https://news.yahoo.co.jp/articles/66374d09a3e9a921c6a00832f4aac41762761722

フジテレビで社内常駐の外部スタッフが新型コロナウイルスに感染したことを同局の報道番組で公表しようとしたところ、遠藤龍之介社長が、放送を止めさせていたことが明らかになった。

 感染者がでたのは、同局の昼時のバラエティ情報番組バイキング。全国的に新規感染者数が増え続けていることもあって、同局では公表を強化する方針を固めたばかりだった。

 関係者によると、30日午後にスタッフの感染が報告され、幹部が夕方の報道・情報番組での公表を決めた。しかし、その後、遠藤社長が直接、報道局長などがいるフロアーに現れ、「そこまで認めていたたわけじゃない」と強い姿勢で、放送での公表を止めるよう求めた。その後、報道局長なども加わって協議し、放送での開示は取りやめ、ホームページで番組名は伏せる形で、いわば「こっそり」(局関係者)と公表した。

 今週開かれた、フジテレビのコンプライアンス関連の委員会(局長級がメンバー)で、常駐者に関しては社員以外の外部スタッフについても感染がでれば、速やかに放送で公表することを決定したばかりだった。

 遠藤社長には委員会の前に了解を求めていた模様だが、この日の社長は「範囲が広すぎる」という趣旨の発言をし、事前了解していたことを認めなかったという。

 遠藤社長は、作家の遠藤周作氏の息子さんで、ホリエモンこと、堀江貴文氏が率いるライブドアがフジテレビの資本上の親会社であるラジオのニッポン放送を買収しようとした際、フジテレビの広報部長を務めていた。買収騒動の間、70日以上にわたって不休でメディア対応にあたったことなどが知られている。広報の重要性は人一倍知っていたはずだった。

 テレビ朝日の報道ステーションでキャスターが感染、同局のイメージダウンを生んだことがあったため、看板番組での感染者に神経質になったとの見方がでている。

 フジテレビをはじめとする民放各局は、新型コロナウイルスの影響で、企業の広告が激減し、もともと悪かった業績が悪化している。フジの場合は、リアリティ番組「テラスハウス」で自殺者がでて、同番組が打ち切りになっていた。自殺問題を巡っては問題シーンでのスタッフによる「演出」があったのではないか、という問題も指摘され、訴訟騒ぎに発展している。

 遠藤社長による放送差し止めに関し、フジテレビ企業広報室は遠藤社長には触れず「濃厚接触者がいないので番組で報じることはないと判断した。公表基準は変更していない」などと回答した。

 予定通り30日午後5時台に放送していたら、感染者が出たことなど、いまどきたいして取りざたされることもない話。「隠そう」としたことで報道機関としての公正さが問われる上、判断の悪さで社内の求心力も落ちるだろう。ずいぶん馬鹿な対応をしたものだと若手社員すらあきれている。