タッチ操作は使いにくかった? 米海軍が駆逐艦の操作を“アナログ”に戻す決断の教訓

米海軍が駆逐艦のタッチスクリーン操作を撤廃し、昔ながらの物理的なスロットル操作に戻すことを発表した。
海軍全体で過剰なデジタル化に対するフラストレーションが蓄積し、現場でも習熟が進まなかったことなどが原因だ。
こうした動きからは、人間と機械とのインターフェースに共通する課題と教訓が浮き彫りになってくる。

駆逐艦の制御にタッチスクリーンを導入していた米海軍が、昔ながらの物理的なスロットル操作に戻すことを決断した。

米海軍海洋システム司令部が8月9日に発表した今回の決定は、駆逐艦を操縦する船員らがタッチスクリーン式の
統合船橋・航海システムを十分に理解していなかったという調査結果に基づいている。この調査は米艦隊総軍と
国家運輸安全委員会(NTSB)によるもので、2017年に発生したミサイル駆逐艦「ジョン・S・マケイン」と貨物船との
衝突事故の一因が、統合システムの欠陥と誤った使用によるものであることが示されている。

米海軍協会ニュース「USNI News」の記事によると、タッチスクリーン式のシステムを物理的なスロットルに戻すには、18〜24カ月かかるという。


指摘されていたインターフェースの欠陥

一連のタッチスクリーンに起因する問題は、設計、テスト、訓練の3つが不十分という最悪の三拍子が揃ったことで発生したとみられている。
17年の駆逐艦による事故後に数カ月かけて実施された米艦隊総軍の調査によると、船の操舵システムが改良されたばかりにもかかわらず、
見張りに立った船員らが使用法の訓練をきちんと受けていなかったことが明らかになっている。

さらに調査によると、タッチスクリーン上で設定される制御や配色も「安全を重視すべき制御盤に関する業界のベストプラクティスに
反していた」という。実際に操舵システムを使用していた乗組員たちがタッチスクリーンを利用せず、バックアップとして用意されていた
トラックボールとボタンで操作することがあったことも明らかになっている。

国家運輸安全委員会の報告書でも、同じようにインターフェースの欠陥が指摘されている。さらにシステムのバックアップ用に用意されていた
マニュアルモードについても問題があったことを強調していた。司令官のなかには、ドックへの出入りの際にマニュアル操作を積極的に利用する
者もいたという。また、システムがマニュアルモードでコンピューターによる支援機能も併用していた際に、ほかの持ち場の後方にいる船員らが
意図せず一方的に操舵の制御を引き継ぐことができていたことも、安全調査官の調査で明らかになっている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190830-00010003-wired-sci