花丸「マルは曜さんが嫌い」
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花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ。嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうどころがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは人に優しすぎたんです」
曜「優しいところ……? 私が優しいがどうかはともかく、どうして優しいと花丸ちゃんに嫌われちゃうの?」
花丸「誰にだって優しいということは、誰にだって等距離でしか接しないということずら。それは好きな人も嫌いな人もいない様に見えるわけで、他人に興味がないようにも見えるずら」
曜「うーん……ハッポービジンはあまりよくないってことだね。機会があったら気を付けるよ」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ、嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうところがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは行動力がありすぎたんです」
曜「行動力……? 行動力があるってことはいいことじゃないの?」
花丸「曜さんの行動力は計画性がないずら。折角オリンピックだって夢じゃなかったのに、スクールアイドルを始めて飛び込みを休会して。行き当たりばったりにもほどがあるずら」
曜「うぐ……確かに、梨子ちゃんや果南ちゃん、千歌ちゃんたちと踊って歌うのが楽しかったから……活かすことがあったら気を付けるよ」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ、嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうところがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは細かいことを気にしなさすぎたんです」
曜「おおらかと言ってほしいかな!」
花丸「曜さんは大雑把なんです。大体の皮算用で行動して、あんまり考え無しで行動するから」
曜「うがっ……確かに……返す言葉も……」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ、嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうところがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは存在感が強過ぎたずら」
曜「存在感があることはいいことじゃないの?」
花丸「存在感が強すぎて今では鬱陶しいずら」
曜「ああー……それは……何と言っていいやら……」
花丸「まるの中で曜さんの存在は強すぎるずら」
曜「ちょっと恥ずかしいや」
花丸「あ、でも良い意味では言ってませんから」
曜「うぐ」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ、嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうところがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは賑やか過ぎたずら」
曜「にぎやかなのはいいことじゃん!」
花丸「曜さんは千歌さんや鞠莉さんや善子ちゃんと並んでうるさかったずら」
曜「え! あの三人と並んじゃう!?」
花丸「三人に負けないほどうるさかったずら」
曜「花丸ちゃんの中の私ってどういう評価を受けてるんだろう?」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ、嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうところがダメだったのかな?」
花丸「曜さんはマイペース過ぎたずら」
曜「え!? マイペースって完全に良いことじゃん! なにがダメなの!?」
花丸「マイペース過ぎて毎回待ち合わせ場所に遅れてくるのはやめてほしいずら」
曜「か、返す言葉もございません……まあでももう遅れることは無いよ。私の方が先に待ってるから」
花丸「時計を眺める時間は嫌いじゃなかったけど」
曜「デレた!」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ、嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうところがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは物事に動じなさ過ぎたずら」
曜「どっしり構えていてカッコイイって思うけど! いや自分で褒めてると虚しくなるなぁ……」
花丸「物事に動じなさ過ぎて、人から寄せられる好意に鈍すぎたずら」
曜「うっ! だ、だって色んな人の好きとか嫌いとか、良く分んなかったし……」
花丸「そのせいでまるがどんな気持ちでいたか、曜さんは知らないずら」
曜「たまにじとっとした目でにらんでいたのはそう言う事か……反省します……」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ。嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうどころがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは向上心が強すぎたずら」
曜「ええっ!? 向上心までダメ出し!? 何がダメなの!?」
花丸「それでいっつも無理をしていたずら。まるは知ってるよ、どんな時も自分を限界まで追い込んでいたこと」
曜「……」
花丸「無理をすることと頑張ることは、全くの別物ずら」
曜「……頭に入れておくよ」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ。嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうどころがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは底なしに明るすぎたずら」
曜「あ、明るいこともダメなの!?」
花丸「明るいを通り越して能天気過ぎたずら。後先のことも考えず、目の前のことしか見えてなかったずら」
曜「いや! そんなことは……ある、かな?」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ。嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうどころがダメだったのかな?」
花丸「曜さんはお喋りだったずら」
曜「コミュ力は私の長所だよ!」エッヘン
花丸「お喋りなくせに、いつも言ってほしい言葉は言ってくれなかったずら」
曜「――っ」
曜「……花丸ちゃん、好きだよ」
花丸「今更こんなこと言ったって遅い、ずら」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ。嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうどころがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは心配性だったずら」
曜「ん? そんなことないと思うけど……」
花丸「どんな時も、まるの体調や体の調子を気遣ってくれたずら。いつも不安の色を瞳に映して『花丸ちゃん、大丈夫?』って」
曜「だって目に入っちゃうよ。私の大切な人だから」
花丸「でも、そういうところはとっても嬉しかったよ」
曜「照れるなぁ!!! あっはっはっは!」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ。嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうどころがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは責任感が強かったずら」
曜「ええ! 長所じゃん! もーなんなの!?」
花丸「自分に厳しすぎたずら。ストイックすぎて、でも、誰にも頼ろうとしないところもあって。だから、まるにも打ち明けてくれなくて。ひどいずら」
曜「好きな人に自分の弱いところを打ち明けることはできないよ……」
花丸「強すぎたんだよね、曜さん。本当に、強い人だった……」
曜「まさか、私は弱いよ。今もこうやってここにいるくらいで」 花丸「まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ありゃりゃ。嫌われちゃった。後学の為に聞いておきたいんだけど、私のどういうどころがダメだったのかな?」
花丸「曜さんは一生懸命過ぎたずら」
曜「一生懸命に何かに打ち込むのは、私の美徳だよ!」エッヘン
花丸「……でも視野が狭かったずら」
曜「うへっ……一つのことに熱中しちゃうと周りが見えなくなるのは千歌ちゃんや果南ちゃんによく言われたなぁ……」
花丸「結局これも、こうだ! って思ったら後先考えずに行動することに繋がっちゃって……」
曜「今の状況を作った原因に繋がっちゃったもんね……」 花丸「だから、まるは曜さんが嫌いずら」
曜「ごめん……嫌な思いをいっぱいさせちゃったね」 花丸「でも、そういうところひっくるめて、まるは曜さんの事、だいすき、ずら」
曜「っ!」 花丸「優しいところも」
花丸「行動力があるところも」
花丸「おおらかなところも」
花丸「存在感が強いところも」
花丸「にぎやかなところも」
花丸「マイペースなところも」
花丸「物事に動じないところも」
花丸「向上心が強いところも」
花丸「底抜けに明るいところも」
花丸「お喋りなところも」
花丸「心配性なところも」
花丸「責任感が強いところも」
花丸「一生懸命なところも」 曜「花丸ちゃん……」
花丸「だから――だから――仏様でも、神様でも、悪魔でも誰でもなんでもいいから――」ジワ
花丸「曜さんを返して――……」グスッ
花丸「かえして……オラに、ようさんを……かえして……」
曜「……花丸、ちゃん」 ……私、渡辺曜は車に轢かれて死んでしまった。丁度車道を挟んだ向こう側の歩道にお母さんを見つけた小さな男の子が、信号を無視して歩いて行っちゃったんだ。車がクラクションとブレーキを掛けるか掛けてないか、位のタイミングで私はもう駆け出していた。
花丸ちゃんの言う通り、私は後先考えない性格だからさ。助けなきゃって思って、男の子を突き飛ばしたんだ。そしたら体がぽーんって飛んで。
気付いたら、病院のベッドで私は私を見下ろしていたの。
分かりやすく言うと、私は死んでしまったみたい。
パパやママ、千歌ちゃんや果南ちゃん、Aqoursのみんなやクラスのみんなが私の前で私の遺体……を見て泣いているのは不思議な気分で、何度か大声で私はここだよって言ってみても、全然聞こえなくて。
ただ茫然と私の遺体を眺めている花丸ちゃんを私は見つめていた。 花丸「ねえ曜さん……まるはどうしたらいいかな? 全然、からだが言う事聞かないの」グスッ
花丸「つらいよ……もういちどあいたいよ……」ポロポロ
曜「……私も、花丸ちゃんに『ここにいるよ』って伝えたいよ……」 曜「でも……もう、伝えることなんてできないよね。もっと好きだって、大好きだって、伝えればよかった……」
花丸「うう……ぐすっ……せめて、曜さんは――曜さんは、弘法大師さんの下へ行けますように……」
曜「……ん?」
花丸「すぅー……はぁー……」 花丸「唵阿謨伽尾盧左曩――」
曜「ええっ!? 何語!?」スゥー
花丸「摩訶母捺囉麽抳鉢納麽――」
曜「消える!? 身体が透けてる!? やばい成仏しちゃう!」スゥーーー 曜「ちょっと待ってよ! 折角幽霊になれたのに! 花丸ちゃんの生着替えとか脱ぎたてのブラジャーのカップの汗の蒸れとか私を想って濡れたパンツの匂いが嗅げなくなる!!」
曜「止めて! 止めて花丸ちゃん!! ほんとその南無阿弥みたいなの止めて!! 花丸ちゃんの服の上からでもわかるおっぱいの膨らみを凝視し尽くせてない!! 駄目だ! 待って! タイツ越しのパンツが! 嫌だぁ嗚呼ああああ!!!!!!」
花丸「入嚩攞――」
曜「くそおおおおおおおおお! だったらせめて揉んでやる! 現世から追い出される前にこの世の極楽を揉みしだいてやる!!!! ウォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」 花丸「んっ――!?」
曜「花丸ちゃんの花丸おっぱい!!!!!! まさにおっぱい界の花丸だよォ!!!!! 百点あげたい!!!!!!」もみもみもみもみ 花丸「……この揉み方――まさか、曜さん?」ハッ
曜「あああああああああこの世の真理が詰まってる! 悦楽! これがこの世の極楽だぁああああああああああああ!!!」もみもみもみもみ
花丸「……曜、さん?」ジー
曜「最っ高だよ花丸ちゃん! こんなトランジスタグラマーが私の彼女だなんて――」もみもみもみもみ
花丸「……やめるずらァ!!」バシィッ
曜「オフッ!!」ベシャア 曜「は、花丸ちゃん……?」サスサス
花丸「よ、曜さん、こ、この期に及んで、何してるの」フルフル
曜「……この世から追い出される前に、この世の極楽浄土をもみもみしておこうと……」
花丸「最っ低ずらぁ!!!」バシィッ
曜「いや、私のこと見えないと思っはうっ!」ベシャア
花丸「悪霊ずら! 卑猥な魔羅ずら!」バシィッ バシィッ
曜「まっへ ほんと しんじゃう!」ベシャアベシャアベシャア
花丸「もう死んでるずら! 死なないならとことん罰を与えるずら!!」 花丸「はぁー……はぁー……幽霊をぼろ雑巾にする経験なんてそうそうないずら……」
曜「……死んだ後もう一回死にそうになるなんて私も思わなかった……」
花丸「で、なんでまだ現世で彷徨ってるずら」
曜「あれっ? ここは感動の再会になるんじゃないの?」
花丸「マルのおっぱい揉んどいて感動もへったくれもないずら」
曜「確かに……というか私が花丸ちゃんのところに来るまでいろんな人とすれ違ったけど、誰も私のこと気付かなかったよ?」
花丸「寺生まれを舐めてもらっちゃ困るずら」
曜「嗚呼……納得」
花丸「けどまだお迎えもなければ三途の川も渡ってなかったんだね」
曜「うん。ぽっくり逝くかと思ったらなぜか成仏できてないみたい」 花丸「……うーん……」
曜「なんでだろうね?」
花丸(マルのことが未練……とかだったら、嬉しいのに)
曜「きっと花丸ちゃんの――」
花丸「!」
曜「おっぱいのことが未練なんだと思うな、私」
花丸「歯を食いしばるずらァ!!」バシーッ
曜「ああああああああ!」ベシャア 花丸「浪漫を曜さんに求めたマルが馬鹿だったずら」
曜「痛い……魂を揺さぶるパンチだね……」
花丸「寺の子の拳は悪霊に特効ずら」
曜(私が死んでるからって容赦がなくなってきたね)
花丸「取り合えず光明真言をもう一回言うから、それで成仏してくれるかな?」
曜「ええっ! 彼女に引導を渡されるって一番嫌な死に方だよ!!!」
花丸「死んだ彼女におっぱい揉まれるマルの気分にもなるずら! このまま死んでたら自己犠牲で子供の命を救ったヒーローみたいなカッコイイ死に方だったんだよ!?」
曜「……それはともかく別に私、成仏しなくてよくないかな?」
花丸「はい?」
曜「だってこれなら花丸ちゃんとお喋りできるし、触れ合えるし。私は花丸ちゃんとさえお話しできればそれでいいよ。他には何もいらない」
花丸「!?///」
曜「だからさ、このまま楽しく過ごそうよ!」
花丸「そ、それはダメずら……」
曜「ええっ!? そうまでして死んでほしいの!? そんなにおっぱい揉むのは駄目だった!?」 花丸「えっ!? ち、ちがうずら! そうじゃなくて! ……このままこの世に未練を遺したまま現世を彷徨い続けたら、曜さんは悪霊になっちゃうずら」
曜「悪霊? でも私、誰にも悪いことしないよ?」
花丸「悪霊になる以前からマルのおっぱいをもんどいて何言ってるずら」ギュウー
曜「い、いひゃいいひゃい!! れもひょんとにひにゃいひょお!!」
花丸「……たとえ曜さんが悪さをする意思がなくても、悪霊になってしまったら曜さんの意思とは関係なく色んな人に悪運をもたらしてしまうずら」
曜「ええっ!? なんとかならないの!?」
花丸「だから光明真言で成仏を――」
曜「いやそれは勘弁して! 引導を渡されたくは――ん?」
花丸「曜さん?」 曜「なんだかずいぶん暑いね」
花丸「? そうかな?」
曜「暑いっていうか、なんか……熱い?」
花丸「?? 今は秋ずらよ? 今日も涼しいくらい――ハッ!?」 ――沼津市内 火葬場
千歌「よーちゃん……」グスッ
果南「千歌……おいで……」ギュッ
千歌「果南ちゃぁん……どうして……よーちゃん……」グスグスッ
ルビィ「うぁあああああん! 嫌だよぉ!! 止めてよ! 曜ちゃんを連れて行かないで!!」ジタバタ
ダイヤ「ルビィ、止めなさい! ルビィが泣いてもどうにもならないの! だから止めなさい! お願いだから――」ポロポロ
鞠莉「ルビィ……大丈夫、曜はいなくなるわけじゃないのよ……」ギュウ
梨子「よっちゃん……私、まだ信じられないの……」ボウゼン
善子「リリー……大丈夫、ゆっくりでいいの……いっぺんに受け止めたら、ただつらいだけよ……」グスッ
果南「あっ――ほら、千歌、最後の見送りだよ……最後だから、ね?」
千歌「ううっ……嫌だよ……こんなの嘘だよ……」 ――沼津市
花丸「もしかして……曜さん、まだ生きてる?」
曜「はい? いや死んでるよ? だって幽霊だもん」
花丸「違うずら……今曜さん、熱いって言ったよね?」
曜「う、うん……」
花丸「それ、たぶん曜さんの遺体が火葬されかかってるずら」
曜「そ、そりゃ遺体だから……」
花丸「もう一回聞くけど、曜さんは今熱いって言った、よね?」
曜「……言った……」
花丸「……という事は、遺体と魂はまだ繋がってる……その理由は体と魂が完全に分離されてないから。それは死ではなく、幽体離脱ずら。つまり完全な死を迎えたわけではないずら!」
曜「ええっと? わかるように仰ると?」 花丸「今ここにいる曜さんを火葬場で焼かれつつある曜さんにぶち込めば蘇る可能性があるずら!!」
曜「ええ!? ちょっとなんか不穏なんだけど!?」
花丸「もう時間はないずら! 今からダッシュで火葬場まで向かうずら!」ガッシ
曜「えっ!? 今から火葬場まで!? 無理だよ! それにだいぶん私の体熱くなってきてるし! しかもちょっと焦げ臭い!」
花丸「確率は零から一になったずら! ならば一から百にすることは出来るはず! ここで諦めてたまるか!!」ダッ
曜「ひょわっ!? ちょ、まって、うわぁああああああああ殺される!!!!!」ズルズルズルッ
花丸「死にかけてる分際で死ぬわけないずらぁあああああああああ!!!!」ダダダダダダダダッ ――沼津市 火葬場
ダイヤ「……そろそろ、マルちゃんも呼ばないと……。きっとまだ整理はついていないだろうけど……。鞠莉、ルビィのことを少し、お願いしますね……」スッ
鞠莉「……ええ……」ポンポン
ルビィ「ううっ……ひっぐ……」
千歌「よーちゃん……」
果南「曜……私まだ信じられないよ。曜が、いなくなるなんて……」 中途半端に間に合ってくさったしたいみたいになってたら辛い ――沼津市
花丸「おおおおおおおおおおおおおお間に合えぇええええええええええええ!!!!!」ダダダダ
曜「ひぃいいいいいいいいいいいいいいい体が焦げ臭いよぉおおおおお!!!!」ズルズル
花丸「曜さん臭いずら!」
曜「ヒドイ! 恋人が焼かれてるんだよ! もっと気遣って!!」
花丸「気遣ってるから走ってるの!! 曜さんも恋人を気遣ってその臭い抑える努力して! 死体が焼ける臭いってすごいんだよ!?」
曜「私の体臭みたいに言うのほんと止めて!! 結構傷つくから!!」
花丸「文句は蘇ってから聞くずら――あっ」ピタッ
曜「ど、どうしたの花丸ちゃん立ち止まって!! 私かなり焦げ付いてるんだけど!!」
花丸「……お迎えが来たみたいだよ、曜ちゃん」
曜「お迎え? お迎えって――まさか……」
死神「」
曜「ファーーー!!! 絵にかいたような黒いローブにデカイ鎌ーーーーーッ!!」 花丸「……もうお迎えが来るなんて……思ってもみなかったよ……」ジリ
死神「……」ジリ
曜「いや『ジリ』とかやってる場合じゃないから! 私もジリジリと焦げ付いてるんだよ!? 」
花丸「もう時間はない……相手は死神……やるしかないずら……」
死神「……」ザッ
花丸「来い! お前に曜さんは渡さない! 三途の川も渡さない!」ザッ
曜「誰が上手いこと言えと!!!!」
花丸「ウォオオオオオオオオ!!!!」
死神「!」
曜「あああああああああああああ無駄な掛け声で尺取らないでぇええええええ!!!!」 死神。それは文字通り彷徨う魂を回収し、三途の川に連れていく使いである。
彼らの命題は魂の回収。そこに如何なる壁が立ちふさがろうとも、彼らはただ魂を回収する。
死神の鎌はその名の通り命を刈り取る。それは死人の魂だけでなく、生人の魂をも刈り取る。
本来死神の鎌は生人に振るわれることは無いが、もし生人が死神の命題を邪魔するのなら、彼らの鎌は生人にも等しく振り降ろされる。
花丸はそれを認識した上で、死神の前に立ち塞がった。
ここで彼が花丸を追って来れないほどに叩きのめさなければ、必ず死神に追いつかれ、曜を奪われる。
花丸は左腕を引き、右腕を突き出し肘を曲げ構えた。迷いはなかった。迷いなどないのだ。自分の命と曜の命を秤にかけただけなのだ。
「来い」
呼吸一つ。吸った息を止めて、花丸は自身の身長以上はあろう鎌の煌めきを視線で追う。
殺気が迸った刃。握りしめられた拳が、その刃を打つ。死神に表情があるならば、きっと驚愕に染まっただろう。
常人ではその刃に触れただけで文字通り魂を刈り取られるというのに、花丸はその拳一つで刃を打ち返したのだ。
息を吐く。もう一度息を吸って体内の気を整え、気の解れた右手にもう一度気を宿す。死神であろうと結局は霊界の存在。ならば、花丸にとってそれは慄きこそすれ臆する者ではない。
所詮、人は独り。そう思い定めてきた花丸に、渡辺曜という存在はこの世の新たな真理を見せた。 恋をすること。愛すること。
確かに人は独りだが、花丸に芽生えたこの感情は、常日頃思ってきた真理に、さらに言葉を付け足した。
人は独りであるから、誰かに恋をし、誰かを愛する。人は独りだからこそ、他者へ無償の愛を贈ることができるのだ。
曜は助平だった。いつも自身の胸ばかり見ていた。ブラジャーのカップの裏側の匂いを嗅いでいることも多々あった。タイツを凝視していることもあった。
己だってそれなりに胸が大きいしスタイルもいいのに、なぜか花丸の身体ばかり触りたがった。
聞いたことがあるのだ。そんなにおっぱいが好きなら、鞠莉さんの乳を揉めと。
すると曜はこう言ったのだ。
――花丸ちゃんが好きだから、花丸ちゃんのおっぱいを揉むんだよ? それ以外のおっぱいには興味ないよ?
確かに彼女は花丸の胸を凝視することはあっても、鞠莉や果南の大きな胸や、ルビィの控えめな胸を視姦することは無かった。
いつだって、花丸しか見ていなかったのだ。いつだって、花丸のことを見てくれていたのだ。主に胸だったが。
何度刃と拳が交わっただろう。気付けば自分の服は彼方此方裂け、拳の気も随分と解けている。
しかし死神もかなり消耗しているらしく、刃の閃きに最初ほどの俊敏さは見えなかった。
「これだけゆっさゆっさ揺れるの見れたら、もう死んでもいいかなぁ。死んでるけど」
曜の言葉と一緒に焦げ臭い空気を吸い込む。今まで防御に徹してきたのはこのためだ。花丸は初めて一歩を踏み出す。
この一歩は、曜の愛に応えるため。 腕が獲物を捕らえる蛇の様に動く。鎌が拳の軌道を反らす。左腕。今度は薙ぎ払う様に側頭部を、正確には死神のこめかみを狙って放つ。
死神が一歩下がり、左腕を弾く。花丸はさらに一歩踏み込む。踏み込みながら拳を放つ。
鎌の動きが一瞬遅れる。今度は左腕を大振りせず小さく死神の顎を狙う。
弾かれる。鎌。閃く。屈む。髪が数本散る。息は上がって体は重いが、死神の動きは良く見えた。
今までの打ち合いで、死神の癖は読みつつあった。彼は首を狙う。
普通に花丸に刃を振るっても纏った気がそれをはじき返してしまう。だから死神はもっとも花丸の気が薄い首を狙って振るうようになっていた。
極限状態において、間違いなく相手は急所を狙ってくる。もう曜は横になって両手を組んで焼死待機状態に入った。時間はない。
瞬間。焦りが隙を生んだのか。
刃が気の解けかかった左腕を正確に捉えた。
「ッぁああ"あ"あ"!!」
焼けるように痛む左腕。ずしりと重くなった腕は、もうぴくりとも動かない。
大地に付きかかった膝を叱咤し、歯を食いしばって構えを直す。追撃が来なかった辺り、相手も限界が近いのだろう。 「……もういいよ、花丸ちゃん。花丸ちゃんが死んじゃうくらいなら、ここで花丸ちゃんに看取られて逝くよ」
「もんか……」
「えっ? 花丸ちゃん?」
自分のことより花丸のことを優先するその感情は、愛だ。ならば、花丸はその愛に応えるべく、恋をするのだ。曜に愛されたからこそ、花丸は。
「恋を知ったんだ! 誰が死ぬもんか!」
死神が花丸の叫びに合わせ突進する。死神はこれで決めるつもりだろう、迷うことなく首筋への一閃を煌めかせる。
今までで一番強力な霊気の纏った一閃だと、直感する。
深呼吸。片腕しか使えないのなら、片腕だけにすべてを集中すればいい。
気を。生への執着を。人は独りだという真理を。愛を。恋を。
今ここで、花丸のすべてを叩き込むだけ。
最後の一歩を、花丸は踏み込んだ。 ――沼津市 火葬場
ダイヤ「おかしいわね……マルちゃん、出ないわ……」
善子「ダイヤ、もうすぐ曜が――」
ダイヤ「それが、マルちゃんと連絡が取れないのよ」
善子「……マルちゃん、遺体を見た時涙も流してなかったし……まだ状況が呑み込めてないのかも」
ダイヤ「……マルちゃん……ん?」
善子「……ダイヤ?」
ダイヤ「あれは……?」ジーッ
善子「あれってどれ?」
ダイヤ「ほら、あそこ、あのこっちに向かってくる……」
善子「あ、マルちゃんだ――ん? なんか様子おかしくない?」
ダイヤ「どうしたのでしょう――」
花丸「間に合えええええええええええええええええええええ!!!!」ズドドドドドドドドドド
曜「ああああああああああああああああ熱いいいいいいいいいいいいいいいいしぬぅうううう!!!!!」 花丸「二人ともどくずらぁああああ!!!」
ダイヤ「きゃあ!!」
善子「マルちゃんっ!?」
花丸「天下御免ずらぁああああああああああああああああああああ――……」
善子「な、なんだったの一体」
ダイヤ「さ、さあ……」 花丸「どこずら! どこずら! 曜さんはどこずら!!」
千歌「ううっ、よーちゃん……」グスグス
果南「大丈夫、大丈夫だよ千歌……」
花丸「果南さん! 曜ちゃんはどこずら!?」
曜「あっつ! あっつ! これやばいって! なんかもうやばいもん!!」
果南「ま、マル!? 今までどこにいたの!?」
花丸「そんなことはどうでもいいずら! このままだと曜さんが死んだまま焼け死ぬずら!」
果南「ええ……? そりゃ遺体は焼くよ……」
花丸「良いから! どこずら!」
果南「どこって……目の前の火葬炉だけど……」
花丸「合点ずら! これで間に合うずら!」
果南「ええ……?」 花丸「聞いた曜さん!? 目の前の火葬炉に飛び込むずら! そうすれば元の体に戻れて曜さんは復活ずら!」
曜「正気なの!? 夏真っ盛りどころか絶賛火葬中の体に飛び込むとか罰ゲームだよ! もういいよ! このまま火葬された方がましだよ!!」
花丸「それでもオラは曜さんに生きていてほしいずら!!!!」
曜「曜だって生きたいよ! でも、もう今更蘇ってもどうにもならないよ!」
花丸「おっぱい揉ませてあげるから!」
曜「えっ?」
花丸「目の前で脱いだブラジャーのカップの裏側の匂いも嗅がせてあげるし、脱いですぐのパンツの匂いも嗅がせてあげるから、行って!」
曜「……」 花丸「……」
果南「……」
千歌「……」
鞠莉「……」
ルビィ「……」
梨子「……」 曜「あっちぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!」 ――数週間後 沼津市内病院
果南「ま、まさか死んでいたんじゃなくて幽体離脱してて文字通り生死を彷徨っていたなんて……」
曜「えへへ、私も死ぬかと思ってたよ」
千歌「よーちゃん、ほんとによーちゃん生きてるんだよね……?」ペタペタ
曜「あはは、生きてるよ。トラックに撥ねられた時よりめちゃくちゃ熱い棺の中で蘇った時が一番やばいと思ったかな」
鞠莉「ヨウの声が聞こえた瞬間リコとルビィは失神したのよ?」ケラケラ
梨子「だ、だってただでさえ曜ちゃんが死んじゃったってことが呑み込めてなかったのに、声まで聞こえたら……」
ルビィ「ルビィ、自分がおかしくなっちゃったかと……」
善子(火葬場のスタッフさんが棺を開けた瞬間雄たけびを上げながら全裸の曜が飛び出して来た瞬間はこの世の情景とは思えなかったわ……)
ダイヤ「火葬場に駆け付けてきたマルちゃん、実際には曜ちゃんの……幽霊を連れていたわけなのね」 花丸「正確には曜さんの魂です」ガチャ
果南「あ、マル。遅かったね」
花丸「すみません、腕の様子を見てもらっていて……」
梨子「花丸ちゃん、火葬場に来る途中に躓いて転んで服とかもボロボロになっちゃったんだっけ。腕は大丈夫?」
花丸「はい、大丈夫です。曜さんともどもご迷惑をおかけしました」ペコリ
曜「あはははは、みんなごめんね。まさかこんなことになるなんてね」
千歌「でもでも、曜ちゃんは生きてたわけだしぜーんぶ丸く収まったわけだよね!」
梨子「うふふ、そうだね千歌ちゃん。本当に一時はどうなる事かと思ったけど……」
花丸「……」
ダイヤ「……」チラッ
ダイヤ「マルちゃん、言いたいことがあるなら私たちは出ていくわ」
花丸「あ……」
果南「ん、そうだよね。マルは遅れてきたんだし、言いたいことも言えてないか。じゃあ私たちはちょっと席でも外そうかな」 花丸「……」
曜「……」
花丸「マル、曜さんのことが嫌いずら」
曜「……うん、もう全部知ってるよ」
花丸「曜さんが死んじゃって、どれだけオラが悲しかったか、わかんないよ」
曜「……うん」
花丸「でもね、今は――それ以上に嬉しいよ」
曜「うん……曜もだよ」
花丸「今こうやって、ほんとの曜さんとお話しできること、すっごく幸せなの」
曜「花丸ちゃん……」
花丸「曜さん……だいすき、ずら」スッ
曜「うん……曜もだよ……」スッ 花丸「人がキスしてる間に……何やってるずらか?」ヒクヒク
曜「あれ? だってあの時言ってなかった? おっぱい揉ませてあげるって」モミモミ
花丸「……」フルフル
曜「ああ、やっぱりここが私の極楽浄土だよ……やわかいなぁ……」モミモミ
花丸「そうずらか、やっぱり曜さんは一度きっちり死んだ方がいいずら」ググッ
曜「えっ……あ、ちょ、花丸ちゃん? グーはやばいってグーは、ほら、私まだ絶対安静で――」
花丸「マル、曜さんのことが大っ嫌いずらぁああああああああああああああああああああ!!!!」
曜「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
おしまい おつおつ
シリアスからギャグにバトルと花丸ちゃんのおっぱい並に盛りだくさんで草 ぎいぃいいぃいやぁ〜〜!!何するずらァー!!!
やめてずら!!!マルが何したって言うんずらぁー!!!!!!
痛いずらよぉー!!!!!!!
赤ちゃんが出来ちゃうずら・・・
学校も行けなくなっちゃうずらよぉー!!
曜ちゃーん!!!!外に出すずらぁー!!!!!!!! 花丸は「曜ちゃん」って呼ぶだろ!
「曜さん」って呼んでいいのは善子だけ! ほのぼのかと思ったらシリアス、ギャグと来てガチバトル描写も来るとかネタ満載でワロタ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています