海未「ブロークン・アロー」
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ブロークン・アロー 〔航空軍事用語〕
核またはそれに準ずる兵器の紛失を現す暗号コード名
【ROUND1 ボクシングリング】
海未「はぁー…はぁー」
絵里「ふぅ……はッ」
希「いけーそこやそこ!」
凛「海未ちゃんもっと前に出るにゃー!」
にこ「絵里、遊んでないでさっさと仕留めなさい!あんたに賭けてんのよッ」
絵里「どうしたの。もうお終い?」クイクイ
海未「っ…!」
海未「はぁッ!!」
絵里「おっと」
絵里「くすっ…がむしゃらな攻めも嫌いじゃないけど」
絵里「あんまり真っ直ぐでも痛い目見るわよ。こんな感じにッ!」
海未「ぐっ…!」
希「アイタタ…今のカウンターもろ入ったなぁ」
絵里「いつも言ってるでしょ…ボクシングの基本は左左っ」
絵里「左…が来ると見せかけて右を食らわせるッ」
海未「がはっ…っっ、っ」
凛「あーあ、勝負あったね」
にこ「バンザーイ!今夜はビフテキ!バンザーイ!」
海未「っ…ぜぇ、はぁ…はぁ」
海未(また、負けてしまいました)
海未(いつもこう…彼女には敵わない)
海未(私では――)
スッ
絵里「ほら手を貸すわ」
海未「…一人で起きれます」
海未(精一杯意地を張って、差し出された右手を拒むぐらいが関の山)
【オトノキ空軍基地 ブリーフィングルーム】
絵里「絢瀬少佐」
海未「および園田大尉両名、只今出頭しました」
穂乃果「二人とも楽にしていーよ」
穂乃果「…なんかボロボロじゃない?」
絵里「はっ。先程まで二人でくんずほぐれつ熱い汗をかいていたもので」
海未「ただのスパーリングですっ」
穂乃果「ははは、仲のおよろしいこって」
穂乃果「そんな二人には今晩、レズ弾頭を搭載したステレズ戦闘機を飛ばしてもらうよ」
海未「将軍、失礼ですがこの演習の目的は?」
穂乃果「さあね。多分何かの実験じゃない」
絵里「…相変わらず適当ね」
穂乃果「そこ、私語は慎みたまえ」
穂乃果「私こう見えても大将なんだよ?この基地で一番偉いんだよ?」
ことり「まあまあ。細かいことは私からお話します」
【ROUND2 ステレズ機内】
キィィィィィィィィィン――
海未「現在時速320キロ、間もなくアキバ国立公園上空です」
絵里「ねえ海未」
絵里「核以上の威力を誇るレズ弾頭を二基積んだ戦闘機をカッ飛ばしてると、何だか神様にでもなった気がしない?」
絵里「大勢の人達の運命が、自分の指先一つでどうとでもなっちゃうのよ」
海未「絵里、任務中ですよ。集中して…」
絵里「いいじゃない。私達の仲なんだから」
絵里「答えなさいよ。あなたはどんな気持ちで任務に臨んでるの」
海未「正直…空恐ろしいです」
絵里「空だけに?」
海未「茶化さないでくださいよ」
海未「でも同時に、どこかでそのスリルを楽しんでる自分もいて」
絵里「クセになっちゃったのね」
絵里「長続きするコツよ。きっとあなたは定年まで勤めあげるんでしょうね」
海未「絵里は違うのですか?」
絵里「ここだけの話、もう辞めようかと思ってるの」
絵里「さっきはああ言ったけど、今更飛ぶことに何の感慨もないわ」
絵里「もう…飽きちゃったのよね」
絵里「階級は万年少佐どまりだし」
海未「絵里は意外と抜けているところがありますからね」
海未「そういうの、私以外にも見抜かれてるのでは?」
絵里「だからって穂乃果みたいなあんぽんたんを将軍にしたりする?」
海未「彼女は悪くないと思いますけどね。優秀な補佐官も付いてますし」
絵里「本当なら私だって今頃大佐くらいになってもいいはずなのに」
絵里「世の中、穂乃果や希みたいな要領と運のいい子が出世していくのよね」
海未(珍しいですね。絵里がこんな風に愚痴るなんて)
絵里「あら?」
絵里「ねえ、窓の外おかしくない? ほらそっちの方」
海未「え…」
絵里「」スチャッ
海未「!」
――BANG!
海未「っ…」
絵里「チッ」シュウウウウウ
海未「一体何を…!?冗談では済みませんよッ」
絵里「冗談でこんなことすると思う?ホントおめでたいんだから…!」
海未「銃を降ろしなさい…このっ」グググ
Bi―!Bi―!
【異常接近警報】
海未「ッ――尾根にぶつかる!」
海未「くぅ…!」グィ
――ィ ィ ィ ィ ィ ィ イ イ イ ン
絵里「」カタカタカタ
【爆弾投下 スタンバイ】
海未「やめなさい! 狂ったのですか?」
絵里「邪魔しないで!」グィ
【パイロットB 緊急射出】
海未「ちょ…」
絵里「Пока〜」ヒラヒラ
海未「絵里いいいぃぃぃ」シュゴオオオオオオオ!
――ァァァアアアアアア
絵里「お邪魔虫は放り出したことだし」カタカタカタ
【不発モードで投下】
【レズ弾頭A 緊急投下】
【レズ弾頭B 緊急投下】
絵里「こっちは喧嘩別れしちゃったけど。あなた達は仲良くね」
絵里「さてと――本部聞こえる!? 園田大尉がヘマした!」
絵里「機体の制御不能!これより機を捨てて脱出する!」グィ
シュゴオオオオオオオオオオ!
――
―――――
真姫「…まだなの?」イライラ
真姫「約束の時刻を40秒も過ぎてるんだけど」
亜里沙「あっ。あれじゃないかな」ソウガンキョウ
真姫「貸して!」
キィィィィィィィィン―――!!!
雪穂「わ゛っ」
ズシャアアアアアア―――BOOOOOOOOOM!!!!
亜里沙「ハラショー…」
真姫「戦闘機を墜落させるなんて…聞いてないわよ」
【オトノキ空軍基地】
ことり「ブロークン・アローです」
穂乃果「なにそれ」
ことり「将軍…それくらいは知っておいてくださいね?」
ことり「レズ兵器の紛失を意味する暗号です」
ことり「墜落した機体の残骸から二本のレズ弾頭は発見できなかったの」
穂乃果「やばいじゃんそれ」
穂乃果「まさか爆発したってことはないよね」
ことり「レズ弾頭は起爆装置をセットしない限りは、ちょっとやそっとの刺激じゃ開花しない仕組みで」
ことり「目下、捜索チームが公園内を全力で探してるんだけど…」 レズ弾頭にステレズ戦闘機……真面目なのかふざけてるのか……
【ROUND3 アキバ国立公園】
ヒュウウウウ…
ドサッ
海未「くっ…」
海未(不覚です!こんな無様を晒す羽目になるとは)
海未「絵里…」
海未(貴女は一体何を考えてあんなことを)
――――
――
海未『絵里、これを』スッ
海未『さっきの負け分です』
絵里『あら、いつも悪いわね』
海未『本来賭け事は嫌いですけど。負けは負けですから』
海未『ですが次こそは勝ってみせます!』
絵里『……ねえ。このお札覚えてる?』ピラッ
海未『二千円札ですか。また懐かしいものを』
海未『随分と年季が入ってますねこれ』
絵里『昔あなたから最初に巻き上げたお金よ』
絵里『これのお陰で、私達の間では勝負事に二千円賭けるのがお約束になったのよね』
絵里『ま、長年の友情を象徴する記念品ってとこかしら』
海未『紙幣の方は廃れて久しいですけどね』
絵里『海未…さっきのスパーリングなんで負けたと思う?』
海未『ひとえに私の至らなさ故です』
海未『昔からボクシングの技術を磨いてきた絵里に対して、未熟な私ではまだまだ歯が立ちません』
海未『しかし研鑽を積んで、いつかは貴女に追い付きます』
絵里『分かってないわね』
絵里『そういう考えだから勝てないのよ』
絵里『さっきだって、惜しい場面はあった』
絵里『私をノックアウトできるチャンスはあったのに』
絵里『あと一歩、踏み込む勇気と食い下がる執念がない』
絵里『あなたは負けず嫌いに見えて、その実謙虚すぎる人間よ』
絵里『必要以上に自分を過小評価して、知らず知らずのうちにブレーキをかけてる』
絵里『そんな“本気”の勝負が出来ない人のお金は…受け取れないわ』
海未『そんな…』
絵里『……ぷっ』
絵里『ごめんなさい、さっきあなたがシャワー浴びてる時にね』
絵里『財布から二千円、あらかじめ徴収させてもらったの』
絵里『だからこのお金は要ーらない♪』
海未『なっ…またそういうイタズラを』
海未『からかわないでくださいよ』
絵里『だって海未の反応見るの面白いんだもん』
海未『もう…』
絵里『でもさっきのは半分本気だからね大尉?』
海未『……精進します、少佐殿』
・
・
・
海未「絵里…」
海未「また…私の負けですね」
海未「お金はここに置いておきます…が」スッ
海未「必ず、貴女の手から取り返します」
「そこで止まって!」チャカッ
海未「!」
「ゆっくりこちらに振り返ってください」
海未「…」クルッ
花陽「そのまま動かないで…」
海未(銃を持ってる…絵里の仲間でしょうか)
花陽「ここは自然保護区です。一般の立ち入りは制限されてますよ」
海未「私は軍人です。事情を説明させてください」
花陽「お話は事務所の方で伺います…手錠を」
海未(やむを得ませんね)
海未(そういえばもうすぐ日の出…)
海未「」サッ
花陽「?」
ピカッ
花陽「眩しっ」
海未「はぁ!」バシッ
花陽「あっ」
チャカッ
海未「何者ですか」
花陽「ぱ…公園監視員(パークレンジャー)です」
花陽「通報があったの。怪しい車がここに入っていくのを見たって…」
花陽「あ、そこ気を付けて!踏まないで」
海未「えっなんですか地雷!?」
海未「って、ただの花…」
花陽「とんでもない!とっても希少な種なんだよ?」
花陽「か弱くて…でも必死に生きてるの」
海未「…なるほど」
海未「銃をお返しします」クルッ
海未「貴女は悪い方ではないと分かりましたから」
海未「今一度お願いします。私に協力してくれませんか」
海未「一刻を争う非常事態なのです」
花陽「……」
花陽「この先に車を停めてます」
花陽「無線が積んであるの。案内しましょうか?」
海未「ぜひ」
――――――
亜里沙「ユキホ、軍人さん達が来たよ」
雪穂「分かってる。頭上からしっかり狙ってますよーっと」
にこ「こちら捜索班。レズ弾頭を二つとも発見したわ」
にこ「これより回収を…」
――DoDoDoDoDoDoDo!!!!!
凛「にゃああああっ!?」
ヒデコ「軍曹!どこかから撃たれてます!」
にこ「落ち着きなさい!固まって円陣を組むのよ」
DoDoDoDoDoDoDoDoDoDo!!!!
ウァー! ギャア!
フミコ「軍曹、他のチームは全滅です!」
ミカ「もう私達しか残ってない…どうすれば」
凛「きっとあの弾頭を奪いに来た悪いやつがいるんだ…」
凛「こーなったら、盗られる前に起爆装置を壊しちゃえば」
にこ「待ちなさい。今飛び出せば蜂の巣よ」
にこ「何か他の手を考えましょう」
にこ「私は自分の仲間を一人も死なせるつもりはないわ」
凛「にこちゃぁぁん…」ウルウル
にこ「ま、あんたは違うんだけどね」スチャッ
凛「え…」
――BANG!
凛「かはっ…」
凛「な、なんでこうなるにゃ…」ドサッ
にこ「目上に対して礼儀がなってないっつーの」
にこ「ねえ、あんた達?」
ヒフミ「サー、ニコサー!!!」
にこ「おーい、お掃除完了したよー」
雪穂「だそうです」
真姫「ふん、あいつらを買収するのにいくらかかったと思ってるのよ」
真姫「で、首謀者サマは何処ほっつき歩いてるの?」
真姫「それとも脱出に失敗して星になったのかしら」
「勝手に殺さないでよ」
亜里沙「お姉ちゃん!」
絵里「フフ…主役は遅れてなんとやらってね」
真姫「カッコつけて登場したとこ悪いんだけど」
真姫「あなたのせいで計画は遅れまくってるのよ?」クルクル
絵里「私が来たからには万時が順調になるわ」
にこ「本部聞こえる!?こちら矢澤」
にこ「部下が全員死亡!にこも…うっ、ごほごほ」
『どうしたにこっち!? 状況を報告せよ――』
にこ「弾頭に大きな亀裂が入ってるにこ…!」カチッ
ローター『』ヴィィィィィ
『さっきからよく聞こえないんよ――この音、電波障害か?』
絵里「それ、もっとマイクに近付けて」
にこ「にしし」ヴヴヴ
『ヴィィィィィィ――弾頭からレズ核が露出して――うぅぅ』
『愛液が漏れてるにこ――目に染みヴイイイイイイイ』
『――ら一帯はヴィィィィィィィんに汚染され――ヴヴヴ』
『もうダメ――家族にヴィィィィィィィンて伝えて―――ブチッ』
希「…えらいこっちゃ」
希「至急全ての部隊を引き返させて」
希「それとA-RISEに出動要請を!」
穂乃果「A-RISEってなんだっけ」ヒソヒソ
ことり「レズ兵器対策のスペシャリストだよ」
絵里「これで現場ではレズ波漏れが起きてると思わせられた」
絵里「向こうは迂闊に近付けない。偵察衛星やA-RISEの出動にも時間がかかる」
絵里「そうしてる間に私達はブツを抱えてさようならってわけ」
絵里「邪魔者は消えた。雄大な自然を眺めながら、のびのび回収作業としゃれ込みましょう」
真姫「どうかしらね」
真姫「さっき気になる無線を傍受したわ」
真姫「パークレンジャーが、向こうで落下するパラシュートと人を目撃したって」
絵里(海未…やっぱり生きてたのね)
真姫「これもあなたの計画通りなの?」クルクル
絵里「軍事作戦にアクシデントは付き物よ」
絵里「ヘリを偵察に出して。そのレンジャーとパイロットを探すのよ」
金曜
ロードショー
ラブライブ!× ブロークン・アロー テレビ放送されたとはいえ、この映画知ってるライバー少なそう クリスチャンスレーターとトラボルタ出とるしそこそこ知名度あると思うで
【ROUND4 峡谷】
ザッザッザッ
海未「随分と歩くのですね」
花陽「結構広いですからここ。具体的に言うとドゥーム100個分くらい」
海未「その喩えはよく分かりませんが。飛んでた時はあっという間に通過していましたから」
花陽「え…ここ飛行禁止区域ですけど」
海未「…今のは冗談です。忘れて」
花陽「軍事機密ってやつですか。今起きてることも?」
海未「……」
花陽「まあ…深入りするつもりはないですけど」
花陽「着きました!」
花陽「これでやっと私も家に帰れます!早くアルパカに餌あげないと」
――バラバラバラバラ
海未(この音…)
海未「車から離れて!」
花陽「へ…」
ダララララララララララララッ!!!!
花陽「ぴゃあああ!!?」
花陽「あわわ…花陽のジープが真っ二つに」
海未「逃げますよ、ほら立って!」
ミカ「へへ…目標はっけーん」カチッ
ズダララララララララララララ!!!!
花陽「あれって軍のヘリですよねっ? なんでこっちを狙うのォ!?」
海未(絵里が捜索隊から奪って…それともまさか内部に裏切り者が?)
キュイイイン―――バラバラバラバラ
花陽「こちらに向かって来ます!」
海未「峡谷の中へ!」
海未(狭い谷間へ降りれば追ってこれないはず…!)
ミカ「お、そっち逃げる? ちょっと遊んであげよっかな」
バラバラバラバラ――!!!
花陽「はぁ、はぁ…着いてきてるじゃないですかぁ!」
海未「いい腕ですっ」
ビュオオオオオオオオオオオ―――!!!
花陽「あぁぁ貴重な自然が…飛行禁止だって言ってるのにぃ!」
海未(追い付かれる…!)
海未「伏せて!」グィ
花陽「ぴゃ」ドテッ
ダララララララ!!!!!――――キュイイイイイイン
海未「…何とかやり過ごせました」
花陽「でもすぐ戻ってくるよね?」
海未「ひとまず崖下に身を潜めましょう」
海未「花陽と言いましたね。貴女のリボルバーを貸してください」
花陽「拳銃でヘリと戦う気?」
海未「コクピットを狙えれば勝機はあります」
海未「しかしあの速度で飛び回っている物体に当てるのは容易でありません」
海未「私達の真上でホバリングでもしてくれれば話は別ですが…」
花陽「……」
花陽「私が…ヘリの注意を引いてみます」
海未「は?」
花陽「ヘリの動きを止めればいいんですよね」
花陽「この谷底から崖上の機体に当てられる?」
海未「射撃は得意ですが。貴女は…」
花陽「ここ、登りやすいポイントがあるんです」
花陽「怖いけど…自然を荒らす人達を止めるのも仕事だから」
花陽「お任せします!」ダッ
海未「あ、ちょっと…!」
海未(意外にするすると岩肌を登っていきますね。鈍臭いタイプだと思っていましたが)
海未「…私は私の仕事をしましょう」カチャリ
ミカ「くそーどこに隠れた?」
花陽「」ヒョイ
花陽「おおおおぅい」フリフリ
ミカ「れれれ? いつの間にヘリの真下に…」
花陽「撃たないで!助けてえええぇぇ」
ミカ『パイロットはどうした?』
花陽(私達のさらに真下です…!)
海未「捉えました…!」チャカッ
海未「」BANG!BANG!BANG!BANG!
バリィィィィン!
ミカ「ぐわわー!!?」
花陽「やった…!」
ミカ「あぅ…」ガコン
花陽「へ…」
海未「逃げて!」
バラバラバラ――ズシャァァァァン!
花陽(ひいいいいヘリが回転しながら降って)
キュラキュラキュラキュルルルル―――!!!
花陽「ろ、ローターが…!」
海未「こっちです!」グィ
ズバババババババババッ!!!
花陽「ひゃ――」
海未「何をグズグズしてるのです!? 草花と一緒に伐採されるところでしたよ?」
海未「休んでる暇はありません!丸焦げになりたくなければ走るのです!」
花陽「もう嫌だよぅ!誰か助けてえぇぇ」
海未「助けてるじゃないですか!」
―――BOOOOOOOOOM!!!!
・
・
・
にこ「今の爆発って…」
絵里(海未、あなたの仕業なの?)
真姫「ヘリが落ちちゃったじゃない!どうやって弾頭を運ぶのよ?」
絵里「心配しなさんな。何のためにハンヴィーを二両も用意したと思ってるの」
真姫「また想定の内だって言うの? バカにするのもいい加減にして!」
真姫「予定外のことが起こり過ぎよ。このままじゃ大金をかけた計画が水泡に…!」
絵里「この際だからはっきりさせておくけどね」
絵里「あなたはスポンサー、私達はソルジャー」
絵里「金は出しても口は出さないでもらえる?」
絵里「ボンボンの小娘に、実戦の何が分かるっていうのよ」
真姫「っ…」
絵里「そう焦らなくても、明日には私達みんな大金持ちになってるわ」
絵里「この弾頭は予定通り、あなたの息のかかった病院に運び込む」
絵里「その後は政府を脅迫して、金をたんまりむしり取る算段だけど…」
絵里「やつらがすんなり要求に応じるかどうかまでは保証できない」
真姫「その時はどうするのよ」
絵里「そうね…その時は」
絵里「オトノキの南西部には向こう百年、草も花も虫も鳥も…人間すら」
絵里「新しい生命は何一つ芽生えなくなるでしょう」
【ROUND5 ハンヴィーチェイス】
花陽「レズ弾頭をオッコトシチャッタノォ!?」
海未「それを盗むのが私の上官の狙いです」
花陽「でもヘリ無しじゃ運べないんじゃ…」
海未「絵里なら別の策を用意してるはずです」
花陽「そっか…車だ」
花陽「ごつい車両が園内に侵入したって通報、これだったんだ」
海未「しかしそんな車両で公道に出れば嫌でも目立ちます」
海未「人目につかず外へ出られるルートはありますか?」
花陽「うん。川を下れば」
海未「道案内を頼みます」
ブロロロロロロロロ…ガタガタガタ
真姫「なによこの車。エコノミー以下の乗り心地じゃない」
雪穂「そら六人で乗ってるし…」
にこ(一々うるさい娘にこ)
亜里沙「アリサは好きだよ? みんなでワイワイするの」
ヒデコ「でも流石に狭いね、これだと」
絵里「我慢して。フミコの方の車には二基の弾頭を積んだのよ」
絵里「重量を軽くするためにも、運転手以外はこっちに乗るほかないでしょう」
海未「見つけました…!あの二両ですね」
海未「弾頭が積んであるのは先頭車に違いありません」
花陽「どうしてわかるの?」
海未「一言で言えば重量制限です」
海未「さあ、ここから屋根に飛び移りますよ」
花陽「あ、待って…! 私が乗ると重量オーバーしちゃうかも」
海未「何をモジモジと…いきますよほら!」
花陽「ぴゃああああああああ」
ドッドツン!
フミコ「!!!」
花陽「きゃあああ!」ゴロゴロ
海未「花陽!」
花陽「やっぱり着地失敗しちゃいましたぁぁぁ」
海未「そのままフロントにしがみ付いてなさい!」
フミコ「くそ、邪魔!前が見えない!」
ヒデコ「おいおいなんだあの二人!?」
亜里沙「空から降ってきた…」ハラショー
絵里「うーみー…やっとお目にかかれたわね」
絵里「にこ、あのゾウリムシを撃ち落として」
――パンパンパン!!!
海未(撃ってきた――)
海未「お返しです!」BANG!BANG!
チュインチュイン!
絵里「残念。そんな豆鉄砲効くわけないでしょ」
海未(防弾仕様…)
フミコ「振り落としてあげるッ」ブォォォォン
海未「くっ…」
花陽「ダレカタスケテー!」
海未(かくなるうえは――)
ガチャ
海未「ドライバー交代です」グィ
フミコ「よ、よせ!うああああああああああ」ゴロゴロゴロ
ヒデコ「フミコ!」
絵里「止まらないで」グィ
ヒデコ「お、おいっ」
ブォォォォォォォォォ―――グシャッ
ヒデコ「っ…」
絵里「逃がさないわよ」
花陽「はぁ、はぁ…もう車のフロントに乗るのはこりごり…」
海未「お疲れのところすみませんが、運転を代わってください」
花陽「何するの?」
海未「しつこいお友達にお別れを言うんです」
雪穂「あの人荷台で何してるんだろ…」
海未「てや!」
ポリタンク(with発煙筒)『』ヒューン
にこ「ばっくだん!?」
絵里「停めて!」
――BOOOOOOOOOM!!!!
ゴォォォォォォォゥ
雪穂「うわ゛燃え燃えだぁ!」
ヒデコ「早く降りて!爆発するかも」
真姫「ひぇぇ」ガチャ
亜里沙「お姉ちゃんは!?」
にこ「まだ中に…」
絵里「…ふん」
絵里「ちょっとはやるじゃない、海未」
絵里「さて、消火器はっと」ゴソゴソ
ブシュウウウウウウ
ヒデコ「クソ、早く消して!」
真姫「言わんこっちゃない!弾頭を二つとも奪われるなんてこのポンコツ!」
にこ「」ピキピキ
絵里「好きなだけ喚かせときなさい。どうせやつらは遠くへ行けないんだから」
絵里「海未、手の内が読めるのはお互い様よ」
絵里「ここまではドローね。次のラウンドが楽しみだわ」
【ROUND6 坑道】
海未「燃料タンクを撃たれていたとは…」
海未「お陰でガス欠です」
花陽「しばらくここに隠れましょう」
花陽「ここは閉鎖された銅山への入口なの」
海未「ときに花陽。西木野ホスピタルの所在地を知ってますか」
花陽「ここから西にずうっと行った町にある病院だけど…」
海未「ハンヴィーの車内にそこの医師のネームプレートが落ちていたんです」
海未「なにかの手掛かりになればと思ったのですが」
海未「私の勘では、あと数分もすれば絵里がここにやって来るでしょう」
海未「弾頭を降ろすのを手伝ってください。彼女にぎゃふんと言わせてやります」
・
・
・
ブォォォォォォォォ
真姫「やつらの行き先は分かってるの?」
絵里「私達と同じはずよ。勘だけどね」
真姫「またテキトーなこと…」
絵里「それじゃ答え合わせしてみましょうか」
絵里「向こうの車にテレフォンショッキングよ」ピポパ
絵里「ハイ、私の可愛い相棒さん。声を聞かせて?」
海未『――相棒ですって?よくもぬけぬけと』
海未『こちらを殺そうとしておいて…貴女との友情は終わりです!』
海未『この音が聞こえますか?』ピッピッピッ…ブーッ
海未『知ってるでしょう。弾頭の起爆に必要な暗証コードを三回打ち間違えるとどうなるか』
海未『貴女が坑道で回収するのは自分と同じ、全ての回路がショートした鉄クズです』ピッピッピッ…ブーッ
絵里『……海未、やめなさい』
絵里『取引しましょう。仲間になりなさい』
海未「死んでもお断りですよ…!」ピッピッピッ
ブーッ
花陽「よかったこれで…」
【起爆セット完了】
花陽「なんでェ!?」
【開花まであと29:57】
海未「これは…」
絵里『引っかかった♪』
絵里『まっすぐなやり方が最善とは限らないって教えたわよね?』
絵里『私が細工しておいたの。どのボタンを押してもタイマーがセットされるように』
絵里『最初の一発をそこで起爆させるのは計画通りなのよ』
絵里『そうしなきゃ、私が本気だってことがお馬鹿さん達に伝わらないでしょ?』
絵里『マヌケ共の目を覚まさせるにはキツめのモーニングコールかもしれないけど』クスクス
花陽(なんて人…!)
絵里『親友としての忠告よ。恥ずかしがらずに尻尾を巻いて逃げなさい』
絵里『手遅れになる前に。そこはあなたがいるべき場所じゃない』
海未「……花陽」
海未「この坑道の深さは…?」
花陽「え…っと、確か600メートルだったかな…」
海未「絵里、いいことを思いつきましたよ」
海未「レズ弾頭は二本ともここで心中させます」
海未「地下深くに運んでしまえば、地上まで被害は伝わりません」
絵里『賢いわね。でも間に合うかしら』
絵里『今、私達も到着したわ』
土曜プレミアム
―――――――→
PREMIUM SATURDAY
ラブライブ!
×
ブロークン・アロー
・
・
・
リフト『』ゴウンゴウンゴウン
海未「早く、早く降りてください…!」
花陽「地図によればここが最深部ですっ」
花陽「あとは弾頭を乗せたこのトロッコを…おっ重いいい」キュラ…キュラ…
海未(こんな調子では連中に追いつかれて――)
絵里「見ーつけた♡」DoDoDoDoDoDo!!!!
花陽「ひゃあ!」グラッ
海未(トロッコが…!)
キュラキュラキュラ
絵里「お帰り」
ヒデコ「撃て撃てー!!」
ズダラララララララララッ!!!
海未「っ…多勢に無勢です、奥へ!」ダッ
絵里「にことヒデコは急いで作動してない方を上に運んで」
絵里「亜里沙、雪穂ちゃんと先に行ってボートの用意をしておいて」
にこ「あんたは?」
絵里「私はあの二人を足止めしとくから。ほら行った行った」
絵里「」チラッ
【開花まであと20:00】
絵里「フフ…」
海未「花陽、もう一度貴女の銃を」
海未(ハンヴィーの敵から奪った銃とこれで)
海未「ここで絵里と勝負をつけます!」チャカッ
――BANG!BANG!BANG!
DoDoDoDoDoDoDoDo!!!!!―――
絵里「ハラショー!二挺拳銃なんて映画のヒーローみたいね?」シュウウウウ
絵里「でも…私はあなたの本質を知ってるわよ」
絵里「あなたのことを仲間に誘いたかったのは本当よ」
絵里「でもしなかった。強い正義感の持ち主だから?」
絵里「違うわ。私の知っている海未の本当の姿は、一羽の臆病な白ウサギ」
絵里「自信も思い切りも足りないから、ここ一番で勝負を決めることができない」
絵里「肝心な局面で臆してヘマするような仲間は要らないわ」
絵里「だから誘わなかったの。海未聞いてる?」
海未「…そちらの狙いは読めてます」
海未「挑発からのカウンターは絵里の得意技ですから」
海未「ついでに貴女の最終プランも」
海未「西木野ホスピタルの同性愛科に弾頭を隠すつもりですね」
海未「そこなら衛星のレズ探査を誤魔化せ、町の住民を人質に取れる…でしょう?」
絵里「…お利口さんね」クスッ
海未「目的は金ですか」
絵里「政府を脅して優雅な引退生活。悪くないでしょ?」
海未「違いますね」
海未「優秀で誇り高い貴女は、実力がそのまま評価されない現状に我慢できなかった」
海未「たとえ金を受け取れなくても、上層部に一泡吹かせてやれればいいと考えているのでは?」
絵里「……」
海未「自分は出来る人間だということを証明したかったのでしょう?」
海未「私に言わせればそんなものは」
海未「自分の思い通りにならなくて喚く駄々っ子と変わりません」
海未「学校やラブライブの会場で銃を乱射するような連中と同類。KKEが聞いて呆れますよ!」
絵里「ッ…!」
ヒデコ「」コソコソ
花陽「危ない、後ろ!」
海未「!」クルッ
ヒデコ「おら!」っ手榴弾
絵里「ハラショオオオオオオ」DoDoDoDoDoDoDo!!!!
海未「っ…!」サッ
ヒデコ「ぐわああああああ!!???」っ手榴弾ポロッ
海未(マズい…!)
海未「てやぁ!」バシーン
ドォォン! ガラガラガラ…
花陽「すごい…空中で爆弾を蹴り飛ばすなんて」
海未「ですがリフトへ通じる道が…」
―――――――――――――――――――
絵里「海未!またこっちの勝ちね!」
絵里「弾頭の片割れは貰っていくわ。残された方のカウントも早めさせてもらった」
絵里「残り数分、せいぜいその子と仲良くしてなさい」
【開花まであと03:15】
海未「くっ…絵里め!」
花陽「私達…ここで死ぬんだね」
海未「…落ち着いてますね」
花陽「もう駄目って分かったら…力が抜けて」
花陽「最後ぐらいジタバタせず、静かに」
――ゴウゴウゴウ
海未「この音は…?」
花陽「そうです! 川がありましたっ」
花陽「銅山が閉鎖された理由は、掘り進めていったら川にぶつかったから」
海未「地図を見せてください。なるほど…こっちの方へ行けば」
【KEEP OUT】
海未「せい!」バキン
花陽「天然の滑り台みたい…まさかここを」
海未「いくんですよ、さあ!」
花陽「ぴゃあ!」ズルズルズル
ボチャァン! ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド ド
うみぱな「わあああああああああ」
――バラバラバラバラバラバラ
『A-RISEよ!そこの車、停止しなさい!』
真姫「話が違うじゃない!ここままじゃ撃たれちゃう」
絵里「今考え事をしてるの。イライラさせないで」
にこ「どうすんのよ?」
絵里「そろそろ時間よ。エンジンを切る」
真姫「正気なの!? 止まったら私たち全員…」
ボギャッ
真姫「かっ?!?」
絵里「シーッ、運転中はお静かに!」
真姫「っ…ぁ…」
真姫「」
絵里「あっけないわね。人を黙らせるのって」
絵里「ずっとあなたみたいな連中にこき使われてきた」
絵里「とうとう目に物見せてやれる日が来たのよ」
・
・
・
【開花まであと00:00】
ピーッ
カッ――
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ツバサ「なに!?この衝撃は――」
あんじゅ「大地が波打ってる!」
英玲奈「そ、操縦不能!墜落する!」
ツバサ「なっ――きゃああああああ!」
――K a B O O O O M !
にこ「わぁお。A-RISEなのに落っこちちゃった」
絵里「爆発時に発生したEMP(電磁パルス)の威力よ」
絵里「この車みたいに対策がされてない電子機器は全部オシャカ」
絵里「爆発が地下なのが惜しいわね。地上ならでっかい白百合の花が拝めたのに」
土曜プレミアム
―――――――→
PREMIUM SATURDAY
ラブライブ!
×
ブロークン・アロー ノンケをレズにする爆弾なら僕も巻き込まれないのですが
【ROUND7 河川】
ザァァァァァァァァ
海未「ぷはぁ」
花陽「げほげほ」
海未「岸へ…!」
花陽「…ぅぅう」
海未(ショック状態ですね)
花陽「咲いちゃいけない花を…咲かせちゃった…」
花陽「わた…ちが爆発……たようなもの……うしよぅ……」ブツブツ
ギュッ
海未「落ち着いて。ゆっくり息を吸って」
海未「今、前方を飛んでいるものが見えますか?」
花陽「…ハトのつがい」
海未「銅山がレズ波を遮ってくれた証拠です」
海未「もし地上に漏れていれば、あらゆる生物はレズとなって根絶やしになります」
海未「だから…その、とにかく安心してください」
花陽「……手は冷たいけど…優しいんだね」
海未「貴女も、あったかいですよ」
・
・
・
花陽「随分下流まで流されちゃったみたい」
海未「!――隠れて」
海未「あそこでボートの番をしているのは絵里の一味です」
海未「ということは」
絵里「亜里沙に雪穂ちゃん、ボートの準備ご苦労様」
亜里沙「遅かったね。また邪魔を?」
絵里「ええ。でももう解決し―――?」サッ
花陽(こっちを見てる…)
海未(まさか…気付かれた?)
絵里「……」
にこ「どうしたの」
絵里「いえ…なんでもない」
絵里「弾頭を運んできましょう。川下りよ」
海未「全員で何処かへ行きました。チャンスです」
花陽「このボート壊しちゃうの?」
海未「いえ、拝借します」
海未「今エンジンを…」
ガサガサ エッサイホイサ
花陽「も、モドッテキタヨォ?」
海未「川に飛び込んで!」ボチャン
花陽「ぁ…う…えっと…!」
花陽(今から…ダメ、音が聞かれ…)
花陽(こ、この中に…!)ササッ
雪穂「そろそろ基地の方へ脅迫ビデオが届いてる頃かな」
絵里「いよいよ最後の仕上げよ。みんな気を抜かないで」
にこ「出発しんこー」
ドロロロロロロロロロロロロロ…
海未(行ってしまいました…)チャポン
海未(花陽……まさか、ボートに乗ったまま…?)
花陽(あぅぅ…私のバカぐずのろま!)
花陽(大変なことになっちゃった…)
花陽(でもこれって、考え様ではものすごいチャンスなのかも…?)
花陽(どうか見つかりませんように…!)
〜〜〜〜〜〜
『午後2時までに2000億円を用意させなさい』
『金を渡さなかった場合は…こうよ』
『ザァァァァァ―――』
穂乃果「あれ、映像が途切れてるよ?」
ことり「刺激の強い内容だったから…カットしました」
ことり「もし弾頭を使われたら…被害は半径50キロで25万人」
ことり「さらにその倍の人数が、一年以内にレズを発症します」
ことり「男の人も女の人も、動物も植物も…生きてるものは全部」
穂乃果「大変だ…」
ピーッ
「東條中佐より連絡が入ってます」
「鈴湖付近で、園田大尉を保護したと」
希「海未ちゃんご苦労やったね。あとはウチらに任せて」
ことり「湖の対岸でボートが見つかったの」
ことり「そこからトラックのタイヤ痕が西へ向かう道路にまで」
ことり「あなたの話とも合致するよね」
希「今基地中の兵士とヘリがトラックの捜索に出払ってるんよ」
海未「……」
ことり「さっきから地図とにらめっこしてどうしたの?」
海未「どうも腑に落ちません」
海未「検問だらけの陸路を突っ切るような無謀…スマートな絵里らしくない」
海未「私が彼女なら鉄道を使います」
ことり「でもこの線路は西の町を通らないよ?」
海未「病院のネームプレートもタイヤ痕も、彼女の得意とする引っかけだとしたら」
希「西へ行くと思わせて…本当はこっち、東カンダーか」
海未「至急捜索隊を呼び戻してください」
希「それがなぁ…EMPの影響で無線が使えなくてね」
海未「では私達で行きましょう」
ことり「いけませんっ」
ことり「あなたのことは基地へ連れ戻せと命令が」
ことり「線路のことだって深読みし過ぎだと思うけど…」
海未「彼女のことは私が一番よく知ってます。私には分かるんです」
ことり「…随分その人を買ってるんだね」
海未「絵里は…私の目標でした」
海未「彼女の様になりたいと思い続けてきたのに…こんな形で裏切られるなんて」
海未「弾頭を盗まれたのは私の責任です。私がやらなくちゃいけないんです!」
希「よっしゃ」
希「ヘリはウチのを使って」
希「責任もって海未ちゃんをエリちのとこまで届けるよ」
ことり「中佐…!」
希「今この場で一番偉いんは誰かなー?」
ことり「うぅ…ズルいよ」
ことり「…頑張ってくださいね」
海未「二人とも…感謝します」
土曜プレミアム
―――――――→
PREMIUM SATURDAY
ラブライブ!
×
ブロークン・アロー
【FINALROUND 貨物列車】
ガタンゴトンガタン…
雪穂「アンテナのセッティング完了しました」
雪穂「これで貨物室の弾頭は、このリモコンで遠隔でも操作できます」
絵里「手際のいい仕事って大好きよ」
絵里「亜里沙、政府に弾頭の行き先は東カンダーだと伝えて」
絵里「にこはヘリのカバーを取って離陸準備を」
絵里「五分後に飛び立つわ。弾頭のタイマーを作動させて」
絵里「入金を確認したら…その時はこれで解除してあげる」
花陽(バレずにここまで来ちゃったけど。私一人の手に負えないよねこれ?)
花陽(いや…いつまでも怖がってちゃダメ。あの人なら…!)
【貨物車】
雪穂「〜♪」カタカタカタ
花陽(弾頭を弄ってる…今がチャンス?)
花陽(はっ…花陽は今銃を持っていないんでした)
花陽(……このハンマーで)ソッ
花陽「ええぇい!」
雪穂「おっと」ピタッ
花陽(指二本で止められた!?)
雪穂「気配には気付いてたよ。自分と同じメガネキャラだからって弱いと思った?」
バシーン!
花陽「あぅぅ…!」
雪穂「こー見えても軍人一家の生まれなんだ」
花陽「うぅ、ゲホッ」
雪穂「銃…は飽きたな」
雪穂「ナイフにしよっか……いや、やっぱりこの親指で」
花陽「ハンマーなんてどうでしょうっ」ブンッ
ヒュルルルルル――ゴチン!
雪穂「ふぎゃッ」コテッ
花陽「はぁ…はぁ…メガネだから弱いと思いましたか?」
花陽「公園監視員を舐めないでください」
花陽「銃は頂きます」ゴソゴソ
花陽「ついでにそちらの知識も貰えればいいのに」
花陽「これどうやって解除すれば…」
にこ「そこまでよ」チャキッ
花陽「――!」
絵里「わざわざご苦労様」
絵里「でもね監視員さん。ここはあなたの職権の範囲外じゃなくて?」
絵里「一人で来たんだ、度胸あるわね。海未には見捨てられた?」
花陽「…彼女は勇敢な人です」
絵里「みんな勘違いしてるのよね。あの子意外とヘタレなのよ?」
絵里「あなたはどっちかテストしてあげましょうか」ツツー
花陽「っ〜〜!」ゾクゾク
絵里「フフ…ひんやりしてるでしょこの銃身」
絵里「撃てばたちどころに熱くなるの、感じてみる?」
絵里「さあ…あなたのせいで中断した作業を完了させるの」
絵里「暗証コードを押して。最初は…2のボタン」ツー
花陽「うぅ…ぐすっ」
絵里「いい子ね。次は1よ」ツツツ
絵里「どうしたの、押して…押すのよ」グィ
【1021:起爆スタンバイ】
絵里「仕上げに、エンター」
花陽「っ……」ポロポロ
絵里「ほらもうひと踏ん張りよ。頑張って」
花陽「くぅ…!」ポチッ
【キャンセル】
絵里「ハラショー…どうやら勇気は本物みたい」
花陽「どうせ死ぬんです…他の人を巻き込む気はありません」
絵里「そう。だったらサヨナラ、サヨナラね」
花陽「近いうちにまた会うことになると思いますよ」
絵里「…言うじゃない」
絵里「にこ! 貨車の扉を開けて!」
絵里「せめて土の上で死なせてあげる」
ガラガラガラ――ビュウウウウウ
絵里「ダスビダー……っ!」
バラバラバラバラバラ――!
にこ「ヘリ!いつの間に」
花陽「あ…」
海未「もう逃がしませんよ絵里!」チャキッ
絵里「海未…」
絵里「やっと、私に追い付いたわね」クスッ
花陽「ぴゃい!」バッ
にこ「あいつ、外に逃げ」
――DoDoDoDoDoDoDo!!!!
にこ「ちっ」サッ
絵里「海未いいいいい!!!」ダララッ!ダララッ!ダララッ!
海未「はぁぁぁッ!」DoDoDoDoDoDoDo!!!!
絵里「ぐあ…ッ」
にこ「絵里!?」
絵里「腕に掠っただけよ、扉閉めてッ」
ゴォゥゥゥゥゥゥゥゥ
花陽「くぅぅ…!」ヨジヨジ
海未「花陽が列車の外壁に!」
海未「中佐、もっと近付けてくさだい!」
希「飛び降りる気?」
海未「彼女を助けるにはそれしかありません!ロープを借ります!」
海未「やぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」バッ
ダンッ
海未「さあ、この手に!」
花陽「うんっ」
絵里「今よ、動けない二人にありったけの弾を」
希「援護はまかしとき海未ちゃん」バラバラバラ
にこ「ふん、射手がいないヘリなんて怖くもなんとも」
希「悪い子達は散髪しちゃる!」
バラバラバラバラバラ――!!!
にこ「ちっか」
絵里「伏せて!ローターに巻き込まれるわよぉ!」
バラバラバラバラバラ――バズン!ズバズバズバ
にこ「なっ」
亜里沙「アンテナを壊されちゃった…」
絵里「それだけじゃない…私達のヘリに傷まで」
亜里沙「テイルローターが…これじゃ飛べないよぅ」
にこ「畜生、よくもやってくれたわね!」DoDoDoDoDo!!!!
ブーッブーッ
希「流石に無理しすぎたか…エンジンの調子があかん」
希「ウチに付き合えるのはここまでみたい…海未ちゃん幸運を!」
亜里沙「ヘリは追い払えたけど」
にこ「これじゃ手動でタイマーをセットしても30分以内に逃げ切れない」
にこ「計画を見直す必要があるわ」
絵里「…海未を探して。あの二人の排除が最優先よ」
花陽「助かりました」
海未「貴女を巻き込んでしまってすまないと思っています」
海未「同じように、無辜の市民が暮らす町へこの列車を辿り付かせるわけにはいきません」
海未「花陽は貨車の連結部を切り離しに行ってください」
海未「私は残って、彼女との決着をつけます」
花陽「…また会えるよね?」
海未「そちらも、どうか無事で」
うみぱな「」コクッ
【タイマーセット】
絵里「……」
絵里「こうなったら派手にいきましょう」ピッピッ
ピーッ
【開花まであと05:00】
にこ「アンタなにやってるのよっ?」
亜里沙「お姉ちゃん!?こんな話聞いてないよ」
絵里「…」ニッ
にこ「タイマーを解除して、早く!」チャキッ
絵里「人間いつかは命を捨て去る日が来る。問題はその捨て方でしょう?」
絵里「味気ないのは趣味じゃないの」
にこ「ふざけんなっ!にこはまだ死ぬつもりは」
絵里「もうすぐ鉄橋よ。下の川に飛び込んでそれから必死に逃げれば?」
亜里沙「あわわ…お姉ちゃんがおかしくなっちゃった…」
「その通り!絵里、貴女はイカれてます!」
ゴトン!
亜里沙「壁に誰か取り付いてる!」
絵里「海未よ!」ダララッ!ダララッ!
にこ「クソ!」DOM!DOM!DOM!
ドガァン!バキンバラバラ…
雪穂「」ブラーン
亜里沙「ユキホ!?」
絵里「しまっ」
海未「“引っかけ”ですよおおおおおおお」ゴォォォォォ
海未「てやぁ!」
にこ「ぐえっ?!」バキン
にこ「にごぉおおおおお゛お゛お゛お゛お゛お゛っ」ヒューン
――――ボチャァン
絵里(貨車の外壁に引っかけた囮に注意を惹き付け、反対側からラペリングで突入するなんて)
絵里「今のはいいフックねっ、見直したわ!」ダララッ!ダララッ!
海未「待たせましたね!決着をつけましょうッ」DOM!DOM!
絵里「海未ッ――!」ダララッ!ダララッ!ダララッ!
海未「絵里ぃぃぃ!!」DOM!DOM!DOM!
――チャキッ
絵里「…弾切れでしょ?」
海未「そちらこそ…」
絵里「私には必殺のクロスカウンターがあるわ」スッ
海未「…それは弾頭のリモコンですか」
絵里「これを賭けて残り三分、最後の1ラウンドを楽しまない?」
海未「ここで昨日の続きを…?」
絵里「昨晩…いえ、ずっと前から預かりっ放しの二千円札」ピラッ
絵里「これもアンティするわ。勝者の総取りってことで」
海未「」ジリッ…
絵里「ほら時間がないわ。ゴングよッ――!」
ガタンゴトン…
花陽「あった、連結部」
花陽「これを外して…ううう゛う゛ん゛」ギィィ
ガチャコン
花陽「はぁ、はぁ…よかった、これで…!」
花陽(貨物車が離れてく……あそこで二人は今も)
キィィィィィィィィィィィ―――――!!!!!!
花陽「わ゛わ゛っ??」グラッ
花陽(先頭車が止まった?! 誰かがブレーキを)
亜里沙「ごめんなさい!もう付き合いきれない、うわーん!」ピュー
花陽「……大変、このままじゃ貨車がこっちに突っ込んで…!」
【開花まであと01:37】
絵里「シッシッ、ッシィ!」
海未「くっ…」
絵里「ほらほらどうしたの、防戦一方じゃない?」
海未(威力もキレもケタ違いです…!)
絵里「初めて会った時に分かったわ。あなたにはハングリーさが欠けてるって!」
絵里「所詮いいとこ育ちのお嬢様なのよッ。厳しい鍛錬を積んでもどん底を経験したことがない!」
絵里「謙虚で堅実って言えば聞こえはいいけど、自分で自分の可能性を狭めてるだけッ」
絵里「折角の能力も生かしきれず……生涯、人生の本当の熱を感じれずに終わる」
絵里「ここぞという場面で勝ち切ることのできない、噛ませ犬の一生よ」
絵里「最近は格闘技でも何でも、血が出すぎたら止めが入る」
絵里「違うでしょ? 人生って、そんなものじゃないはず」
絵里「昔のボクシングみたいに百ラウンド以上、肺が己の血に浸かっても戦い続けなきゃ!」
海未「貴女は脳を揺らされ過ぎておかしくなったんです!」
絵里「かもねっ」
絵里「おら、ガラ空きよッ」
海未「ぐぅ゛っ…!」
海未「っぐ……ハァ、ハァ…」
絵里「そうよ。歯を食いしばって、もっと血を流しなさい」
絵里「それが生きてるってことよ」
海未「…今のパンチは効きました」
海未「お陰で目が覚めましたよ」
海未「大それたことをやろうだなんて考えたことはありません」
海未「ただ、身の回りのことを粛々と。それだけで満足でした」
海未「ですが…私は私の世界を守るため…貴女に勝ってこの国を救います!」
絵里「そうよっ、デカいことしましょ? 一緒にやれないのが残念だけど!」
うみえり「はぁぁぁぁぁあああ!!」
【開花まであと00:25】
海未「ふッ、たぁ、とぉ!」
絵里「へ、それでいいのよッ」
【開花まであと00:19】
海未「」スッ
絵里(フェイント…!)
【開花まであと00:15】
海未「すぁ!」
絵里「うぐっ…」
海未「おおおああアッ」
【開花まであと00:10】
海未「せい!すりャ!てやぁ!ハァァ!」
絵里「がっ、はッッ…ッ」フラフラ
海未「貴女のK.O.負けです!」
海未(リモコン…!花陽から聞かされたコードは1021)
「海未ちゃん逃げててええええええええっ」
海未「!」
隙間から、貨物車が燃料缶を満載した先頭車の後部に迫っていくのが見える。
衝突と起爆まで、あと二秒――
海未「うおおおあああああっ」
貨車の出口へ飛び込みながら、宙で身を捩ってリモコンを突き出した。
次の瞬間、激突の衝撃で貨車は大きく揺さぶられ、
固定されていなかった弾頭がまるでミサイルの様に射出され――
絵里「…」ニッ
よろよろと起き上がった彼女はそれを避けるでもなく、ただ挑発的な笑みを浮かべ両手を広げた。
折れた矢の先端が旧友の身体を貫いた刹那――
紅蓮の彼方に全てが消え去り、何も見えなくなった。
―――――
――
ゴォォォォォォォ
海未「ぜぇ、はぁ」
海未(どうやら弾頭の爆発は免れたようです)
海未「すぐ回収班を呼ばないと…ん?」
海未「これは…」
海未(二千円札…黒焦げですが)
海未(思えばこんなになるまで、何かを取り合ったことなど初めてかもしれません)
海未「…私の勝ちですね」
「止まって!」
花陽「ゆっくりこちらに振り返ってください」
海未「また手錠をかけに来たんですか?」クスッ
花陽「そうです。手を出して」
花陽「小泉花陽です」
海未(そういえばまともに自己紹介もしてなかったことと)
海未(昨晩は差し出された右手をすげなく振り払ったことを思い出して)
海未「園田海未と申します」
海未「お手柔らかにお願いしますよ」
海未(私達はがっちりと、固い握手を交わしたのでした)
FIN
ジョン・ウーの新作を観てきた記念に軽いやつを
ハリウッド時代に見られる主役と悪役のねっとりした因縁描写が好きです
「海未ちゃん逃げてええええええええっ」
海未「!」
隙間から、貨物車が燃料缶を満載した先頭車の後部に迫っていくのが見える。
衝突と起爆まで、あと二秒――
海未「うおおおあああああっ」
貨車の出口へ飛び込みながら、宙で身を捩ってリモコンを突き出した。
>>147
挽歌は昔別の作品でパロったことあるんで
時間があれば狼とかやってみたいです
今回短いのに中断ばかりですみません
読んでくれた人ありがとうございました 狼は悲愴的だけど、ぜひ見たい
自分も一度ラブライブで挽歌パロできないか考えたけど、配役で頓挫したよ 絵里ちゃんはなぜハリウッド映画の悪役が似合うのか……乙でした
ディパーテッドのパロとか見てみたいと思ったり ポスターでフェイスオフしてたにこちゃん…
哀れにゃ 確かにフェイスオフでにこっちとえりちがすげ変わったりしても面白そうやんね♪ >>154
顔以外も総取っ替えになりそうなんですがそれは
―――紀元前3067年 エジプト
一人の屈強な女戦士がいた。
カナン人の血を引くことから『カナン・ザ・バーバリアン』と呼ばれた彼女は、途方もない野望を抱いていた。
カナン「エジプトも統一したことだし次は世界かなん」
エジプト史上初の王国を築いたカナンは勢いそのまま大軍勢を組織し、
地上全てを征服するための戦いを始めた――
カナン「異教徒どもに死の抱擁を!!!」
「「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」」」
―――七年後
カナン「異教徒どもに死の抱擁を!!!」
カナン「うおおおおおおお―――あれ?」
激化する戦況で、アム・シェアーの聖なる砂漠に後退した彼女ははたと気付いた。
長きに渡る戦いを生き延びたのは、自分一人ということに。
カナン「み、みず……このままじゃ、干物に……」ドサッ
裸の王は何ヶ月も砂漠を彷徨い続け、やがて限界を迎えた。
カナン「ああお願いです神様……ホルス、ハトホル、アヌビス……誰でもいいから」
カナン「我に力を……敵を滅ぼすまでは死ねないの」
モコモコ…ゾゾゾ
カナン「ん…」
カサカサカサ
カナン「蠍(ごはん)!」
バリバリ ムシャムシャ…ゴクン
カナン「ダメだ、これっぽっちじゃ」
カナン「砂漠に水を一滴垂らしたのと同じ…」
ゾゾゾゾゾゾッ
毒虫に次いで砂から這い出して来たのは、
ゆうに一メートルを超える体躯の化け蟹だった。
ウミサソリ――ここよりさらに二億年ほど遡った太古に滅び去った水棲節足動物で、
生態系ピラミッドの頂点に君臨していた海中の王である。
カナンの願いを聞き入れたアヌビス神が遣わしたメッセンジャーであり奇蹟の証左――
新たな栄養源にかぶり付くのに夢中な本人は知る由もなかったが。
カナン「んぐんぐ、はぁ…はぁ……は?」
飢えを満たした矢先、異変に気付く。
そよぐヤシの葉、香しく実った果実に、穏やかにせせらぐ泉。
本来あるはずのない景色が、自らを起点として砂の大地を塗り潰し拡大する。
瞬きの間に、求めていた全てがそこに現出した。
カナン「神様ありがとおおおおおおおおおおおお」
これが現在まで残るアム・シェアーのオアシスの起源である。
アヌビスは、自らの軍勢をもこのクレオバトラに貸し与えた。
カナンに率いられたジャッカル頭の送魂人は、邪悪な洪水となって地上を覆った。
蠍型の巨影が地平の彼方まで伸び、その進撃の後には砂しか残らない。
聖地アム・シェアーを除いて。
畏怖と共に、偉大な王の名は『カナン・ザ・グレート』
やがてその手首に嵌めた腕輪の紋章から『スコーピオン・キング』へと変わり後世に伝えられることとなる。
カナン「私がこの世の王様なんだ! あっはっはっはっ!!!!」
七年戦い続けた仇敵をあっさり蹂躙した直後、王は確信した。
もはやこの世界に、自分を止められる者はいない。
カナン「うっ――!」
王は忘れていたのだ。
自らに力を与えし超常の存在が常に側で目を光らせていたことを。
仇敵の神殿に祭られていたアヌビス像に胸を貫かれ、その魂は引きずり出され永遠のしもべとされた。
同時に、軍勢も砂となって地の底へ還っていく。
(待って……私は、まだ…世界を…)
カナンが地上を征服出来なかったように、アヌビスもまた、彼女の心霊までは掌握出来なかった。
その野望は軍勢と共に地中深く眠り、今も静かに目覚めの刻を待っている――
それから5000年後の西暦1934年――エジプト テーベの遺跡
ガサガサ…パラパラパラ
絵里「どう、開きそう?」
雪穂「ダメ。いつも通りノミとヤスリでお願い」
絵里「オッケー」っバール
絵里「えいっ」ブンッ
ドスン! ガラガラガラ…
絵里「秘密の小部屋さんこんにちわ」
雪穂「…やっぱり」
雪穂「私、絶対ここに来たことある気がするんだよね」
絵里「また例の夢の話?」
雪穂「だって仕掛けの位置とか全部分かるんだよ?」
雪穂「ここまで何なく来れちゃったのがその証拠。全部夢で見た通りだ」
絵里「あなたの睡眠学習のお陰でこっちは毎晩寝不足よ。新婚時代に戻ったみたい」
雪穂「その言い方は激しく誤解を招くよ」
絵里「あら、誤解されて困ることある?」
雪穂「…もぅ」
絵里「そういえば私達の愛娘はどこ行ったのかしら」
絵里「…これも誤解って言い張る?」
絵里「拾い物のチカのこと、誰より可愛がってるのはどなたさんだっけ」
雪穂「わかった降参。おっしゃる通りです」
雪穂「だけどあの子はどっちかっていうとおねーちゃんの方に懐いてるみたいで」
雪穂「まあいいんだけどさ。見習っちゃ駄目なとこの塊みたいな人だから」
絵里「今回そのトラブルメーカーの紹介で、こうして新しい遺跡を探索できてるわけだけど」
絵里「“例のあの人”なのよね? ここを建てたのって」
雪穂(ウミホテップ…)
絵里(穂乃果からのリークと、それに呼応するように始まったユキちゃんの予知夢)
絵里(何も起きなきゃいいんだけど…)
【神殿 大広間】
千歌「うーん」
千歌「かかってないなぁ…ネズミ捕り」
千歌「今回のはチカ的に渾身の出来だったんだけど」
千歌「置き場所をマズったかな。やっぱり私ってセンスない…」
コツコツコツ…
千歌「」ピクッ
千歌(三人分の靴音…絵里さん達じゃない!)
千歌(こーいう場合はなるべく視野の広い場所に隠れて様子をうかがうべし!)
ザッ…
ルビィ「ぁ…あのぅ、誰かいますか…?」
花丸「それ、誰も答えないと思うずら」
花丸「古代の遺跡に居るのは木乃伊か先客の盗掘者だけだもんな」
ダイヤ「貴女達はここを調べなさい。私は奥を見てきます」
花丸「とか言って、エリーチカとかいう人に会いたいだけじゃないの」
ダイヤ「なっ、何を言ってますのマルさんっ?そんなわけ…」
花丸「本来の目的を忘れないで欲しいずら。おら達がここに来たのは」
ダイヤ「“アヌビスの腕輪”のため。分かってますわよ」
千歌(こりゃでっかいネズミさん達だぁ…)
―――――→
雪穂「間違いない…!これはスコーピオン・キングの紋章だ」
絵里「で、それはどちら様?」
雪穂「エジプトで最初の王国を築いたって言われてる王だよ」
雪穂「この人については分からないことだらけで、名前も蠍の紋章使ってたから取り合えず付けたって感じで」
雪穂「ぶっちゃけ本当に存在したのかどうかもあやふやなレベルだったんだけど」
雪穂「すごいすごいっ。もしかしたら私達初めて実在の証拠を持ち帰ることが出来るかも」
絵里「慌てなさんな。考えなしにその箱を開けるのはお勧めしないわ」
絵里「さっきから何か嫌な予感がしてるの」
雪穂「だって只の箱だよ? 開けたからって何か起こるわけじゃなし」
絵里「あなた、死者の書を読んだ時も同じこと言ってたわよね?」
ドツ…!ドツ…!
雪穂「うんしょ、よいしょ」コジコジ
絵里「見て」チャリン
絵里「箱の鍵っぽいの、脇にあったわよ?」
雪穂「…貸して」
絵里「昔と比べて随分ワイルドになったわよね。考古学者さん?」
雪穂「……」カチャカチャ
絵里(ふくれっ面だけど内心恥じてるのよね。かわいー)
ガチャリ
絵里「あら高そうな腕輪。デザインのセンスは今一つだけど…これもサソリ?」
雪穂「…アヌビスの腕輪だ」 おおおおハムナプトラ2やってくれるのか!!?
1がパロ系SSで一番好きな作品だったから凄い嬉しい
←―――――
ルビィ「ピギャァァァァァ!!?」
花丸「あいたた…迂闊だったずら」
千歌(くしししっ、あの人達チーズ欲しさにネズミ捕りに引っかかってるよー?)
ルビィ「うぅぅ指先赤くなっちゃった…これも古代の罠なのかなぁ」グスッ
花丸「いや、違うでしょ」
花丸「多分先に来た誰かが仕掛けたんだよ」
ルビィ「誰かって…」
花丸「エリーチカか、はたまたエジプト政府の人達か」チラッ
花丸「ここ、復元作業の真っ最中なんだよ。だから石柱の近くに工事用の足場が組んであるでしょ?」
千歌(やばっ、こっち見てる)
千歌(てかあの人達は何故に絵里さんがここに来てることを?)
―――――→
雪穂「もってく!」
絵里「ダーメ、結婚指輪には大きすぎる」
雪穂「茶化さないで。歴史的な大発見だよ?」
絵里「これまで何度同じことを繰り返してきたと思ってるの」
絵里「これ絶対取ったら罠が作動するパターンよ。古代人は捻りが無いんだから」
ヤイノヤイノヤイノ
ダイヤ(嗚呼、とうとうお目にかかれましたわ…!)コソコソ
ダイヤ(我々冒険家の憧れ、今世紀最っ高にクール&ビューティな傭兵探検家エリーチカ)
ダイヤ(しかし何やら揉めているご様子。お相手は相方のミス・コウサカでしょうか)
ダイヤ(この場合何とお声がけすればいいのかしら…ああどうしましょうどうしましょう)オロオロ
カチッ
ゴゴゴゴゴ…
ザザザザザッ
絵里「ほら言わんこっちゃない!砂が降ってきたわ」
雪穂「まだ何もやってないって!」
雪穂「この際だ、これリュックに詰めて」
絵里「待ちなさいってっ。この箱側面に何か書いてあるわよ?」
雪穂「なになに…」
雪穂「この腕輪を手にせし者、渇きを知らず。ナイルと共にあらんことを」
絵里「要約するとドリンクサービスしてくれるってこと?」
雪穂「丁度いいかも。さっきから喉がパサパサで…」
――SPLAAAAAAAAAAAAAAASH!!!!!
恐らく一年で摂取するより遥かに多い水量の洪水が石壁をぶち破って流れ込んできた瞬間、
二人は息をぴったりに踵を返して走り始めた。
ダイヤ「あ、お初にお目にかかります私…」
絵里「逃げてぇ!飲み込まれるわよ!」
ダイヤ「いいいいいいっ??」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ゴトンッ
雪穂「あ…!箱が」
絵里「諦めなさいっ」
雪穂「やだっ」
絵里「もう…!いつぞやの時を思い出すわ」
ゴウゴウゴウゴウゴウゴウゴウゴウゴウゴウゴウ
絵里「ほらぁ、モタモタしてるから挟まれちゃったじゃない!」
絵里「こっちの通路へ!」
雪穂「だぁーーおもくそ行き止まりぃ!」
絵里「っ…精一杯息を吸って!!」ギュッ
ゴオオオオオオオオオウ―――――!!!!
ズゴゴゴゴゴゴゴゴ
ルビィ「さっきから何なの…地震?」
ダイヤ「いえっ洪水ですわぁ!」ダッ
花丸「ダイヤさん?」
ダイヤ「二人とも早くお逃げなさい!もたもたしないで、ほら!」
ルビィ「あわわ…大変」
千歌(なんか知らないけど注意が逸れて助かった…)
ルビィ「ピギャ!」ドテッ
グラッ…
千歌「うおっ!?」
高台の足場に隠れた少女にとって不運だったのは、
遁走するネズミの一人がその土台に足を引っかけていったことだろう。
千歌「わっわっ、わっ!」
誰も居なくなった大広間で一人、不安定となった足場の上での平均台発表会。
その努力も空しく、小さな綻びから始まった悪夢は奇跡のように繋がっていく。
ガシャァァァァァァン!
とうとう石柱目掛けて倒れ込んだ足場は粉々に崩壊し、宙へ投げ出された千歌は
無我夢中で目の前の柱に縋り付く。
するとバランスを崩したそれが隣のお仲間に寄りかかり。
ドミノ倒しの要領で、広間全体の石柱が倒壊リレーのバトンを繋ぐまで、瞬くほどの間もなかった。
いや――
千歌「ふぎぎぎ…」グググ
小さき者の健気な抵抗が、最後の石柱のゴールインを阻んでいた。
あれだけの事態も一顧だにせず、傾いた石柱から滑り降りて一目散に最終倒者の元へ走ったのだ。
千歌(これ以上遺跡を傷付けたらあの二人に雷落とされるだけじゃ済まない…!)
今更手遅れな感もあるがだからどうした。子供には理屈じゃない意地がある。
千歌「…!」
そんな使命感に満ち溢れていたはずの腕から不意に力が抜けた。
石柱が今まさに倒れ込もうとしている壁に、見覚えのある印をみとめたから――
ドガシャァァァン!!
石柱の一撃は広間の壁に大穴を穿ち――そこから大量の水飛沫と一緒に、
千歌が今最も会いたくない二人までもが吐き出された。
雪穂「うっ…げほげほ!」
絵里「はぁ、はぁ…なんなのよ」
千歌「絵里さん…雪穂さん…」
千歌「これにはナイル川よりも深〜いワケがありまして」
絵里「その物語は帰ってからちゃんと聞かせてね」
To be continued…
昔書いたハムナプトラパロ続編の冒頭だけ
>>176
個人的にもやりたいんですが、最近地の文あり長編を書き切る時間が取れないので
半ば供養のつもりでおきました
取り合えず今書き溜めているものを完成させてから時間を作れれば… これまであまり聞いたことなかったけどこの映画パロが見たいとか
配役の提案とかあればよしなに
参考にしたくもあり興味本位でもあり
好き者は確実にいるのに中々書かれることのない
このジャンルをこれからも細々と続けていければと思ってます
本当は他の人の作品が読みたいです 冒頭だけでもワクワクする乙
映画パロは大好きなジャンルだから色々妄想はするけど自分じゃ書く技量が…
海未ちゃん主役でダークナイトとか絵里ちゃん主役でインセプションとかソルトとかトゥームレイダーなんて面白そう
後はアベンジャーズシリーズ、特にシビルウォーが見たみたいなぁって思う
でもなによりハムナプトラ2の完全版が見たい!! 連投ごめんなさいだけどダイハード4.0のパロも滅茶苦茶面白かったからそっちの123も見てみたいです X-MENシリーズもおもしろそう
ウルヴァリンSAMURAIとか ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています