0077名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:14:31.86ID:qEYbzN1d
反射的に、腕に力がこもる。
しまった。拒否するつもりはないのに、これじゃ……
けれど、歩夢さんの体はびくともしない。
私と歩夢さんにそれほど力の差はないはずなのに。ないと思っていたのに。
月下の怪物は、ヒト程度の力では揺れ動くことすらなかった。
それでも力が込められていたことには気づいたようで。
歩夢「ご、めんね……!やっぱり……」バッ
せつ菜「いえ、いえ!大丈夫、ですから……」
歩夢「でも……」
せつ菜「……あの」
歩夢「?」
せつ菜「舐めるのは、必要な行程なんですか……?///」
0078名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:18:02.83ID:qEYbzN1d
歩夢「うん。こうしないと、痛くしちゃうみたいだから。嫌なら、すぐに……」
せつ菜「いえ、それならいいんです。続けて、ください……」
続けてくださいって、なに。
これじゃ、舐めてもらうことを求めているみたい。
違う。これは、歩夢さんがヒトを傷つけないためには必要なことで。
私のためにやってくれていることなんだから、受け入れなきゃだめで。
それだけ。本当に、それだけなんだ。
0080名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:22:01.06ID:qEYbzN1d
歩夢「じゃあ……はむっ」
せつ菜「……っ!」
歩夢「んむ、る……」
せつ菜「ひ、っ……ぅ」
だめ、だめ。
油断すると、変な声が口から滑り出そうになる。
ぺちゃぺちゃと水音が響いて。
耳元で、歩夢さんのかすかな吐息が言ったり来たり。
これで正気を保っていられるほど、私は場慣れした人間じゃない。
0081名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:25:53.72ID:qEYbzN1d
せつ菜「は、っぁ……!」
歩夢「んぅ、らいじょ、ぶ……?」
何度目かわからない、その言葉。
心の底から心配しているであろうその声音に、心臓をきゅっとつかまれた気になる。
これ以上は、耐えていられない。
せつ菜「あゆ、むさん……!」
歩夢「せつ菜ちゃん?ごめ……」
せつ菜「かんで、ください」
0082名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:29:07.01ID:qEYbzN1d
歩夢「……っ!」
せつ菜「もう、大丈夫、ですから」
歩夢「でも、まだ」
このまま放っておいたら、どうなるかわからない。
だから、早く痛みで上書きしなきゃ。
この変な感じも、全部。
せつ菜「お願い、します」
0083名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:32:25.54ID:qEYbzN1d
歩夢「……腕でも服でも、握ってていいからね」
せつ菜「はい……」
歩夢「本当に我慢できなくなったら、背中叩いて。全力で。すぐやめるから」
せつ菜「わかり、ました」
歩夢「じゃあ、いくね……ぁむ」
歩夢さんはそう言って、私の首筋に唇を落とした。
歯先の気配がちらついて、かすかに触れる。
密着した体から、震えが伝わってくる。
せつ菜「……!」
まだ噛まれていないのに、体中に力がこもるのがわかる。
身をすくめて、ぎゅっと目をつぶって、その時を待つ。
歩夢「いただきます」
0084名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:35:34.46ID:qEYbzN1d
召し上がれ。そう言おうとした瞬間。
つ、と。
首筋に違和感が走る。
痛みだと思っていたそれは、徐々に体中へと広がっていって。
私の体を、跳ね上げた。
せつ菜「ふ──────ッ!?」
せつ菜ちゃんが濡れているのは首筋だけじゃないよね?
0086名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:40:57.07ID:qEYbzN1d
体の一部を穿たれているはずなのに。
刃物で切り付けられているも同然なのに。
痛みはなく、代わりに脳のあちこちをまっさらに塗り替えるような、衝撃──
歩夢さんのおかげなの?それとも、吸血ってこういうものなの?
違う、違う。
──思ってたのと、違う!
0088名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:44:28.49ID:qEYbzN1d
歩夢「ん、こくっ……ぐ……」
せつ菜「……っ!ふ、ぅ……はっ」
ごうごうと音がする。
血が巡る音なのか、吸われている音なのか、それとも、わたしの頭が沸騰している音なのか。
それに交じって、こくりこくりと喉が鳴る音。
歩夢さんの鼻息と呼応して、より頭を湧き立たせていく。
せつ菜「あゆ、むさ……!」
歩夢「……」ゴクッゴクッ
0089名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:47:38.14ID:qEYbzN1d
痛いと思ってた。痛い方が、まだよかった。
──こんなの、聞いてない!
ひときわ強く手に力を籠めると、歩夢さんは弾かれたみたいに私から離れた。
せつ菜「ぇ……?」
歩夢「っごめんね、せつ菜ちゃん!私、つい……大丈夫!?」
彼女の唇は、自身の存在を誇示するようにてらてらと赤く輝いていた。
悲しみさえ見えるその表情に塗られた鮮血。
ちぐはぐな光景に、、頭がくらくらする。
0090名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:50:35.92ID:qEYbzN1d
せつ菜「……歩夢さん」
歩夢「なに?やっぱりどこか……!」
せつ菜「まだ、足りませんか?」
歩夢「え?」
せつ菜「ふらふらになっちゃうくらい、飢えてましたよね」
歩夢「そうだけど、もう十分だよ。私はもう……」
せつ菜「まだ、足りませんよね」
歩夢「……せつ菜ちゃん?」
せつ菜「足りないって、いってください」
0092名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:54:33.36ID:qEYbzN1d
さっきの感覚が、まだ消えてない。
完全に消える前に、もう一度。上書きしてほしい。
その時にはもう、自分のことしか考えていなかった。
きっと、おかしくなってしまったんだ。
歩夢「……」
くぅ、と歩夢さんの喉が鳴る。
その姿は、贄を求める獣のように見えた。
0093名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/18(火) 23:57:28.60ID:qEYbzN1d
歩夢「……ぁ、む」
また、きた。
せつ菜「ふ、ぁ……!」
歩夢「せふなひゃ、おいし」
耳元で、歩夢さんの声。
味を楽しむ余裕が出てきたらしく、さっきよりも優しく、柔らかな感じがした。
けれど、それで負担が軽くなる訳もなく。
相変わらず、身体中を迸る快感は抑えられそうにない。
0094名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:00:54.49ID:FqLb/J6f
せつ菜「あゆ、あゆむさん……っ!」
歩夢「んぐ……くぅ」
訳がわからなくなって、うわごとのように彼女の名前を呼ぶ。
歩夢さんはその度に、応えるように頷いてくれる。
荒っぽくても理性があって、ちゃんと私のことを考えてくれている。
そんなの、ずるい。
0095名無しで叶える物語(もんじゃ)2021/05/19(水) 00:01:47.92ID:Q7LHyq18
おれのおちんぽもギンギンなんだけど責任とっておちんぽミルクびゅっびゅっしてよ
0096名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:04:47.57ID:FqLb/J6f
せつ菜「……美味しいですか、私の血?」
歩夢さんは、無言で頷いた。
せつ菜「だったら、あげます」
歩夢「……んぇ?」
せつ菜「もっと、もっとあげます。私が歩夢さんの食事になります。あしたも、あさっても。飲んでください、もっと」
0097名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:08:42.95ID:FqLb/J6f
自分でも、何を言っているのかわからなかった。
きっと、歩夢さんにあてられたんだ。
訳のわからない出来事に遭遇して、思考が飛んでいるんだ。
そういえば、吸血鬼は魅了の魔法が使えるって聞いたことがある。
きっとそれだ。そのせいだ。それで、私は……
歩夢「……だめ。せつ菜ちゃんが、大事だもん」
……魅了であって。使えるってことにして。
そうでないなら、どうしてこんなにどきどきしているの。
怪物なのに。食事なのに。どうしてそんなに優しいの。
0098名無しで叶える物語(もんじゃ)2021/05/19(水) 00:08:49.24ID:N8AMNqGf
支援
0099名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:11:17.54ID:FqLb/J6f
心底悲しそうな顔をする歩夢さんに手を差し伸べて、唇の血をぬぐう。
そのまま、その血を自分のそれに塗り付けるようにして、指を当てた。
──わたし、何をしているんだろう。
これは、歩夢さんのせいじゃない。
わたしがおかしくなったせいだ。
せつ菜「だったら、もっと傷つけて」
歩夢「──え」
そのまま、歩夢さんの唇を塞いだ。
0100名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:15:00.98ID:FqLb/J6f
歩夢「──ん」
せつ菜「ん、むぅ……っ」
離れられる前に、歩夢さんの牙に舌を当てる。
切っ先が舌をかすめて、そこからちろちろとかすかに血が流れ出た。
歩夢「……!ん、ぐ……!」
歩夢さんはそれを舐め取るようにして、舌を絡ませてくる。
自分から先にしておきながら、どうすればいいかわからなくて。
わたしは、そのまま歩夢さんに全てを委ねた。
やばいぐらい好き
せつ菜視点の文章もその書き方も好き
0102名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:18:14.73ID:FqLb/J6f
歩夢「っは……んぐ、む……」
せつ菜「んぇっ……る、んむ……っ!」
歩夢「ぢゅぅ……ん、むぅ……」
せつ菜「はぷ……っふぅ……ん」
歩夢「ぶ、はっ」
0103名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:21:41.42ID:FqLb/J6f
せつ菜「っは……はーっ……///」
歩夢「はぁ、はっ……」
せつ菜「はぁ……けほっ」
歩夢「……今のは、せつ菜ちゃんが悪い」
せつ菜「ええ……なら、腹いせにもっと飲んでください」
歩夢「……っ!もう、知らないからね」
0104名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:25:10.01ID:FqLb/J6f
────────────────────────
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歩夢「……」
せつ菜「……思い出しました?」
歩夢「うん……思い出さない方がよかった……///」
せつ菜「あの後、結局すぐに私がダウンしてしまったのでその場はとりあえず丸く収まりましたが……」
歩夢「収まってないよ!?」
せつ菜「う……とにかくです!これが昨夜起こったことの全てです。しっかり!覚えておいてくださいね!」
歩夢「忘れたくても忘れられないよぉ……///」
0105名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:28:37.94ID:FqLb/J6f
せつ菜「あの……それで、ですね」
歩夢「?なに?」
せつ菜「いえ、その……次は、どうしますか?」
歩夢「えっ」
せつ菜「ですから、次……どのくらいの頻度で、吸うんですか?///」
歩夢「1か月くらい、かな」
せつ菜「わかりました。飲みたくなったら、いつでも言ってくださいね」
歩夢「……はい」
0106名無しで叶える物語(たこやき)2021/05/19(水) 00:31:16.83ID:FqLb/J6f
せつ菜「ごほんっ!それじゃあ、練習に行きましょう!今日も……」フラッ
歩夢「ちょ……せつ菜ちゃん?」
せつ菜「なんだか、頭がくらくらして……これって」
歩夢「貧血だよ!やっぱり吸いすぎちゃったんだ……!せつ菜ちゃん、しっかり!」
せつ菜「ほ、本望……です……」バターン
歩夢「せつ菜ちゃぁあああんっ!!」
おしまい
0107名無しで叶える物語(もんじゃ)2021/05/19(水) 00:32:05.88ID:Aq3pF++j
は?
あゆむヴァンプだ
こういうしっとりしたせつ菜も良いね
0112名無しで叶える物語(うろん)2021/05/19(水) 01:09:55.45ID:Q3elDRsw
えっろ
おつです。せつ菜ちゃんの負担を考えたら何人かで提供した方がいいんだろうけど、もうせつ菜ちゃんは自分以外からは吸って欲しくなさそうだよね。この先のお話も見たくなる
それにしても歩夢ちゃんはSSで吸血鬼になったり幽霊になったりピクミンになったり色々だな。死んじゃうことも多いし
人間を襲ったとみなされてヴァンパイアハンターが現れるとかね
>>121
実はそのハンターも同好会内にいましたって王道展開
読みたい 純粋に描写が良くて面白かった
今後が気になる展開だけど乙
0125名無しで叶える物語(SIM)2021/05/19(水) 20:56:30.46ID:k7jg3LQa
お付き合いいただきありがとうございました
続きはないです 続きものを想定して書いてなかったので
また思いついたらということで
今までどうしてたの問題ですが、ただぽむせつを書きたかっただけなので深く考えてはいないです
吸血鬼だけのコミュニティがあってそこでやり取りしてるとか、なんか適当な感じで脳内補完していただけると
参考:ヴァンパイア/DECO27
(余所でやってください表示のためURL割愛)