みもりんスペシャル「三十路探偵・みもりんの事件簿M XIII」戦慄!呪われた村 みもりんVS怪奇現象!!忌まわしき20年前の悲劇…[字][解][デ]
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交番前
ブーン……キィッ
ガチャッバタン
みも「こんにちはー」
えみ「こんにちは、なにか困り事?」
みも「えっと……ここに行きたいんだけど、この地図ちょっとわかりづらくて」ピラッ
えみ「あー、そこかぁ」
みも「道ってこっちであってるのかな?」
えみ「あってはいるけん、ちょっと待ってり。私がもっとわかりやすい地図描いてくるで」
みも「ほんと!? ありがとー」
えみ「えっと、紙は……」
くす「探偵ー、道わかったー?」
みも「今地図描いてもらってるー! ちょっと待っててー!」
くす「だって、なんちゃん警部補」
じょる「その地図でちゃんとたどり着ければいいけどねぇ……」 りぴ宅
りぴ「じゃあちょっと出かけてくるから、適当にくつろいでてよ」
じょる「うん、行ってらっしゃい」
りぴ「行ってきまーす」
ガラガラ……ピシャッ
じょる「あー、なんか喉乾いたね。お水持って――」
みも「南條さん」
じょる「な、なに?」
みも「ちょっとそこに座ってください」
じょる「……はい」
みも「どういうことか説明してもらえますよね?」
じょる「いやぁ、なんというか……いろんな噂があるんだねぇ、うん」
みも「なーんーじょーさーん……!」ゴゴゴゴ……
じょる「わ、わかったよ、ちゃんと説明するからっ」
くす「なんちゃん警部補、私たちを騙してたの……?」
じょる「騙してたっていうかさぁ……」 みも「ここが心霊スポットだって知ってて私たちを連れてきましたよね? ねっ!?」
じょる「だ、大丈夫だよ、幽霊なんて出ないから。それを証明するのが今回の仕事だし……」
みも「じゃあほんとに出てきたらどうすんですか」
じょる「そん時はそれが偽物だって証拠を探すの。いいね?」
みも「ちっともよくないですよ!」
くす「でもさっきの人、嘘ついてるようには見えなかったけど……」
みも「そもそもどうして南條さんがそんなこと調べてるんですか?」
じょる「言ったでしょ? 県警に借りがあるって」
みも「事件も起きてないのに警察が動く理由がわかりません」
じょる「まあそれは巡り巡ってってやつなんだけど、こういう山奥の村って過疎化が進んでるでしょ?」
じょる「だから移住者を呼び込んだり、店を作ったりして村おこしをしようって話になったらしくてね」
じょる「ところがどうやらこの村は呪われた村として一部で有名らしくてさ」
じょる「興味本位で村に来る人はたまーにいるみたいなんだけど、その程度じゃ地域活性化には繋がらないみたいで」
じょる「というかむしろその噂のせいで人が寄り付かないんじゃ? ってことで調べることになったんだよ」
くす「あっ」
みも「どうしたくっすん」 くす「もしかしてくっすん号が止まったのも呪いのせいなんじゃ――」
みもじょる「それは車がボロいせいだよ」
くす「えぇ〜……」
じょる「で、上がそんな変な捜査に人手は割けないとか抜かすもんでみもちゃんたちに声かけたってわけ。ほかに質問は?」
くす「特にない……かな?」
じょる「それじゃこの話は終わりってことで――」
みも「南條さん、なんか言い忘れてることありません?」
じょる「……ふたりともごめんね、大事なこと黙ってて」
くす「なんちゃん警部補……」
みも「まったくもう……呪いだろうがなんだろうが、南條さんのためだったら私たちが手を貸さないわけないじゃないですか」
じょる「みもちゃん……」
みも「だよね? くっすん」
くす「え!? あ、うん。ソダネ……」
みも「南條さん、私だけはどんなときでも手を貸しますからね」
くす「わ、私だって!」
じょる「ありがとう。みもちゃんたちがいてくれてほんと助かるよ」
みもくす「えへへ……」 夜 しか宅
しか「んー……」カタカタ
くす「なにしてるの?」
しか「あ〜……ネットバナナボート」
くす「ネットサーフィンね。ていうかここネット使えるんだ……」
しか「なんか用事?」
くす「あ、うん。その、今夜は一緒に寝てほしいなー……なんて」
しか「なんで?」
くす「だって……出るんでしょ?」
しか「ああ、別に大丈夫だよ。幽霊出ても死ぬわけじゃないし」
くす「そ、それって幽霊はほんとに出るってこと?」
しか「まあ……」
くす「じゃあ一緒に寝てよ! 怖いよっ!」
しか「えー、やだよ」
くす「そんなこと言わないでぇ!」ガシッ
しか「ちょっと、掴まないでっ!」 りぴ宅
じょる「ねぇ、みもちゃん」
みも「なんですか?」
じょる「私たちのこと、まだくっすんには黙ってるの?」
みも「またその話ですか……南條さんは部外者なんだから引っ込んでてくださいよ」
じょる「思いっきり当事者だっての」
みも「慌てなくてもそのうち話しますから心配ご無用です」
じょる「そう言ってるけど、私たちが付き合い始めてからもう何ヶ月たったと思ってるの?」
みも「むぅ……」
じょる「いつまでもくっすんのこと騙してるわけにはいかないでしょ」
みも「“騙してる”か……今の南條さんにはあんまり言われたくない言葉ですね」
じょる「う……」
みも「でも南條さんの言う通り、今のままじゃダメなんですよね」
じょる「…………」
みも「もう少しだけ時間をください。くっすんには必ず話しますから」
じょる「……わかった。それじゃそろそろ寝よっか」
みも「そうですね。よっと……」ノソッ じょる「ちょっと、みもちゃんの布団そっちでしょ?」
みも「わかってますよ」
じょる「わかってんならちゃんと――」
みも「南條さんって可愛いですよね」
じょる「な、なにいきなり……」
みも「くっすんがここにいなくて助かりましたよ」スッ
じょる「待て。なにしてんの?」
みも「……わかってるくせにぃ。さ、早く脱いでくだ――」
じょる「ふんっ!」ベシッ
みも「いだっ!」
じょる「ここ人んち! 変なことしないでとっとと寝なさい!」
みも「ならせめておやすみのキスを――」
じょる「しません。私はもう寝るからね」バサッ
みも「ちぇっ……南條さんのケチ」
………………
…………
…… 深夜
みも「んぅ……あれ……」ムクッ
みも「真っ暗……寝よ」バタッ
??「ぅぅ……」
みも「ん? 今なにか聞こえたような……」ムクッ
シーン……
みも「気のせい……?」
??「ぁあ……」
みも「っ! やっぱり聞こえる……南條さん南條さんっ」
じょる「ぐー……」
みも「南條さんってば! 起きてください!」ユサユサ
じょる「んっ……すー……」
みも「全然起きない……こうなったら熱いキッスで起こすしか――」
じょる「ふぁぁ……なに? みもちゃん……」
みも「ああっ! なんで起きちゃうんですか!」 じょる「起こしたのみもちゃんでしょ?」
みも「そうですけどっ!」
じょる「こんな夜中になんの用?」
みも「あ、そうだ。南條さん、なにか聞こえませんか?」
じょる「んん……?」
シーン……
じょる「……別に聞こえないけど」
みも「さっきは聞こえたんですよ! 人のうめき声みたいな……」
じょる「夢でも見てたんじゃないの? 眠いから寝させてよ……」
??「うあぁ……」
みも「ひっ……」
じょる「み、みもちゃん、不気味な声出さないでよ」
みも「私じゃないですって!」
じょる「だったら誰が――」
ガタガタガタ……! みも「な、なにっ!?」
じょる「まさか……ポルターガイスト?」
ガシャンッ!
みも「ひゃあっ!」ギュッ
じょる「ちょっ!? みもちゃんどこ触って――」
みも「やだやだやだやだぁ!!」
じょる「お、落ち着いて! 大丈夫だから!」
みも「ででででもっ!」
じょる「きっとただの地震だよ。たぶんすぐに治ま……」
みも「南條さん……? どうし――」
女「……す」
みも「え……」
女「あっしには関わりのないことでござんす!!!!」
みもじょる「ギャアアアアアァァァァァ……!!!!」
――――――
――――
―― 翌朝
みも「おはようございます……」
じょる「うん……おはよう……」
みも「その……南條さん」
じょる「なに?」
みも「今すぐこの村を出ましょう」
じょる「……そういうわけにはいかないよ」
みも「でも見ましたよね昨夜!」
じょる「見ちゃったから調べなきゃいけないんでしょ?」
みも「うぅ〜……」
ドンドンッ!
みも「うわぁっ!!」
りぴ「おおっ、なに? どうかした?」
みも「はぁ〜……」ゴロン
じょる「おはよ……」
りぴ「はい、おはよー。あ、昨夜はお楽しみでしたねっ」
みも「えぇ? 全然楽しくないよ……」 りぴ「あれれ、なんかあったの?」
みも「……出たんだよ」
りぴ「出たって? 虫かなにか?」
みも「幽霊に決まってるでしょ!」
りぴ「あ〜、出たんだ」
みも「そんな当たり前のことみたいに……」
じょる「あのさ、夜中に地震とかなかっ……ん?」
りぴ「う〜ん……気づかなかったけど、揺れてたの?」
みも「ってことはやっぱりあれポルターガイストだったんだ……」
りぴ「朝ご飯もうできてるから、早く着替えて出てきてねー」スタスタ……
みも「南條さん……もう一回言いますけど、この村を出ましょう。ねっ?」
じょる「……いや、ダメだよ」
みも「なんでですかっ!」
じょる「決まってるでしょ。昨夜のあれは幽霊なんかじゃないからだよ」
みも「へ……?」 しか宅
くす「えっ……ほんとに幽霊出たの?」
みも「出たよぉ、女の幽霊!」
くす「ひぃぃ……」
みも「マジで怖かったんだから!」
くす「私のとこに出なくてよかったぁ……あっ、そういえば昨日の昼間も女の人見たって言ってたよね?」
みも「うん……でも昨夜出たのは違う人だった気がする」
くす「村に出る幽霊は一人だけじゃないんだ……」
じょる「だから昨夜のは幽霊じゃないって」
みも「怖いからって現実から目を背けちゃダメですよ南條さん」
じょる「じゃあみもちゃんはあれが本物だってことにしていいの?」
みも「いいもなにも実際に見ちゃったら信じるしかないじゃないですかっ」
じょる「もし本物だったら私たち絶対呪われたよ? あの女めっちゃ怒ってたし、謎の奇病に侵されるかも」
みも「え……」
じょる「でもあれが偽物なら呪いだって存在しない。だからちゃんと調べようよ」
みも「うぅ……わかりましたよ」 りぴ宅
じょる「たぶん昨夜のあれはりっぴーの仕業だと思う」
みも「なんか根拠でもあるんですか?」
じょる「ない。いつものよく当たる勘だよ」
みも「まぁたでましたよぴったし勘・勘……そもそもなんでりっぴーが私たちに幽霊なんか見せる必要があるんですか?」
じょる「さあねぇ。とにかくあの子が出かけてるうちに調べないと……」
みも「無理ですよ、ポルターガイストを起こすなんて」
くす「あ! 私わかっちゃったかも!」
みも「えー?」
くす「きっと特殊能力を使ったんだよ!」
みも「あーそれだ。そういうことにしてもう帰っちゃいましょう」
じょる「いや、違うと思うよ? あの子どう見てもまだ20代でしょ」
くす「そっか、30過ぎないと能力は使えないんだ……」
じょる「というか『特殊能力でしたー』で上が納得してくれるわけないし」 みも「むぅ……」
くす「よく考えてから発言しないとダメだよ、探偵」
みも「くっすんが言い出したんじゃん」
じょる「ふたりとも喋ってないでちゃんと調べて」
くす「はーい」
みも「……にしても、どうしてここにはふたりしか泊めてくれなかったんだろ」
じょる「布団が二組しかないって言ってたでしょ?」
みも「でもあの布団結構大きかったですよ? 寝ようと思えばふたりで一組でも大丈夫だったはずです」
じょる「ふむ……たしかに」
みも「なにかこの部屋に3人以上泊められない理由でもあるんですかね?」
くす「ねーねー、ふたりが見た幽霊ってどんなだったの?」
みも「どんなって、怖い幽霊だよ」
くす「そうじゃなくて」 じょる「うーん……とりあえず女だったのは間違いないね」
みも「ええ、声も完全に女でしたからね」
くす「えっ、幽霊喋ったの?」
みも「うん。『なんとかかんとかー!』って」
じょる「あと歳は私たちと同じくらいに見えたかな」
みも「ですね。でもほんと怖かったなぁ……気付いたらそこに立ってるんだもん」
くす「そこって、障子の前?」
みも「そうそう」
じょる「障子の前……あっ」
みも「なにかわかったんですか?」
じょる「もしかしたら庭に手がかりがあるかもしれない」
みも「行ってみましょう」
くす「じゃあ私はもうちょっと部屋の中調べてみるね」
みも「ん、お願い」 庭
じょる「あー、やっぱりあった」
みも「この台が手がかりなんですか?」
じょる「うん、たぶんプロジェクターを置くためのものだと思う」
みも「プロジェクターって……まさか障子に映写した、とか言いませんよね?」
じょる「おっ、みもちゃんご名答」
みも「ええっ、本気で言ってます?」
じょる「なんで?」
みも「だって障子に映したら映像に線が入っちゃうじゃないですか。私がそれに気付かないわけないですよ」
じょる「そりゃ今みたいに落ち着いていればね。でもあの時の状況だったらどう?」
みも「それは……」
じょる「ふたりとも寝ぼけてたし、なによりみもちゃんはパニック状態だったでしょ?」
みも「べ、別にパニックにはなってなかったですよ? まあちょっとはびっくりしましたけど」
じょる「なぜ強がる……とにかくあの幽霊は偽物だった、そう考えるのが妥当だね」
みも「はぁ〜、偽物かぁ。なんか怖がって損した気分……ん?」 じょる「んじゃ一旦部屋に戻ろっか」スタスタ……
みも「あぁ、待って下さい! ここに変なスイッチが」
じょる「スイッチ?」
みも「押してみますね」ポチッ
くす『わあああああぁぁぁぁぁ!!!!』
じょる「うおっ、なんだ?」
みも「くっすん!?」パッ
シーン……
じょる「…………」
みも「…………」
じょる「……ちょっと様子見て――」
スゥー……
くす「た、探偵……なんちゃん警部補……」
みも「くっすん! なにがあったの!?」 くす「ポルター……ガイスト……」
じょる「えっ?」
みも「もしかして今のスイッチ?」
くす「た、助けて……腰抜けちゃった……」
じょる「ちょっ、大丈夫?」タッタッタッ
くす「うぅっ、怖かったよぉ……」ギュウ
じょる「すごい悲鳴だったけど、ちびったりしてないよね?」
くす「うん、それはだいじょっ……」
じょる「お、おい、黙るなって」
みも「いや〜、びっくりしたねー。突然ひとりでにポルターガイスト装置が動くなんて」
じょる「みもちゃん」
みも「ごめんくっすん! 私が無闇にスイッチ押したりしたから……」
くす「いいよ。それより私も面白いもの見つけたの。ほら、あそこ」
みも「なにあれ? スピーカー?」 くす「額縁を外してみたら出てきたんだよ」
じょる「きっと幽霊の声を流すためのものだろうね」
みも「くっすんよく見つけたね、偉い偉い」
くす「えへへ」
みも「ん? ってことはこれで今回の仕事は終了ってことですよね?」
じょる「うーん、そうなんだけど……」
みも「やっぱり気になりますか。どうしてこんなことをしていたのか」
じょる「うん……悪いけど、もう少しだけ捜査に協力してくれないかな?」
みも「いいですよ、私も気になってることですから。くっすんもいいよね?」
くす「うんっ」
みも「でも理由ならりっぴーが帰ってきたら直接聞けばいいんじゃないですか?」
じょる「聞いても正直に答えてくれるとは限らないでしょ?」
みも「なるほど。で、どうやって調べるつもりですか?」
じょる「そうだなぁ……とりあえずこの村の呪いについて詳しい話を聞きに行こうか」 そら宅
そら「村の呪いのこと?」
みも「うん、心霊マニアとしてぜひ話を聞きたいなーと思って」
そら「まあ話をするのはいいけど、なんで私に?」
みも「それはほら、なんか詳しそうだったから」
そら「呪いのことならこの村に住んでる人はみんな知ってるよ」
くす「それだけ恐ろしい呪いってこと?」
そら「というより、始まりを知ってるからかな」
みも「始まり?」
そら「ね、日本で子供の自殺が一番多い日って知ってる?」
みも「あ〜聞いた事あるような……」
くす「えっとえっと、いつだっけ……」
じょる「9月1日、だよね?」
そら「その通り、9月1日。つまり、2学期が始まる日」
みも「それと呪いになんの関係があるの?」
そら「今から20年くらい前、この村でも自殺した子がいたんだよ」
そら「9月1日の朝、自分の部屋で首を吊って死んでるのを発見されたの」 くす「じゃあ村に出るのって、その子供の霊?」
みも「くっすん忘れちゃったの? 私たちが見たのは大人の女だよ」
くす「あ、そっか」
じょる「察するに村に出るのはその子の母親かな?」
そら「はい。その子が死んでいるのを発見したのが母親だったんです」
そら「自分の子供が死んでから、母親はどんどん病んでいって――」
そら「最後はその子と同じ場所で同じように首を吊った……」
そら「それからこの村では母親の霊が今も成仏できないまま、ずーっと彷徨ってるんだよ」
くす「うわぁ……」
そら「村のあちこちに石像があったでしょ? あれはその親子を祀ったものなの」
くす「そうだったんだ……」
じょる「…………」
みも「その子の家ってまだ残ってるの?」
そら「ううん、随分前に取り壊されたから」
みも「そっかぁ」
そら「よかったら家のあった場所教えよっか?」 道
みも「さて、それじゃ家の跡地にでも行ってみますか」
じょる「待って」
みも「どうかしましたか?」
じょる「ふたりはこの村に来てから、なにかおかしいと思ったことはない?」
くす「えっ?」
じょる「なんかこう、違和感を覚えたこととか」
みも「う〜ん……そういえばこの村の人って全然方言喋ってないですね」
じょる「さすがみもちゃん、いいとこに気付くね」
みも「お、やった褒められた〜」
じょる「他にはなにかない?」
くす「えとえと……」
みも「あっ、年寄りがいないとか!」
じょる「うん、それから?」
みも「まだあるんですか!? そうだなぁ……」
くす「待ってよ私もなんか言いたい!」
じょる「これはもう出てこないかな〜?」 みも「南條さんも一個くらいあげてくださいよっ」
じょる「ええ? じゃあ……車の数かな。村人の数よりも少なかった」
みも「それのどこがおかしいんですか?」
じょる「こういう田舎じゃ車は大抵一人一台持ってるんだよ」
みも「へー……で、結局南條さんはなにが言いたいんですか?」
じょる「つまりこの村に――」
くす「ああっ!! あったおかしいこと!」
じょる「なにかなくっすん」
くす「村人みーんな仕事してない!」
じょる「……あ」
みも「そういえば昨日も今日も平日だったね」
くす「でしょ? それにほぼ全員一人暮らしみたいだし、誰かが働きに出てるとかじゃなさそうだよね?」
みも「うわー、普段曜日とか気にしてないから気づかなかったぁ〜」
じょる「そうか、わかったぞ! 行くよふたりとも!」スタスタ
みも「えっ、例の家があったのてそっちじゃないですよ?」
じょる「行き先はそこじゃない。ほら急いで!」 夜 集会所
みも「よーし、全員揃ったね」
しか「ねえ、これってどういうことなの?」
みも「それはもちろん……お世話になったみんなにお礼がしたくって」
ぱい「りっぴーに呼び出された時は何事かと思ったけど……」
うち「まさかこんな豪華なディナーが用意されてるなんてねぇ」
りぴ「もう食べていい? 食べていい?」
みも「その前に、みんなで『いただきます』しよう」
そら「おぉ、なんか小学生に戻ったみたいだね」
みも「はいじゃあ手を合わせて! せーのっ」
一同「いただきます」
くす「はむっ、はふっ、ん〜すっごくおいしい!」
じょる「そりゃあんだけ高い金払って注文したからね。あむっ」
みも「ちょっとくっすん! 私の分まで食べないでよっ!」
………………
…………
…… みも「ふぅ〜、食った食ったぁ!」
じょる「みもちゃん、くつろいでないでアレやってアレ」
みも「あっ、そうだった」スクッ
みも「みんなもう食べ終わったよね? 食後の挨拶も忘れずにやるよー。せーの!」
村人たち「ごちそうさまでした」
じょる「……さて、それじゃ始めようか」
みも「はいっ」
しか「あれ、まだなんかあるの?」
みも「むしろここからが本題だよ。えー……ずっと隠してたけど、実は私は旅人でも心霊マニアでもありません」
そら「えっ?」
みも「なんと私は、あの有名な名探偵みもりんなんですっ!」
くす「そして私は助手のくっすん!」
じょる「私っ……は、まあいいや」
りぴ「名探偵?」
ぱい「うっちー知ってる?」
うち「ううん、聞いたことない」
みも「……そんで昨夜のポルターガイストと幽霊のことなんだけど、あれ全部イカサマだよね?」
りぴ「そそ、そんな証拠どどどこに?」
みも「りっぴーが出かけてる間にいろいろ調べさせてもらったんだよ」
くす「スイッチで部屋を揺らして、障子に幽霊を映写したんでしょ?」
りぴ「!」 じょる「まったく、あのしょうもない仕掛けに一体いくら使ったんだか……」
みも「部屋に私と南條さんのふたりしか泊めてくれなかったのは、重量オーバーを避けるためかな?」
りぴ「ちがっ――」
うち「で、あれがなんだって言うの? 別に怪我させたわけでもないのに」
みも「やっぱりうっちーも知ってたんだ、あの仕掛けのこと」
うち「し、知らないっ!」
みも「そうかなぁ? 思い返してみるとあの部屋に出た幽霊、うっちーに似てた気がするんだけど……」
うち「っ……」
じょる「昼間に聞いた20年前の話も全部真っ赤な嘘だろうね」
そら「……だとしても、なにか問題があるわけじゃないですよね?」
みも「問題は、なんのためにそんなことをしたかなんだよ」
みも「過去を捏造して、それを元に怪奇現象を起こした理由はなんなのか……」
みも「もしかしてこの村に人を近づかせたくなかったとか?」
そら「…………」
みも「この村の人たちは働いている様子がないのに、みんな普通に生活してるし車まで持ってる人もいるよね?」
みも「でもそんなお金、いったいどこから出てるのかな? 答えてくれる人、挙手!」
シーン……
みも「あれ、誰も答えてくれないんだ」
じょる「ところで、保健所にはもう連絡してくれた?」
ぱい「えっ……」 じょる「その様子だとやっぱり電話はかけてないみたいだね」
しか「待って、保健所ってなんのこと?」
じょる「ああ、山に生えてる大麻を除草してもらおうと思ってさ」
しか「……!」
みも「ふふっ、困るよね? あれがなくなっちゃったら」
じょる「あそこに生えてる大麻を調べてみたら、収穫した痕跡があったよ」
くす「売ってるんでしょ? ここは携帯も圏外の山奥だけど、ネットは使えるもんね」
ぱい「で、でも私たちが収穫したって証拠はないよね?」
りぴ「そうだよ! イエティが採ってったのかもしれないじゃん!」
みも「そっか、まだ認めてくれないんだ……じゃあうっちー!」
うち「な、なに?」
みも「昨日は昼間っからお酒飲んで酔っ払ってたんだよね?」
うち「そうだけど……いけない?」
みも「そりゃお酒を飲んだだけなら別にいけなくないけど……あれ、お酒じゃないでしょ?」
うち「言いがかりはやめて」
みも「言いがかりなんかじゃないよ。さっきディナーの時、うっちーは何杯もお酒を飲んでたよね?」
うち「……それが?」
みも「でも今はこの通りけろっとしてる。お酒強いんだね」
うち「だからなに? 私だってたくさん飲めば酔っ払うことくらいあるよ」
みも「そうだろうね。でも……うっちーが酔っ払うほど飲んだら、相当お酒臭くなるはずだよ?」
うち「っ!」 みも「あぁ、くっすんって結構鼻が効くんだけど、昨日うっちーに会った時は全然お酒の匂いはしなかったって。ね?」
くす「うん。お酒の匂いはしなかったんだけど、なんか青臭いというか変な匂いがしたよ」
じょる「おそらく大麻の匂いだろうね」
みも「吸ったんでしょ? 大麻」
うち「…………」
じょる「検査すればすぐにわかることだよ。まあ陽性反応が出たところで逮捕はできないけど」
みも「えっ、そうなんですか?」
じょる「大麻の吸引自体は違法じゃないからね。ただ吸ってたとなれば捜査はすると思うよ」
みも「だって。いい加減認めちゃいなよ」
じょる「ちなみにここの村人が全員県外からの移住者だってこともわかってるから」
ぱい「どうし……あっ」
うち「ぱいるちゃんっ!」
みも「どうしてって、誰も方言喋ってないんじゃさすがにおかしいと思うでしょ」
りぴ「わ、私たちは若いから方言なんて使わないんだよっ」
みも「ああ、もちろんその可能性も考えたよ?」
みも「でも本当に子供の頃からこんなところに住んでいたなら、方言と気づかずに使ってる方言もあるんじゃないかな?」
しか「方言と気づかない方言?」
じょる「例えば……さっきご飯を食べ終わった後、なんて言った?」
しか「……ごちそうさまでした?」
じょる「そう、全員迷うことなく『ごちそうさまでした』」
うち「他に言い方なんてないでしょ……」
じょる「あるんだな、それが」 みも「長野じゃ食後の挨拶は『いただきました』って言うんだよ。知らなかった?」
そら「し、知ってるよ! たださっきは3人につられて言っただけで――」
みも「え? 私たちは手を合わせただけでなにも言ってないよ? だよねくっすん?」
くす「うん、私はなにも言わなかったよ」
じょる「右に同じく」
そら「ぐ……」
みも「この村で育ったっていうのが本当なら“いただきました”は普段から使ってたはず」
みも「それなのに誰一人として『いただきました』って言わなかったのは……おかしいずら?」
ぱい「う、うっちー、もうダメだよ全部バレてる……」
うち「ぱいるちゃんは黙ってて!」
そら「いや……もういいよ」
うち「まるちゃん……」
しか「これ以上ごまかせないかぁ」
りぴ「そうみたい……」
みも「認めるんだね? 大麻の密売を」
そら「うん……この村に移住したのは大麻を栽培するため」
そら「収穫した大麻はネットで注文を受けて、街で直接客に渡してた」
みも「まさか……今日りっぴーが出かけてたのも?」
そら「そうだよ。今週の当番はりっぴーだからね」
そら「あと心霊スポットの噂を作ったのも探偵の推理通り」 じょる「でもこんな山奥なら噂なんかないほうが人は寄り付かないんじゃないの?」
そら「そう思ってたんだけど、美女だらけの過疎村があるって噂が――」
くす「ええっ、そんな噂が流れたの?」
そら「いや、そういう噂が流れたら困るから先に心霊スポットの噂をネットに流したんだよ」
くす「うん?」
そら「それで最初は心霊マニアがよく来てたんだけど、あの部屋に泊まったらみんなすぐ逃げ帰ってね」
そら「そのうちこの村に来る人はほとんどいなくなったから、大麻のことは誰にも気づかれなかったよ」
じょる「うわぁ、なんて無駄なことを……」
みも「収穫した大麻って全部売ってたの? それともうっちーみたいに使ったりもした?」
りぴ「まあ時々……でも一番使ってたのはうっちーかな」
そら「ぱいるちゃんのためだもんねぇ……」
うち「ちょっと!」
ぱい「うぅ……」モジモジ
みも「なんで恥ずかしがってんの?」
しか「……このままずーっと、みんなでのんびり暮らしていけると思ってたのになぁ」
村人たち「…………」
みも「あっ、そうだ。村人ってもう一人いたはずだよね?」
りぴ「え?」
みも「昨日の昼間、大麻畑にいた子だよ。どこ行っちゃったの?」
そら「……ここに住んでるのは私たち5人だけだけど」 みも「え……ってことは私が見たのって――」
じょる「いや、たぶんここが心霊スポットだって先入観のせいでなにかと見間違えたんだよ」
みも「ですよねー。幽霊なんているわけないし!」
くす「めちゃくちゃ怖がってたくせに……」
みも「くっすんなんか言った?」
くす「ううん、なんでもなーい」
そら「一つ教えて。いつから私たちのことを疑ってたの?」
みも「あー、それはぁ……いつから疑ってたんですか?」
じょる「うーん、最初はなんか違和感があるなーって思っただけだったけど――」
じょる「それがはっきりとした疑念に変わったのは、20年前の自殺の話を聞いた時かな」
そら「なにかまずかったですか?」
じょる「まずいもなにも、あんな話はありえないからね」
そら「どうして?」
じょる「だって長野県のほとんどの学校では、8月中に2学期が始まるんだよ?」
じょる「つまり9月1日は始業式の日じゃないから、あの話とは矛盾してるってわけ」
そら「そうだったんだ……」
みも「話にリアリティを持たせようとしたのが逆に仇になったんですね」
じょる「そういうこと。くっすん、警察呼んでくれる?」
くす「はーい!」
………………
…………
…… えみ「いや〜、まさか東京の刑事さんだったとは……」
じょる「刑事は私だけだけどね」
えみ「そうだだ? まあなんでもいいけん、ご協力ありがとうございましたっ」
じょる「じゃ、あとはよろしく」
みも「ところで南條さん、ディナーのために貸したお金はちゃんと返してくれるんですよね?」
じょる「あ〜捜査費として認められれば返すよ」
みも「認められなかったら?」
じょる「大丈夫、成功報酬弾むって言ってたから」
くす「私お財布すっからかんだよぉ……」
じょる「ごめんね、私もこんなことになるとは思ってなかったからさ」
みも「というかさっきのってほんとなんですか?」
じょる「さっきの?」
みも「“いただきました”ってやつですよ」
じょる「ほんとだよ、巡査に聞いてみたら?」
みも「ねー! ご飯食べ終わったときの挨拶ってわかる?」 えみ「……いただきました?」
じょる「ほらね」
みも「おー……」
くす「じゃあ私たちもそろそろ帰ろっか」
みも「そうだね、行こ行こ」
じょる「どうやって帰るつもり?」
みも「くっすんの車に乗ってくに決まってるじゃないですか」
じょる「いや、あの車壊れたろ」
みもくす「……あ」
じょる「忘れてたのか……」
みも「どどど、どうするんですか!?」
くす「私たち帰れないの!?」
じょる「うーん……とりあえずたった今走っていったパトカーにでも乗せてもらう?」
みも「それだっ! 追いかけるよくっすん!」タッタッタッ
くす「了解!」タッタッタッ
みも「待ってー! 私たちも乗せてってー!」タッタッタッ……
………………
…………
…… 数日後・夜 みも宅・寝室
みも「なーんじょーさーん! むぎゅっ」ギュゥ
じょる「なに? なんか用?」
みも「用というか……こうしてると落ち着くんですよねー、えへへ」
じょる「私はみもちゃんのぬいぐるみじゃないんだけど」
みも「わかってますよ、ぬいぐるみじゃなくて恋人でしょう?」
じょる「お、おぅ……」
みも「あ、照れてる。可愛いなぁもうっ!」
じょる「うるさいっ……ああそうだ、こないだのディナー代のことだけど、捜査費ってことでなんとかなりそうだよ」
みも「そうですかぁ、よかった〜」
じょる「世間に知れたら税金の無駄遣いだって叩かれそうだけどね……」
みも「あはは。そういえばたしか成功報酬も出るんでしたよね?」
じょる「え? あー……」
みも「今度そのお金でくっすんと3人で美味しいものでも食べに行きましょうよ!」
じょる「そのことなんだけどさ……」
みも「どうかしました?」 じょる「成功報酬、出ないんだよね……」
みも「へ? なんで!? ちゃんと幽霊はいないって証明しましたよね!?」
じょる「その……一回説明したと思うけど、あれは村おこしのための捜査なんだよ」
みも「わかってますよ、それがなんだって言うんですか?」
じょる「私たちは幽霊が偽物だってことを証明したついでに、あの村で大麻コミュニティができてたことも暴いちゃったでしょ?」
じょる「なんかそのせいで村おこしどころじゃなくなっちゃったみたいでさ……」
みも「そんなぁ……あんなに怖い思いしたのにっ!」
じょる「あれは偽物だったんだからいいじゃん」
みも「そういう問題じゃないですよぉ……」
じょる「あっ、私ちょっとトイレ」スタスタ……
みも「はぁ〜……あれ、そういえば」
じょる『ここが心霊スポットだって先入観のせいでなにかと見間違えたんだよ』
みも「とか言ってたけど……」
みも(私が山で女の人を見たのって、心霊スポットの話を聞く前だったような……)
みも「わぁぁぁぁぁ……」
つづへ スペシャル乙
くっすんに打ち明け話せずに終わったということは追加放送も期待していいのかな ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています