0001名無しで叶える物語(しうまい)2018/05/04(金) 19:53:44.60ID:Miwc+2Aq
理亞「聴いたよ。あなた達の新曲。新しい学校でも活動できてるみたいで安心した」
ルビィ『ありがとう。理亞ちゃんの方はどう?』
理亞「順調……かな。新しいメンバーとも上手くやれてる、と思う。今はみんなで新曲作ってるところ」
ルビィ『うちは梨子ちゃんも千歌ちゃんも残ってるからいいけど、そっちは大変そうだね?』
理亞「まあね。やっぱり姉様の存在は大きい……まあ、何とかするけど」
理亞「ゴールデンウィークには姉様も帰ってくるから、作曲のコツとかいろいろ聞いておかないと」
0069名無しで叶える物語(笑)2018/05/05(土) 22:31:51.78ID:bImjm/RC
|c||^.- ^||お酒は二十歳になってから
ダイヤ「あなたはもう、自分の心を誤魔化してはならないところまで来てしまったのです。覚悟を決めるしかない」
ダイヤ「自分の心と。理亞さんと。正面から向き合わなくてはならない」
聖良「……」
ダイヤ「まあ、わたくしも人のことを言えた口ではありませんが。ずいぶんと遠回りもしました、妹に迷惑をかけたりもした……」
ダイヤ「でもだからこそ、知っています。わたくしたちは本音をぶつけ合わないと、前へ進めはしませんわ」
聖良「私は、理亞と向き合えていませんか」
ダイヤ「逃げているのでしょう? 醜い自分の心を見るのが怖くて」
聖良「……そうかもしれません」
ダイヤ「あなたは本当に優秀な方ですわ。自分を取り繕う術を、自分に嘘をつく術を知っている」
ダイヤ「ですが、それも限界なのでしょう。あなたのその理性の仮面、破れないほどあなたの想いは易くはない」
ダイヤ「鹿角聖良というスクールアイドルは、決して、易くなどない……姉妹の愛にも劣らぬほどに。そうでしょう?」
聖良「私は……」
ダイヤ「向き合いなさいな。理亞さんと、そして自分の想いと。高校生活のすべてと」
ダイヤ「改めて言います。――そうでなくては、ならない」
聖良「……どうすればいいんですか」
ダイヤ「その答えはあなたにしか出せませんわ。わたくしに口出し出来ることは、ここまで……」
聖良「……」
聖良「そんなこと、言われても」
ダイヤ「弱気ですわね、いつになく。あなたはもっとこう、不遜な方だと思っていましたが」
聖良「私自身そう思ってましたよ。……困っちゃいますね。まさか自分が、こんなにも弱いだなんて」
聖良「どうしたらいいか、何も分からないだなんて。そんなこと、初めてです」
ダイヤ「……その分では、やはり聞いていないのでしょうね」
聖良「え?」
ダイヤ「理亞さん。ゴールデンウィークの後すぐに新曲を書きあげたそうです。週末には学校で初ライブだそうですわ」
聖良「理亞が、新曲を……?」
ダイヤ「さあ、どうするんですの? あなたの相棒は、あなたの憎悪を知ってなお前へ進んでいますわよ」
ダイヤ「あなただけが置いていかれるつもりですの? あの、地区予選の日のままで」
聖良「でも、それは理亞がまだスクールアイドルだから」
聖良「スクールアイドルじゃない私には、もうその道は進めません……」
ダイヤ「それを決めたのは誰ですの? 時間? 学校? 大会?」
聖良「え、いや。それは、そうでしょう。だって、私はもう高校は卒業したし、ラブライブの出場資格も」
ダイヤ「――違いますわ。わたくしたちは、何かに決められてスクールアイドルだった訳ではありません」
ダイヤ「スクールアイドルであろうと決めたのは、SaintSnow自身だったはずですわよ。聖良さん……!」
聖良「っ!」
ダイヤ「だからこそ、決着を付けなさい。あなたたちの決着は、SaintSnowにしか付けられない」
聖良「私たちの。SaintSnowの、決着……」
ダイヤ「そう。その方法はあなたたちだけが知っていますわ」
聖良「……――ふ」
聖良「ふふっ。あはは、あははは……。バカみたいですね、困っちゃいます。本当に」
聖良「私をSaintSnowと呼ばれてしまったら。出来ることなんて、ひとつしかない」
ダイヤ「答えは決まりましたか?」
聖良「分かりません。でも、他に出来ることがないんじゃあ、ね」
聖良「ずいぶんと遠回りしちゃいました。そうですよね。私たちは姉妹であると同時に――SaintSnowだから」
聖良「……行ってくるとします。思い立ったが吉日ですし、それに。あの子を悩ませ続けるのも忍びない」
ダイヤ「ええ。それがいいですわ」
聖良「ありがとうございます、ダイヤさん。おかげで吹っ切れました」
ダイヤ「結構ですわ。お役に立てたのなら何より」
聖良「じゃあ、モノはついで、と言ったら何ですけど。もうひとつだけお願いしてもいいですか」
ダイヤ「ふふ……聞きましょう。このわたくしの力、必要でしたら何なりと」
聖良「――お金、貸してください。学生に何度も函館へ飛ぶ旅費はありません」
ダイヤ「あ、はい……」
――――
――
茶髪「――え? ちょ、待ってください。その日って、私たちが講堂でライブする日ですよね」
生徒会長「その通りです。大丈夫、その予定に変更はありません」
生徒会長「ただ、ちょっとだけイベントの内容が変わるというだけ」
黒髪「イベントの内容?」
理亞「……」
生徒会長「ええ。うちの学校の、あるOGの方から連絡が来て。ぜひその日にライブをさせてほしい、って」
黒髪「ラ、ライブ!?」
茶髪「じゃ、じゃあ私たち、その人と一緒にライブするってことですか!? 断ってくださいよ、そんなの!」
生徒会長「それは無理ですね。この学校にあの人のお願いを断れる人はいませんよ」
生徒会長「あの、函館聖泉の英雄からのお願いを断るなんて、ね。私もファンだし」
茶髪「英雄……?」
理亞「! ……まさか」
生徒会長「さすが。やはり姉妹だと共感する部分もあるんですかね。そのまさかですよ」
生徒会長「そのOGは鹿角聖良。昨年度、ラブライブ全国決勝8位の実績を残すSaintSnowのメンバーのひとり」
生徒会長「その聖良先輩が、あなたたちとライブを――いいえ」
生徒会長「――勝負がしたいと。そう申し出がありました。もちろん、OKしましたよ。二つ返事で」
・
・
・
茶髪「あぁぁぁ……。まさか初ライブが聖良先輩と一緒だなんて。何だよぉ、それぇ……」
黒髪「食われる、ってレベルじゃないよね……。実際、あちこちでもう話題になってて、私たちはおまけみたいになってるし」
茶髪「理亞ちゃん、このことで聖良先輩、何か言ってた?」
理亞「……何も。と言うか、ここのところ話も出来てないし」
黒髪「じゃあサプライズってやつ? 頑張る後輩を応援しますーって」
茶髪「過激すぎだよ……」
理亞「違う。生徒会長、勝負って言った。あれは姉様の言葉だよ」
茶髪「勝負って、なに? 私たち嫌われてるの……?」
理亞「……かもね」
黒髪「嫌いだから叩き潰しちゃおうって? 勘弁してよ……理亞ちゃん、何とか出来ないの?」
理亞「どうにもならない。姉様が勝負するって言った以上、避けられないよ。そういう人だから」
茶髪「そんなぁ……」
理亞(……嫌われてる、か。そっか。そうすることに決めたんだ)
理亞(自信をくじくつもりなんだ。その、圧倒的なくらいの実力で。私たち新鋭のスクールアイドルを)
理亞(ライブでの借りはライブで返す、か……姉様らしいな)
黒髪「どうする? 何か策はある?」
理亞「策なんて。全力でやる、私たちに出来ることはそれだけ」
茶髪「うわ、脳筋……」
理亞「しょうがないでしょ。曲も衣装もひとつだけ。ライブまでにアレンジするだけの余裕もない」
理亞「だったら、ぶつかるだけぶつかろう」
理亞(そう、全力でぶつかろう。それで終わるなら、それでいい。姉様もきっとそれを望んでる)
理亞(ごめんね、二人とも。変なことに巻き込んじゃったな……)
理亞「――さ。練習しようか。悔いのないように」
理亞(これもあと、数日の活動だから……)
――――
――
「お久しぶりです、聖良先輩っ。今日のライブ楽しみにしてます!」
聖良「ええ。ありがとうございます。ぜひ、楽しんでいってくださいね」
「東京の生活は大丈夫ですか!? 彼氏できたとか言われたら、私、死にますよ!?」
聖良「生きてください。大丈夫、まだそういうのは無いですから」
キャーキャーキャー
茶髪「聖良先輩、すっごい人気……」
黒髪「というか、本当に来たんだ……」
理亞「来るよ。勝負って言ったら来る。そういう人だし」スタスタ
理亞「――姉様」
聖良「ん、ああ、理亞。久しぶり。曲、出来たのね」
理亞「うん。連休明けすぐに出来た。……姉様のおかげだよ。不思議とね、すごく簡単に曲が弾けたんだ」
理亞「姉様のこと考えてたら、勝手に指が動いた」
聖良「あの曲は確か、悲恋の歌だった気がしたけど」
理亞「間違ってないよ。私は姉様に恋してて、フラれちゃったから」
聖良「……そう」
理亞「それにしても、今日は急だね。キャリーバッグ引きずったままだし。家、寄ってないの?」
聖良「急だったのはごめんなさい。いろいろと強行軍になってしまって。これが終わればすぐに帰るから」
理亞「私に復讐しに来たの?」
聖良「……ふふ。復讐、ね。あなたはこの勝負、そう受け取ったんですか」
聖良「逆に聞くけど。今日のライブがどうして復讐になんかなるの? 私はただ勝負としか言ってないはずだけど」
理亞「とぼけないで。私たちを叩き潰しに来たんでしょ。もう二度とスクールアイドルやりたいなんて、思わないように」
聖良「……とぼけているのは、そっちよ理亞。すべてを圧倒するライブ――それは私たちSaintSnowの命題だったはず」
聖良「叩き潰す? ええ、その通りです。どんな相手も叩き潰す覚悟で、私たちはステージに立っていた」
聖良「それなのにあなた――自分が叩き潰されると思ってステージに立とうとしているの?」
理亞「……!」
聖良「全力で来なさい。大丈夫、あなたを圧倒することが簡単でないことくらい、私は他の誰より知っていますから」
聖良「スクールアイドル鹿角理亞の実力を、一番よく知っている……」
理亞「……姉様は、いったい何をしに来たの。私が憎いから、ここに戻って来たわけじゃないの……?」
聖良「……ええ。そうね、認めます。確かに私は、あの日のあなたのミスを根に持っている」
聖良「今日はそれを清算しに来た。それも、あなたの考えている通り」
理亞「じゃあ、やっぱり……!」
聖良「でも。復讐なんかじゃない。これは勝負なんです。私たちのための。私と、あなたたちとの」
理亞「……どういうこと」
聖良「あなたには分かりませんか。……そうかも知れませんね。あなたは私を、何でも出来る姉と思っているようだから」
聖良「私自身、そうあろうと努めてきたつもりだけど……ふふっ。どうにもこうにも。不器用な人間みたいなんです、私」
聖良「私にはこれしかない。これしか知らないの――勝負しか……!」
聖良「スクールアイドルとしての私は、それ以外にあなたと向き合う術を知らないんです、理亞――!」
・
・
・
生徒会長「えー、みなさん。部活に学業にと忙しい中、お集まり頂いてありがとうございます。って、よく見ると先生もいますね……」
生徒会長「本日の催しはみなさんご存知かと思います。あえて説明はしませんが、僭越ながら司会進行は私が務めさせて頂きます」
聖良「……」
理亞(……復讐じゃあ、ない。この勝負は、私と向き合うため)
理亞(どういうことだろう……)
理亞(別に私たちは姉妹だし、今までもずっと同じスクールアイドルだったし。今さら、向き合うなんてこと)
理亞(姉様の考えがよく、分からない)
生徒会長「とは言っても進行することはほとんどありません。本日ステージに上がる方々を、みなまで紹介するまでもないでしょう」
生徒会長「と言いますか、私も待ちきれませんので業務連絡はここまで! 早速始めさせていただきましょう――!」
聖良「ふふ。まったく。ずいぶんと巻で進行しますね、彼女も」
理亞「……」
聖良「……理亞。ステージの前に、ひとつだけあなたに伝えることがあるの」
理亞「伝えること?」
聖良「悔いはある。とても悔しくて、悲しかった。それを根に持ってもいる。――けれど」
聖良「あなたとSaintSnowだったことを。あなたを相棒に選んだことを後悔した日は、一度だってありません」
聖良「姉としても。スクールアイドルとしても。ただの一度だって……!」
理亞「え……?」
聖良「証明してみせますよ、このライブで。――行ってきます」ザッ
生徒会長「本日限りの英雄の復活……! SaintSnow。鹿角、聖良――!!」
キャー!キャーキャー!
ワーーー!!
茶髪「うわっ。聖良先輩、やっぱり人気すごい……!?」
黒髪「聖良先輩が着てた衣装、確か前の地区予選のだよね? ってことは、曲は――」
〜♪
茶髪「このイントロ……!」
理亞「DROPOUT!?、だね」
理亞(あの時の、私たちSaintSnowが終わった日の曲……)
聖良「ここまで来ても答えが 分からない迷いの中♪」
聖良「掴んだはずの光は 本物じゃなかった…… 闇に飲み込まれて♪」
茶髪「うわぁ、レベル高……」
黒髪「こうしてスクールアイドルになって改めて見ると、すごいね。本当に……」
黒髪「――って、あれ?」
聖良「……」〜♪
理亞「っ!?」
茶髪「理亞ちゃんのパート、まるまる抜けてる!?」
黒髪「ダンスもそのままだ……ソロアレンジ出来なかったの?」
理亞「まさか。それが出来ない人じゃない。やろうと思えば出来たはず……あの人は、一人でも出来るはずなのに」
黒髪「じゃあ何で?」
理亞「何で、って……」
――あなたとSaintSnowだったことを。あなたを相棒に選んだことを後悔した日は、一度だってありません。
理亞「ああ……そうか。あの人が、今も。――ううん、今だって」
理亞「SaintSnowだから……!」
聖良「必ず手に入れるはずの 輝きはどこにある♪」
聖良「それでもGo to the world! 止められない 出口のない夢の先を♪」
聖良「探そうGo to the world! 孤独がただ 今を歪めるなら♪」
聖良「誰を呼びたいの……♪」
キャーキャー!キャー!!
理亞「姉様……」
理亞(あぁ、本当に凄い人だ。半分欠けた曲で、ここまでステージを沸かせられる、魅了できる)
理亞(やっぱり姉様は凄い。かっこいい)
理亞(私、こんな人と一緒にスクールアイドルやってたんだ……。私なんかが)
聖良「いつでも意味を求めて 叫んでる心の鼓動♪」
聖良「確かなものが見たくて 走り続けてたら…… 闇に愛されてた♪」チラッ
理亞(! ……姉様いま、こっちを見て――、)
聖良「――理亞ぁ、カモンっ!!」
理亞「……!?」
茶髪「り、理亞ちゃん呼ばれたよ!?」
黒髪「ど、ど、どうするの? ……あぁ、曲が。理亞ちゃんのソロパート、終わっちゃうよ!?」
理亞「え、えぇ……!? ね、姉様……?」
聖良「……」ニコッ
理亞「――あ」
理亞(そうか。また、私を待っててくれるんだ、姉様……。そうだよね、だって私たち、SaintSnowだから――!)
理亞「……ごめん。二人とも。……行ってくる!」
茶髪「うん、頑張って!」 黒髪「ファイト!」
理亞「――それは嫌だって block your imitation!!」
キャーーーー!!! リアーー!!
理亞「……!」
理亞(す、すごい歓声……さっきまでより! 姉様が一人で歌ってた時より、ずっと……!)
聖良「ふふっ。――空の色が 見えないのに 輝きを感じてる♪」
聖良「行くわよ、理亞」
理亞「……う、うんっ」
「「痛みでOut of the world! 胸が裂ける 零れ落ちた夢の欠片♪」」
「「拾えばOut of the world! 嘆きのあと いつか動き出せる♪」」
「「だから 顔あげて……♪」」
理亞(すごい、すごい……! 歓声が、どんどん大きくなっていく……っ!)
理亞(みんな姉様のファンだから? 違う、違うよ……!)
理亞(これは、SaintSnowに向けられた歓声だ! SaintSnowが作る歓声だ。私と、姉様が――!)
理亞(この間奏の後は――、)
理亞「聖良、カモン……っ!」
聖良「……っ」ニッ
聖良「抑えることなど 出来ない力 持て余してるこの想い♪」
理亞「明日が描けない 時も夢は 熱く蠢いてる♪」
聖良「」チラッ
理亞「っ」コクッ
「「それでもGo to the world! 止められない 出口のない夢の先を♪」」
「「探そうGo to the world! 孤独がただ 今引き裂いてる♪」」
「「誰を 呼びたいの …… 呼べば いいよ――――!!」」
キャアアアアアア!! ワー、ワー、ワー!!
理亞「はぁ……はぁ……はぁ……っ!」
聖良「ふぅ……はぁー……」
聖良「あぁ、良い歓声……。私の負けね。一人じゃあ、この歓声は聞けなかった……」
聖良「なんて、心地のいいステージ。楽しかった――」
理亞「姉様……」
聖良「あなたも感じる? この歓声は、私たち二人のものよ」
聖良「あなたと一緒じゃなければ、聞こえなかった声。辿り着けなかった場所……。あぁ、とても、素敵な景色」
聖良「あなたと一緒にスクールアイドルが出来て、本当に良かった……」
理亞「……っ」ウルッ…
聖良「ふふっ。泣くのは早いわよ。これからは、あなたたちのステージなんだから」
茶髪「せ、聖良先輩っ。お疲れ様です、あの、タオル!」
聖良「ええ。ありがとうございます」
黒髪「理亞ちゃんも、お疲れ様! すごかったよ……!」
理亞「う、うん。ありがとう」
茶髪「あー、でも。私たち、この後やるんだよね……この空気で」
黒髪「うわぁ、キツ……」
理亞「ご、ごめん。勝手なことして……」
茶髪「あ、いいよいいよ。会場が温まったとは思うから。……温まり過ぎだけど」
黒髪「まぁ私たち二人は最初から聖良さんには敵わないしね」
理亞「ごめん。私が何とかするから」
聖良「……理亞?」
理亞「え。あ、なに?」
聖良「あなた今まで、ライブで隣を見たことってあった?」
理亞「え――?」
聖良「思えば、あなたは私の背中ばかり見ていた気がする……」
聖良「――隣を見なさい、理亞。あの日の敗因はきっと、あなたにそう言ってあげられなかったこと。それに今日、気が付いた」
聖良「本当のあなたはとても強い。誰にも負けない。でも、自分を追い込みすぎる癖がある」
聖良「だから必要以上に怖がる。どうしても足がすくんでしまう……」
理亞「……」
聖良「何も恐れることはないのよ。あなたばかりが頑張る必要なんて、ない。だって、あなたの隣には――」
聖良「誰かの背中じゃない、仲間の肩がそこにあるから」
理亞「姉様……」
生徒会長「――さあ、会場の熱気も最高潮! 続きましては本日のメイン!」
生徒会長「SaintSnowのあとを継ぐ、我らが函館聖泉の新生スクールアイドル――、」
茶髪「行こうか、理亞ちゃん」
黒髪「よし。もうこうなったら開き直る! 思いっきりやろう!」
聖良「行ってらっしゃい、理亞」
理亞「みんな。姉様……」
理亞「――うん! 最高のライブにしよう、姉様に負けないくらい!」
茶・黒「「おー!!」」
キャアアアア!!
聖良「……ふふ。いいグループね」
聖良「さあ、そろそろ行きましょうか」
ワー、ワー…!!
・
・
・
ガラガラガラ…
――ブーッ、ブーッ、ブーッ
聖良「おっと着信が。はい、もしもし?」
生徒会長『もしもしじゃありませんよ! 聖良先輩、あなた今どこにいるんですか!?』
聖良「どこって。ステージも終わったし、帰ってますよ。ちょっと実家に寄るところです」
生徒会長『帰ったぁ!? ちょ、正気ですかあなた! これが聞こえないんですか!?』――アンコール、アンコール!!
聖良「すごいアンコールですね。ふふ。途中までしか見なかったけど、いいライブでしたからね」
生徒会長『あなたも応えるんですよ、このアンコールに! 何で急に帰ったりするんですか!?』
聖良「ちょっと実家に忘れ物があって。はじめは寄るつもりはなかったから、飛行機の時間がギリギリなんです」
聖良「――あ。実家に着きました。それじゃ、これで」
生徒会長『ま、待ってください! このアンコールはどうしたら……!?』
聖良「彼女たちに任せれば大丈夫ですよ。あの子たちも、もう立派なスクールアイドルだから」
聖良「あなたにもお世話になりましたね。急なお願いを聞いてくれて、ありがとうございます。それじゃあ」
生徒会長『ちょ、待って! 聖良先輩、待ってくだ――、』
聖良「――さて。ごめんなさい、理亞。あなたの部屋、勝手にお邪魔しますね」ガチャッ
聖良「えぇと。あの子のことだから多分この辺に……」ゴソゴソ
聖良「あった。しっかりラッピングしてるあたり、あの子らしいわね。開けていっちゃいましょうか」
聖良「これは――雪だるまの羊毛フェルト? ふふ、可愛い……このサイドテール、もしかして私?」
聖良「素敵なプレゼントね。ありがたく受け取っておかないと――って。あれは……?」
・
・
・
理亞「つ、疲れた……。姉様、勝手に帰っちゃうなんて。私、アンコール含めて何曲連続でやったの……?」
理亞「持ち歌も1曲しかないのに。ちょうど3人だからA-RISEのカバーで誤魔化したけど……」
理亞「あぁ疲れた。早く寝よう。シャワーは、明日でいいや……ただいまー……」ガチャ
理亞「――っ!?」ギョッ
理亞「ちょ、な、何で姉様のプレゼントの袋がベッドの上に置いてあるの!? え、包装開かれてる!?」
理亞「……あれ。中身はそのまま……」
理亞「おかしいな。いったい誰がこんなこと――あ」
理亞「……は。あはは。本当、敵わないな。あの人には」
理亞「1ヶ月遅れちゃったけど――お誕生日、おめでとう……姉様。喜んで、くれたかな」
――――
――
聖良「――ふふふ。そういった訳で、理亞はあのステージでさらなる高みへ至りました。ラブライブ優勝は貰いですね」
ダイヤ「はっ。戯言を……。ルビィはわたくしの妹とは思えないほど鈍臭いですが、曲がりなりにも黒澤の娘」
ダイヤ「ラブライブで勝利を手にするのは、申し訳ありませんがあの子たちに決まっています」
聖良「くふふふっ。根拠のない自信と言うものは、何ともまぁ滑稽に映りますね」
ダイヤ「うふふふ。虚勢よりはマシかと思いますわ」
聖良「……もしかしてケンカ売ってます?」
ダイヤ「あなたがそう思うのなら否定しませんわよ?」
聖良「上等です……! 理亞がどれだけ優れたスクールアイドルか、思い知らせてあげますよ……!」
ダイヤ「片腹痛し、片腹痛しですわ! わたくしから自立したルビィに勝るスクールアイドルなど、この世に存在しませんわ!」
ダイヤ「吠えるのならば、まずはわたくしへの借金をさっさと返してからにして欲しいものですわね……!」
聖良「それはあと2週間待ってください、バイト代が入るので……っ!」
聖良「取り急ぎ、まずは肩でも揉ませてもらっていいですか……! 理亞たちのPVでも眺めながら!」
ダイヤ「その後にルビィたちのライブ映像を流すなら受けて立ちますわ……!」
聖良(理亞――元気でやっていますか。ツインテ雪だるまの羊毛フェルト、カバンにつけてストラップにしてるんです)
聖良(大学でも評判なんですよ。可愛い、って。みんなに自慢しちゃってます)
聖良(素敵なプレゼントをありがとう……。いろんなことがどうでも良くなるくらい、本当に素敵な一日でした)
聖良(理亞。あなたがどこまで納得できたか分からないけれど。でも私は)
聖良(今が結構、楽しいです――あなたのおかげ、ね)
おしまい
これにておしまいです。ご覧いただいた方、レス頂いた方、ありがとうございました
SaintSnowの、というか聖良姉様のその後の話は2期放送前にも書きましたが、2期の設定でも書きたくなった次第です
お誕生日もお祝いしたかったので
ともあれ、お目汚し失礼しました
0108名無しで叶える物語(笑)2018/05/05(土) 23:16:03.23ID:bImjm/RC
乙ーSaint snowのスピンオフみたいで面白かった
その二期放送前に書いた話のリンクある?
0110名無しで叶える物語(茸)2018/05/06(日) 00:18:20.06ID:EeHy939z
乙乙
すごい面白かった
>>109
やっぱりそれ書いた人だったか、雰囲気でわかった
面白かった! >>109
108じゃないけどありがと、読んでくる 0113名無しで叶える物語(しまむら)2018/05/06(日) 01:18:28.44ID:pjMPpf7b
おもしれー。ありがとう
0114名無しで叶える物語(なっとう)2018/05/06(日) 01:19:19.67ID:T5QmUfJc
読ませる文だねえ とても面白かったよ!
0117名無しで叶える物語(やわらか銀行)2018/05/06(日) 10:09:05.46ID:YjrO4rlx
神スレだった
乙
0118名無しで叶える物語(もんじゃ)2018/05/06(日) 11:12:06.28ID:J+GBUKrL
面白かった