絵里「六月」穂乃果「十六日は」雪穂「和菓子の日♪」 [無断転載禁止]©2ch.net
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【四月】
穂乃果「本当に学校、なくなっちゃうんですか…?」
絵里「あなたたちが気にすることじゃないわ」
スタスタ
希「あの子…穂むらちゃんやね」
絵里「ほむら?」
希「あれ、エリちは知らない?神田にある古い和菓子屋さんで、地元では結構有名なんよ」
絵里「そうなの?…私、和菓子ってあまり食べたことないから…」
希「ちゃんとした和菓子屋さんのお菓子はちょっと高いけど、何でも美味しいよ。ウチ、穂むらのおだんごが特に大好きなん」
絵里「ふーん…古いお店っていうけど、いつ頃からあるの?十年くらい?」
希「いや、そんなん古いうちに入らないやん。穂むらは確か江戸時代からあって、創業三百年くらいやったと思うよ」
絵里「さんびゃく!?…そ、そんなに…音ノ木坂よりずっと古いのね…」
希「まあ、神田にはそういう古いお店や建物が今も結構あるからね。おなじみの明神さんなんて千年以上前からあるし」
絵里「神社はそれくらい古いのが全国にたくさんあることは知ってるけど、お菓子だけのお店でそんなに長く続いてるのはすごいわね…こう言っては何だけど、なくても大丈夫な嗜好品なのに」
希「だからこそ、やないかな?…女の子はみんな甘いもの大好きやろ?お菓子は人生を豊かにするって思わない?」
絵里「まあ、私もチョコレートとか好きだし…わからなくはないわね」
希「和菓子も食べてみたらいいと思うよ。穂むらのお菓子を一度食べたら認識変わるかも」
絵里(三百年か…和菓子にはそれだけの力があるってことなのかしら。音ノ木坂にも、そういう何かがあれば…)
穂乃果「この像って独特のポーズだよね…誰が作ったんだろう?」
海未「誰の像かはともかく、誰が作ったかは今まで考えたことも無かったです…」
ことり「ちょっと真似したくなっちゃうね。このポーズ♪」
穂乃果「あはは。ちょっとやってみようか?…こんな感じ?」
ことり「こうじゃないかな?」グッ
絵里「こう?」サッ
海未「って、何やってるんですか。音ノ木坂のいいところを探そうという話だったはずでは?」
絵里「ご、ごめんなさい…」
穂乃果「って、生徒会長さん!?」
ことり「何してるんですか…?」
絵里「ちょっと…あなたに訊きたいことがあって」
穂乃果「え、私?」 絵里「そう、あなたよ。穂むらちゃん」
ことり「穂むら…ちゃん?」
絵里「あ、いえ。希がそう呼んでたから…私は絢瀬絵里。あなたは?」
穂乃果「高坂穂乃果です。穂は穂むらの穂と同じ、稲穂の穂ですよ♪」
キーンコーンカーン…
【穂むら】
絵里「ここが穂むら…創業三百年の」
穂乃果「古いだけが取り柄ですよ。おかげで地元の人には覚えてもらってますけど、あるのが当たり前の空気って感じで。わりと小っちゃくて目立たない店でしょ?」
絵里「いえ…お邪魔します」
穂乃果「はーい。いらっしゃいませ!ごゆっくりどうぞ♪」ガララ
絵里「甘い香りがするわね…」
穂乃果「厨房でお父さんが小豆を炊いてるんだと思います」
絵里「へー。お店のお菓子って全部手作りなの?」
穂乃果「さすがに材料の寒天やお麩とかを一から作ったりはしてませんけどね。お菓子の部分は基本的に手作りです」
絵里「かんてん?」
穂乃果「ようかんやあんみつに欠かせない材料なんです。寒天を一年中こんなに使うのは和菓子屋だけですね。たぶん…」
絵里「ようかんって、あの四角い謎の塊?寒天でできてるの?」
穂乃果「謎の塊って…ようかんを寒天で固めた物ですよ。…ほら、これがうちのようかんです」
絵里「ずっしり重い…これが本当に寒天なの?」
穂乃果「それだけ小豆のあんこがたっぷり入ってるんです。寒天の割合が多ければ、もっと軽くなりますよ」
絵里「ふーん…」
穂乃果「試食もできますから、よかったら食べてみてください♪」
絵里「いいの?…じゃあ、お言葉に甘えて…」
穂乃果「はい。和菓子屋ですから、もう甘すぎるくらい甘えちゃってください♪」
絵里「なにそれ…ふふふ」
穂乃果「えへへ。…さ、奥へどうぞ」ガラッ
穂乃果「ゆーきほー!お茶ー!」
絵里「」ビクッ
雪穂「はいはい…」トトトン 穂乃果「あ、ごめんなさい。びっくりしました?」
絵里「い、いえ…」
雪穂「いらっしゃいませ」ペコ
絵里「こんにち…は」
パタパタ
穂乃果「アハハ…なんかすみません。慌ただしくて」
絵里(家族みんなでやってるお店って感じね。だから長続きするのかしら?)
雪穂「お茶です。どうぞ」コト
絵里「ありがとう。…いい香りね」
穂乃果「今日のは鹿児島の新茶ですよ♪」
絵里「鹿児島…そんなに遠くのお茶を取り寄せているの?」
穂乃果「新茶は南のほうから順番にできて、鹿児島が一番早いんです。甘みがあって渋味が少ないのが新茶の特徴で…飲むだけならいいけど、たとえばお菓子に使う抹茶が新茶でない物になると、それだけで味が変わっちゃうんですよ」
絵里「なるほどね…お菓子を作る上で材料の味の違いは重要ね」
穂乃果「はい。だから毎年できるだけ早めに新茶を確保します」
絵里「おいしい…熱さもちょうどいいわ」
穂乃果「ようかんはどうですか?」
絵里「あんこを寒天で固めた物が、こんなに美味しいなんて…」
穂乃果「材料の小豆や砂糖も、品種や産地などこだわって選んでますから。そのぶん、どうしてもお値段は高くなっちゃいますけど…ちょっと高級な贈答品として、ようかんは根強い人気があるんです」
絵里「和菓子ってすごいのね…これなら」
穂乃果「これなら?」
絵里「廃校を阻止できるかも!?」
穂乃果「え。…い、いやぁ…それはどうでしょう…」
絵里「高坂さん!」ギュ
穂乃果「は、はい?」
絵里「音ノ木坂の未来のために、あなたの…いえ、和菓子の力を貸してくれる!?」
雪穂「菓子だけに…」
穂乃果「かして?」
ガラッ
凛「ちょっと寒くないかにゃー?」ピシャ
絵里「こうしてはいられないわ…作戦を考えなくちゃ!」 穂乃果「あ、ちょっと待ってください。これ…どうぞ。おみやげです♪」
絵里「え。…いいの?…私、まだ何も買ってないけど」
穂乃果「はい。気に入ってくれたら、また来てください♪」ニコ
絵里「ありがとう…また来るわ!」
ガララ ピシャ
ほのゆき「いらっしゃいませ!」
凛「こんばんはー♪」
【翌朝・秋葉原UTX】
穂乃果「おぉー!…す、すごい」ベター
絵里「…」ジーッ
にこ「ん、何?…いま忙しいんだけど」
絵里「ちょっと、これを食べてみてくれる?」
にこ「ようかん?…ありがと」パク
絵里(マスクを取ると…どこかで見たような顔ね。この髪形に、赤いリボン…)
にこ「…おいしい」モグモグ
絵里「そうでしょ。和菓子ってすごいのよ!」ドヤァ
にこ「なんであんたが偉そうなのよ…タダでくれるなら喜んで食べるけど、ようかんって高いでしょ。買うとしたらスーパーで安く売ってる水ようかんくらいね」
絵里「そ、そんな!?」ガーン
にこ「…なによ」
絵里「ちゃんとした和菓子屋さんのようかんは材料の品種や産地にもこだわって選んでるのよ。だから圧倒的に美味しいでしょ?」
にこ「そりゃそうだけど…甘い物を日常的に食べるんだったら、女の子はカロリーとか気にするじゃない。そしたらズッシリ重い和菓子屋のようかんなんてまず選ばないわよ」
絵里「そ、それは…うぅ」ガクッ
絵里(ダメだわ…廃校阻止のためには入学希望者を増やすことが最優先、つまりターゲットは女子中学生。その年頃の女の子は確かにカロリーを気にするでしょうし…何か対策を考えなくちゃ)
にこ「…ま、私は自分の体くらい完璧に管理できる自身があるから、わりと好きな時に好きな物を食べるけどね」ドヤァ
にこ「…って、もういないし…結局何しに来たのよ。絢瀬の奴」
\♪キャナイドゥーアイテーキベービ/
花陽「はぁ…やっぱり素敵♪」キラキラ
凛「でも、あの人たちだって凛たちと同じ高校生でしょ?…わざわざUTXに来たんだから、直接会えばいいにゃ」
花陽「そ、そんなこと…無理だよぉ」
凛「どうして?」 花陽「だ、だって…A-RISEは日本で一番人気があるスクールアイドルなんだよ。…なんていうか、もう住む世界が違う感じ…」
凛「大丈夫にゃ!」ピョーン
花陽「えっ」
凛「凛に秘策があるから、とにかく行ってみようよ♪…さ、かよちん。突撃にゃ!」ギュ
にこ「え?…ちょっ、誰の手をつかんでんのよ。あんたの連れはそっち…どわぁ!?」グイ
凛「ほらほら、早く行っくにゃー♪」グイグイ
にこ「だ、だから私は…こらっ、離しなさい!」ズルズル
花陽「り、凛ちゃん…待ってよぉ!」
\ダレカタスケテー!/
ほのりん「チョットマッテテー」
ドタバタ
凛「あ、あれっ?…かよちんじゃない…誰?」
にこ「だから私は違うって言ってんのに、あんたが無理やり引っ張ってきたんじゃない!」プンプン
凛「ご、ごめんにゃ…でも、あなたもアライさんとかいう人たちに会いたいでしょ?」
にこ「A-RISEよ。A-RISE…会えるなら会いたいけど、そう簡単に会えないわよ。UTXの生徒じゃないと奥へは入れないんだから」
花陽「や、やっと追いついた…」ゼーハー
にこ「せっかく来たけど、もう帰りましょ。遅刻するわよ」
「あら。もう帰っちゃうの?…残念」
にこぱな「!?」
凛「んー。凛も遅刻したら困るけどにゃ」
「そうね…じゃあ、またね」
花陽「う、うそ…」プルプル
にこ「ツバサ!?」
ツバサ「ごきげんよう。スパイごっこか何か?」クス
凛「すっぱくないよ。甘いのを持ってきたにゃ♪」
ツバサ「まあ、差し入れ?ありがとう♪なあに?」
凛「穂むらの和菓子だよー♪」
ツバサ「ふーん。和菓子屋さんの和菓子なんて、一年生なのに渋いチョイスね」
凛「ちょっと高いけど、とっても美味しいにゃ♪」
ツバサ「和菓子って私は普段あまり食べないから、今ひとつ違いがわからないのよね…」 凛「たとえば…このおだんご。ちょっと食べてみてください♪」
ツバサ「ありがとう…いただきます」パク
にこ(この私を差し置いて、ツバサに差し入れの手渡しですって!?)
花陽(ああっ、私も何か持って来ればよかった…)シクシク
ツバサ「柔らかくて、とっても美味しい…まさか、朝早くにお店が開いてるの?」
凛「ううん。昨日買ってきたおだんごです」
ツバサ「ひと晩置いて、この柔らかさ…あんこは甘すぎないし量も多くないのに、こんなに美味しいなんて…」
凛「おだんごはあんこ以外にもいろんな味のがあるけど、全部おいしいですよ♪」
ツバサ「和菓子も侮れないわね…美味しかったわ。ありがとう」
凛「はい。じゃあ凛は、これで…」
ツバサ「待って。…せっかくだから」
パシャ
ツバサ「ありがとう。また来てね♪」ギュ
花陽「あぁ…し、幸せ…♪」ポー
にこ(和菓子か。…使えるわね)
【音ノ木坂・理事長室】
絵里「生徒会としても、学校存続へ向けて活動していこうと思います」
理事長「…」パク
希「入学希望者が定員をうま」
絵里「うま?」
理事長(ウマー♪^8^)モグモグ
希「っていうか、理事長…さっきから何を食べてるんですか?」
理事長「穂むらの最中よ。きぃちゃんがくれたの」パリッ
絵里「もなか…って、チョコもパリパリ、モナカもパリパリ」
のぞえりりじ「森永チョコモナカジャンボ!」
希「…いや、最中っていう和菓子があるん。中身はアイスやなくて、あんこが基本やね」
理事長「そうね。食べてみればわかると思うけど、アイスのモナカとは皮が全然違うわよ」スッ
絵里「はあ。…いただきます」パク
サクサク… 絵里「この独特の生地…何でできてるのかしら?」
理事長「もち米の粉よ。白玉粉とか羽二重粉とか呼ばれている物ね」
絵里「なるほど…そういえば、お餅も焼くと表面がパリッとしますね」
理事長「ええ。この軽くてパリッとした皮が最中の最大の特徴で、魅力でもあるわね」
希「それが唇や口の中にくっついたりして食べにくい感じもするけど…」
理事長「それがまたいいのよ。大福を食べて手や口の周りが粉だらけになったり、みたらし団子を食べて口の周りがベタベタになったりするでしょう?それも一つの贅沢っていうか…」
絵里「もなか…知らなかったです。…でも美味しい」モグモグ
希「エリち」
理事長「ありがとう絢瀬さん。そのおみやげは、ありがたく受け取っておきます」
絵里「いえ、これは理事長にあげる物じゃないです」
のぞりじ「…」
理事長「思いつきで行動しても、簡単に状況は変わりません」
絵里「そうですね。…そんな欲しそうな顔をしてもあげませんよ」
理事長「…」フルフル
希「…理事長?」
理事長「廃校とします!」
のぞえり「えぇ…」
【二年教室】
穂乃果「アイドルだよ!アイd」
海未「いいえ。和菓子です!」
ことほの「えっ」
海未「音ノ木坂の廃校を防ぐために必要なものは、アイドルではなく和菓子だと言っているんです!」ドサ
ことり「これって…何の雑誌?」
海未「都内、そして各地の美味しい和菓子の情報が載っています。もちろん穂むらもありますよ」
ことほの「へー」
穂乃果「でも和菓子で廃校を防ぐなんて…生徒会長さんも言ってたけど、無理だよね?」
海未「なに言ってるんですか。この雑誌に載っているお店の職人たちはプロと同じくらい努力し、真剣にやってきた人たちです!」
ことり「いや、プロだと思うけど…」
穂乃果「ちょ、ちょっと待ってよ。穂むらはまだわかるけど、ほかの和菓子屋さんは音ノ木坂の廃校阻止と何の関係があるっていうの?」 海未「穂むらだって、日本中のあらゆる和菓子を網羅しているわけではないはずです。地方の名物和菓子も参考に、廃校阻止の決め手となる新たな和菓子を作るのです!」
穂乃果「えーと…誰が?」
海未「もちろん穂乃果に決まってるじゃないですか」
穂乃果「えぇ…」
【屋上】
穂乃果「はぁ…やっぱり無理だと思うんだけどな…」
希「…」モグモグ
絵里「希?…こんなところで何」
希「しーっ。静かに…見つかっちゃうやん?」ヒソヒソ
絵里「どうしてコソコソ隠れる必要があるのよ…何を食べてるの?きなこもち?」ヒソヒソ
希「いや、これは信玄餅や」
絵里「し、震源地?」プルプル
希「震源地やなくて信玄餅!活断層やなくてカツサンド!」
穂乃果「…?」
絵里「カツサンドは言ってないし、今は関係ないわよね?」
希「そやね」モグモグ
絵里「それで、きなこもちと信玄餅ってどう違うの?」
ガチャ ギィ…
穂乃果「それは」
のぞえり「あ」
穂乃果「信玄餅は山梨銘菓です。きな粉だけじゃなく、黒蜜もセットになってるんですよ」
絵里「へー」
穂乃果「まあ、信玄餅自体は山梨のあるお店の登録商標になってるから…似た物は山梨だけじゃなく日本中にありますけど、それぞれ名前が違うんです」
希「なるほどなあ…確かに、黒蜜つきのきなこもちって最近よく見かけるね」
絵里「ふーん…知らなかったわ」
希「はい。エリちにもあげるよ」
絵里「ありがと」パク
絵里(おいしい♪)モグモグ 【音楽室】
穂乃果「あなた、和菓子屋さんやってみたいと思わない!?」
真姫「思いません」
穂乃果「うぅ…」ガクッ
真姫「…まあ、食べるのは嫌いじゃないけど」
穂乃果「じゃあ、私ん家に来ない?」
真姫「は?」
【穂むら】
真姫「ふーん。あなた、穂むらの子だったのね」
穂乃果「穂むらは知ってたの?」
真姫「ええ。まあ…古くて有名なお店だし、親とかが時々買ってくるの。ここのお菓子」
穂乃果「そうなんだ…いつもありがとうございます」ペコ
真姫「いや、別に私が買ってるわけじゃ…」
穂乃果「えへへ。まあ、とにかく上がってよ♪」
真姫「お邪魔します」
穂乃果「和菓子は何が一番好き?」
真姫「どうかしら…どれが一番って考えたことないけど。強いて挙げるなら…」
穂乃果「あげるなら?」
真姫「ちまき」
穂乃果「ちまき!?」
真姫「そう。ごはんのちまきじゃなくて、笹だんごみたいな和菓子の方ね」
穂乃果「へー。珍しいなぁ…最近、端午の節句でもあんまり見かけないよね。柏餅ばっかりで」
真姫「柏餅も悪くはないんだけど…私は“ちまき”派ね」
穂乃果「ご、ごめんね。似た物はあるんだけど…ちまきは今ないんだ」
真姫「まあ、ちまきっていうとごはんの方を思い浮かべる人が多そうだし…和菓子屋にあっても気づく人少なそうじゃない?」
穂乃果「そうかも…私もすっかり忘れてたよ」
真姫「まあいいわ。先輩のおすすめを教えてよ」
穂乃果「じゃあ…これなんてどうかな!?」 真姫「どら焼き…に似た生地?」
穂乃果「そう。似てるけどちょっと違う…“あんまき”風に作ってみたんだ♪」
真姫「あんまき?」
穂乃果「知らない?三河名物、大あんまき!」
真姫「ああ、聞いたことはあるかも…」
穂乃果「まあ、うちではどら焼きがメインで、これは商品じゃないんだけどね。私のオリジナル♪」
真姫「先輩が作ってるの?」
穂乃果「お店の商品としては、まだお饅頭揚げたのしか使ってもらえないけど…作るだけなら私だって結構いろいろできるんだよ」
真姫「ふーん…食べていいですか?」
穂乃果「もちろんいいよ。雪穂ー!お茶ー!」
雪穂「はいはい…今お湯沸かしてるよ」
シュシュシュ ピーッ
真姫「おいしい…これならお店に出せるんじゃない?」モグモグ
穂乃果「いやー、お父さんに言わせるとまだまだ全然なってないって。いろいろ挑戦してはお父さんに食べさせてるんだけどね」
真姫「ふーん…充分おいしいのに。プロにしかわからない違いがあるのかしら?」
穂乃果「たぶん…そのへんがお父さんに出す前にわかるようじゃないとダメなのかも」
真姫「大変ね…毎日お菓子食べ放題くらいに考えてたけど」
穂乃果「アハハ…食べるほうは正直ちょっと飽きてきてるけど、やっぱりちゃんとした物を作れるようになりたいな」
真姫「まあ…頑張って。味見くらいなら喜んで引き受けるわよ」
穂乃果「うん。いつでも食べに来てよ♪」
【翌朝・生徒会室】
絵里「何をするつもり?」
穂乃果「ラ」
海未「和菓子です!」
穂乃果「ちょ、ちょっと海未ちゃん!講堂を借りに来たのにどうして和菓子が出てくるの!?」
絵里「そう…いよいよ学校存続のための和菓子作りを始めるのね?」
希「ホンマに和菓子で廃校を阻止できるん?」
穂乃果「い、いやそれはちょっと…難しいと思うんですけど」ヒヤアセ
海未「穂乃果!職人のあなたがそんなことでどうするんですかっ!?」
穂乃果「いや、私はまだ職人ってわけじゃ…普通の人よりはできるけどプロじゃないもん」 ことり「プロの和菓子屋さんなら、私たちはすぐに失格。でも、やりたいって気持ちをもって、自分たちの目標をもって、やってみることはできる♪」
穂乃果「えぇ…ことりちゃんまでそんなことを…二人とも、ホントにやるつもりなの!?」
希「何度やっても、そうしろって言うんや…」バタン←窓開けた
希「最中が…っ」パリッ
ビュォォォ…
希「もなかがウチにそう告げるんや!」
穂乃果「意味がわかりません!><」
【中庭】
海未「生地は厚すぎず、薄すぎず…ふっくらと蒸し上がっている」パク
穂乃果「またお饅頭?お昼前に…太るよ」
海未「そして、中身はつぶあん!柔らかい饅頭の中に小豆の存在感が生きています。味付けも甘すぎず、微かな塩気が甘さを引き立てて…」モグモグ
穂乃果(聞いちゃいない…)
海未「穂乃果。お茶を」
穂乃果「はいはい…」
ヒデコ「お二人さーん!」
穂乃果「あ…ヒデコ、フミコ、ミカ」
ミカ「中庭で仲良くおまんじゅう食べてるなんて、よっぽど和菓子好きなんだね♪」
穂乃果「いや、私は正直あんこは飽きてるんだけど…」
フミコ「でも、掲示板見たよ。五月に講堂で和菓子作りの実演やるんでしょ?」
穂乃果「え。そんなの聞いてないよ!?…まさか、海未ちゃん!?」
【廊下】
穂乃果「もーっ!私はまだやるなんて言ってないのに、どうして宣伝までしちゃうの!?」
海未「私は日時を決めてことりに概要を伝えただけです。ポスターを製作して貼ったのはことりですよ」
穂乃果「それって二人で共謀したってことじゃん!?和菓子・糖準備罪だよ!」プンプン
【二年教室】
ことり「…」カキカキ
ことり「こんなもんかな?」
穂乃果「ことりちゃん?…何を描いてたの?」
ことり「新しい和菓子のデザインを考えてみたんだ♪」
穂乃果「えぇ…」 ことり「これが雪うさぎ饅頭。こっちが雪だるま饅頭だよ。可愛いでしょ?」
穂乃果「ど、どこかで聞いたような…」
海未「なぜ雪なのですか?」
ことり「だって、穂乃果ちゃんは雪穂ちゃん大好きでしょ?雪ってついてたらやる気出してくれるかなって」
穂乃果「いや、それ全然関係ないと思うんだけど…」
海未「このスラッと伸びているものは…」
ことり「これはスキー饅頭。スキーの板の形をしたお饅頭で…」
穂乃果「どうしてその形なのにお饅頭にしようと思ったの?薄すぎてあんこが入らなそう…」
海未「どら焼きのような生地であんこを挟むようにしたらどうですか?」
ことり「いいと思う。私は好きだな♪」
穂乃果(二人で盛り上がっちゃってるよ…ホントに大丈夫かなぁ)トホホ
【廊下】
ことり「これでよし♪」
穂乃果「投票箱?」
ことり「お饅頭ばっかりじゃ不安だから、どんな和菓子がいいかリクエストを募集しようかなって」
海未「なるほど。要望があった物を作るなら人気も出るかもしれませんね」
穂乃果「そこまで和菓子に興味がある人がいるかなぁ…」
キーンコーンカーン…
凛「かーよちん。帰ろ♪」
花陽「うん」
にこ「なに?これ」
花陽「さ、さあ?」
にこ「講堂で和菓子作り?…こんなので人が集まるの?」
花陽「でも、可愛くて美味しそうなイラスト…これ見てたら、和菓子食べたくなりませんか?」
にこ「まあね…あんたたち、時間ある?」
りんぱな「えっ」
にこ「ちょっと今から付き合いなさいよ」 【穂むら】
雪穂「いらっしゃいませ…お姉ちゃん呼びます?」
にこ「私は別にどっちでもいいけど」
雪穂「じゃあ、とりあえず上がってください」
花陽「う、うん。お邪魔します…」
凛「お邪魔しまーす♪」
穂乃果「いらっしゃいませ!…あ」
『いま忙しいんだけど』
『遅刻しちゃうよー?』
『ちょっとだけ待って!』
にこ「…どーも」
花陽「こ、こんにちは…」
凛「こんにちは。また来ました♪」
穂乃果「どんなお菓子をお探しで?」
にこ「何でもいいわ。おすすめとかある?」
穂乃果「んー。今ならやっぱり春限定商品かなぁ?いちご大福に桜餅とか」
花陽「おもち…いいかも。お米だし」
凛「かよちん、お米大好きだもんにゃ」
にこ「米っていうなら、おだんごのほうが米の割合は多いんじゃない?」
穂乃果「じゃあ、お米を使ったものを中心にいろいろ用意しますよ。よかったら試食してください♪」
にこ「ん。よろしく」
花陽「よ、よろしくお願いします…」
凛「楽しみだにゃー♪」ワクワク
雪穂「お茶どうぞ」コト
にこ「ありがと」
凛「ありがとー♪」
花陽「いただきます…」
穂乃果「お米といえば、これもありますよ」
にこ「おはぎ?」
花陽「確か、春に食べるのは牡丹餅っていうんですよね?」
凛「ぼたもちって、棚からぼたもちのぼたもち?」
穂乃果「そうそう、その牡丹餅。まあ、おはぎと同じ物なんだけど…季節によって呼び方が変わるの。春は牡丹餅、秋はおはぎ。夏は夜船、冬は北窓」
にこりんぱな「へー」 穂乃果「牡丹餅は好きですか?」
花陽「は、はい。大好きです♪」
凛「凛も好きだよ♪」
にこ「これもいろんな味があって飽きないわよね」
穂乃果「そうですね。あんこ以外に、きな粉や黒ごまを使ったり…あんこを中に入れて表面に何かをまぶすタイプもあります」
花陽「おだんごもいろいろ…どれも美味しそう♪」
穂乃果「試食はサービスですよ。どんどん食べちゃってください♪」
にこりんぱな「いただきます♪」
花陽「これ、すっごくおいしい!」モグモグ
にこ「同じ米でもいろいろね…」モグモグ
凛「この黄緑色のつぶつぶって何ですかー?」
穂乃果「それは、ずんだ餅。枝豆をつぶして作るあんこ。おだんごにも使うよ」
にこ「枝豆…あれがこんな味になるのね。料理にはいろいろ使うけど、甘いお菓子との組み合わせは初めてだわ…」
花陽「この黒いタレって、ごま…?」
穂乃果「そう。おだんごに使う黒ごまは、こんなふうにペースト状にすることが多いの。おはぎのほうは粉にしてまぶすんだけどね。もちろん、そのタイプのおだんごもできるよ」
にこりんぱな「ごちそうさま」
凛「もうおなかいっぱいにゃー」
にこ「さすがにカロリーが…走って帰ろうかしら」
花陽「お母さんにおみやげ買っていこうかな…」
穂乃果「ありがとうございまーす♪また来てね!」
ピシャ
【翌朝・神田明神】
海未「和菓子の歴史は古く、平安時代に神前に奉納したのが始まりだったといわれているんです」
ことり「へー。じゃあ…」 【1169年前】
雪穂「かし?…ご神木の樫の木を伐っちゃうの?」
穂乃果「いいえ。甘味をもつ木の実などを集めて、私たちは菓子と呼んでいるのです」
雪穂「それを食べると病が治る?」
穂乃果「わかりません。…でも、美味しい物は人を笑顔にします。もし神様が機嫌を損ねて流行り病が起こるのならば、神様にも菓子を召し上がっていただけば、きっと…」
雪穂「ふーん…菓子なるものを神前に供えよってわけね」
穂乃果「はい。そのためにご用意しました」
雪穂「そこまで旨き物なら私も食べたいんだけど」
穂乃果「日の出とともに神様にお供えして、その日が落ちればお召し上がりください」
雪穂「帝の私に残り物を食べろと?」
穂乃果「余り物は、甘い利と申します。果物は熟すほど美味しさを増すのです」
雪穂(神前に菓子を供えるようになると、不思議と疫病はおさまり、田畑も豊作が続いた)
雪穂「そなた、名は何と申す?」
穂乃果「名もなき巫女です。何とでもお呼びください」
雪穂「では、豊作に感謝し、菓子の功績を讃え…穂の菓。穂乃果と名乗るがよい」
穂乃果「私は、そのような名を賜る身分では…」
雪穂「でも、帝の妻になる者には名が必要でしょ?」
穂乃果「え!?」
雪穂「ふふふ。余り物になる前に、お姉ちゃんは私がもらうよ♪」
穂乃果「…雪穂///」 【再び今年】
穂乃果「それが和菓子の始まりで、帝と巫女の子孫が私たちなんだよね」
ことり「本当かなぁ…」
希「スピリチュアルな場所やからね」
穂乃果「副会長さん。これ、お願いします」
希「ん。いつもありがと」
海未「それは…お供えのお菓子ですか?」
穂乃果「そうだよ。中身は“きんつば”」
ことり「きんつば…って、どんなのだっけ?」
穂乃果「つぶあんを固めたようかんみたいなものに上新粉の薄い衣をつけて焼くの。ようかんより固めの仕上がりが特徴」
希「好みが分かれるところやな。ウチはやっぱりおだんごとか柔らかいのが好きやし」
海未「饅頭にも蒸した柔らかい饅頭と、やや固めの焼き饅頭がありますね」
穂乃果「そうだね。地方のおみやげ屋さんに行ったりすると大きな焼き饅頭をよく見かけたけど…今もあるのかな?」
希「お参りくらいしてき」
海未「和菓子がうまくできますように」
ことり「うまくできますように…」
穂乃果(でも作るのは私なんだよね…)
【高坂家】
穂乃果「そういえば…ねえ、雪穂」
雪穂「なに?お姉ちゃん」
穂乃果「あのときお供えしたお菓子って結局あとで食べたの?」
雪穂「食べたよ。美味しかった。だから今でもお菓子好きなんだよね」
穂乃果「でも、当時の菓子って果物とかでしょ?…今とは全然違うと思うけど…」
雪穂「そういう問題じゃなくてさ…お姉ちゃんが頑張って集めてきた物でしょ。今だって、お姉ちゃんが作ってくれる和菓子が好きだし」
穂乃果「…ふーん///」
雪穂「だから、お姉ちゃんもあのときみたいに私の嫁になるべきだと思うんだけど」
穂乃果「い、いや今は姉妹だし。家族だからもともと一緒に暮らしてるじゃん」
雪穂「そうだよ。お姉ちゃんは誰にも、神様にだってあげないからね♪」ギュ
穂乃果「雪穂///」 【五月】
海未「こんなはずでは…」
ことり「穂乃果ちゃん…」
穂乃果「うーん。だいたいいつものメンバーって感じ?」
花陽「おいしい♪」モグモグ
凛「確かに和菓子はおいしいけどにゃ」
にこ「アピールするにはちょっと地味よね」
真姫「見た目はきれいだし、写真撮っておきましょ」パシャ
絵里「どうするつもり?」
希(そもそもエリちが言い出したんやなかったっけ…)
穂乃果「いつか必ず…みんなを満腹にしてみせます!」
凛「もうおなかいっぱいにゃー」 【六月】
海未「私たちは和菓子研究部…」
穂乃果「雨でも活動できるよ!」
ことり「まあ、外で和菓子作るわけじゃないし…」
にこ「和菓子屋だって笑顔は必要でしょ。はい、にっこにっこにー!」
真姫「私、無理」
凛「新しい和菓子を作るにゃ。副会長さんから借りてきたよ!」
花陽「な、何を借りてきたの?」
凛「たい焼きの型!」バーン
にこ「たい焼きって…和菓子なの?」
ことり「さあ…?」
凛「これなら凛でもお魚が食べられるにゃ♪」
花陽「形が魚っぽいだけだけど…」
穂乃果「じゃあ、米粉を使った生地にしてみようか。より和菓子っぽくなるように」
絵里「和菓子で本当に廃校を阻止できるのか、まだわからないけど…」
希「ウチらが卒業するときには、和菓子への感謝を歌ってお別れできるといいね」
にこ「それって“仰げば尊し?”」
希「そう。和菓子の恩♪」
おわり ※関連スレ(ほのりん)
穂乃果「音ノ木坂に入ってくれたら和菓子サービスしちゃうよ♪」凛「どうしよっかなー?」
http://karma.2ch.net/test/read.cgi/lovelive/1470312612/ おつおつ
和菓子の知識とか全くないから勉強になった 乙です
毎度、ただの知識のひけらかしじゃなくてちゃんと読み手が楽しめるようになっててすごいと思う
次も期待してます ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています