ウィーン「あー!もう!!!」ガタッ
恋「マルガレーテさん!?」ビクッ
ウィーン(……何で、何で私がこんなに悩まなくちゃけないのよ!?)
恋「あ、間違えました……お姉さま!?ですね」クスクス
ウィーン「……っ」
ウィーン(こんな、下らない家族ごっこのために…)
ウィーン(たかが葉月恋のために…!)
ウィーン「……」グッ…
恋「……?」
ウィーン「……ないの」
恋「へ?何がです?」
恋「……苦手なジャンルで自信がない、とか?」
ウィーン「そんなわけないでしょ!?私を誰だと思っているの!」ガタンッ
恋「ひっ!?で、ですよね…!あは、あはは……」
ウィーン「……」ギロ
恋「……」ビク
ウィーン「……歌って貰ったこと、ないの」
恋「あ、ああ、それは歌詞を知らないということですか?」
ウィーン「……」コクン…
恋「で、でしたら!是非わたくしのパソコンで調べて下さい!」
恋「えーと、えーと」カタカタ
恋「お姉さまの故郷は……オーストリアでしたよね」
ウィーン「ま、待ちなさい!」
恋「はいっ」
ウィーン「日本のやつにして」
恋「え?そ、それだとますます知らない歌なのでは…」
ウィーン「……いい、良いから」
ウィーン「少しだけ、時間を頂戴。そしてこの部屋から出ていって」
恋「わ、わかりました…」
ウィーン「5分だけ……いえ、3分で良いわ」
ウィーン「……それだけ時間があれば、覚えられる」
恋「流石です……!」
ウィーン「それまでいい子で待てるわね?……恋」
恋「!」
恋「はい、楽しみにしています……!」ニコッ
恋「では大人しくしています…!」
ギィ……バタン
恋(とは言いましたが)
恋(やはり少しだけマルガレーテさんの練習しているところは気になりますね…)ソワソワ
恋(少しだけ、聞こえないでしょうか)
恋「……」グググッ👂🚪
恋(うーん、案外聞こえないものですね……)
恋(諦めましょう)
恋「……」
恋(マルガレーテさんは、わたくしを配慮して日本の子守唄にしてくれたのでしょうか)
恋(……個人的に気になるので今のうちにオーストリアの子守唄を調べます)
恋「……」スマホスッスッ
恋(あ、ありました!)
恋(『チロルの子守唄』……なんだか美味しそうな名前ですね)クスッ
恋(はいじ、ぶんはいじ……?)
恋(なるほど。ねんねんころりよ、の部分ですか)
恋(お、日本語訳もご丁寧に書かれているサイトですね……!)
恋「……」スッスッ
恋「……」スッ…
恋「……母親に、おいていかれる、こどものうた……」
―恋の部屋―
ウィーン「……っ」カタカタカタ
ウィーン(日本、子守唄多い……!)
ウィーン(クラシックが原曲なものは歌詞のリズムさえ拾えば良いから簡単)
ウィーン(けど、問題なのはその歌詞っ……!)
ウィーン(母……母親……ダメっ)カタカタカタカタ!
ウィーン(私が歌うからには、妥協は許さない)
ウィーン(認めない)
ウィーン(あの子がさみしさと共に、眠りにつく羽目になる子守唄なんて)
ウィーン「絶対、認めない……!」
カチッカチッ
ウィーン「あっ」
ウィーン(……あ、あった!この曲なら大丈夫)
ウィーン(ヘッドホン、勝手に借りて良いわよね)
ウィーン「……」ジッ
~~♪
~♪
…♪
…
0110名無しで叶える物語(なっとう)2023/05/15(月) 17:59:08.46ID:2GLSBr7V
あっ…
SSにそこまで調べたイッチすげぇわ
ウィーン『……歌って貰ったこと、ないの』
恋(あの時、マルガレーテさんは目を逸らしてそう言いました)
恋(有名な音楽一家で育ち、小さい頃からずっと音楽と共に生きてきたはずです)
恋(ご家族に、子守唄を歌って貰ったことがない可能性は低い)
恋(……嘘を、ついたのですか)
恋(わたくしのために)
恋(分かりもしない母国語の歌詞で)
恋(わたくしが傷つく可能性を恐れて)
恋「……っ」ゴシゴシ
恋「……そんなこと、気にしないのになあ」
マジでオーストリアの子守唄がたまたまそういう曲なん?天才か?
ガチャ
ウィーン「ま、待たせたわね……!」
恋「……っ」
ウィーン「この私が歌をわざわざ調べてやったのよ!感謝しなさい」
恋「あ、ありがとうございます!嬉しいです……!」ゴシゴシ
ウィーン「?……ねぇ、目が少し赤いようだけれど」
恋「!」
恋「わ、わたくしの家、廊下は少し埃っぽいんですよ!こ、この広さですし……」
ウィーン「……」ジーッ
恋「典型的なアレルギー症状です!いやぁ、ちびが毎日走り回るからもうそれはますます埃が……っ」アセアセ
ウィーン「……ま、私の家もそれなりに広いから、わからなくもないわ」
恋「で、ですよね~……」
恋「あっ、それよりも早く歌を聴かせてください!」
ウィーン「え、ええ」
恋「お姉さま、わたくしもう楽しみで眠れる気がしません!」ワクワク
ウィーン「どうなのよそれは……」
恋「では……よ、よろしくお願いします……!」コロン
ウィーン「クッションは?」つ🍓
恋「……あ、ありがとうございます」ギュ
ウィーン「ねぇ、ベッドではなくて良いの?それとも……私が寝室に入るのは不都合?」
恋「いえいえそんな!違います!」ブンブン
恋「ソファで横になるのは、もし、寝てしまっても、結局すぐ起きなくてはなりませんから」
ウィーン「……そう」
恋「こちらこそ、お客様を差し置いて…んむ」ポスッ
ウィーン「なにを言ってるの?」
ウィーン「……私はあなたの姉よ、忘れたとは言わせない」
恋「しゅ、しゅみません……」
ウィーン「そもそも、そのお客様に甘えようだなんて言い出したのは一体どこの誰?」
恋「う……」
ウィーン「私、あなたより年下なんだけど?」クスッ
恋「そ、それはこの際かんけいありません!///」
ウィーン「ふーん?」ニヤニヤ
恋「……もう、意地悪しないで下さい!」
ウィーン「くすくす、わかったわ」
ウィーン「……」
恋「……」
ウィーン「……瞳を閉じなさい、恋」
恋「はい……」ツムリ
ウィーン「……いい?今だけは、何も考えないで」サラ…
恋(マルガレーテさんの指先が、わたくしの前髪をそっと撫でます)
ウィーン「世界に、私とあなただけだと思いなさい」
恋(力強い声……でも、微かに語尾が震えていて)
恋(瞳を閉じていても、マルガレーテさんのまっすぐな眼差しがこちらを向いていると、わかりました)
ウィーン「……二人きりでも、寂しくは無いわ」
ウィーン「私たちには、歌があるのだから」
ウィーン「……すぅ」
~♪
『眠れ よい子よ』
『庭や牧場に』
『鳥も 羊も』
ウィーン「__♪」ポン、ポン
恋(……ああ)
恋(なんて、優しい歌声なのでしょう)
恋(優しさの中に、芯があって)
恋「……」ウト…
恋(ぽかぽか、暖かい)
ウィーン「__♪」ポン、ポン
『月は窓から 銀の光を』
『そそぐこの夜』
ウィーン「__♪」ポン…
『眠れ よい子よ 眠れ』
恋(だんだん、)
恋(……ねむく、なって)
恋「……」
恋(……)
ウィーン「__♪」ポン、ポン
恋「……」ニコ
ウィーン「♪」ポン…
__♪
_♪
…
ウィーン(あーあ)
ウィーン(私の歌が誰かに感動を与えるのなんて)
ウィーン(当たり前なのに)
ウィーン(今まで……当たり前にそれが求められてきたじゃない)
恋「……すー……すー」
ウィーン(……)サラッ
ウィーン(……緩んだ頬)
ウィーン(とても、上級生には思えない)
ウィーン(まぬけな顔)
ウィーン「はぁ……」ツンツン
恋「う、う~ん……?」ムニャ
ウィーン「……もう起きるの?」
恋「……ちび……やめてくらさい~」スヤスヤ
ウィーン「……」
ウィーン(……なんかムカつく。なんで一人のために、この私が)
ウィーン(さんざん振り回されて……本当に意味がわからない)
恋「……すー…」
ウィーン(それなのに)
ウィーン(……この感情は、なに?)
ウィーン「……」
3期無理でもkila² lifeのプロットこれでお願いしたい
恋『……お母さま、聞いてください!』
花『……』ニコニコ
恋『わたくし、スクールアイドルを始めましたよ』
恋『なんと、優勝までしてしまいました!』
花『……』ナデナデ
恋『それで、わたくし……たくさんのお友達が居るのです』
恋『かげがえのない、仲間が居るのです』
花『……』コクリ
恋『あ、とっても素敵なライバルもできました』
恋『スクールアイドルって、すごく楽しいです』
恋『わくわくして、毎日が、輝いていて……』
花『……』ニコニコ
恋『皆さん、お優しくて……』
恋『わたくしには、勿体ないくらいで』
恋『毎日、毎日、楽しくて』
花『……』ナデナデ
恋『…えへへ』
恋『……それもこれも、お母さまが学校を創ってくれたお陰だと思います』
恋『残してくれたこの学校があったから……』
花『……』ギュッ
恋『わっ…!お母さま!?』
花『……』
恋『?』
花『ありがとう、恋』ナデナデ
恋『は、はい!』
恋『……』
花『……』パッ
恋『あの……?』
花『……じゃあね、いってらっしゃい』ニコッ
恋『……え?』
恋『ってあれ、もうこんな時間ですか!?』
恋『学校に遅れてしまいます!い、いってきます!』ペコ
花『……』ニコニコ
恋「……ううん」
恋「……」パチクリ
恋「……」
恋「はっ!?」
恋「ち、遅刻ですか!?」クルッ
カァ- カァ―
恋「ゆ、夕方……?」
恋「……わたくしは寝てしまっていたのですか」
恋「なぜこんな半端な時間に……」
恋「……」
恋「あ…!マルガレーテさんは……」キョロキョロ
安価下3まで多数決
いる いない
0133名無しで叶える物語(らっかせい)2023/05/15(月) 22:22:58.55ID:Gjzi5Qor
寝てる
恋「ま、マルガレーテさ……」
恋「ん!?」グイッ
恋(何か、暖かい物に引っ張られ……!)
ウィーン「……」スースー
恋(た、倒れ……!?いや、)
恋(ソファに伏せて……眠っている……?)ノゾキコミ
ウィーン「……」スヤ
恋(寝顔は、案外年相応と言いますか……あどけなさがありますね)
恋「……ふふ」
恋(かわいいです)
恋「……」ギュッ
恋(そしていつのまにやら……手が、繋がれていますね)
恋(しなやかで美しい、なんとも女性らしい手ですね)
恋「……」ニギニギ
恋(……指先、わたくしよりも少し硬い)
恋(マルガレーテさんの努力の証です)ナデ…
恋「……」
恋「ふふ……」
恋「……」ナデナデ
ウィーン「……」
恋「……」
恋「……」ナデナデ
ウィーン「……」
恋「……うふふ」
恋「……」
恋「……」ナデナデ
ウィーン「……」
恋「……」ナデナデ
恋「……」
恋「……」ナデナデ
ウィーン「……ちょっと」
恋「はえっ!?」ピタ
ウィーン「……何をしているの」
恋「……」
ウィーン「……」ジロ
恋「か、感謝の気持ちを、手から伝えると言いますか……」
ウィーン「……」
恋「……えっと」
ウィーン「はぁ……」パッ
ウィーン「……今何時?」
恋「18時と、ちょっと前です」
ウィーン「帰る」スクッ
恋「……え?は、はい!お見送りしますね!」
ウィーン「私まで寝てしまうなんて……」
恋「す、すみません!わたくしのせいです……」
ウィーン「わかってる」
恋「……」
ウィーン「……」
ウィーン「……今日のことは」
恋「……はい」
ウィーン「わす……」
ウィーン「……」
ウィーン「ひ、秘密……私たちだけの秘密よ!わかった?」ビシッ
恋「!」
恋「は、はいっ!」
ウィーン「それじゃあ、私はタクシー呼ぶから、もう戻りなさい」
恋「あの、今日は本当に……ありがとうございました」ペコリ
恋「とっても、心地の良いひとときを……」
ウィーン「……ふん」デコピン
恋「…いたっ!?」
ウィーン「……」
恋「な、なぜですかぁ……」
ウィーン「……不出来な妹の面倒を見るのは、姉の役目よ」
恋「……!」パァァッ
ウィーン「か、勘違いしないで!やりたくてやっている訳じゃない!」
恋「はい、ありがとうございますっ!」
ウィーン「……今度は"あの場所"で会いましょう」
恋「……あの場所?」
ウィーン「あら、忘れたの?」クスッ
ウィーン「編入するのよ、私」
恋「は、はあ……」
ウィーン「だから、よろしくね…………葉月先輩♡」
恋「えっ」
恋「……そ、そうではないですかーっ!?」ガガーン
恋「わ、わたくしとしたことが!大切な結ヶ丘の生徒に、な、なんてことを……!」
ウィーン「……一体生徒じゃなかったら何をするつもりだったの?」
ウィーン「生徒会長の自宅に連れ込んで……」
恋「へ、変な事を言わないでください!//なにもしませんっ//」
ウィーン「……ふうん」
ウィーン「別に言いふらしても良いんだけど?結ヶ丘の生徒会長、葉月恋が_」
恋「わああぁっ!?」バタバタ
ブロロロロ……
ウィーン「……残念、お迎えが来たわ」
恋「そ、そうですか」ホッ
ウィーン「……ふん」
バタンッ
恋「……マルガレーテさん!あ、ありがとうございました!」ペコペコ
ウィーン「……」ヒラヒラ
ブーン……
―葉月家、夜―
恋「それでですね……といった風に、今日は愉快な休日を過ごせました」
恋「皆さんの対応力には脱帽です……感激です」シミジミ
サヤ「……っ」プルプル
恋「どうなされたのですか?」
サヤ「……」
サヤ「……」ホロリ
恋「さ、サヤさん!?なぜ涙を……」
サヤ「……お嬢様がたくさんの方と親睦を深められていて……」
サヤ「大変喜ばしい限りでございます……」
サヤ「しかし!」ガタッ
恋「はいっ」ピシ
サヤ「メイドの私にその役目が回ってこなかった事に対する悔しさや不甲斐なさ……」
サヤ「その二つの板挟みで……私は……私は……っ」グヌヌ
恋「え、ええっと……」
恋「次、甘えたい日があれば、是非サヤさんにお願いしたいと思っていました……!」
恋「も、もちろん今日も思いました!」
恋「ですが……サヤさんにはいつもお世話になっていますので悪くて……」
サヤ「お、お嬢様……」パァッ
恋「……サヤさんっ」ニコニコ
サヤ「今度と言わず、今日……」
サヤ「今日、お世話して差し上げますっ!!」キラキラ
恋「えっ」
サヤ「いえ、是非ともさせて下さい!!」キラキラキラ
恋「え、ええっ」
サヤ「お嬢様~~~っ!!!」ガバッ
恋「ええええええっ!?」
オセナカヲオナガシシマス…!
アッ,サヤサン ヒトリデデキマスカラ!
ソ,ソンナトコロ…
ダメデスーーーッ!!!!
ワン!ワン! ワオーン!
おわりです
思ってた3倍くらい長くも重くもなってしまってすみません…!
長々とお付き合い頂きありがとうございました
0150名無しで叶える物語(しうまい)2023/05/15(月) 23:57:01.03ID:JeXvq/fX
恋ちゃんも他のみんなもめちゃくちゃ尊かった。最高でした
乙です
0151名無しで叶える物語(わたあめ)2023/05/16(火) 00:05:42.68ID:3ZCvgg10
子守唄の歌詞のくだりでガチで涙出た
乙 できれば次回作も楽しみにしてる
「忘れて」とは言えないあたりがもう尊すぎてね…最高ですわ