【小説】日向坂46メンバーの物語【フィクション】

2020/12/12(土) 17:28:26.09

基本的には日向坂メンバーを主人公とする物語を書いていく予定です。
ただし、これまでも乃木坂46や欅坂46のメンバーを主人公とした物語を書いてきたし、今後も日向坂メンバーだけだと煮詰まると思うので、乃木坂や櫻坂のメンバーも対象となるかもしれまぜん。

2021/01/25(月) 23:31:14.77

川にまつわる三つの授業（その31）
「その自閉症ナントカの人が役に立ってきたという具体例はあるんでしょうか？」と陽菜が訊く。
「人間が誕生したときから自閉症スペクトラム症の人はいたでしょうね。
それが淘汰されていないというのはきっと何らかの意味があると言われています」
「どんな？どんな？」とひよりは訊く。
「たとえば、まだ人間が小さな集団のムラ社会で、天変地異とかでその地で食べ物が不足して、飢饉になりそうなときでも、
多くの人は重い腰を上げなかったが、何の躊躇もなく未開の地に足を延ばし、
そこが安全な地で、なおかつ、食料がありふれているという報告をして、全滅からのピンチを回避するのに貢献できた人がいた。
それが自閉症スペクトラム症の人ではなかったかとも言われています」
「不利な特性に見えても、別の面から光を当てれば、有利に働くこともあるということですね」と菜緒は言う。
「そういうことですね。ただ、私自身は克服しているつもりですが、生きていくのに苦労している人もたくさんいると思います。
自閉症スペクトラムの人に限らず、何らかの障害を抱えている人に偏見は持たないでくださいね。
また、非科学的というだけでなく、差別を助長するようなカルト宗教団体とは絶対に関わらないようにしてください。
そして、あなたがたの個人情報をやたらと詳しく知っていたときには、ウラでリサーチしているという可能性をまず疑ってみてください。
では、今日の授業はここまでです」
一同は立ち上がり、「ありがとうございました」と頭を深々と下げる。（続く）

2021/01/28(木) 22:45:28.66

川にまつわる三つの授業（その32）
三クラス目

教室の中には、宮田愛萌、松田好花、富田鈴花の三人がいて、倫理の授業を受けている。
ソレイユ先生は講義を始めた。
「今日は、ある寓話をお話します。
一匹のサソリが大河を前にして立ち往生していました。サソリは河を渡りたいのですが、泳げないのです。
そこにカエルが現れました。サソリはカエルに『向こう岸まで背中に乗せて運んでくれへんか？』と懇願しました。
カエルは『はあ？オマエは俺を刺すつもりだろ』と答えましたが、
サソリは『アンタを刺したら俺も溺れて死んでしまやないかい。そんアホなことするがわけあらへんがな』と説得にかかりました。
『それもそうだな』とカエルは納得し、サソリを背負って河を渡りました。
大河の半分ぐらいに差し掛かったところ、カエルは突然、背中に鋭い痛みを感じました。
サソリはカエルを毒針で刺してしまったんですね。
『どうして刺した！オマエも死ぬことになるんだぞ』とカエルが叫ぶと、
『わかっとるわい。けどやめられへんのや。それが俺の性（サガ）や』とサソリは言いました。
この不合理な寓話を聞いて思うことを忌憚なく語ってください」
「先生、悪いことをしたサソリのほうだけがどうして関西弁なのですか？気分悪いです」と好花は立腹する。
「申し訳ないです。片方に方言を使わせたら、頭の中に描写されやすいと思っただけです。他意はありません」（続く）

2021/01/30(土) 22:17:57.33

川にまつわる三つの授業（その33）
「あの、私じゃなくて、別のアイドルのコなんですけど、5CHが気になって、どうしても閲覧してしまうと言うんです。
これもサガなんでしょうか？」と鈴花がおそるおそる話し出す。
「それはまさしくサガでしょう。ただし、不合理とは言えないかもしれませんね」とソレイユ先生は返す。
「え？でも、5CHって必ず何かしらの悪口が描かれていますよね。
自分のことについて99個の誉め言葉があっても、たった1個の悪口のほうがダメージが大きく、必ず気分を害します。
それでも閲覧するのをやめられないというのなら、それは不合理じゃないんですか？」と好花は疑問を投げかける。
「もっともな疑問です。でも、5CHを閲覧するのはアイドル、もっと一般化すれば、人気商売の合理的な態度だと思います」
「え？そういうことになるんですか？」と好花は再び尋ねる。
「思いもよらないほうに話が行ってしまったので、そのための準備はしていませんでした。しばしの間、考えさせてください」
数十秒間考えてからソレイユ先生は話し始める。
「アイドル人気というのは生物進化とには共通点があるように思います」
「なんか面白そうな切り口ですが、先生の意図される先が見えないです。ぜひお考えをお伺いしたいです」と愛萌は言う。（続く）

2021/01/30(土) 22:18:24.16

川にまつわる三つの授業（その34）
「共通点のキーワードは、まさにその『先が見えない』ということです。換言すれば偶然と変化です。
まず、生物のほうからお話します。Natural Selectionという考え方があります。
日本語に訳せば、『自然淘汰』あるいは『自然選択』となりますが、
『自然淘汰』と言うと滅ぶ側のほうにスポットを当てたようなニュアンスとなるので、『自然選択』と言ったほうがいいしょう。
分かりやすいように、極端な例からお話しますね。ウンカを例にします」
「ウンカってなんなんですか？」と愛萌は訊く。
「米につく害虫ですが、ご存知ないですか？じゃあ、ゴキブリを例にしますね」
「うわっ、イヤだ」と鈴花は囁くが、ソレイユ先生には聞こえなかったようだ。
「ゴキブリを駆除しようとして、効果的な薬品が開発されて、餌に混ぜて駆除しようとしたとします。
ただし、それはゴキブリ一般にはよく効くのですが、ゴキブリにも個体差があるので、
その薬品の臭い・味を嫌って摂取しないものや摂取しても死なないものもいます。
大多数のゴキブリが死んでも、生き残った少数のゴキブリだけで交配を繰り返せば、競争相手が少ないので、その子孫が爆発的に増えます。
薬品をより避けるものや薬品により強い耐性を持つスーパー・ゴキブリがはびこることとなります。
しかも新しい薬品が開発されるまでは処置の施しようがないので、前よりも悪い事態を招いてしまうということになるんですね」（続く）

2021/01/31(日) 22:00:45.15

川にまつわる三つの授業（その35）
「嫌っ！」と鈴花は悲鳴を上げる。
「どうかしましたか？」
「私、ドアの前にゴキブリがいたため、30分間ほどフリーズしたくらいゴキブリが嫌いなんですよ」と鈴花は泣きだす。
「すみません、ゴキブリはダメでしたか。どうも申し訳ありません」
「こちらのほうこそ取り乱してこちらのほうこそすみません。どうぞお話を続けてください」と鈴花はしんみりと言う。
「では、ウンカに置き換えてください。餌に薬品を混ぜるか、農薬を散布するかの違いはありますが。
あるいは、新型コロナウィルスの例だとタイムリーですかね。
ウィルスが生物かどうかは微妙な問題ですが、自然選択が働くということでは生物と同じです。
外国ではすでにワクチン接種が始まっているところもありますが、
イギリス型の変異株については、変異前のものと同様に、ワクチンの効果はあると期待されています。
しかし、南アフリカ型とブラジル型の変異株は、『免疫逃避』と呼ばれるものではないかと言われています。
つまり、人の免疫から逃れるように変異したものだという可能性が高いというわけなんですね。
ワクチンというのは、基本的には特定のウィルスに対する免疫力をアップさせるためのものです。
従来の新型コロナウィルスに効果があるようにつくられたワクチンでは免疫逃避変異の新型コロナウィルスには効き目はありません。
今のワクチンで従来の新型コロナウィルスをほとんど終息させたとしても、競合相手がいなくなった間隙を縫って、
南アフリカ型とブラジル型の変異株が爆発的に広がるという事態を招くかもしれません。
そうなったら、新たなワクチンが開発されるまでは、長い間、手の施しようがないという最悪の事態も考えられます」（続く）

2021/02/02(火) 23:40:58.81

川にまつわる三つの授業（その36）
「うわ～、イヤだ。また東京ドーム公演が延期になっちゃうよ」と鈴花は再び泣き出す。
「先生、もう少し明るく楽しい例にしてください！」と好花は咎める。
「たびたびすみません。不快な例でしたが、とにかく、生物がはびこるか絶滅するかは取り巻く環境と深い関りがあります。
その環境にうまくフィットしたものだけが生き残るということが自然選択なんですね。
先ほどの例は一つの種の中での個体差による違いでしたが、別種間での違いということになると環境の影響はより顕著となります。
そして、人間がつくり上げた小賢しい環境より自然による環境のほうが比べ物にならないくらい複雑怪奇です。
だから、どういう生態でどういう遺伝子を持っているから今に至って生存できているのか、あるいはこれから生存できるのかということは、
ある程度までは解き明かすことができますが、最先端のゲノム解析技術を使っても明確には示せないでしょう」
「つまり、どの種が適していてどの種が衰退していくのかがはっきりと先を見通すことはできないのですね。
生存競争に勝ち残った種は勝ち残るべくして勝ち残ったというよりは単なる偶然ということになるわけですか」と愛萌は言う。（続く）

2021/02/02(火) 23:41:21.33

川にまつわる三つの授業（その37）
「そういうことです。そして、いま興隆をきわめている種でも環境が変化すれば衰退することになることもあります。
先ほどのゴキブリとコロナウィルスの例は人間の手による変化ですが、自然による変化はヴァリエーションに富んでいます。
巨大隕石が落ちて殆どの恐竜を一瞬で絶滅させたように、おそろしく広範囲で急進的なものもあれば、
気候変動とかのように、何百年、何千年もかけてゆっくり変化するものもあります。
どういう変化であっても自然選択は働きます。
その間隙をぬって一つの種の中で進化していった個体が何代も経て新しい種となったり、
恐竜が絶滅したときのように、哺乳類のような全く別の種が取って代わったりしますが、それらもすべて偶然です」
「なんとなく先生の仰りたいことが見えてきました。
アイドルの人気というのも偶然の産物というわけですね。でも、極論のような気もします。
少なくとも自然選択なるものよりは明確な指標があると思います」と好花は反論する。（続く）

2021/02/04(木) 22:41:38.04

川にまつわる三つの授業（その38）
「たしかに自然選択の場合と比べたら、アイドル人気には指標はあるように思われるかもしれませんね。
真っ先に思いつくのはルックスですね。ただ、アイドルとなっていること自体がすでに選別されているんですよ。
日向坂のような一流アイドルなら、そのメンバーは90点を超えている人ばかりです。だから、その差を見出すのは難しい」
「でも、ファンの人たちってルックスをかなり気にかけているように思えますが」と鈴花は言う。
「その通りです。その点をピックアップしたかったのです。
差を見出すのは難しいといったのはあなたがた側の論理で、ファンの人たちの論理ではありません。
そこには複雑な問題が絡んでいると思っています」
「どういうことですか？」と愛萌は訊く。
「美の基準というのは人によってまちまちですが、そういうものが漠然とは存在するとします。
ファンの人たちというのは90点超えでも満足しないんですよ。
90点台の差をルーペで拡大したようにして判断するんですよ。
91点と95点の差にこだわってしまう」
「大学は共学である私の経験から言えば、男性一般が女性のルックスにとてもこだわるのはたしかです。
でも、それは、たとえば90点と60点の女性を比べたときです。
91点と95点ならそんなものは一緒じゃないですか」と愛萌は抗弁する。（続く）

2021/02/04(木) 22:42:04.36

川にまつわる三つの授業（その39）
「もし自分のリアルな彼女にするのなら、91点でも、95点でも、そんなもの誤差範囲です。
だから、その程度の差なら、別の要因のほうが断然強く働きます。
ところが、アイドルに対してなら、理想や非日常を求めるわけですから、彼らにとってはその差は見過ごせない。
メンバー全員のルックスが90点以上というフレームが確率しているのなら、
91点と95点の違いではなく、その局所的な差が拡大して、1点と5点の違いに見え、5倍の開きがあるように見えるんですよ。
テレビのニュースとかで見かける棒グラフで、棒に切れ込みがあるものをよく見かけるでしょう。
一番下が切れていて、そのすぐ上に1000人の数字があり、1100人と1500人とで5倍の差がついているように映りますよね。あれと同じです」
「うわっ、そんなシビアな競争に私たちは晒されているんですか！あ～あ、なんか暗澹たる気持ちになりますね」と鈴花は声を上げる。
「美の基準というのが存在するとしても漠然であると先ほど私は言いました。主観がかなり入りますからね。
だから、91点や95点であるというレッテルが貼られていたとしても、本当はどちらが上なのかなんてあなたがたは判断できないでしょう。
しかし、その判断できないものに対してファンの人たちは神経質になるんですよ」（続く）

2021/02/07(日) 19:09:44.78

川にまつわる三つの授業（その40）
「なんかパラドキシカルな物言いで、強引に言いくるめられたような気もしますが、それはいいとします。
でも、リアルな彼女を求めるときよりも、アイドルを求めるときのほうがファンの人たちはルックスに対してシビアだとしても、
それ以外の要素もあると思いますが」と好花は再び反論する。
「そう思います。ルックスの次に大きいのは性格でしょうね。
ただ、それは明確な指標とはなりにくいですよね。
あまりにも千差万別の上に、陽キャラに対する陰キャラ、ノーマルに対する変人という具合に、
正反対方向のベクトルのどちらでもプラスにもマイナスに働きます」
「変人キャラなんて好むファンはいるんですか？」と鈴花は訊く。
「たとえば、乃木坂の林瑠奈さんとか櫻坂の増本綺羅さんなんかは変人であることがプラスに働いて人気が出てきているような気もします。
もっとも、同じ変人でも種類が違いますね。おそらく林さんのほうは計算で、増本さんのほうは天然ですね。
日向坂の元メンバーの井口眞緒さんも変人キャラでしたが、彼女に関しては、そのことで残念ながら人気を落としたように思います。
私はあのキャラが大好きで、彼女が出演しているだけで楽しませてもらいましたが。
変人キャラひとつとってもとても複雑で指標化できるようなものじゃないでしょう」（続く）

2021/02/07(日) 19:10:21.99

川にまつわる三つの授業（その41）
「ダンス技術や歌唱力とかなら明確な指標となると思いますがが」と好花は食い下がる。
「たしかにその巧拙は明確でしょうね。ただ、アイドルヲタクの人気を獲得するということでは、そういうものは弱いんですよね。
そして、ルックス、性格、ダンス、歌唱力、それ以外の要素も複雑に絡み合って、トータルでの指標化は無理でしょう」
「ファンの人たち側の気質とかを整理することで、指標化はできないのですか？」と愛萌は訊く。
「それも難しいと思います。
彼らのライフヒストリーやアイデンティティやセクシャリティとかが複雑に絡み合っているわけですから」
「アイデンティティやセクシャリティによっての判断というのは分かります。
でも、ライフヒストリーによる判断ってどういうことですか？
私たちを評価するときに、ファンの人たちが歩んできた人生がどのように反映されるのかというのがさっぱり分かりません？」と好花は尋ねる。
「たとえば、理由もよく分からずに仕事とかで干された経験のある人は、グループの中で干されていると思うメンバーに肩入れしたくなるし、
やたら優遇されていると理由もなく嫌いになるとかですね」
「先生、今のお話、先生ご自身の体験でしかないようなエッジが現れていますね」
ソレイユ先生の顔色が変わったのを好花は見逃さなかったが、それ以上の追求はしない。
「アイドル人気と生物進化とが『偶然』という共通点があることは分かりました。
でも、アイドルが5CHを閲覧したくなるということとそのこととなにか関係あるのですか？」と愛萌は訊く。（続く）

2021/02/09(火) 15:03:54.75

ふむ

2021/02/10(水) 22:38:02.45

川にまつわる三つの授業（その42）
「明確な指標はあるのではないのかという好花さんの指摘に私は同意しませんでした。
でも、グループ間でもそうですし、一つのグループの中でのメンバー間でもそうですが、人気かどうかというのは現実に存在します。
そうであるなら、隠れたパラメータがあるというのは間違いないでしょう。
問題なのはそのパラメータを自力で見出すのはほぼ不可能で、しかも常にそのパラメータは変化しているということです」
「えっ!?それを探るためには5CHの閲覧をするということなのですか？」と好花は鼻白む。
「他の手立てはないんじゃないでしょうか。公的なマスメディアでは提灯記事しか載せてくれません。
しかも、記事の対象となるメンバーにあまり興味を持っていない担当が上っ面のことしか書いていないというのは多いでしょう。
それに対して、匿名掲示板というのは本音の場です。
しかも、板ごとやスレッドごとにゾーニングされているので、必ずそのグループやメンバーに興味を持っている人しか訪れません。
ディープに興味を持っている人の生の声をありのままに聞くことができるということでは貴重です」（続く）

2021/02/10(水) 22:38:35.98

川にまつわる三つの授業（その43）
「でも、5CHって常軌を逸した人も数多くいますよね。ああいう人たちも数多く住み着いていること自体が異常な場ですよ」と鈴花は言う。
「鈴花さんの言うことはよく分かります。
ですが、キチ・・・・、常軌を逸した人であっても、あなた方に興味を持っているのは間違いありません。
当たり障りのない意見よりは参考となることもあるのではないでしょうか。
それに、真っ当な文化というのは元来5CHのようなものなんですよ。
低俗なものも高尚なものの雑然として含まれているからこそ真っ当なんですよ」
「でも、先生の理屈だと、隠れたパラメータというものが5CHのフィルターを通すことで明確な指標になるということですね？
一方で、5CHが雑然としているとも先生は仰った。
そんな雑然としたものが、明確な指標にするためのフィルターになるというのは矛盾していませんか？」と好花はさらに反論する。
「いえ、5CHから明確な指標が見つけられると言っているのではありません。
サーカスの綱渡り師は徒手空拳ではバランスを取ることが難しいので、長い棒を持ちます。
それと同じような役割にはなるということです。
5CHというのは欠陥だらけの歪な棒ですが、他に棒がなければ、ないよりはましです。
5CHを閲覧するということがベストであると言っているのではなく、セカンド・ワーストにはなるということなんですよ」（続く）

2021/02/13(土) 16:49:22.60

川にまつわる三つの授業（その44）
「でも、5CHを閲覧しているアイドルってどのくらいいるんですか？」と鈴花は訊く。
「ほぼ全員だと私は思っています」
「え!?本当ですか？」と好花は驚く。
「あくまで私の想像にすぎません。
ただ、あなた方の先輩坂道グループの乃木坂のテレビ番組「NOGIBINGO!」の第一シリーズで暴露がありました。
もちろん、暴露といっても人を貶めるようなものではなく、番組を面白おかしくするためのものですが。
当時は5CHではなく2CHでしたが、面倒なので名称を5CHに統一してお話します。
後ろを通り過ぎた瞬間に橋本奈々未さんが携帯で5CHを見ていたといったようなことを伊藤万理華さんが晒しました」
「橋本奈々未さんといえば坂道のレジェンドですよね」と愛萌は言う。
「伊藤万理華さんも、長濱ねるさんがアイドルになろうというモチベを与えてくれた人ですね。
もしかすれば万理華さんがいなかったら日向坂は存在しなかったかもしれないと思うとその名前を聞くだけで感慨深いですね」と好花も言う。
「橋本さんは見ていないと最初は否定していましたが、万理華さんのしつこい追及に根負けして、半ば認めましたが。反撃を食らわせましたね」
「どんな反撃ですか？」と鈴花は訊く。（続く）

2021/02/13(土) 16:49:59.47

川にまつわる三つの授業（その45）
「『なんで、通りすぎた瞬間にチラ見しただけで5CHだと分かったの？』と言いました。
つまり、携帯画面をチラ見しただけで5CHと分かるのなら、アンタのほうこそ5CHのヘビー・ウォッチャーじゃないのか!?と一矢を報いたわけですね。
その辺りが橋本さんの賢いところですね。5CHを閲覧しているという心証を自分から万理華さんのほうへ咄嗟に流したんですね。
逆襲を浴びた万理華さんが苦笑いをしていると、中田花奈さんによる追撃もありました。
『私は怖くて5CHは見ていないけど、自分を知るために見たほうがいいと万理華は言っていた』といったようなことを。
その中田さんも、その数年後、ラジオの中で、アルコ&ピースの平子さんから、『お前、まとめサイト、見てんだろ』と問いかけられて、
『まとめサイトは一切見てないけど、その元となったものはよく見ている』と平然と返していましたね。
つまり、5CHを常習的に閲覧していると堂々とカミングアウトしたというわけです。
公的なメディアでの暴露やカミングアウトは他にもありましたが、切りがないのでその辺にしておきます。
その他のアイドルさんも同じように閲覧しているけど、カミングアウトしていないだけと私は睨んでます」（続く）

2021/02/17(水) 22:04:29.11

川にまつわる三つの授業（その46）
「話をちょっとだけ戻しますが、アイドルとかの人気がどう転ぶかがはっきりとは分からないなら、
芸能事務所は発掘や売り出しとかの戦略に苦労しますよね」と愛萌は言う。
「円満ではない独立や移籍をしたタレントさんに対し、メディア出演をさせないという威圧を元の事務所側がかけることがよくあります。
そういう悪しき慣例がまかり通るのは、愛萌さんが今言ったことと関係あると私は思っています」
「どういうことですか？」と愛萌は訊く。
「日本中の誰もが知っているほどの圧倒的な人気でしたが、突然、表舞台から消えた芸能人として能年玲奈さんがいますね。
元の事務所が強烈な圧力をかけて、テレビの出演などを妨害したということに間違いないでしょう。
しかも、元の事務所時代に有名になったとして、彼女は実名である『能年玲奈』を使えず、『のん』という芸名で細々と活動しています。
去ったタレントに対する制裁であるだけでなく、いま所属しているタレントへの抑止力とするためですね」
「今の時代にそんな旧弊なことがまかり通っているのはとても嘆かわしいことですね」と愛萌は言う。（続く）」

2021/02/17(水) 22:05:04.73

川にまつわる三つの授業（その47）
「私も個人的にも強い憤りを感じます。
ただ、盗人にも三分の理と言いますが、その元事務所側にもちょっとだけは共感するところもあるんですね。
偶然の要素があまりにも強すぎて、先を見通せないので、芸能人が成功するかどうかはデビューさせてみないと分からない。
だから、芸能事務所は試行錯誤を繰り返すしかない。
とすると、その事務所がかけたコストは能年玲奈さん一人を売り出したことだけじゃないんですね。
一人の能年玲奈さんが芸能界で成功した裏では、おそらく何十人もの芽が出なかった人たちがいて、
その人たちにもコストを事務所はかけていたとすれば、それらのコストを回収できる人がようやく育ったと思ったとき、
移籍するなんてとんでもないということにはなるわけです」
「でも、吉本興業の芸人さんなんかは、最近は、少なくとも表面上は波風立たせずに独立していますよね」と鈴花は言う。
「闇営業問題の後処理で、吉本興業側が所属芸人さんを恫喝し、強権を発動したことで、世間の批判にさらされたことがありましたね。
それと、ジャニーズ事務所を去ったSMAPの三人がメディアに出られないという訴えに対して、
旧態依然とした悪弊は公序良俗に違反すると公正取引委員会が元事務所側に注意をしたこともありましたね。
そんなことがあって、昔よりは芸能人の人権を守ることが是正されています。
でも、どうですかね、メジャーとなってから十年以上経っている芸能人に対しては独立が許されても、
デビューから数年での独立が許されるという風潮がまかり通るということには私は懐疑的ですね」（続く）

2021/02/17(水) 22:05:56.20

川にまつわる三つの授業（その48）
「5CHを閲覧するのがサガということになるとしても、自分の戦略のため役立てるのなら、
不合理とは言えないということにはなるというのが先生の判断ということですね。一応は同意します。
ただ、サソリの寓話を聞いたとき、鈴花が提起したことと違うことを私は思いました。
サソリの話は、5CHとかで罵詈雑言を浴びせる人たちのほうがふさわしいと思います。
先生も仰ったように、日向坂板を閲覧するというのなら、曲がりなりにもファンということになります。
まともなファンの人たちと同様に、彼らもまた日向坂のメンバーに依存していると思います。
なのに、彼らは5CHになぜ悪口を連ねるのでしょうか？
しかもバッシングというよりはパッシング、つまり叩くというよりは粉砕するくらいの勢いで執拗に繰り返します。
パッシングしている人は、日向坂がなくなったら、生きがいまで失う人もいるでしょう。
彼らのほうこそ、依存していたものを消滅させるという愚かなことをするサソリにそっくりです。
それこそサガ、しかも馬鹿げたサガじゃないのですか！なぜ、彼らはそんなことをするのですか？」と好花は訊く。（続く）

2021/02/19(金) 23:52:15.22

川にまつわる三つの授業（その49）
「そこにも一筋縄ではいかないような複雑な要因が絡み合っていると思います。
まずは、やたらと見当違いのクレームをつけるというる病を患っている人というのはどの場所でもどの時代でもいるのかもしれませんね」
「昔はネットも5CHもなかったわけでしょ。だったら、そういう人たちのクレームの行き先というのはなかったんじゃないのですか？」と鈴花は訊く。
「いや、ありましたよ。テレビ局や新聞社や雑誌社に投書や電凸するというのは今でもあるでしょう」
「でも、さらに昔にはそういったものもなかったわけでしょ？」と鈴花は再び訊く。
「『出るとこに出てやる』とよく耳にする罵倒の言葉で、その『出るとこ』というのは裁判所や警察のことですよ。
マスメディアがなかったときでも、そういう公的機関はあり、それらを通して場違いなクレームをつける人も今でもいるでしょう」
「そういったもので最も古い記録はどの時代まで遡るものなんでしょうかね？」と愛萌は訊く。（続く）

2021/02/22(月) 14:17:50.60

続けて

2021/02/23(火) 17:02:50.85

川にまつわる三つの授業（その50）
「私は古典の方面にはあまり造詣がないのでよくわかりません。
ただ、私が知る限りの古いものでは、泉鏡花の『眉かくしの霊』の中にもあります。書かれたのは大正13年、西暦では1924年です。
鏡花らしい幻想的で耽美的な物語ですが、そういう作品でも末端のディテールをリアリティに結びつけているのが一流の所以です。
だから、これから読む箇所で、吝嗇で傲慢な代官婆という登場人物の描写は、大正時代の現実を反映していると思います。
『貴客（きかく）』というのは、お客さんを呼ぶときの敬称です」
そう言いながら、ソレイユ先生は本を取り出して読む。
「癖より病で――あるもの知りの方に承りましたのでは、訴訟狂とか申すんだそうで、
葱が枯れたと言っては村役場だ、小児が睨んだと言えば交番だ。
派出所だ裁判だと、何でも上沙汰にさえ持ち出せば、我に理があると、それ貴客、代官婆だけに思い込んでおりますのでございます」
「うわっ、メンタリティーは5CHで文句付けている人とほとんど同じですね」と鈴花は言う。
「なるほど大正時代にはすでにそんな人はいたんですね」と愛萌も言う。（続く）

2021/02/23(火) 17:03:14.01

川にまつわる三つの授業（その51）
「愛萌さん、いつか機会があったら、江戸時代以前の記録もすべて調べつくして、
『クレーマーの発生とその変遷』とかいうタイトルにした本を書いたらどうですか？」
「まったく考えてもいなかったので、急にそんなことを言われても返事に窮します」と愛萌は苦笑する。
「クレームを自制することができない人が昔からいたのはよく分かりました。
でも、自身が依存しているものまで破壊しようとする衝動まで登り詰めるものなんですか？」と好花は訊く。
「もちろん他の要因もあると思います。過剰な承認欲求とかハビトゥスの優位性の押し付けとか。
まあ、承認欲求は必ずしも悪いとは言えませんね。他者から認めてもらうことで人は成長するものですから。
ただ、リアルの場では誰も認めてくれない場合、5CHのような匿名掲示板の中でそれを求めようとするのでしょう。
そういう承認欲求が異常なまでに肥大し臨界点に達したとき、メンバーにまで酷い中傷をするという暴走が起こるのかもしれませんね」（続く）

2021/02/23(火) 17:03:39.59

川にまつわる三つの授業（その52）
「5CHでの中傷で、承認欲求が原因と思われる中傷で最近のものはありますか？」と愛萌は訊く。
「そうですね、いくらでもありますが、すぐに思いつくのは、クイズ番組で、
乃木坂の久保史緒里さんが『go to トラベル』ということを答えられなかったことに対して、わざわざスレ立てしてまで貶していたものを見かけましたね。
その貶しが大きければ大きいほど、そのレベルより遥か上に自分はいるという印象付けができると思い込んでいるんでしょうかね。
俺はすごいだろと悦に入っているんでしょうかね。
社会で起こっていることを知る余裕もないくらいアイドル活動に精進しているとかと普通は善意に捕らえるものですよ。
そんなことで貶す人は二重にも三重にも愚かですよ。
まずは、匿名掲示板の中においてすら誰も誉める人はいないし、そう思う人すらいない。
次に、万一誉める人がいたとしても、実生活とは切り離された匿名掲示板の中のことなのでリアルには反映されない。
ドラクエのようなRPGの中で溜めたゴールドや経験値が現実に反映されないのと同じですよ。
さらに、RPGならリアルには誰も傷つけないけど、匿名掲示板での罵詈雑言はリアルに人を傷つける。
人を傷つけるのはリアルだけど、承認欲求は必ず空振りに終わり、リアルには反映されることは絶対にない。
そういうけっして実を結ばない承認欲求の衝動が押さえられず、二十歳そこらのアイドル相手にマウンティングを取るのなら、癖というよりは病ですね。
異常なまでに人の非を訴えるということで、訴訟狂と言うべきですよ」（続く）

2021/03/01(月) 23:17:04.84

古典かあ

2021/03/04(木) 22:35:32.16

川にまつわる三つの授業（その53）
「クレームの要因として、『ハビトゥスの優位性の押し付け』もあると先生は仰いましたね。
そもそも『ハビトゥス』って何なんですか？」と好花は訊く。
「『ハビトゥス』というのは、日常生活の認知や行為を方向付ける傾向のシステムのことですね。
数あるものの中から『これがいい』と判断して選ぶときには、それを正当化し、
それと表裏一体をなす形で、それ以外のものを拒否しようとします。
趣味なんかはその典型ですね。自分の好み以外のものを否定したいとか差を付けたいとかという気持ちが人にはあります。
ハビトゥスの優位性というのは趣味の優位性のことだと思ってもらってかまいません。
何かを好きになるということは自分の中の何かを賭けています。
何かを好きになるということは何かを嫌いになるということでもあるんですね」
「たとえば、日向坂のあるメンバーを好きになったとき、他のメンバーを拒否するということですか？」と好花は訊く。
「そういうことですね」
「でも、日向坂箱推しという人も多いですよ」と鈴花は反論する。（続く）

2021/03/04(木) 22:36:11.88

川にまつわる三つの授業（その54）
「そういう場合でも、まったくの平等に見なしているというわけではないでしょう。
たとえば、握手会とかミーグリとかで、全てのメンバーに同じ枚数で申し込む人とかいますか？
それと、仮にそういう人がいたとしても、日向坂を選んだということで、他のグループは拒否しているわけですよ。
全てのものに全く同じ思い入れをするというのはあり得ません。
もちろん、そういうことは別段責められるべきことでもありません。
ただ、承認欲求の場合と同じように、そういう思いがねじ曲がって異常となったときには、
自分の好きなメンバーやグループ以外に対しては誹謗中傷を始めるということが起りえるわけです」
「たしかに5CHでは、メンバー間の優劣を決めさせるようなスレッドが立っていますね」と愛萌はうなずく。
「板を横断して、坂道の3つのグループを対立させるようなスレッドもよく見かけます」と鈴花も続く。
「対立を煽るスレを立てるのはほとんどがアフィリエイト業者さんの仕業でしょうが、
ファンの人の心の中にあるハビトゥスの優位性の押し付けを巧みに利用しているわけですよ」（続く）

2021/03/08(月) 22:30:28.83

川にまつわる三つの授業（その55）
「他の坂道の板に比べると、日向坂でのメンバー間の対立煽りは激しくないような気もしますが」と愛萌は言う。
「そう思います。それは日向坂では選抜制がないことと関係しているかもしれませんね。
誰がセンターであるとか、誰が何列目であるとかいうのも対立を誘引させますが、選抜とアンダーの壁に比べればずっと弱いでしょう」
「じゃあ、選抜制はないほうがいいんですか？」と愛萌は訊く。
「ファンのハビトゥスの押し付けを鎮めるためにはそのほうがいいと思います。
ただし、選抜制がカンフル剤となり、ファンの思い入れを刺激することで、集金はしやすくはなるでしょうね。
また、テレビ出演での人数の制限もあるでしょうから、メンバー数が多い乃木坂は全員選抜というわけにはいかないでしょう。
それに、選抜メンが休んだときアンダーメンから補充できるという利点もありますからね。
坂道の運営さんとしてはおそらく選抜制は必要悪と考えているでしょう」（続く）

2021/03/08(月) 22:31:04.80

川にまつわる三つの授業（その56）
「ファンの対立を激化させるというのも問題ですが、
選抜とアンダーとの線引きの原因が判らずにアンダー落ちしたメンバーは病むことにもなりますね」と鈴花は言う。
「その通りだと思います。そちらのほうがメンバーにとってはより深刻な問題でしょう。
選抜をセレクトするとき、メンバーの実人気だけではなく、運営さんの思惑というものも加わります。
しかも、人気の要因は明確に探ることはできないとはいえ、その責任は自分に帰するということで諦めがつくかもしれませんが、
運営さんの思惑の中身は明かされることなく、その方針に従うことを理不尽に要求されます」
「『由らしむべし知らしむべからず』と論語にもありますね」と愛萌はつぶやく。
「まあ、そういうことは芸能界だけでなく、大なり小なりどこの世界でもまかり通っていることではありますが、
ただ、自分を排除するようなシステムが働いているんじゃないのかという不信が必ず沸き起こります。
アンダー落ちする度に猜疑心が膨らんでいって、耐え切れなくなって辞めたメンバーも乃木坂には多いでしょう。
柏幸奈さんとか中元日芽香さんとかもそうじゃなかったのかと私は疑っています」
「でも、他のアイドルグループと比べれば、坂道は比べ物にならないくらい恵まれていることはたしかでしょう。
坂道グループの万年アンダーのメンバーでも地下アイドルグループの不動のセンターよりも何百倍も恵まれていると思います。
少なくともアイドルにおいては、『鶏口となるも牛後となるなかれ』ではなく、『牛後となるも鶏口となるなかれ』が正しいと思います。
なのに、耐え切れないものなんですか？」と愛萌は訊く。（続く）

2021/03/08(月) 22:31:36.17

川にまつわる三つの授業（その57）
「愛萌さんの言っていることはよく分かります。
ただし、人間というのはその環境の枠内でしか想像力を働かせられないし、
同じく論語から引用すれば、『知足』ということ言葉がありますが、頭では分かっていてもそれは受け入れにくいものなんですよ。
幸福に対しては自分のところへ当然来るべきもののように平気な顔で迎えます。
坂道のような好待遇の環境にあっても、それに慣れてしまえば、それが当然だと思ってしまう。
でも、その中での格差には耐えられないというわけですね。
なぜ私はアンダーなのか？その責任は誰にあるのか？それは不当じゃないのか？そんなことばっかり考えるわけですね」
「インターネット時代の情報過多社会でも、外の環境を想像するというのはできないものなのですか？」と好花は訊く。
「インターネットの悪い点は、自分が見ようとするものしか見なくなることですね。
そして、それは自分より上の境遇には敏感になり、下には鈍感になるということももたらします。
シリアで苦しんでいる人は世界中の平穏な情報をネットで見て、なんで俺らだけこんな苦しまなきゃいけないんだと思うでしょう。
でも、日本人でシリアの情勢を見る人はきわめて少ないだろうし、
見たとしても自分たちがどれだけ恵まれているかということを感じられる人は殆どいないでしょう。
インターネットは怨嗟を作り出すことがあっても、知足ということを悟らせてはくれないんですよ」（続く）

2021/03/16(火) 22:53:46.42

川にまつわる三つの授業（その58）
「先生、私の記憶で違和感があったので、今、辞書で調べましたが、『知足』は『論語』ではなく『老子』の中にある言葉ですね」と愛萌は言う。
「ああ、そうでした。すみません。迂闊でした」と言いながら、ソレイユ先生は腕時計を見る。
「あちこちに話が飛び、まとまりのない授業となってすみませんでした。
また、疲れているのか、間違ったことも言ってしまったようなので、少し早いようですが、今日の授業はここまでにします」
「先生、ライフヒストリーのご説明で、仕事で干されたことのある人は、特定のメンバーに対して特別な感情を持つといったようなことを仰いましたよね。
それって先生ご自身のことじゃないんですか？よかったら。そのお話もお聞かせ願えませんか？」と好花は懇願する。
「好花さん、ささいなことも見逃してくれませんね。わかりました、お話ししましょう。
理由もよく分からず仕事で干された経験が私にはあります。だから、干されているメンバーに肩入れしたくなりま・・・」
「先生、干されたメンバーのほうに肩入れしたというお話にも興味はありますが、
優遇されたことで嫌いになったメンバーのほうがより興味深いので、そちらのお話をお願いします」とカットインして好花は言う。
「好花さん、容赦ないですね。わかりました、そちらのほうをお話しましょう」（続く）

2021/03/16(火) 22:54:40.94

川にまつわる三つの授業（その59）
一息ついて上を見ながらソレイユ先生は話し始める。
「乃木坂のシングル『バレッタ』では異例なことがありました。
まだ研修生だった二期生の中から堀未央奈さん一人だけがいきなりセンターに抜擢されたということです。
そのとき、学生のときの部活や社会人のときの仕事でのことを思い出しました。
海のものとも山のものともわからぬ新人でありながら、なぜか破格の優遇を受ける人たちがいたことをです。
後でその理由が判明したとき、その実力の真価を見抜かれての抜擢もありましたし、薄汚いコネの場合もありました。
その後の活躍を見たら、堀さんの場合は前者だったというのが今では分かりますが、
その様子をテレビで観ていたときには後者であると勝手に決めつけて嫌な気分になりました」
「まさか5CHに堀さんの悪口を書き込んだんですか？」と鈴花は訊く。
「間違ってもそんなことはしませんよ。ただ、・・・」
「『ただ』なんですか？」と好花は突っ込む。
「テレビ番組で堀さんが出演しているシーンは早送りして観ていましたね」
「そんなことしていたんですか？」と鈴花は驚く。
「その後、楽屋の仲で二期生は堀さん一人のとき、一期生全員から完全無視され、
ウォークマンで耳を塞いで下に俯いている様子をテレビで見た後には心を改めましたが」（続く）

2021/03/16(火) 22:55:07.32

川にまつわる三つの授業（その60）
「まあ、早送りするというのは個人の自由の裁量の範囲だと思います。
ただ先生ほどの人格者でさえもそういうことをなさるのなら、
普通の人なら気が滅入っていたときには、5CHで悪口を書き込むかもしれませんね」と好花は言う。
「フォロー、ありがとうございます。じゃあ、これで終わってもいいですか？」
「授業終了までもうちょっと時間はありますね。日向坂のメンバーでも同じようなことはなかったのですか？」と好花は言う。
「好花さん、追及の手を弛めてくれませんね。
ひらがなけやきだった初期の初期から日向坂は見ていますが、正直に言いますと、最初は柿崎芽実さんが好きにはなれませんでした」
「芽実さんが最年少のセンターだったからですか？」と好花は訊く。
「それもあったかもしれませんが、なんでこのコはああいう勝ち誇った態度をとるのだろうか？というのが大きな要因でした。
我が物顔の振る舞いをしているように目に映ったんですね」
「でも、心変わりしたんですよね。それは何が切っ掛けだったんですか？」と鈴花は訊く。（続く）

2021/03/18(木) 14:29:49.05

ふむ

2021/03/20(土) 09:49:45.31

日向である必然性の無い、キャラ仮りオリジナルゴミ文やな。

2021/03/20(土) 09:50:55.38

エロなら需要ありそうだが

2021/03/24(水) 15:48:44.78

ふむ

2021/03/24(水) 22:35:43.72

川にまつわる三つの授業（その61）
「う～ん、さっきまでの話と矛盾することを言ってしまうかもしれませんね。どこから話したらよいものか・・・・・。
そうですね・・・、ご存知の通り、プラトンは人間の魂の構成要素の発見に努めた最初の人物だと言われています」
「先生、全然ご存知じゃありません。でも、どうぞお話をどうぞ続けてください」と鈴花は言う。
「辺境の地であるコーカサスに住むスキタイ人についての見解を『国家』の中でプラトンは書いています。
『スキタイ人は我々のように聡明ではない。しかし、テューモスがある』と。
ギリシャ人は理知的でしたが、知性と同じくらい重要で、ギリシャ人には不足している魂の要素があるとプラトンは考えていました。
その要素をコーカサスの蛮族にプラトンは見出したのです。
テューモスというのは第一義的には『怒り』ということですが、『発奮』あるいは『心意気』といった意味でプラトンは使っています。
教科書的には、『気概』となっているようですが」（続く）

2021/03/24(水) 22:36:07.45

川にまつわる三つの授業（その62）
「理知・気概・欲望の魂の三区分説ですね。
でも、その『気概』と『知足』とは相反しませんか？」と好花は訊く。
「まあ、たしかにそうですね。だから矛盾するかもと恐れていたのですが・・・。まあ、とにかく話を続けましょう。
『知足』に近いような心構えをレオナル・ド・ダヴィンチは語っています。
『欲するところをなし能わぬ者は、なし能うことを欲せよ』と。
高校生のときまでは、私は自信の塊のような人間で、何でもできると己の可能性を疑ったことは全くありませんでした。
フィールズ賞かノーベル物理学賞かを受賞できると本気で信じるくらいにのぼせ上っていました。
でも、大学以降は、机を並べた優秀すぎる連中に打ちのめされて、アカポスは諦め、院を中退しました。
与えられた現実を直視し、限られた人生を思い切り生きるためには、
思春期に思い込んでいた夢にしがみつくよりはどこかの段階で軌道修正する。
その限りでは、ダ・ビンチのその言葉は正しいでしょう。
ただ、その後も気概を持ち続けるというのは難しいことです。
私の心の深いところには無気力がずっと停滞していていたのかもしれません。
芽実さんが勝ち誇っていると感じたのは、結局、自分の無気力に媚びていたからだったようです。
あるとき、芽実さんを見て、大袈裟に言えば、パウロの回心のようなことが起こりました」（続く）

2021/03/24(水) 22:36:36.01

川にまつわる三つの授業（その63）
「前から疑問だったんですけど、その『回心』って『回る心』と書きますよね。『改める心』の『改心』とどう違うんですか？」と愛萌は訊く。
「辞書的には、『回る心』の『回心』は無宗教から宗教を信じるようになるということとなっていると思いますが、
パースペクティブの転換という意味で使っている哲学者もいて、今はそういう意味で使いました。
それに対し、『改める心』の『改心』は心の中のある部分が変わるといったような感じですかね」
「パースペクティブというのはどういう意味ですか？」と鈴花は訊く。
「パースペクティブというのは遠近法のことで、何が近景にあり、何が遠景にあるかということですね。
心の中のパースペクティブというのは何が重要で何が取るに足らないかといったようなことになります」
「その心のパースペクティブの変化が起きたのはいつなんですか？」と鈴花は再び訊く。（続く）

2021/03/24(水) 22:37:04.51

川にまつわる三つの授業（その64）
「漢字欅が有明コロシアムでライブをしたとき、ひらがなけやきは2曲だけの参加だけで、
『誰よりも高く跳べ』のソロダンスのパートのときでした。
そのときの芽実さんのソロは、後で定番となった猫の動きを真似たダンスではなく、
くるっと回った後にカーテシー、つまり、片足を引き、もう片足の膝を曲げ、両手でスカートの裾を軽く持ち上げるというものでした。
なぜそれを見たときなのか？他の場面ではなぜ同じことが起きなかったのか？という理由は今も分からないのですが、
とにかくそのときに『勝ち誇っている』というネガティブな思いは霧散し、自分の中で気力が甦ってくる気がしました。
生きることの悦びを最大限に享受して脈動いるかのように芽実さんが見えました」
チャイムが鳴る。
「今日は最後の最後までまとまりのない話になってすみませんでしたが、最後に肝に銘じてほしいことだけ繰り返しておきます。
5CHでの誹謗中傷が自分に向けられていたとしても、気にしないことですね。
クレーム癖にせよ、承認欲求にせよ、ハビトゥスの押し付けにせよ、彼らはその度合いが異常です。
マイナスどうしを掛け合わせればプラスに転換するように、誹謗中傷してくるのは頭のおかしい連中なので、むしろ勲章だと思いましょう。
では、これまでにします」
一同は立ち上がり、「ありがとうございました」と頭を深々と下げる。（了）

2021/03/30(火) 21:45:25.56

一クラス目の箇所で、タワマン住まいは死産・流産の危険があり、子供の学力は低下するというのは、
2018年のTBSラジオ「デイキャッチ」で宮台真司が語っていたことを参考にした。

2021/04/01(木) 18:46:51.34

ほほう

2021/04/06(火) 17:05:12.79

ふむ

2021/04/07(水) 22:13:02.39

二クラス目の箇所で、社会生活を正しく行うこととマジックを見破ることには負の相関関係があるというのとカクテル・パーティ問題のところはTBSラジオ「夢夢エンジン」の「注意の認知心理学」の回を、
色覚特性のところはTBSラジオ昨年の11月の「セッション」を参考とした。

2021/04/08(木) 23:06:27.10

幻冬舎文庫のイメージキャラクターに長濱が起用されるのか。
https://www.gentosha.jp/article/18118/
幻冬舎という一つの出版社だけでという縛りがある中で、これだけの数を読んでいるというのはすごい。
https://i.imgur.com/LpKtHSH.jpg

いいニュースだと素直に思うけど、幻冬舎から写真集を出し、「小説幻冬」でもインタビューが掲載された絢音も一緒に起用してほしかったな。

2021/04/08(木) 23:12:04.77

坂道で本好きとして思い浮かぶのは、長濱と絢音以外では、飛鳥、北川、宮田くらいかな。
影山とかも相当に読んでいるとは思うが、サッカーのほうが印象が強くて、本好きという感じはあまりしない。

長濱がレギュラーとなる前の「セブンルール」で本好きとして出演したが、飛鳥は自分からは殆どアピールしない。
好きな本にただ浸っていればそれで幸せで、論評なんてしようとも思わない。
また、趣味としての聖域を侵されたくないから、仕事につなげようとも思わない。
そういう感じなのかもしれない。
そういう意味では、飛鳥のようなのが本当に本好きなのかもしれない。

2021/04/08(木) 23:15:25.36

ただし、「涼宮ハルヒの憂鬱」「涼宮ハルヒの消失」の長門有希のようなのが個人的には本好き少女の典型的なイメージかな。
物静かで、無機質で、少し人間嫌いで、コミュニケーションも積極的ではない。
上に挙げたメンバーでそのイメージに一番近いのは誰か？
長濱と宮田は社交的すぎる。
飛鳥は物静かというよりはちょっとひねくれているし、その割には社交性もそこそこにはある。
北川は物静かだが、人懐っこそうな感じで、人間嫌いという感じは全くない。
最もフィットしているのは絢音だと思う。

2021/04/08(木) 23:16:20.43

あっ、高山を忘れてた。
でも、高山は本を上梓している作家だから、イメージキャラクターとして登用されることはないか。

2021/04/09(金) 20:21:57.59

ハルヒか

2021/04/10(土) 23:07:40.92

簡単なことなのに、言われる前まで、はっきりとは意識していなかったことってあるもんだな。
学校の教室の中では、朝には斜め後ろから、夕方には斜め前から日が差していたんじゃないのか？と訊かれて、
そう言われればそうだな、しかも小学校以後ずっと例外なしにそうだったなと思い当たる人も多いんじゃないかな。

丹生がパーソナリティを務めるラジオ番組「ベルク」の中で、そのようなリスナーからの投稿があった。
そのカラクリを解き明かすのはバカバカしいくらい容易だ。
効率よく採光するため教室の窓は南側に設置されている。
日本人の9割超は右利きで、それを優先させ、窓からの光が左側から来るようにすれば、ノートに書く文字が手の陰とならず見やすくなる。
つまり、窓が南側なら、後ろは東側で、前は西側となるから、朝には斜め後ろから、夕方には斜め前から日が差すことになるというわけだ。