかな」 「ほら、高校生の頃とかって、遊ぶとことか美味しいものとかばっかりで、あんまり景色とかって見ないでしょ。いや、うん、そりゃ美味しいものは今でも食べるけど…うるさいなあ。奈良では浴衣デートしたんだよ、浴衣デート。羨ましいでしょ」
「色々行ってたから、私はバイト代ほとんど旅行に使っちゃってたな。だからいっつも金欠みたいな」
「彼女はその辺上手だったから、あんまりお金に苦労してる感じなかったな。まあしっかりしたとこに勤めてるからね」
「だからね、旅行はたくさん行く代わりに、お互いの誕生日とか記念日とかは、だいたいどっちかの家で過ごしてたの。彼女がケーキ好きだったから、そういうときはちっちゃなホールのケーキ買ってって、二日間くらいケーキだけ食べてるみたいな」 「色んな…色んなこと、したなあ」
「色んな彼女を、たくさん見たなあ」
「一緒にいるときにお仕事の電話が掛かってきてね、一瞬でキリッとしたカオになって、口調もすごく丁寧でね。でも終わった途端さっきと同じでふにゃーってなって甘えてきたりとか」
「お腹すいたときに『なんか作って』って言ったら、『千歌さん冷蔵庫になにも置いてないんだもん』って言いながら、ほんとにすっごく少ない材料からちゃちゃっとごはん作ってくれたりとか」
「彼女がゲーム始めたから私もと思って本読み始めたら、すぐ耐えられなくなって甘えてくるとことか」
「風邪でデート断っても、『ばかだなー』って言いながら一日付きっきりで看病してくれるとことか」
「飲んで帰ってきたら、私がアルコールくさいの嫌がるのわかってて真っ先にキスしようとしてくるとことか」
「膝の上で寝ちゃったときは、無理やり起こさないで私が自然に起きるまで待っててくれるとことか」
「『500円は生活に支障きたすから』って500円玉用の貯金箱で50円玉貯金するとことか」
「二人で家にいるときは私が好きな髪型にしてくれるとことか」
「洗濯物たたむのが少し雑なとことか」
「色んな彼女を見てきたけど」
「全部、全部…大好きだったなあ…」
*** ***
「ごちそーさまっ。あ、ここは私が出すから」
ーー別にいいよ。
「だいじょーぶっ! ね、出させて。お願い」
ーー…わかった。それじゃ、次回は私が少し多く出すね。
「うん。ありがとう」
ーーこれからどうするの?
「んー…どうもしないよ。三月には卒業して、そしたら実家に戻って旅館で働くから」
ーーやっぱり、こっちには残らないんだね。
「決めてたことだからね。そっちこそ戻ってくる予定ないの?」
ーーないよ。決めたことだもからね。なんて。 「じゃあ、三月までにいっぱい会おうね」
ーー四月からは会ってくれないの?
「そんなことないけど! 離れてる分、会いづらくはなっちゃうじゃん」
ーー冗談だよ。
「それじゃ、行こっか」
ーーうん。
「今日はほんとにありがとうね」
ーーいえいえ。気分はどう?
「も〜〜バッチリ! とは言わないけど、うん、もう大丈夫」
ーーそれならよかった。いつでも連絡してね。
「うん。私もちゃんと前を向いて歩かなきゃね。彼女に恥ずかしくないように」
ーーまた、みんなで集まろうね。
「うん!」
*** ***
ばいばいと手を振る。
少しの雲と、まばらに広がる青。
空だって青一色じゃない。
私の道は明日も続く。
「…ぃよしっ! 明日は苦手科目のオンパレードだ!」
一歩踏み出し、笑顔を想い出に。
一歩踏み出し、涙を力に。
さよならを言ったその後に。
物語は、まだまだ続いていく。
終わり 旧没ネタスレ
使わないssのタイトルとあらすじを書くスレ
より。
なぜかURLが貼れない… 乙です
ぬしくんはなんで茸だったりプーアルだったりするの? >>25
ありがとう!
キャリアがdocomoなんだけど、家にいるときはWi-Fiに繋いでるからプーアル茶なんだと思う
スレ立てはWi-Fi繋いでないとできないことが多いから、家でスレだけ立てて外に出ることがよくあるせいで、混在してます 千歌ちゃんが彼女の事をとても愛し、そして愛されていたのかが分かっていいね
あと一度だけ彼女の名前が出てるのは意図的? >>28
ありがとう…えっうそ!
それは重大なミスです!! ううううおおおああああ!!
ほんとだあああああああ!! あら、言わなきゃ良かったかな…?
予想して読んでたけど当たって嬉しかったよ
乙 >>31
まあ、うん、どうか他のかたは気付かないように祈っておくよ…
端々でぼんやり予想してもらう程度に留めたかったんだけど…痛恨のミスです >>32
ちょっだめだめ、それ言っちゃだめなやつ! 千歌と善子いたのは口調でわかった
千歌⇔梨子⇔善子 なのか+果南もいたのかわからない >>35
読んでくれてありがとう
そういう風に推察を楽しんでくれると、書いたかいがあったと思えるよ >>36
無知で申し訳ないのだけど…
そういうssかなにかがある? のかな? 蛇足を承知で書いておく…
一度なにも制約をつけずに書き上げた後、千歌の台詞は呼称を書き替えて『彼女』がはっきり特定できる情報をぼかして、話を聞いてるほうの台詞も語尾とか言い回しのキャラ性を取っ払ってる >>40
ふむふむ
ちかよしが出たから梨子ちゃんかも……と連想するのはアニメ版の人間関係に引っ張られ過ぎてたかも
いつも一緒とか東京はどうとかのセリフも含めて >>41
制約なしのほうも読んでみてほしいところだけど、このssは千歌以外が明確にならないところがミソなんだろうからね
いつか作者読者の交流スレでぶわーーっと語り散らかしてみたいところだ… ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています