描くことの生き甲斐は、生活の確立とか、食うことの保障とか、
ましてや楽をしようなんて欲からは、ほど遠いものなのだ。

だから、もし、あなたがまかりまちがってプロ漫画家になろうなんて気を起こした場合には、
作家なんて連中とはつきあわず、編集部へ持ち込みなんかもせずに、
ただ、ひたすらたくさんの量を描くことだ。

それを続けて、少しも執筆欲が衰えなければ、今度はたぶんなにかの縁で
先方から幸運が舞い込むだろう。それまでの執筆の実績は
天知る、地知るというわけである。

(引用文献・手塚治虫著「マンガの描き方」光文社)